孤独な少女の望むモノ   作:g_c

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わあ、評価点数ありがどうございます!

数日はフルドライブしそうです!

管理局の内部関連はほぼ独自解釈も思ってください。
なんとなーくこんな感じかなと書いてます。

前後編に分かれます。




執務官試験 前編

新歴62年、初夏。

カタリーナは人生で一番大きな勝負に挑もうとしていた。

 

 

 

執務官実技試験である。

 

 

 

執務官試験は2段階式の試験。

春先に筆記の試験を行い、同年の初夏に実技試験が行われる。

実技試験は筆記を合格した者のみ実施され、

ふるい落とされた者は受験資格を失う。

 

内容は、攻撃オブジェクトが守るマネキンを回収すること。

言わば人質奪還の模擬演習。

 

自分は勿論、人質に傷が付くのも付けるのも減点対象。

かすり傷でも大きな減点となる。

 

確かな戦闘能力と判断力を同時に要求される。

クロノ・ハラオウンはこの一年前に試験に合格し、

今春からグレアムの元で研修を行う予定だ。

 

 

筆記は彼女のこの二年弱に及ぶ努力が結実し、見事合格。

実技試験を控えた前日夜、彼女は庭で夜空を見上げていた。

 

『明日に障りますよ。』

 

「うん、わかってる。もうちょっとだけ…。」

 

このやりとりも、もう何度目だろうか。

 

編入試験の前日、筆記試験の前日、

いずれも彼女はいつもより少しだけ夜更かしをした。

端的に言えば、緊張してねむれないのだ。

 

なんのかんの言っても、彼女はまだ9歳。

もうじき10歳の誕生日を迎えると言っても

それでもまだまだ幼い。

これでも十分精神的に円熟してるといえよう。

 

主人の事情を理解した上で、

彼女の相棒もバイタルをしっかり計測しつつ

ワガママに付き合っている。

 

時刻は地球で言うところの23時を回ったころ。

もう少しすれば日付が変わる。

 

「明日、うまくいくかな。」

 

『無論です。私もついています。』

 

彼女は時々、相棒には弱気なことを零す。

数年前まで、これは二人の使い魔の役目だったのが、

いつしかそれは肌身離さずそばに居る相棒へと変わっていった。

 

「クロノも、実技で失敗したって言ってた。

だから、ちょっとだけ不安。」

 

膝を抱える彼女は年相応、

寧ろもっと小さく見えたかもしれない。

それほどに彼女は迫る大勝負に不安を感じて居た。

 

【ちょっと】ではない、本当にちょっとの不安なら

彼女は飲み込んで前へ進む。わざわざ口にはしない。

 

『では、ここで過去の彼を超えていきましょう。

マスターカタリーナなら問題ありません。』

 

優秀な相棒はその機微を察し、断言する。

彼女はAI、ご主人に対して決して嘘は吐かない。

(勿論例外は存在するけれど)

だからこれは、中身のない励ましではなく

彼女の実力を的確に評価したうえで断じた。

 

ご主人様(マスター)なら可能である。と。

 

「うん。…帰ろっか、相棒(ゲイト)

 

『そうしましょう。』

 

相棒の言葉に活力を得たのか、心の整理がついたのか。

立ち上がった彼女は静かに、自室へと戻っていった。

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

試験当日、指定されて会場に行くと、

現役と思しき何人かの魔導師。指定された【六番】の席に座る。

 

候補生の制服で着ているのは私だけだ。

だから少し所じゃないくらいに目立っている。

 

『すごいな、あんな小さな子が…』

『知らないのか?

あの子、候補生の中では有名人だぞ。』

『なんでも、記憶の共有をさせられるらしいな。』

『いやいや、どんな魔法だよ。』

『俺にも分からん、

知り合いの教官から聞いた話だからな。』

 

そんなひそひそ話が聞こえる、ひそひそというより私に隠す気の無い会話なんだろうけど。

 

……「メモリーコピー」のことかな。

あんな下品な魔法なんて二度と使いたくないのだけど、

執務官になったら使わされるのかなぁ。

…やっぱりあの時の行動は迂闊だった。

一年半前の自分に対して恨み節を向ける。

 

後悔先に立たず、そんな言葉をどこかでみた気がするけど、

今の自分が正にその類だ。

 

さて……。

 

周囲の様子を確認してみる。

人数は…10人そこそこくらい。

午前と午後、そして明日と4パートに分かれているから実際はこの4倍の人数が筆記試験から生き残ったことになる。

 

毎年、実技試験で残りの2/3がふるい落とされる。

年によってはもっと酷いってお姉様が言っていた。

 

感じる魔力の大きさはマチマチだけど、そんなものはタダの指標だ。

魔導師の価値は魔法運用の技術だと私は思っている。

 

筋肉ムキムキの人が、痩せ細った武術の達人に触れもせずに敗れる。

そんな事が魔導師の界隈でもありえるのだ。

 

閑話休題。

 

見てわかる程ではないけれど、凄く緊張してる人達が何人かいる。

…おじさん達には悪いけど、この人達には負ける気がしない。

 

闘う前から心が負けてたらダメだよ?って

私みたいな子供に言われるような人は間違いなく落ちる。

 

他は…正直わからない。

ただ魔力量は皆私より低く感じる(・・・・・・・・・)

 

……何をやってるんだろ私、人と比べて今更何になるのか。

こんなんじゃメアリに笑われてしまう。

 

「受験者の皆様、お集まりですね。」

 

入って来たのは、白髪混じりのおじさん、

お父様より年下?くらいにしかわからないけど、

胸元のバッチから現役の執務官だということが分かる。

 

ちょっとだけおじさんがカッコよく見えた。

 

「これから実技試験に対する事前説明を行います。

質問は最後にまとめて受け付けますので」

 

・試験者は試験開始までに指定の訓練エリアに赴くこと

 開始時間に所定の位置に居ない場合、失格とする。

・デバイスは各自持ち込みの物を使うこと、

 ストレージデバイスなどの貸し出しは行わない。

・試験者のダメージが一定となった時、撃墜扱いとし失格とする。

・試験官が危険行為と見做した場合、失格とする。

・課題達成後、指示があるまでエリアから離れないこと、

 途中退場扱いとし、失格とする。

 

「以上です、何かご質問は?」

 

説明を終えた時共に後ろのお兄さんが手を挙げた。

私も気になることが、一つある。

 

「危険行為とは、具体的にどういったことですか?」

 

そう、そこだけなんだかフワっとしている。

他の項目は明確なのに、危険行為の一言で説明がなかった。

 

「お答えできません。そこも試験の一環となっていますので。」

 

そう言われては返す言葉もない。

お兄さんは納得半分、抗議半分と言った調子で引き下がった。

 

他にご質問は?

 

試験官の言葉が静かに響く。それからいくつか質問が出た。

 

Q.アクシデントにより場外に飛ばされた場合は?

A.想定以上のダメージを受けたものとして、撃墜とみなす

 

Q.アクシデントで物理的ダメージを負い、動けない場合は?

A.試験官の判断で試験中止とする。

 各自のデバイスから救難信号を出してもよい。当然失格となる。

 

こんな感じ。

監督は現役の執務官さんが行うみたいだから、

判断力の方は心配いらないとは思う。

 

質問が無くなったところで、事前説明は完了。

各自の試験会場へと向かうことになった。

 

荷物をまとめて、立ち上がると先程の説明をした執務官が私の席の前まで来ていた。

思わず身構える、何か悪いことでもしたかな。

 

「えと…なんでしょうか?」

 

「君の担当は私だからね、会場まで一緒に行こうかと思ったんだ。」

 

私の警戒心を察してか、執務官は努めて明るい笑顔で答えた。

 

「ありがとうございます。」

 

荷物を抱えて一緒に廊下を歩く、指定のエリアまでは大人の脚で

徒歩10分そこそこあるらしい。…以外に遠い。

 

「その年で礼儀正しいね、流石グレアムさんのところの娘さんだ。」

 

「お父様をご存知なんですか?」

 

「もちろん、私たちの上官に当たる人だからね。」

 

間抜けな質問をしてしまった。

お父様の役職は顧問官、執務官達を取りまとめ管理をしている人だ。

執務官なら誰だってその名前は知っているだろうに。

 

「……試験結果に響きませんよね?」

 

これも私の対応力を試す抜き打ち…だなんて言われたら笑えない。

納得はいかないけど、この執務官の方が立場は上、

だから彼がバッテンをつければそれで終わりだ。

 

「ふふ…ははは!安心しなさい、

ただの世間話を採点するほど気を張って生きていないよ。」

 

「よ、良かったです。

そんなつまらない不合格、お父様に顔向けできません。」

 

「試験会場まではどうかリラックスしてほしい。

私も魔導師として、君の実力に興味がある。

…是非十全の力を見せて欲しい。」

 

「……どのくらいまでご存知ですか?私のこと。」

 

私の質問の意図を理解したのか、優しいおじさんの顔は

少しだけ怖くなった。…仕事モード、というやつかな。

 

稀少技能(レアスキル)持ち、

なんでもほぼ詠唱が不要だとか。

君のデバイスも、その能力補佐に特化しているから、

君以外に使えない。…このくらいだね。」

 

私の能力は別に秘匿されてはいない。

(私個人からペラペラ喋ってはいないけど。)

 

候補生として登録する時に。

私の能力は全て士官学校に説明したし、資料も提出しているから。

だからこの人が私のことを知っていてもおかしくない。

 

ただ、執務官が一候補生に向けるにしては過剰な興味だとは思った。

自分の担当する受験者のことは目を通したのかもしれないけど。

 

「ゲイトのことまでお調べになったんですね。」

 

「受験者クンの事はちゃんと理解して

採点しなければならないからね。

こちらの無知で、無用な減点はご法度だ。」

 

勿論加点もね、と朗らかに笑った。

お前の事は全部わかっている。だから出し惜しみするな。

そんな風に釘を刺された気がした。

 

「ご期待に添えるよう、頑張ります。」

 

「張り切りすぎて怪我をしないようにね。

君は少しやり過ぎなところがあると聞いてるよ。」

 

「…あ、あの事は、反省しています。」

 

あれから一年以上経つけど、色々な人から注意される。

それくらい私の行動は迂闊だと評価されてる。

 

「あれはされた側にも問題はあったと思ってるけどね。

一人の若者の未来を潰したという事実は変わらない。

……いけないな、歳を取るとどうも説教好きになってしまう。」

 

「どうか、気にしないでください。

大人の人に、そう言ってもらえるのは嬉しいです。」

 

お父様はあまり私を叱らない。…お叱りなる時は物凄く怖いけど。

だから、こうやって言ってくれると、心があったかくなる。

 

「はははっ、君は本当にその年の子とは思えない落ち着きだ。」

 

「良く言われます。あの、きっと受かって見せますので、

来年もし会うことが有れば、どうぞよろしくお願いします。」

 

「強気だね、自信があるようで何よりだ。」

 

「はい。この日の為に、相棒と備えましたから。」

 

服下にしまったゲイトを握り締める。

それに応えるように、彼女は小さく震えた。

 

 

訓練エリアを歩くこと十分と少し、

汚れの目立つ灰色のビルにたどり着いた。

 

「ここが試験会場だ。

カタリーナ・W・グレアム候補生、改めて課題の説明を行う。」

 

執務官の顔立ちが変わる。

ここからは、受験生と試験官の立場、静かに私は頷いた。

 

【課題内容】

ビルの中に武装魔導師が立てこもっている。

民間人が一人ビルに取り残され、人質となってしまった。

人質の救出を最優先とし、武装魔導師を鎮圧すること。

 

実際は、人間ではなく特別な魔力攻撃を仕掛けてくる攻撃トーチで、人質もマネキン。

 

人質を安全な場所に連れ出した上で、攻撃トーチを全て破壊。

これを制限時間内に達成すれば良い。

 

「棄権する場合は、

君のデバイスから救難信号を出しなさい。

制限時間は、君のデバイスを通じて表示させる。

何か質問は?」

 

「ありません。」

 

「よろしい。……頑張れよ、期待の候補生クン。」

 

執務官に肩を優しく叩かれ、去っていく。

あちこちにサーチャーがあるから、恐らくそれで監督するのだろう。

 

「ゲイト、セットアップ。」

 

起動コードに答えて相棒が光る

バリアジャケットを展開して身構えると、

同時に小型の魔力スフィアが視界の隅に現れた。

 

【試験開始1分前】

 

カウントダウンが始まった、私の人生最初の関門。

 

30秒前

 

ここを突破して、クロノに追いつく

 

10秒前

 

そして、お父様の誇れる魔導師に近づく!

 

5…4…3…2…1…0。

 

運命の、執務官実技試験が始まった。

 






後編に続く。
明日か明日には書き上がるかもしれません。
隔週更新とは…ウゴゴゴゴ。

もうちょっと続けようとおもいましたが、キリが良いのでこれで

次回はカータちゃんvs実技試験となります。

果たして合格なるのか、乞うご期待ください。
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