後編、試験開始となりまふ。
色々とツッコミ所満載な試験内容ですが、
書きたい物を書いた結果こうなりましたw
多分実際はチーム戦でどう戦略的攻略をするとかなんだろうけど、
そこまで考えると脳みそパンクするんで諦めました。
では、カータちゃんの奮闘をお楽しみください。
5…4…3…2…1…0
【試験開始】
機械音声とともに…私はスタートダッシュを…決めない。
開始と共に開示された情報を開く。
建物は4階建、ごく普通のオフィスビル。
武装魔導師は全部で10人…思ったより数が少ない。
このサイズのビルを占拠するならもう少し人数が居ると思ってた。
強さは反応値から察するに、ランクB〜AA
多分リーダーがAA、
他のメンバーがAまたは
Bランクの魔導師なのだと思う。
「ゲイト、マッピングする。魔法構築するから手伝って。」
『承知しました、マスター。』
攻撃性のトーチといえど、その動力は魔力。
当然魔導師が感知可能だ。
感度を全開に、しかして焦点は建物に向ける。
目的は数を知ることじゃ無い。敵の配置を知ることだ。
意識する。
見取り図に対して敵のマーカーが動く様を。
私の
「『ストリーム・エネミー』」
相棒と同時にその名を紡いだ。
頭に流れ込む見取り図と、それに対する攻勢トーチの位置。
複雑な動きこそしてはいないけど、
恐らくそれは索敵状態だからだ。
戦闘状態になれば恐らく、
普通の人間と変わらぬ動作で標的を追い詰めるだろう。
なら、見つからなければいい。
見回りが手薄な裏口に着く。
本来なら体を覗かして中の様子を見なければならないけど、
トーチの位置を完全把握してる私にはその必要がない。
でもその前に…
「ゲイト、熱源感知。」
魔力を発してない個体があるはず。
マネキンではあるけど、人肌程度の温度を発している訓練用の物だ。
なんでそんなギミックが必要かって…
こういう攻略法を潰してしまうし、
むしろ体温のない人質なんていないでしょう、という話。
閑話休題。
『確認しました、やはり人質は最上階の奥ですね。』
4階建で一番警備が熱いのは一階と最上階、
理由は単純、一番下は地上で唯一の出入り口で
一番上は彼らの切り札である人質がいるから。
そう考えるとやっぱり10人でこのビルを見回るのは些か手薄な気がする…。
「人質奪還を優先せよ、ってことは…」
『はい、人質が居る状態での戦闘は
避けろ…という意味でしょうね。』
暫し考える、視界の端に動くタイマーは残り2時間と50分ほど。
悠長にスニーキングしても十分間に合うけど、
「……ゲイト、人質の位置まで
『可能ですね、驚くことに。』
ジャマーも展開されていないみたい。
そもそもそういう転移がされることを想定されていないのかもしれない。
AMF展開によって誘い込んだ上で無力化させる…
なんて可能性はないだろう、相手は武装魔導師という想定だ。
というか、メタ的にいうならそんな物を試験にホイホイ用意できるわけない。
先ずは中の様子を確認しよう。
飛行魔法で静かに外壁を伝っていく。
窓越しにトーチに見つからないよう、慎重に。
人質の位置は驚くほど簡単に見つかった。
出入り口をトーチが見張り、監禁する形で転がされている。
試しに窓のガラス戸に触れて見たけど、やっぱり鍵がかかっている。
『この距離ならジャンプ・ステップで移動可能です。
いかがしますか?』
迷う。入った後はスピード勝負だ。
①侵入に気づかれる前に窓から人質を連れ出す。
②背後からトーチを奇襲して戦闘不能にさせる。
トーチは前方を監視するばかりで中の様子は伺っていなさそう。
…ここは、①だ、気づかない内に敵の
「やる、着地点は、入口から一番遠い壁際で。」
『承知しました、3…2…1…ジャンプ。』
音もなく建物の中に侵入に成功する。
入口を見張るトーチは相変わらず中を気にも留めていない。
ん〜…?中から馬鹿正直にスニーキングすることを想定しているの…?
こうやって細かい転移で潜り込むとは思われてないのかもしれない。
ゆっくり、足音を最小にして人質に近づく。
(よし、確保。…後は窓を開けて……)
『マスター!ご容赦を!!』
私が人質を模したオブジェに触る瞬間、
景色はビルの合間の灰色に切り替わる。
窓の向こうから激しいサイレンが響く。
警報の瞬間壁の向こう側にジャンプ・ステップで転移してくれた。
『申し訳ありません、失態です。
あれは人質でなく警報装置でした。
ご丁寧に人に近い熱源まで構えてあるとは……』
「良いの、ゲイトありがとう。
お陰で見つからずに済んだ。」
『恐縮です。…しかしこれでは人質優先は難しいですね。』
けたたましく鳴り響く警報、もうトーチ達は戦闘状態に突入した。
脳内でマーキングしたエネミーが激しく動き回り、
私を探しているのごわかる。
もう、先のような単純動作ではないし、微かな物音にだって反応する。
スニーキングは難しい。
「……じゃあ、仕方ないね。」
『承知しました、私とマスターの力を
「流石、相棒。頼りにしてる。」
『恐縮です。』
地面に降り立つ、もう鳴ってしまった物は仕方ない。
逃げも隠れもできなのなら
地面に降り立って堂々と正面玄関を開け放つ。
既にそこに陣取っていた数体の攻勢トーチと目が合った。(気がする)
多方向から容赦なく放たれる魔力の弾丸、
それに対して魔法の起動トリガーを呟く。
「イクリプス」
私の周囲、1m程を魔力の薄膜が覆う。
弾丸が着弾する瞬間にバリアが発動し、受け止める。
どの方向から来ても関係ない、
薄膜破壊をスイッチとしてその裏側に対魔力バリアを生成する。
自動防御魔法「イクリプス」
強い攻撃は防ぎ切れないけど、小粒の攻撃を防ぐには余りある防御力がある。
そのまま真っ正面からトーチ迫る。
お姉ちゃん直伝の左フックを魔力で
人間で言う右の頬に綺麗に一撃を受け、ランプを消灯させる。戦闘不能という意味。
「ひとつ…!」
後ろから弾幕を放つ2体の影もイクリプスの自動障壁が問題なく防ぐ。
この魔法の最大の利点は、制御に演算を伴わない。
一度発動すれば魔法が破られるまで半永久的に稼働することだ。
『ジャンプ・ステップ』
私の意思を汲み取って相棒が片割れの懐に転移。
そのまま下顎目掛けて拳を叩きつけ、私を見落としてもう一体目掛けてハイキックを側頭部に叩き込む。
2体のランプが消えたのを確認。
「みっつ…!」
蹴り飛ばした姿勢のまま熱を排気する様に、深いため息を吐き出す。
落ち着いてる暇はない。
奥の階段から敵性トーチが現れる。
「嗚呼…もう!そう言うこと!?」
現れたトーチは軒並みAAランク程度の魔力を内包。
つまり、手薄なのではなく、少数精鋭。
この試験作ったひとぜっっっっっっったい性格わるい!!
魔力探知に対する対策を設けず、あえて位置を知らせる。
一部の物には魔力探知に対するダミーを仕込む。
例えば、表面に薄膜を張って
それで…人質のダミーには警報を仕込んで、
ご丁寧に熱源探知にも引っかかるようにする。
本物の人質は、ジャマーマシマシの中に幽閉していれば
間抜けな侵入者は騙されて蜂の巣にされる。そういうシナリオ。
数は6体、AA相当のトーチが相手ということになる。
難易度が高すぎて嫌になってしまう。
なぁんて言ってられない。
クロノはこれを乗り越えたんだ。
これくらい切り抜けて見せる。
トーチの一体が、弾丸を放つ。
先ほどより数段速く、そして強力な一撃は
イクリプスを粉々に打ち砕いた。
飛び交う弾丸の中を上下左右に転移。
流石に六体を一度に相手してられない。
「ッ……!」
バインドで3体を絡めとる。これで少しは時間が稼げる。
相手は人形、大した読み合いはできまい、私の間合いに潜り込んで。
「しッ!!」
裂帛の気合を呼吸と共に吐き出して腹部目掛けて脚を突き出す。
「かッた……!」
射撃戦を重きに置いてる癖に、
随分物理ダメージ対策バッチリのボディ…!
攻撃の反動で、銃口に対する反応が遅れる。
「しまッ……!」
『ジャンプ・ステップ』
意識を置き去りに、蹴り飛ばした敵の真後ろに勝手に転移。
「ごめん、ゲイト!助かった!」
『恐縮です。しかしお言葉ですが。
この消耗は無視できません。』
確かに、少し転移に頼りすぎた。既に4割ほどの魔力を使った。
空間攻撃が得意な訳ではないけど、人質を傷つける可能性がある。
派手な攻撃はできない。
どうした物かと、盾にしたトーチを蹴り飛ばして気づいた。
「え…?戦闘不能…?」
既に盾にしたそいつのランプは消灯、
蹴り飛ばした時はダメージはほぼなかったし…
さっきの弾丸も決して強くは……。
『対魔力対策がされてないのでは?』
「試してみよっか。」
話し合いもそこそこに、敵が再び弾幕を張る。
飛行魔法で補助しながら壁を、天井を駆けるて、
受付用のカウンターテーブルに滑り込む。
これで相手は入り口を背にした状態。遠慮なく魔法をぶっ放せる。
弾幕が緩んだ一瞬の隙を突いて飛び出す。
背後に無数の銀の光を携えて。
「ミルキーウェイ!」
今度はこちらが光の玉の奔流で押し返す。
一発一発は大した事はない弾丸、しかし受け続ければそのダメージは無視できない。
本来は、相手の動きを制限するための魔法。
でも多人数戦闘の制圧にもつかえる。
「効いてる…!」
本来大したダメージのじゃない「ミルキーウェイ」
牽制用弾幕で動きが鈍るほど、魔力に対する防御能力
即ち対魔力性能が欠如していた。
『シューティングスター』
脚を止められたトーチ目掛けて弾丸を打ち出す。
流星に胴を抜かれた人形は静かに崩れ落ちてランプが消えた。
『四つ。』
ゲイトのカウントを耳に受けながら
駆ける、こちらの弾幕に足止め喰らうトーチ目掛けて
指先を向けて流星を放つ。
「五つ…!六つ……!!」
背面から聞こえる駆動音を頼りに身体を捩る。
振り向き様に二発。敵の顔面に流星が打ち込んで戦闘不能に落とす。
「八つ!……残りは!?」
『マスター、頭上です!』
「ラウンドシールド!」
落下しながら弾丸を乱射するトーチ、
魔力障壁から激しい衝撃が響く、でも…そんなんじゃ私のバリアは抜けない。
「やぁぁぁぁぁ!!!」
落下する敵の腹部目掛けて渾身の右拳を叩きつける。
拳の上で吊るされる様に、トーチは力を失って項垂れた。戦闘不能。
私の熱い呼吸だけが静かに響く。
じっとりと嫌な汗がジャケットの中に染み込む。
「はぁ……!はぁ………!」
『お疲れ様です、まだ時間もあります。少し息を入れましょう。』
時間を確認、残り1時間25分
なんとか、なりそうだ。大分消耗させられたけど、
荒い呼吸をなんとか整える。完全に疲労は抜けてないけど、
一先ず落ち着いた。……これで残るは後一体。
『マスター、悪い知らせです。』
相棒の嫌な言葉、
それは階段を降りてきた何かに向けてだとすぐにわかった。
ああ…やられた。
トーチの魔力反応値に奥歯を噛む。
そうだ、わざわざ隠蔽して隠し球を用意するような試験だ。
「ゲイト、魔力残量は?」
『残り35%です。』
参った、転移魔法に頼り過ぎた。温存、できる相手じゃないけど。
転移は奥の手、攻撃手段には使わない。
そして相変わらず、敵の武装はミドルレンジだ。
こっちが派手に暴れられないのをいいことに、
敵は階段の上から芸の無い弾幕射撃。
避ける、避ける、避ける、避ける。
飛んで、駆けて、隠れて、跳ぶ。
ゲイトの展開してくれたバリアジャケットは
控えめに言っても脆い。
張られる弾幕の一発でも貰えば、私の機動力は落ちて、
瞬く間に戦闘不能、失格だ。
自分の呼吸が熱い。
酸素が足りていない。
いくら吸っても血液が足らぬと酸素をせびる。
回避し続けて数分。
漸く敵の動きが止まった。弾切れ…!
「それを…待っていた!シューティング、スター!」
無防備なマシン目掛けて銀の流星を叩き込む。
攻撃力に偏重して機動力はないのか、
身動きできないままにあっさり着弾。
…しかしそれだけ。トーチは何事もなかったかのようにリロードを終えて、銃口をこちらに向ける…!
再び始まる一方的な蹂躙、リロードの隙が出ることはわかった。
…でも後何分この体は動く…?
後どれだけ魔法が使える…?
背筋に嫌な汗が流れる。
このまま逃げても仕方ない、ここは多少強引な手段でもーーーー
『マスター。』
「……!…ありがと、大丈夫。」
回避行動を中止、残り少ない魔力を回してラウンドシールドを構える。
構えたシールドが弾丸を受け止めて
大きく、深呼吸。
焦りで茹だった頭を落ち着かせる。
心臓はまだうるさいけれど、まだなんとかなる。
額に滲む汗を拭い、真っ直ぐ敵を見据える。
弾切れまでは後数分はかかる。
残り時間は1時間18分、ゲイトの言う通り、焦ってはダメ。
捜索時間は30分もあればきっと大丈夫だ。
焦るのは、リミットが近づいてからでもいい。
相変わらず目の前には暴力的な弾幕。
私の防御力を一発で貫通する威力。
生半可な攻撃ではダメだ、弾幕に打ち落とされて無駄に魔力を浪費する。
出し惜しみは、無しだ。残り30%でコイツを落とす!
弾幕の隙間を縫いながら、刹那を見切って飛び出す。
銃口が狙いを変えるまでの僅かな時間で銀の魔力を収束させる。
「メテオ・カノン!」
突き出した両手から、私謹製の砲撃魔法が飛び出す。
いつもより過剰に込めた魔力は迫る弾丸を飲み込んで、なお威力は衰えない。闇雲に砲撃に対して魔力弾を打ち込むトーチを、私の銀の魔力が飲み込んだ。
弾幕が途絶える。その間に全速力で階段の上の目標へ飛ぶ!
階段上で、敵を押し倒し、マウントポジション、……獲った…!
「喰ら、えぇぇぇぇぇ!シューティング・スター・ゼロ!」
固めた拳にありったけの魔力を乗せ、顔面目掛けて叩きつける。
物理的衝撃と魔力衝撃の同時攻撃。
「やばッ……!」
こめ過ぎた魔力の反動で私の身体はチリ紙の様に吹き飛ばされる。
「……かはッ…!」
背中に走る激痛。
気付けばコンクリートの柱に背面からめり込んでお。
…バリアジャケットが無ければ、と思うとゾッとする。
「や、やっ…ちゃ、た。」
焦った…!過剰だった…!
痛みが、引かない。呼吸が、つづかない。
『マスター、どうか落ち着いて。回復魔法を…!』
相棒の、声、響く。何……言って………。
そ、か…敵…倒した、から……人質……をーーーー
そのまま意識を落とし、私の執務官試験は、不合格に終わった。
試験官「え?なにこれ無理くない?」
デクの棒とはいえ、隊長格レベルの「雑魚」5体と
エース級想定の「ボス」一体
あ、戦闘避けて人質優先してね♡
なお、人質は完璧スニーキングで
目視確認しなければハズレを引く模様。
今年は一体何人合格したんですかね(白目)
難易度がクソ調整なのにも理由があります。
決してカータちゃんを虐めたい訳ではありません。
はい、虐めて楽しかった訳ではないです。ハイ。