孤独な少女の望むモノ   作:g_c

16 / 29
月末に投稿します!(月初)

やっと出てきた原作キャラクターがモブ同然の医者ってマジ?
(石田先生ファンの方ごめんなさい)

あ、今回色々独自解釈多めです。はやての心境とか、言語の問題とか。





幕間
はじめまして


海鳴市のとある邸宅、時刻はもうすぐ10時を回ろうとする中、車椅子の少女は柄にも無く、ソワソワと落ち着かぬ様子で何度も時計に視線を送っていた。

 

彼女が自宅に誰かを招き入れるのなんて随分久しぶりのこと、それも相手は異国の人だと言うのだから、普段はのんびりマイペースな八神はやてでも、多少の緊張はするようだ。

 

待ち時間にと開かれた本のページは1ページも…それどころか一行たりとも進捗はない。はやての目線は時計の長針と、本のページの最初の数行を往復し続けている。

 

人の体感時間という物は実に不思議な物で「時」というのを意識すればするほど、その感覚は引き伸ばされていく。秒針に注目しているようでは1分ですら途方もない永さになるのだろう。

 

「…何を緊張しとるんやろ、私。」

 

約束の時間およそ3分前、はやてはそんな事を呟いて静かに笑った。普段から文字のうえではあるけれど対話はしている、今回はその手段が違うだけ…寧ろ縮こまっていてはアチラに余計な緊張を与えてしまう。

 

おまけにその娘カタリーナとは、これからしばらく寝食を共にする。だったら普段通りに接しなければお互い息苦しいという物。そう考えるとはやては肩の力が抜けて行った、

 

普通なら時間が迫る毎に緊張感が増すモノだが、ここで開き直って肩の力を抜けるところが彼女の凄いところである。

 

さて、重ねて説明するが、人の体感時間は不思議な物。それを意識しなくなった途端、経過時間が早く感じてしまうモノ。あっという間に3分か経過し、秒針は頂点を指し示す。そして一分と経たぬ内に玄関のチャイムが鳴り響いた。時間ピッタリにはやては感動しながら、お客様のお迎えに向かった。

 

 


 

八神邸のリビングは過去にない異色を放っていた。

 

オールバックに整えられた灰色、イヤ銀とも言える頭髪。立派に蓄えられそして綺麗に整えられている口髭はまさに英国紳士然としている。若き日はさぞ美青年だったのであろう品の良い顔立ち。はやての遺産管理やさまざまな支援をしてくれている父の友人、ギル・グレアム

 

そしてその隣にはその娘*1であるカタリーナ。肩まで伸ばした銀の髪、を大きな青い瞳、日本人離れした真っ白い肌と高い鼻先、はやてより四つほど年上の彼女はそれ以上に大人びて見える。それもこれも、その少女の落ち着きもあるが、発育の良さも大きな要因と言える。

 

写真では知っていたが、実物で見るとインパクトがある物だ、改めてはやては思った。

 

「こうして会うのは初めてだね、ギル・グレアムだ。こっちは娘のカタリーナだ。、…カータ、ご挨拶なさい。」

 

「カタリーナ・ウィリアムス・グレアム…でス。よろシくネ。」

 

伸ばされた手を特別臆した様子も無くはやては握り返す。

娘の方は若干の辿々しさはあるものの、十分聞き取れる日本語にはやては驚きを隠さなかった。特にギルの日本語が殆どネイティブレベルな事に。

 

「八神はやて言います。遠いところからありがとうございます。…日本語とってもお上手なんですね。」

 

「職業柄、使えなくては仕事にならなくてね。この子も…日常会話程度なら問題無く話せる筈だ。」

 

「ハイ、がんばリましタ。」

 

ちょっとだけ胸を張るカタリーナ。その様子が年相応で少しだけ親近感が湧く。この子はやっぱり自分とやりとりをしてきた子なのだと、安心して顔が綻ぶ。

 

さて…。そんな仕切り直す言葉をギルが呟いた。

 

「改めて、ウチの子を受け入れてくれてありがとう、はやてくん。」

 

「いいえ、私も何かと1人じゃ不安ですし、寧ろこっちがありがたいっていうか…。」

 

実を言うのなら、一人は寂しい。この広い家ははやての孤独を強調させる。何度もこの家を引き払おうとも思った。でもここは大切な両親の用意してくれた居場所、ここを守るのも残された自分の役目。

 

それでも、一人は寂しい。だから、ギルの提案は渡に舟とも言える物だった。

 

「そう言ってくれると、こちらも助かるよ。…ところではやてくんは…学校には行かないのかい?」

 

「…はい、もし学校で何かあったら、大変だって。」

 

主治医の言葉を思い出す。この家にははやてを見守る仕組みが幾つか用意されている。人の生活リズムという物は一定であり、それは凡ゆる形でモニタリングができる。人感センサーであったり、消費電力のモニターであったりと、一人放置されている訳でなく、異変があった場合すぐさま主治医に通報が入るよう設定されている。*2

 

普通の日常生活を所望していた彼女の両親からの願いもあって、入院生活ではなく、苦しいがこういう形での生活を送らせているのが現状である。

 

勿論、はやても学校には行きたい。普通の女の子みたいに授業に出て、友達と話して、弁当を囲みたい。…しかしこの八神はやてという少女はとにかく自身の欲求を封殺しがちだ。

 

だから、この状況も()()()()と甘んじている。

 

「何かアッたラ、困ルのナラ、私ガ一緒ニ通ウヨ?」

 

「え…?」

 

そこに投じられた一石。

 

青い瞳を丸くして、カタリーナは何でもなく切り出した。

 

「私と一緒ニ、学校へ行こウ?そしたラ、ハヤテも寂しくナイ。」

 

願っても無い提案に言葉に詰まる。

 

「先生に言イ難イのなラ、私達でなんとカすル。お金も、ハヤテ一人分位、どうにカ出来ル。」

 

すっかり温くなったお茶に口をつけて、喉を潤す。一息ついて漸く応える決心をつけた。

 

「先生には私からちゃんと話す。何処に通うかは…またちゃんと決めよ?先ずは先生からOKを貰わんとなぁ。」

 

「ウン、分かっタ。」

 

「ありがとう、カータ。」

 

はやてのお礼にカタリーナは「どうイタシましテ」と静かに微笑む。

二人のスタートは概ね良好といった具合に、ギルは密かに安堵をしていたが、二人はそれに気付くことはなかった、

 


 

翌日、ギルは一人病院の来客用の応接室に訪れていた。

目的は…彼女の主治医と一対一で話すこと。これは石田からの要望であり、この事から()()()()()()()()()()()()をするつもりだと、ギルは察している。

 

「はじめまして、石田幸恵さちえと申します。」

 

「ギル・グレアムです、お忙しい中時間とってくださり、ありがとうございます。」

 

差し出された手に応えた石田は、壮年から発する雰囲気以上の威厳に少しだけ気圧される。

 

「思った以上に若々しい方で驚きました。」

 

「私の方も驚いています。主治医というのでもっと壮年の方をイメージしていました、お若いのに大した物です。」

 

互いの世辞もそこそこに空気が解れた所で二人対面に座りあう。

 

ギルは娘の提案をそのまま主治医である彼女に伝える。

石田はカタリーナの提案に難色を示すことなかった。

 

「娘さんには窮屈な学校生活をさせることになります。…本人はそれを?」

 

「承知しております。娘からも、それを見越しての提案と聞いています。」

 

いくつか簡単な確認の後、最後に…と前置きをおいて質問投げた。

 

「通わせる学校はお決まりですか?」

 

「貴女のご意見を聞いてから判断をするつもりでした。」

 

淀みないグレアムの回答、事前に彼女からの質問を幾つか想定していたのだろう。

 

「通うのでしたら、設備の整った私立の学校にすべきです。はやてちゃんの家からなら、聖祥学園なら距離も遠く無いと思います。…私学ですので学費はかかってしまいますが、車椅子でも問題なく通えた筈です。そこさえクリアしてくだされば…私からは特に。」

 

「資料を取り寄せて彼女達と相談しましょう。」

 

もらった情報を整理する。帰りにその学園の様子でも見ていこう、そんなことも思慮の片隅に置く。

 

「では、先生からのお話も伺いましょうか。」

 

「…はやてちゃんの身体のことです。」

 

やはりか、そんな呟きを飲み下す。当人を差し置いてるのだから決して良い話ではないのだろう。

 

石田は彼女の体に起きている症状を、素人にも分かるように説明をした。

はやての下半身は原因不明の麻痺に陥って居る。さまざまな手を打ってはいるが、状況改善の兆しは無く、少しずつではあるがその麻痺は確実に広がり続けており、このままでは全身が麻痺して、死に至る。

 

彼女の余命は来年のクリスマスを迎えられるかどうか。

 

一通り話し終えた医師は、ため息を一つこぼした。

 

「たしかにこれは本人に聞かせられませんね。娘にも、この話は黙っておきましょう。」

 

死の未来が確実に迫る子供に、大丈夫の勇気づける辛さはギルには分からない、理解する資格がない。ギルはその少女の未来を終わらせる事前提に、今この場にいるのだから。

 

「ありがとうございます。余り驚かれないのですね。」

 

石田の言葉に猜疑心は無い、なんとなくギルの心境を察して居るかのような口振り。

 

「何か重い病を患ってるだろうと、思ってはいましたし、貴女が私一人来るように話をした辺りで、覚悟を決めた。…そんな所です。」

 

「……どうして、はやてちゃんなんでしょうね。」

 

弱音とも取れる呟き、その目尻には微かな潤みが見られた。

それに対する答えをギルは持ち合わせていない。…この世界は理不尽で満ち溢れているのだ。…彼の娘、カタリーナの両親が無慈悲にこの世を去った様に。

 

「お気持ちは分かります。…ですが、我々に出来る事は、はやてくんができる限りしあわせに、穏やかに暮らせる様に尽力する。違いますか、先生?」

 

「…そうですね、医者の私がこんな弱気ではいけませんね。すみません、お見苦しいところをお見せしました。」

 

医師として特定の患者に入れ込む事は余り褒められた事ではない。だが彼女個人は善人であるとギルは思った。この医師は自分の身を削って患者に寄り添うことが出来る。歳を重ねれば良き医師に育つだろう。

 

目元を拭った石田はいつの間にか医師の顔に戻っていた。

 

「こんな形でしかお助け出来ず申し訳ないですが、はやてくんのこと…よろしくお願いします。」

 

「いえ、こちらこそ…これからもよろしくお願いします。」

 

頭を下げる彼女を残して、ギルは応接室を後にした。

 

(さて…。)

 

八神邸へ戻る道のりを辿りながら、ギルは考える。

八神はやての余命が少ないことは、想定通り。むしろ好都合とも言える。問題はこれをカタリーナに告げるか、否かだ。

カタリーナはあの歳の少女にしては妙に察しの良いところがある。…それも彼の与えた環境が一つの要因ではあるのだが。隠していたところで、いつかは露呈する。

 

ならば、今打ち明けるのも一つの手段か…。

 

(いや、ここはあえて隠しておくべきか。)

 

カタリーナの中で家族の心証は、決して良くない筈だ。ならばその悪い心証を利用させてもらう。ここであえて秘密にすることで疑惑の種を増やす。問い詰められた時にでも、明かしてやればいい。

 

(まずは…医師から許可が降りたことを話してあげよう。)

 

思考に結論を着けて帰路を急ぐ。今頃、はやてとカタリーナは気が気では無いだろう。…そこまで思った時に思い出したことがある。

 

「聖祥学園の様子と…パンフレットを持って帰らねば。」

 

どうやら自分浮足立っているらしい、そんなことを思うと可笑しくなって笑ってしまう。なんとなく、アダムの気持ちがわかった様で少しだけ嬉しくなる。

 

タクシーを捕まえると、彼はそのまま聖祥学園へと赴いたのだった。

 

 

*1
血が繋がっていないことをはやても知っている。

*2
主治医の石田によるポケットマネーによる物




石田先生は聖人

ポケットマネー設定は、ヴォルケンズが怪しくて探偵を雇うレベルで.はやてを気にかけてるという裏設定(?)から捏造しました。
主治医やってるくらいやしそれくらい金持ってるやろ(適当)

個人的に大体の医師が匙投げたのを押し付けられた説を推します。

なお、ウチの子は銀髪巨乳です(迫真)
語るタイミングがなくてこんなタイミングになりました。ユルシテ…ユルシテ…

もう、グレアムさんに内心切り捨てられてるウチの子が可哀想で可愛い。

次回は閑話となります。数日内に投稿したい(進捗70%)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。