孤独な少女の望むモノ   作:g_c

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魔法少女現る 前編

 

編入二日目、流石に初日程ではないけど、未だ私には好奇なモノを見る視線を感じる。ちょっとだけ、懐かしい感じ。

今日も静かに学生生活をーーー

 

「ひゃう!?」

 

「よーっすカータ、今日も良きお身体をされておら……ぎゃふ!?」

 

反射的に拳が飛んだ。

いきなり胸に触ったセクハラ女の末路は、女の子がしちゃいけない姿勢になっている。

私悪くない、絶対悪くない。お姉ちゃんだって、そんな事しないのに…!

 

「おはようカタリーナ、ウチのバカがごめん…。」

 

「お、おはよう。ガイキ。今の、聞かなかった事にして。」

 

「何のこと?イヤホンつけてたから聞こえなかった。残念。」

 

ガイキはそう言いながら片耳からイヤホンを外して見せた。

え?一緒に登校してたんじゃないの?

 

「あの子の話題、半分以上が与太話だからね」

 

「確かに。」

 

おまけに声でかいし。そんな事を付け加えたガイキは下駄箱で伸びる性犯罪者を置いていく。

スカートの中身丸見えだけど、私悪くないからね、リエ。

 

「はやてちゃんはどう?学校馴染んでた?」

 

「うん、昨晩は今までにないくらいはしゃいでた。」

 

「あとは、カタリーナが馴染むだけだね。リエも言ってたけど、近寄るなオーラ、凄いよ。」

 

「……気をつける。」

 

ダメだ。思い当たる節がない。…今度メアリに聞いてみよう。

 

「でも、今のでだいぶ印象変わったんじゃない?」

 

「何が?」

 

「ほら、今カタリーナがすごい悲鳴上げて」「聴こえていないんじゃなかった?鳥宮クン?」「ぁ。」

 

あって言った!やっぱり聞かれてた!あの女にして、この男ありか…!

 

「……状況証拠です。」

 

露骨に目を逸らした!嘘吐くの下手か!

 

「じゃあこれの相棒がナニカ教えてほしいな?」

 

ポケットから出ていたイヤホン、どう見ても『接続されたプレイヤー』が見当たらない。

 

「……それ無線だから」

 

「どう見ても差し込むタイプだけど?」

 

「カタリーナ、落ち着いて、みんな見てる。」

 

「……。」

 

視線を回す。そういえば、ここは階段。

道行く生徒たちが大変興味深い物を見ている。そんな視線が私達…どちらかといえば私に集まっている。…中に顔を真っ赤に腫らしたリエが仁王立ちしていた。

 

「ヘイ、泥棒猫。ウチの旦那とちょっと近すぎやしませんかね?」

 

「お、おはようリエ。これは違くて。」

 

「そう、誤解。あと貴方の旦那ではありません。ほっぺたすごいね、転んだの?」

 

「はっはっはっ!元気な兎さんに後ろ脚で蹴っ飛ばされてね!大変柔らかかったです。ハイ。」

 

元気そうだ、もう一発ぶち込んでも平気そうだね。

 

「やめようぜ兄弟。こう見えて、カラータイマーがピコンピコン鳴ってんだ。」

 

「……次はないからね。」

 

「とりあえず二人とも、教室に行こう。ここ、通行の邪魔だから」

 

ガイキに便乗して、私たちはなんとかリエを宥めて教室まで引き摺って行った。

 


 

初等部、八神はやての席にはアリサ率いる3人娘が、昨日のニュースを共有していた。

 

「ま、私か見つけたおかげね。」

 

そんな風に得意げに胸を張るアリサ。…彼女が手を出さなければカタリーナがユーノを回収し、事態が拗れる事はなかったのだが…それは彼女の預かり知らぬ問題である。

 

よもや、行き倒れの小動物が実は異世界からの来訪者が姿を変え、剰え自分の街にちょっとした危機が訪れているなど、誰が想像できようか。

 

「流石アリサちゃんや、ほんまに、助かってよかったなぁ。」

 

「そ、だから今日お見舞いに行きましょ。はやて、ちゃんとカータも連れて来なさい。」

 

「了解や、カータのことやから、自分から行くって言い出すと思うけど。」

 

今日も、カタリーナの出迎えはこの四人組ですることになる。

アリサの意見に特別反対意見はない。

夕方、保護したフェレットの様子を見に行く事となった。

 

そして、話題は…はやてが聞いた「声」に変わって行く。

 

「そういえば…昨日、カータと帰ってるときに変な声が聞こえたんよ。助けて〜って」

 

「あ、それ私も聞いた。男の子の声!」

 

それが如何に特別な事だと自覚の無い2人。

 

「何それ、私は聞かなかったわよ。すずかは?」

 

「私も聞いてないかなぁ。」

 

当然ながら、魔法の才がない二人には聞くことはできない。

なのはとはやては互いの認識を合わせて行けば、確かにその声は同一の声であるらしいことがわかる。

とは言え、その声の発生源がどうにも掴めない。はやてとなのはひ同じ場所にいた訳ではない。

 

おまけに、一緒にいたカタリーナは聞こえてはいないと来た。

(当然、嘘なのだが)

 

認識が合うからこそ、謎は深まるばかりだ。

 

「もしかして、幽霊の声かもしれないわね。」

 

「ゆ、幽霊!?」

「幽霊さんかぁ。助けられるもんなら助けてあげたいけど。」

 

態と不気味な薄ら笑いを浮かべるアリサ、どう聞いても冗談なのだが、顔面蒼白で震え上がるなのはと、目を光らせるはやては実に対照的と言える。

 

「もう、アリサちゃん、揶揄っちゃダメだよ。」

 

「ふふ、冗談よ、幽霊なんている訳ないじゃない。」

 

何かの空耳か何かだ。乱暴とも言えるその結論だが、解答がない以上、否定する事はできない。

 

「大体、男子の声なんて大体似たようなもんでしょ。実際に聞かないと同じかなんてわからないわ。」

 

性別が逆であるなら、一瞬で袋叩きにされるような発言である。

 

「何かの音がそんな風に聞こえちゃったのかもしれないね。私たちとカータさんは聞こえなかったって言うし。」

 

「そう!それよ!すずか!工事の音か何かを書き間違えたのよ!」

 

環境音の偶発的な重なりが、ヒトの声に聞こえるというのは無い話ではない。例えば木々の騒めきがうめき声に聞こえる。ちょっとした影が人影に見える。夜に揺れた光が人魂に見える。

 

つまるところ幽霊の正体見たり枯れ尾花(ただの勘違い)という奴だ。

 

「そうかなぁ、聞き間違えだったのかなぁ。」

 

「ふ、聞き間違えた奴は大概そう言うのよ。はやてと一緒にいたカータが聞いてないって言うのよ。」

 

だったら、人の声なはずないじゃない!

アリサの強引な締めくくり。しかし、自信満々に断言されれば確かにそうかも…と感じるのが人の性である。

この不思議な現象は「マイペース女子二人の空耳」ということでカタがついた。…この件が面倒毎に発展していくのだが、それはまた、別の話である。

 


 

放課後、ハヤテを迎えに行くと、そこには例のトリオも一緒に待っていた。リエがハヤテに会いたがっていたけれど、断った。今日はそれどころではない。あのフェレットが絡むのだから、不確定要素は削っておきたい。

 

そして、開口一番、ハヤテは私の頭をかかえさせた、

 

「なぁ、カータ。ほんまに聞いてへん?助けて〜って声。」

 

「うん、聞いてないよ。言われてみれば、遠くで何かが響いてた気はするけど。」

 

「ほら、やっぱり工事か何かの音じゃない。」

 

何やらあのフェレットの出した「声」の話を蒸し返したらしい。

ホント…面倒なことをしてくれた…。

 

「工事かどうかはわからないけど…うーん、ごめんハヤテ、やっぱり聞き覚えないかな。」

 

「そっかぁ、ごめんな。変なこと聞いて。」

 

「そんなこと良いから、早く行きましょう、誰かさん待ってたお陰で随分遅くなっちゃったし。」

 

アリサの視線が刺さる。トゲはあるが、この子なりに距離を測っているのか。…にしても、人付き合いが下手にも程がある。

彼女の後ろで懸命に頭を下げるスズカに目配せだけしておいた。

 

とはいえ、待ってると分かってるのに、中等部からノコノコ歩いて来た私にだって非はある。数分程度の差だけど、埋められるのなら努力すべきだ。

 

こういう時は…頭の一つでも撫でて宥めてやるべきか。

昔はお姉様にも良くしてもらった。

 

「ごめんね、次からもう少し急ぐ。」

 

「なッ…!子供扱いするなぁ!」

 

どうやらそれが嬉しいのは、私個人の感想だったらしい。

甘えられる時に甘えておきなさい、と少しだけ先輩風を吹かせておく。

 

その後。アリサとすすがに続いて、私たちは動物病院へと赴いた。

よっぽどさっきの頭撫で撫でがよほど気に入らなかったのか、アリサは延々とご機嫌ナナメ。

 

それも、動物病院につけばフェレット…ユーノの無事を心配する感情が勝ったのか、獣医の話に釘付けになった。

 

「傷は全部浅いから大丈夫。ただ、衰弱してたからあのままだと危なかったね。」

 

よく眠っているように見えるが、ユーノは絶賛、私と思念会話でお話中だ。ナノハとハヤテに聞こえないよう、ちゃんと専用回線を開いている。私は。少女達がフェレットを見守る様を後ろで微笑ましく見つめるお姉さん、と言ったところ。

 

『…この子に、封印のお手伝いを?』

 

『そう、私は訳あって動けない。有事とあればそれなりに動けるけど、戦力としては考えないで。』

 

ユーノに大まかな計画を話した。

私が知り合いの執務官*1に連絡を取り現場に来てもらう。その間、ナノハには悪いけど…このフェレットの代わりに爆弾の回収をしてもらう。

 

『わかりました。…ただ、あまり時間はありません。できる限り早く動きたいです。』

 

8歳の女の子にとてつもない責任を平気で背負わせようとするユーノに驚く。よほど切迫しているのか、あるいは浅慮なのか、私は彼の姿勢に危うさを感じる。

 

『ナノハはあくまでつなぎだよ、ロストロギアの回収を真面目に8歳の女の子にさせるつもり?アニメの主人公じゃあるまいし。』

 

『そうですね、管理局は…どのくらいで動いてくれるでしょうか…?』

 

『慢性的な人材不足だからね、すぐには動けないと思う。少なくとも一週間…ううん、もっとかかるかもしれない。』

 

クロノ以外に頼めば、もっと早く事は進む。

…ただどうも嫌な予感がする。

直感的に、私はクロノ以外に頼ろうとは思えなかった。

クロノ以外に頼むと色々と後始末が面倒そう…が本音だけど。

 

『そうみたいですね。最近は組織犯罪も多いと聞いています。』

 

『そういう事、あっちもあっちで大変だからね』

 

とはいうものの、結局のところ出動先を許可する権利は上層部にある。

その上層部も最近は随分内輪揉めが多いとか、なんとか。*2

管理外世界に赴くとなると、手続きから認可までそれなりにかかるはずだ。…特に、クロノのような優秀な人材は引っ張りだこなのだ。

 

『それはそうと、そろそろ命の恩人にサービスの一つでもしてあげたら?』

 

『…そうですね。』

 

そうしてくれると助かる。折角持ち直したアリサ姫のご機嫌がまた損なってしまうのはよろしく無い。

彼は、実に小動物らしい動きで、ノソリ、と起き上がった。

 

同時にちびっ子達から歓声が湧き上がる。

 

病院では静かに。他の患者さんに迷惑です。

 

程なくして閉院となり、彼のお見舞いはそう長居できなかった。

獣医の様子からどうもお嬢様の無理を通してもらったらしいのがわかる。帰り際に会釈だけすると、獣医は苦笑いで返してきた。

 

さて、帰路の話題はユーノでもちきりとなった。

 

「元気そうでよかったね。」

 

「すぐにでも退院できるって言ってたけど、引き取り手がいないのよね。私とすずかは色んな子を飼ってるから、すぐには引き取れないわ。」

 

そんな形で、彼を誰が引き取るか、という流れに。

 

「うーん、私も親に相談が必要かな…今日話してみるね。はやてちゃんは?」

 

冗談じゃない、ハヤテはお人好し、誰も買って出ないのなら無理を押して引き取るタイプ…そんなの、私の望むところじゃない。

 

「自分の事で手一杯のヒトが、ペットなんて飼えないよ、そうでしょ、ハヤテ?」

 

「ん〜そやねぇ、学校に行ってる間はお世話できひんし…ウチは無理やねぇ。」

 

何をいうか、私が止めなければペットシッターでも雇ったかもしれない。

そんなやりとりをしている間になのは達は塾があるからと、別れていった。

結局、送りの車内では誰が彼を引き取るかは決まることはなかった。

あとは、3人で話を勝手に進めてくれればいい。

ベストはナノハが引き取ってくれることだけど。

 

ハヤテは家に着くなり、口を開いた。

 

「カータは動物嫌いなん?」

 

「ん?どうしたの突然。」

 

「あの子の里親に反対してたから、動物病院行くのも嫌だったかなって。」

 

「そんなことないよ。あの子を引き取るのがベストじゃないって思っただけ。」

 

動物は嫌いじゃないけど、()()()()()()()()()()()()とわかってペットにする趣味はない。

 

「それに、動物のお世話は大変だよ。病気が治ったら、一緒に考えよう?」

 

「…そうやね。」

 

私が止めなかったら、きっとハヤテはユーノを引き取った。

自分の寂しさを紛らわす為ではない。

彼を救うために、きっと手を差し伸べたはずだ。

 

……これ以上はやめよう、感情移入は私にとって、猛毒だ。

 

「…ハヤテ、お腹すいた。晩御飯作ろう?」

 

沈む彼女を強引にキッチンに捩じ込む。

晩御飯を食べたら、ユーノに会いに行こう。

 

魔法少女を作るんだ。

*1
クロノのこと

*2
あくまで風の噂レベル





後編は書き終わってますが…誤字脱字の見直しをする時間をください。

明日か明後日には出ると思います。ハイ。
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