孤独な少女の望むモノ   作:g_c

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ちょっとだけ軌道に乗り始めました。

基本的にアニメで描写された内容はカットする方針です。


魔法少女の油断

 

その日、週末にて八神家では客人を二人招いていた。

 

カタリーナの同級生二人、理恵と概貴の二人である。

理恵がどうしても、八神はやてに会いたいと聞かなかったが故の訪問である。当初、カタリーナは彼女がどんな暴走をするか気が気でなかった。

 

「初めまして、理恵って言います。カー…カタリーナの同級生、こっちは概貴。よろしくね。」

 

いつもの破天荒さはどこへやら、玄関で出迎える彼女に視線を合わせニコニコと微笑む赤毛の出来た上級生がそこにいた。

双子の姉妹と入れ替わってここに来ている。概貴がそう証言すればカタリーナは信用しただろう。

 

『理恵、外面は凄くいいから。』

 

そんな概貴の耳打ち。自分にはそんなことなかったような…と悶々する中、茶化すのもよろしくないととりあえず様子見することにした二人。

 

「八神はやて言います。カータから聞いてますよ、明るいムードメーカーなヒトって。」

 

「わはー、どストレートに褒められると照れちゃうなぁ。」

 

互いに両手を握り合ってわははと笑い合うのを一歩離れたところから見守るカタリーナと概貴は二人に続いてリビングへと入っていく。

なお、はやてへの事前情報はカタリーナからの言葉をかなり好意的に受け止めた物であったりする。

 

「あ、そうだカタリーナ、これお土産…って言ってもそこのコンビニで買ったお菓子だけど。はやてちゃん、こういうの止められてたりする?」

 

「ありがとう、普段は食べないから大丈夫だと思う。」

 

渡されたビニール袋にはよく見るスナック菓子と飲み物がいくつか。

主治医からのはやての食生活に対する評価は、優等生過ぎて寧ろ心配するレベル。偶の休日にこうして友人と摘む程度は、寧ろ主治医を安心させるかもしれない。

 

さて、そんなやりとりをしてる間に先導切る二人は随分仲良くなったらしい。理恵は膝の上にはやてを乗せて楽しげに話をしている。

 

「で、アタシとがいきんの関係だっけ?」

 

「うん、ちょーっとだけ気になって。もしかして、彼氏さんだったり…?」

 

はやてもいつの間にか敬語をやめている。恐らく理恵にそう言い含められたのだろう。そして…他人の恋愛沙汰に華を咲かせたくなるのに年齢は不問か、はやてはいつになく目を輝かせている。

 

普段なら、彼氏だの、旦那だのと吹聴する理恵だったが…

 

「ううん、ただのお友達。」

 

「もしかして狙ってるん?」

 

「はっはっはっ、皆まで言うでないはやてクン。」

 

理恵が合わせたのか、はやてが合わせたのか、あるいは両方か。

二人はすっかり意気投合といったところ。

 

「はやてちゃんも大概すごいね。」

 

「ガイキもそう思う?はい、お茶。」

 

ソファの上でキャッキャッと黄色い声を飛び交う二人を尻目にいつの間にか淹れたお茶を差し出すカタリーナの顔は呆れてはいるものの、どこか穏やかだった。

 

「家だとちょっと雰囲気が違うね。」

 

「そう?」

 

「学校だと、結構気を張ってるよ。カタリーナは。」

 

「編入して一週間だもん、緊張もするよ。」

 

それもそっか。そんな風に相槌しながら茶を啜る概貴。

彼に一つ、聞きたいことがあったのを思い出した。

青い瞳がはやてと戯れあう理恵を確認する。他意はない。

 

「ねえ、どうしてカタリーナって呼ぶの?」

 

「グレアムさんの方が良かった?」

 

「そうじゃなくて、わざわざカタリーナって呼ぶのは、どうして?」

 

彼らとは、名乗った時に愛称のことは伝えた。

理恵はそれに乗っかった。しかし彼はそうしなかった。

 

「何となく気恥ずかしいからさ。一応僕も男な訳で。」

 

「その割にはこの女所帯で平然としてない?」

 

「それはまあ…うん、察してよ。」

 

気まずそうに頬を掻く…

人の機微に疎い彼女はその意味を理解できない。

 

「………わかった。」

 

キョトンとした彼女の様子に、概貴は思わず噴き出した。

 

「結構抜けてるんだね、カタリーナって。」

 

「…それってどういうーーー」

「何二人でイチャついてんだぁ?こらぁ?ええからこっちこんかい!」

「そうやでカータ!ヒトの男奪るなんてサイテーや!」

 

早々に彼女らに合流する後ろ姿に、なんとなく誤魔化されたと感じた。

別にそう呼んで欲しい訳ではない。単なる違和感、それを払拭できまいかとしたが、寧ろ心の霧は晴れるどころかより濃くなるばかりだった。

 

 

(まあいっか。)

 

 

そういうことも、あるんだろう。今の自分には大した問題ではない。八神はやてが楽しそうなら、それでいい。カタリーナはそう納得して三人の所に菓子と茶を盆に乗せて持っていった。

 


 

リエとガイキ昼食をウチで取って*1、食休めに滞在した昼下がりの時刻に帰って行った。

 

「ええ人達やったなぁ。」

 

玄関で二人を見送ったハヤテは少し寂しそうに見える。

あれだけ騒がしかった人が消えると、私たちの静かな生活が、より静寂に感じる。

 

「まさかあんなにウマが合うとは思わなかったよ。」

 

一緒になって理恵と悪ふざけする側になるとは予想外だった。

しかも、どちらかと言えば…手綱を握ってたのはハヤテに見えた。

あのリエもお友達にしちゃうとは、…それはそれですごい才能だ。

どちらにせよ、良き方向に転じたのならこの想定外は望む所である。

 

「なあ?カータって概貴さんのこと好きなん?」

 

「は?」

 

薮から棒、寝耳に水、青天の霹靂。

文字通り唐突な恋バナシフトに私の頭はフリーズした。

 

「さっきはサイテー!って言っちゃったけど、私的には全然ありや…!」

 

その反応をどう捉えたのか、一人盛り上がって行く。悪いけど、そんなんじゃない。

 

「そんなんじゃないって、大体、会って一週間も経ってないんだよ?」

 

「ふーん、そっか。ちょっと残念やなぁ…。」

 

「ハハハ、ご期待に添えられなくて残ねーーー」

 

 

ぞく…ッ!

 

 

全身が粟立つ。悍ましい魔力が街の方から湧き上がるのを感じる。

分かる、ジュエルシードだ。…あの二人は、何やって……ううん、私もうつつを抜かしてた、同罪だ…!

 

「か、カータ…?」

 

ハッと、我に還る。…そうだ、ハヤテにもこれが感じ取れる。

 

「ハヤテ、ちょっと外の様子を見てくる。…絶対に家の外に出ないで。」

 

ぐ…ッ。

 

急いで飛び出すところを捕まえられた。

 

「どこに行くんや…!」

 

「大丈夫、直ぐに戻るから。…約束する。お願い、リエとガイキが、危ないかもしれない。」

 

「約束やで…?」

 

「うん、約束。破ったらお父様に言い付けて。」

 

袖を掴む指先が緩むのを見逃さない。そのまま私は外へ飛び出した。

 

『マスター、どうされるおつもりですか?』

 

「…今…考えてるから、黙って…!」

 

武装して駆けつけるのは簡単…

でもそれは…私が明確に手を抜いていたことがユーノにバレる。

間違いなく彼から信頼を喪う。

 

だからといって、こんな状態で二人に任せるのはリスクが高すぎる。

 

こんなことになるなら、あの時大人しく武装するべきだった。

後悔先に立たず、そもそもあの二人に任せきりにしたのがよくなかった。…これは、私の失態だ…!

 

こんな…こんな失態…、間違いなく…

 

 

おとうさまに失望される

 

 

「ゥッ……!」

 

胃の中が沸騰するように熱い…。

気付けば側溝目掛けて、何もかもぶちまけていた。

 

『カータ、大丈夫ですか?』

 

「大…丈夫…!」

 

落ち着け、カタリーナ…。起きた物は仕方ない…!

大事なのは、どうリカバリーをするかだ…!

 

「武装は、しない。」

 

『……貴方がそういうのなら、従います、マスター。』

 

ベストを尽くさないのではない。

このハンディキャップを背負って、確実に封印をする。

私は、魔導師としては優秀である事をお父様に示す…!

 

『ユーノ、ナノハ、聞こえる?』

 

『あっ…カータさん…!その…ごめんなさい!私…!』

 

『いいから、今そっちに向かってる!状況を教えて!』

 

『大きな木が街の中に現れて…!どんどん成長してる…!』

 

あの時のケモノと同じか、だとしたら…もたもたしてたら、確実に被害が拡大する…!

 

『ありがとう、私を待つ必要はないから!できる事なら片付けて!』

 

『で、でも!どうしたら!』

 

『ユーノ!そのデバイスは貴方のでしょ!私が着くまでフォローしてあげて!』

 

『はい…!わかりました!』

 

これで良い、多分…ナノハにとって初めての敵性存在との対面だ。

あの時は、私が注意を逸らしてる間の不意打ちだった。

私が、彼女をサポートする必要がある。

 

『距離2000、貴方の最高速度なら数分で辿り着けます。』

 

「了解、じゃあ…行くよゲイト!」

 

人除けの結界を張りながら…私は空へ飛んだ。

 

 

 

 

…まではよかった。

 

 

 

 

 

たどり着いてみれば、全てが終わっていた。

 

街全体に広がる大樹の中から、ジュエルシード本体をあっさり見つけ出し、長距離砲撃魔法と封印魔法の合わせ技であっさり封印をしてしまったらしい。

 

待って欲しい。

 

昨日今日で魔法を使い始めた素人が?

罪悪感とプレッシャーを跳ね除けて?

魔法の合わせ技を使って?

しかも的確な精密射撃で外す事もなく?

封印魔法を的確にした上に?

うっかり拾ってしまった現地民に正体を明かす事なく?

しっかりジュエルシードを封印した?

 

そんなの、本局の人が聞いたら即スカウトモノの逸材だ。

 

私は…本物の英雄を目の当たりにしてるのかもしれない。

 

そんな超天才魔導師さんは私に仕切りに頭を下げ続けていた。

 

「私、知ってたの!あの子たちがジュエルシードを持ってるって…!でも、気のせいかもって思って…!」

 

ナノハを責めるのはお門違いだ。責められるのは、私とユーノ。

私なんて呑気に友人達と遊び惚けた挙句、全部ナノハがカタを付けた。

残ったのは私とユーノの管理責任だけ。

 

「違う!なのはは、ちゃんとやってくれてる!」

 

「そうだよ、気付けなかった私もユーノも同罪。だから、頭を上げて。」

 

ナノハの顔は晴れない。

私は、こういうのが苦手だ。

 

「なのは…!悲しい顔しないで、元はと言えば僕のせいで…!」

 

「そうだよ、ナノハは巻き込まれただけ。ユーノだって、好きでばら撒いた訳じゃない。私は、貴方達に現場責任を押し付けた。これでおあいこ、だから、ヒーローがメソメソしない。胸を張って。」

 

10分前に弱音を吐いてゲロった奴が言うと説得力がないのは分かってる。

でも、ここでナノハに挫けられる訳にはいかない。

表立って私が暴れる訳にはいかない。

蹲るナノハの横に座って、私は彼女の答えを待つことにした。

 

「私、私のせいで…誰かが辛い思いをするのは、辛い。」

 

「うん。」

 

この子は底抜けに優しい。

 

「だから私、ユーノくんのお手伝いするって決めたの。」

 

「うん。」

 

すごい才能も持っている。

 

「でも、それじゃあ、ダメだよね。」

 

「どうして?」

 

「だって、それじゃあ一生懸命で、終わっちゃうもん。だから、これからは、私の意志で、ジュエルシードを、回収する…!」

 

ふと、口元が緩むのを感じた。…理由はよくわからない。

 

「そっか、それて?どうするの?」

 

「カータさん、ユーノくん、私に魔法を教えて!今度は失敗しないように!」

 

多分、顔を上げたナノハの顔が、

ちょっとだけ大人びて見えたからだと、私は思ってる。

 

「なのは…!うん、僕にできることなら!」 

 

二人の視線が、私に注がれる。やってくれるよね?そんな空気。

安請け合いするのは、私の性分じゃない。

…ふと思いついたことがある。

 

「一つ、条件。レイジングハート」

 

『何でしょう。』

 

「例の封印魔法、私にも教えて。それが貴方のご主人様を指導する交換条件です。」

 

『わかりました。それでは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。』

 

「…ッ!?」

 

コイツ…!何のつもりだ…?

私は二人の前でゲイトを使っていない。

つまりコイツは…私に対して()()()()()()()()()()()()()()()…?

 

『封印魔法は複雑な術式魔法です。そのため手動術式は誤作動の恐れがありおすすめできません。なんらかのデバイスをお持ちと断じましたが。』

 

先の言い草は明らかに私がデバイス持ちと断定した上での提案だった。

 

私の態度で気を遣ったか、或いは牽制か。

仮に後者だった場合、私は彼女に嘘を吐くことになる。

そしてそれは…同時にコイツと敵対する可能性を作るということ…!

 

数秒悩み、服の中に隠したペンダントを取り出した。

 

「ゲイト、挨拶して。」

 

『マスターカタリーナの補助をさせていただいています。ゲイトと申します。お見知り置きを。』

 

心なしか、ゲイトの声も普段より低く感じる。

怒りたいのは私も一緒だよ、相棒。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!じゃあ、もしかして、あの時…封印もできたって事ですか?」

 

「あの時使えないって言ったのは本当。私、この子しか扱えないの。一身上の都合でね。」

 

あの時、一から手解きを受ければ私なりの封印魔法を使えたかもしれない。

でもあれは緊急事態、レイジングハートを扱える人物に封印魔法を使ってもらうのが一番成功率は高かったはずだ。

 

「え、えっと…ユーノくん、どう言うこと?」

 

「ごめんなのは、分からないよね。つまりカータさんもなのはと同じでデバイスを使う魔導師ってこと。」

 

「へぇ!そうなんだ!じゃあカータさんも変身するの!?」

 

見たい見たい!などと騒ぐナノハはきっと状況を理解していない。

あと、変身という言い方をしないで欲しい。

 

『申し訳ありません、バリアジャケットは現在調整中なのです。私…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので、諸々間に合っていないのです。』

 

「そうだったんですね、あの時の戦力にならないというのはそういう…。」

 

「そんなところ。使えない物は持ってないのと一緒だから、然るべき時に話すつもりだったの。」

 

ここは、相棒の大嘘に乗っかることにする。

 

「じゃあ話を戻すけど、ナノハを鍛えてあげる。そのかわり、レイジングハートはゲイトに封印魔法を教えてあげて。」

 

『承知しました。』

 

余り掘り下げられるのも面倒だ。ナノハの指導に同意をする。

ハヤテが待っていることを理由に、私は逃げるようにその場を後にした。

 

 

 

 

 

『マスター、レイジングハート殿より言伝です。』

 

帰路の中、相棒が語りかけてきた。そのトーンから、決して良い報告ではないらしい。

 

『「貴方が何故嘘を吐いたかは、追究しないでおきます。マスターに危害を加える様なら、容赦はしません。」とのことです。素晴らしい忠犬振りですね。見習いたい物です。』

 

怒っている。ここまで怒りを露わにするのも珍しい。

考えてみれば、インテリジェントデバイス使いと顔を合わさるのは初めてかもしれない。

同族(?)からの敵意はコイツも思うところがあるんだろうか。

 

そしてこれは彼女からの警告だ。

私はお前を信用しない。

しかしマスターの為になるのなら目を瞑る。

そういうことだ。

 

『確かに、良い性能してるね。』

 

『では彼女を振るって魔法でも使ってみますか?』

 

『冗談、私の相棒は貴方だけ。二度とそんな事言わないで。』

 

『……恐縮です。』

 

そこはごめんなさいだろうが、

なんてツッコミは野暮なのでやめておく。

代わりに彼女のコアを一撫でして、服の中にしまい込んだ。

 

*1
はやての強い要望





RH「舐めプすんな」
GATE「余計なこと言うなや新入り(#^ω^)」

忠犬同士がご主人様のためにバチバチになるのすこここのすこ
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