妥協に妥協を重ねてこの様な形となりました。
アニメ第4話の前日譚になります。
ナノハに魔法の訓練をする小休止の中、あの金の魔導師について、ユーノに問いただした。結論から言えば、身に覚えがないらしい。
というより、そんな凄腕魔導師に狙われてると知っていたら、素人にロストロギアを封印させようだなんて思わない。
…いや、そもそも素人さんにやらせんな!ってところだけど…。
「そういえばユーノ、どうしてこんな事になったの?輸送機がそう簡単に事故を起こすとは思えないんだけど。」
「輸送中に小規模な次元震が起きたんです。なんとか船は沈まずにすみましたが、その衝撃でジュエルシードは散り散りになりました。」
「ユーノくん、ジゲンシンって何?」
「簡単に言うと、嵐のようなみたいなものかな。世界と世界を行き来する時に、嵐が起きて…その衝撃でジュエルシードがこの街に落とされちゃった…で伝わる?」
「うん、ありがとう。」
説明の最中、私はふとある仮説を立ていた。
「カータさん、どうしてそんな事を?」
「ちょっとね…。ユーノ、管理局を待ってる時間はないかもしれない。」
ジュエルシードを運ぶ船が偶々被災してばら撒かれた物を、ユーノとほぼ同時期に収集する魔導師がいる。
これを偶然と結論つけるのは余りに楽観的すぎる。
何者かの陰謀で引き起こされた人工的…あるいは予測できた災害を利用された可能性が高い。
「それってどう言う…?」
「全部仕組まれていた事だとしたら?」
おそらく敵はユーノが運ぶ積荷がなんなのかを知っていた。
その船が事故を起こすことも、おそらく想定内。
ばら撒かれる先も狙い通りだったのかもしれない。
そんなことを画策する連中の一人が、
どう言うつもりか知らないけど、彼らはジュエルシードを求めた。
世界一つ吹き飛ばせる爆弾であることを…恐らく承知の上で。
そう言う奴らに限ってロクな企みをしないのは、私の経験則が語ってる。
私は、先の仮説を二人に話した。
「…確かに、だとしたらその女の子も母親に利用されてるだけなのかもしれません…!」
「推測の域は出ないけどね。」
「じゃあ、次に会った時にお話ししてみようよ!」
「な、なのは、簡単に言うけど事はそう単純じゃないかもしれないよ。」
「いいんじゃない?向こうが歩み寄ってこないんなら、平手打ちの一つでもして黙らせればいいんだし。ねぇ?ナノハ?」
「??」
「そ、そんな事しないよ!!」
ユーノはキョトンとしているが無理もない。
こんなおとなしそうな子がキレたら容赦なく拳を振り上げるなど、誰が想像できようか。私だって、状況証拠が揃ってなければリエの与太話として片付けてる。
かくして、方針は決まった。
問題は彼女が私たちの話に聞く耳を持ってくれるのか?というところだ。
特に私はもう話し合いにすらならない可能性もある。
そしたら私とナノハの二人がかりで叩き潰すまで、だけど。
とは言え…先ずはナノハを鍛え上げないと…あの金髪の魔導師には絶対届かない。あくまでメインは、高町なのはである必要がある。
私の能力と立場は、この子に絶対知られてはいけない。
幸い、クロノは私の味方だし…きっと良き方向に計らってくれるはず。
間違っても
その一点に関しては、私はアイツを信用している。
「なぁんて…虫が良すぎるかな。」
「何か言いましたか?」
「ううん、なんでもない。」
こっちに来てから気が緩む一方だ…,
この環境は、私を弱くする。
私の役目は…本当に、「ハヤテを看取る事」なのだろうか。
違う、この思考が、余計だ。
私はグレアムの愛らしいお人形さんなんだ。
人形に、自我は必要ない。
「ねぇカータさん。」
いけない、また思考に耽りすぎていた。
目の前のことに注力しよう。私の身の振り方は、そのあとだ。
「ごめん、ちょっと考えることが、いっぱいあって。なに?」
「今度すずかちゃんのお家でお茶会を開くみたいなんです。はやてちゃんも行きたいって言ってましたけど、カータさんはどうするのかなって。」
「みたいだね、私も付き添いで行く予定だよ。先生から許可が降りれば、だけど。」
言い出しっぺの義理立てなのか、スズカのお宅が送り迎えまでしてくれるという厚遇振りだった。
念の為イシダ先生に確認中…あの人がNGを出すとは思わないけど。
曰く、凄くたくさんの猫を飼ってるらしい。
ちょっとだけ楽しみだけど、不安でもある。
「そっか、はやてちゃん病人だっけ。」
その気持ちは分かる。病人にしてはあの子は元気すぎるんだよね。
「最近顔色もいいからOKは出ると思うよ。あの人、ハヤテに激甘だから。たださ、ユーノは猫達に襲われない?」
「ど、どうでしょう?なのはの部屋で待っていた方がいいのかも…」
「え〜!ユーノくんも来なよ!アリサちゃんとすずかちゃんも会いたがってたし。」
「…分かった。なるべくなのは達から離れない様にするよ。」
二人のやり取りを見て改めて思う。
私は、二人に距離を置かれている。
特にユーノ、明らかに私に気を遣ってるのが節々から伝わる。
自業自得と言われれば何も言い返せないけど…。
距離を置かれること自体はさほど気にしていない。
でも、こんな調子で確実な連携をとり続けるかは疑問だ。
前回の様な失態をしない為にも、私たちは万全でなければならない。
『近寄るなオーラ、凄いよ。』
ガイキの言葉が脳裏を過ぎる。
私も人付き合いという物を考えてみるべきかな。
…どうしてか、故郷の友人の顔が過ぎった。
あの時も、人が歩み寄ってくれるのを待つだけだったな。
『おぉ!カータも成長したねぇ〜!』
記憶の中ですら喧しいとは恐れ入った。
わかった、わかりましたよ。やるだけ、やってみるね。
「ナノハ、ユーノ。」
二人の動きが止まる。…やっぱり、緊張が伺える。
さて、どう切り出そうか……回りくどいのは面倒だ。
「いきなりだけど、私に敬語はいらない。具合が悪いのならそのままでいい。少なくとも私は、貴方たち二人を仲間だと思ってる。」
水を打った様な静けさ。
…出来る限り言葉を選んだけど、失敗したか…?
「だから…その、うん。よろしく。」
もう少し手順を踏むべきだったーーーー。
「……うん!カータちゃんって呼んでもいい!?」
「んェ!?……あ、うん…構わない、けど。」
ち、近い!メアリを彷彿とさせる距離感の詰め方!
待ってましたと言わんばかりの加速度、彼女も年上には多少敬遠するらしい。
ナノハには、とりあえず成功…かな?乗り出すナノハをなんとかどかして後ろのフェレットにも今一度歩み寄ってみる。
「ユーノは?」
「わかったよ、僕もそうさせてもらうね。」
「え?ユーノもちゃん付?意外に攻めるね。」
「違うよ!?カータって呼ぶから!」
コイツも大概だな。
ナノハの影響もあるのだろうけど。
余り感情移入はすべきではない。けれどこれは必要なことだ。
もう失敗できない。アウトカウントは既に一つ。
このカウントがいくつまで許されるのか、私にはわからない。
だとしたら、目に見える懸念点は払拭するべきだ。
「さて、休憩終わり。ナノハ、もうワンセットやろうか。」
「うん、お願いします!」
なんとなく、ナノハの表情から緊張が抜けたように見えたのは、気のせいではないはず。
この子はきっととんでもない魔導師になる。
彼女とチームを組めたのはきっと幸運なんだと思う。
解決すべき課題が増えたのもまた事実だけれど。
今は
そう、だから私は間違ってない。
間違ってないはずだ。
この胸の違和感は、きっと気のせいだ。
考察回も踏まえてついでにやりたいことを盛り込んだらこうなった…
1500文字くらいにさくっと収めて本編に捩じ込もうと思ったのに……
世の中ままならない