クロノへのスキンシップといい、あの使い魔姉妹は「身内には激甘」という認識ですすめました。
宣言通り3部構成です。
定時のチャイムが鳴り響く。その瞬間、私は既に纏めた荷物を引っ掴んで執務室を飛び出す。定時ダッシュならぬ定時ワープである。無論、転移魔法ではなく普通に帰宅しているのだが。
大事な妹分が傷心して訪ねてくると言うのに仕事なんぞしていられない。部下の文句は休み明けの自分が聞くだろう。今は1秒でも早く妹分の顔が見たい。
私、リーゼロッテにとってカータの存在はそれほど迄に大きい。
父親の不幸な結末の後、敬愛する
カータは私達を「お姉ちゃん」と呼び可愛らしく雛鳥の様に後をついてくる。中でも私は彼女の笑顔が大好きだ。
万病に効く薬が実在するのならそれはカータの笑顔だと思っている。というより万病に効く。
しかし最近は「ある事情」で妹分とはご無沙汰であった。流石の妹大好き私であっても
お父様と同様、事態を知った頃には
大事な時に隣に居られず何がお姉ちゃんか。
本来であれば午後の執務を放り出してでもカータを迎えに行きたかったところだ。流石にお父様に諌められたのもあり、断念。
ならばと即時性の必要な物を全てクリアし、文句のつけようもない定時ワープを果たした。
さて、そんな中、普段より3割程時短をして帰宅するも、出迎えはない。玄関には
家の中で遊んでいるのかと探す中、たどり着いた先はお父様の寝室。
「お帰り、ロッテ。」
「ただいま戻りました、お父様。…寝ていたんですね。」
「一度握ったら離してくれなくてね。こうして起きるまで待っていたところさ。」
ベッドで静かに寝息を立てるカータ。布団から出た小さな掌はしっかり彼の指先を握っている。
その顔は微かに腫れており先程まで泣いていたのだと容易に想像がつく。彼の手を健気に握るのは、これまでの寂しさの顕れか強く出ている様で、胸が悼む。
ことの顛末を聞いた私は眉を顰めた。迎えに行ったカータは憔悴しきっていたこと、何かを思い詰めており、あまつさえ母親の死を自分のせいだと勘違いしていたと。
唯一の家族が亡くなったのだから、当然と言えば当然だが、普段のカータからそこまで憔悴した様子が想像出来なかった。
「やっぱり、相当参ってたんだねえ、ごめんね、カータ。」
今は安らかに寝息を立てている。カータの頭を優しく撫でる。
「それで、お父様、どうされるんですか?」
「カータをウチに迎えることにした。」
加えて長年仕えている主人の機微を察するくらいは容易い。お父様の発言は想定内だ。既にカータにお願いもされたのだろう、これは事後相談だということは理解した。勿論、最初から反対する気はなかったし、なんなら自分からも提案をするつもりでいた。
「私は構わないですよ、きっとアリアも同じだと思います。」
「う……ん、」
話し声がきっかけとなったのか、布団の中の少女が起き上がり青い瞳は寝起きで微かに淀みながらも私を捉えた。居ても立っても居られず、小さな体を抱きしめる。
「こんばん〜、よく来たね、カータ。」
「ろって…おねえちゃん。」
「あーんかわいいなぁ相変わらず、今日は何して遊ぼうか。」
尻尾を騒がしく振り回しながら腕の中の妹分に堪らず頬擦りする。
プニプニして柔らかいし、おまけに優しく抱き返してくれる。
そんな事をされたらもっと可愛がりたくなってしまう。
「こちらにいらしたのね、お父様。…カータ、久しぶり。」
双子の片割れ、姉のリーゼアリア。嫋やかな仕草で手を振って挨拶。平静を装ってはいるが、彼女が安堵のため息をついているのを見逃さない。こんな早くに帰ってくるのが良い証拠だ。
「アリアお姉ちゃんッ。」
自身の抱擁をするりと抜けて、アリアに飛びつくカータ。少しばかり寂しくもあるが、カータの嬉しそうな横顔でそんな思いも消し飛ぶ。
後でうんざりするくらい甘やかしてやればいい。そんな事を思う中、主人が口を開いた。
「全員揃った事だし、これからの話をしようか。」
ーーーーーー
お父様の言葉でリビングに集まる。2人がけのソファが2対、間に背の低いリビングテーブルを挟んだ中、カータは迷う事なく私の膝上を選んだ。にへへ、と笑う妹分が可愛すぎて胸元に抱き寄せる。
隣から感じる姉の視線にフフン、と勝ち誇る。ポーカーフェイスを装ってはいるが、内心は悔しがってるのはバレバレ、カータはともかく私の目は誤魔化せない。そんな他愛の無いやり取りをお父様の言葉が遮った。
「ロッテには先程話したが…カータはウチで引き取って面倒を見ることにする。嬉しい事に、カータもそれを望んでくれた。アリア、異論は?」
「もちろんありませんお父様。私からもそう提言するつもりでした。」
アリアの楚々とした回答は、先の悔しがり(と言っても私目線の物だけど)は微塵もない、こういう切り替えがカッコいいと我が姉ながら思う。
「今日から正式に私らの妹になる訳だ、いつでも抱き締め放題だねぇ。うりうり〜、」
「あはは、くすぐったいよロッテお姉ちゃん。」
膝上のお人形さんに頬擦りすると鈴の様な声をコロコロと転がせて愛らしく笑う、このまま延々と抱き締めてられる。
「よしなさいロッテ、お父様の前よ。」
遂にお姉様からのお叱りの言葉が降りたが、正当性の欠けたご指摘に従う理由なぞ微塵もない。
「えぇ〜?自分もぎゅうってしたいからってヤキモチ妬かない〜」
「妬かな〜い。」
「…もう。カータまで。」
アリアはこの子に甘い、ゲロ甘だ。恐らく家中のガラスを叩き割っても怒る事は無い、…そんな事する訳ないけど。
お人形さんにいじめられて少し可哀想になってきたので、目配せ、青い瞳が嬉しそうに輝く。
ぴょこん、と膝から降りたお人形さんは姉の膝上に乗っかる。
カータは、少しだけアリアを神聖視してる節がある。
曰く、できないことなどない
曰く、仕草の一つ取っても美しい
曰く、どんなことにも動じない
だから、ちょっとだけカータはアリアには遠慮がちだったりする。
確かに優秀であるし、彼女に憧れる男性が多いのも事実、でも今まさにお膝の上に座る妹分のことが可愛くて可愛くて仕方なくて、内心プルプルしてる。
だからもっと気軽に接してあげたほうがいいと思う。
「アリアお姉ちゃんはギュッてしてくれないの?」
「…しょうがない子ねぇ。」
しょうがないのは一体どちらだろうか。カータさんや振り向いてご覧、敬愛するアリアお姉ちゃん、今すっごい人様に見せちゃいけない顔してますよー!
「……仲が良いのはいいことだ。カータ、明日は荷物の整理をしにキミの家に行こう。」
お父様の咳払いが響いて空気が少しばかり引き締まる。
着の身着のままお父様についてきたのだから、引っ越し準備は必要だ。
「あの家は…どうなるの?」
消え入りそうな声音、一瞬誰の声か分からない程にその声は暗かった。先の明るい笑顔が嘘のよう、やっぱりまだ母親の死を引きずっているのがわかる。
私達と一緒にいて、いつもの様子に戻ってくれていたのか、それとも…
「…壊すのは、いや。ちゃんとお掃除もするから、お金が必要なら必ず返すから、…だから、私たちの家は、なくしちゃイヤ。」
「心配しなくても、カータが望むのなら、残してあげるとも…お金の心配もしなくて良い、私達は家族になるのだから。」
お父様の言葉に答えないまま、カータはアリアの胸元に顔を埋めた。
先ほど迄私たちと戯れていた妹と、お父様の言葉に答えない妹。
一体どちらが、
さて予約投稿するか
って思ったら、最後の締めが完成していなかった時の顔(′・ω・)
次はアリア視点です。
シリアス中にギャグをねじ込ませられる方は尊敬します。いつかそうなれるよう意識せねば。
補足
カータは、無印の過去編なのはみたく「大人の顔色がうかがえる幼女」です。
巡り合わせ次第では、気持ち悪いガキめと、心ない大人からクソみたいに虐待されて、ロボットみたいな女の子になるかもしれませんね。
なまじ容姿も整ってるから「その手の大人」に色々されて、倫理観ドロドロに溶かされる胸糞ルートもありそうですね。本編に繋げられそうにないんで書けませんけど。