人魚と天狗と人狼と猫又と耳長とえーとドワーフ? 作:仲間はずれのドワーフ
半月後。
休日に海を泳いでいたら、歌声が聞こえたので近づく。
なんと、ぷかりと浮かんだ男達が歌っているではないか。
一応、救命胴衣は着ているようだ。
「大丈夫?」
「うお!? お前が大丈夫か! 海中でコスプレ!? 撮影!??」
「うわ、見てください人魚ですよ! 本物!」
お前ら余裕だな。それに、俺のことを先に心配する所が気に入った。
「遠いよ。そうだね。俺のこと内緒にして、服を買ってくれるなら、陸まで連れて行ってあげようか?」
「「お願いします!」」
俺は近づいていって、キスをする。男相手は嫌だが、仕方ない。
もとより、この魔法は愛の魔法なのだ。
魔法は上手くかかり、男達はツインテールマーメイドになった。俺は救命胴衣を脱がせる。
「!???」
ぶわっと空気が漏れる。そのまま水中で呼吸が出来ることに驚く。
「君は人魚!?」
「ツインテールマーメイドって言うんだ。さあ、急ごう。俺の魔法は一日しか持たない」
そして、先行して陸へ向かう。
男は着いてきた。
ちょっと加減しながら泳ぎ、陸に着く。
オオタカがバスタオルを持って待ってくれていた。
「お疲れ、ミオ」
オオタカに引き上げてもらい、尻尾を拭いて人になる。
ゴミ捨て場から失敬した服を着た。
そして、手を伸ばした。
「ほら、おいで」
「あ、貴方も人魚なのですか?」
「俺は翼人。天狗と言ったほうがわかるかな?」
オオタカが翼を出す。
「ふえぇ」
「はわわ」
服を乾かす。どうやら、財布も無事だったようだ。
「じゃあ、早速近くのリサイクルショップ行こうぜ!」
急かすオオタカ。
「いや、命の恩人なんですから、そこは新品を買いますよ」
「ひとまず、無事だったことを告げないと」
「服が先! 俺らのこと内緒にできないだろ」
「はぁ、怒られるけど仕方ないな。生きていてこそだし」
「そーそー。それでいーんだよ♪」
俺達はリサイクルショップで服を何着か買ってもらい、ついでに携帯を買ってもらい、お小遣いとして5000円貰った。すげー嬉しい。助け賃にしても大盤振る舞いである。ゲーム世界の服だと、違和感がある気がして困ってたんだ。
「お前らの服装の奴が溺れてるの見たら、また助けてやるよ!」
「俺達の服装じゃなくてもそこは助けてあげて下さい」
そして、俺達は通話アプリでやり取りするようになり、仲良くなっていった。
半月後。待ちに待った給料日が来たので、ゲートを開いた。
次の日とその次の日には休みを合わせて佐藤と山口とショッピングやキャンプをする予定だ。2人はもちろん、助けた自衛官である。
それぞれの家族に贈り物をするためだ。
ツインテールマーメイドも翼人も光り物が好きなので、ビー玉を献上することにした。
ゲートを開くと、ウロとカナが待っていた。オオタカの弟のオオワシまでいて、睨み合っている。
「オオワシ、どうしたんだ」
「ウロ。カナ。ずっと待ってたのか?」
「兄上!」
「兄様!」
「にーさま!」
「どうもこうもない。餌なんかと愛し合うなんざイカれている」
吐き捨てるオオワシ。
「は? オオタカは男だし、単なる友達なんだが? 引っかかるのそこかよ」
「そうだぞ。ミオは男だぞ。ピチピチの可愛い人魚の女の子だったら考えるが」
「じゃあなんでこいつと同居する!?」
「友人と同居しちゃ悪いかよ。それより、出稼ぎしてきたからやるよ」
俺とオオタカは、それぞれビー玉を渡した。陽の光を存分に反射し、ギラリと光る。
そういうビー玉を選んできた。
「す、凄い……」
「脆くて安物だが、キラキラしているだろ? やるよ」
「う、うん」
「兄上! 一族を売ったのか!!」
「は? 売るわけねーだろ」
「こんな宝玉、それぐらいしか手に入れる方法ないだろ!」
「ばーか、こんなの簡単に作れるんだよ。一食分より安いわ」
「!??」
「あーあ、せっかく今日は給料日だからってお土産買ってきたのにな。疑われるんじゃな。せっかく人間の街に買い物に連れて行ってやってもいいかなって思ってたのになあ」
「オオワシ様! お兄様!」
「おーわし様! にーさま!」
ウロとカナは、べちゃっと地べたに潰れる。そういう所好きよ、お兄様。
「苦しゅうない苦しゅうない。そうだな、3000円分何か買ってやるよ」
「俺もオオワシの分、2人にあげちゃおっかな」
「オオワシ様! お兄様!」
「おーわし様! にーさま!」
オオワシはぐっと黙った。
「お、俺も……連れてって」
「どうしようかなー♪」
「連れてってくれ、兄上!」
ということで、三人を連れて行くことになった。
人間に化けさせて、Tシャツとフリーサイズのズボンを3人に着せる。
そして、ゲートをくぐった。
「な、なんだ、ここは!?」
「ようこそ、地球。またの名を人間界へ」
「人間界……」
俺達はキョロキョロする三人を連れて、街中へ移動する。
「オオタカ! ミオ!」「オオタカさん、ミオさん!」
「よー」
「子供?」
「弟と妹。こっちがオオタカの弟のオオワシ。で、俺の弟のウロと妹のカナ」
「よーし、ウロくんとカナちゃんの為に散財しちゃうぞ!」
「やめとけ」
「今日は俺達の給料日のお祝いだからさ。いっぱい奢ってもらったし」
ということで、お買い物である。
言葉がわからないウロとカナとオオワシの為に通訳してやりつつ、子供のおもちゃ売り場に行った。
ウロは女の子向けのビーズでアクセサリーを作るおもちゃに釘付けである。
ちょっと予算オーバーだがオオタカは兄の威厳を見せて買ってあげていた。
ウロとカナも色々と目移りしていたが、結局冬服にしたようだ。
「次も来たいもん!」
「つぎもおでかけ~」
なるほど、Tシャツではそろそろきつい季節だしな。我が弟妹は賢い。
「お、俺……」
「はいはい、オオワシにも服買ってやるよ。安物な?」
その後は、食事をして、ゲーセンで少し遊んだ。
ホテルの人に事情を話し、人数を増やしてもらう。
元から広めのお風呂付きの大部屋なので助かった。
ウロとカナはお風呂で一息つき、オオワシも羽を出して伸びをする。
朝は山に入り、俺達の用意した服に着替えてオオタカがオオワシ以外にキスをした。
すると、ばさり、と翼が生えた。全員翼人になったのである。
『兄上、その術は、愛の秘術……! 尻軽! 兄上の尻軽!』
『あー、便利だから、ちょっとぐらい、な?』
「なんて言っているんだ?」
「これ、本来は異種族を愛してしまった時に相手にかける術なんだ。そんなの古いって思うけどな。魔界に住む者なら大抵使える、愛の奇跡だ。俺とオオタカは愛がなくても仕えるけど」
「なるほど、同種族になって子作りをすると」
「いや。子作りはしない。その場合は婚姻の儀式によって永続的に種族を変えることになる。色々必要になるし、俺達にとっても愛の儀式だから、そこまではしないぞ。まあ、天狗の恋人か人魚の恋人が出来たら相談してくれ。ただし、その時は魔界に来る覚悟もしておけよ」
「おお……魔界ってあったんですね」
「可愛い天狗ちゃん紹介してくれ」
「大多数の天狗ちゃんは人間嫌いなんだ。すまん。っていうか、お前らちゃんと飛べる?」
ウロとカナは一生懸命飛ぼうとして羽を動かそうとしているが、上手くいかないようだ。
「航空自衛隊隊員の意地を見せてやる!!」
「うおおおおおおおおおおおお!!」
翼をバサバサと動かし、風が周囲を吹く。おお。飛べそう。飛んだ!
「飛べる! ってことで、魔界語? 天狗語も教えてくれ。覚悟はしてる!」
「そうだなぁ。人間視点でめちゃ美人で鳥人視点だとそうでもない子とか紹介しようか?」
「頼む!」
「もっと考えましょうよ。魔界についてもっと知ってからにしたいですね」
「部外者に教えるわけ無いだろ?」
「そうですか。では、私も腹をくくります。私にも紹介して下さい」
それから、休日ごとに俺達は会って遊び、それに加わる翼人や人魚も増えていった。
ぶっちゃけビー玉と美味しいご飯に釣られたのだ。
こっちの海はあんまり強い外敵もいないしな。人間怖いのは共通しているし。