人魚と天狗と人狼と猫又と耳長とえーとドワーフ? 作:仲間はずれのドワーフ
俺はニヤニヤと笑み崩れた。
色白で、真っ白な綿毛のようなふわっふわの女の子である。空の青の瞳がまた可愛い。
「かーっ 羨ましい! 羨ましいぞ、佐藤 翼!」
「だろだろ? 可愛いだろ? 天狗の嫁さんなんだ」
「天狗?」
「そういう言い伝えなんだ。しきたりで、この子と結婚するにはこの子の村で狩りとかして暮らさないといけなくてさ。厳選したビー玉を捧げて、天狗の祈祷師に祈ってもらって、天狗になるんだ」
「なんだよ、それ。日本で狩りなんてする場所あるのか?」
「それがあるんだよ。忍者の隠れ里みたいなのりで、天狗の隠れ里的な。だからまあ。行方不明になっても、心配しないでくれ」
「おいおい、不穏だな」
もちろん、これぐらいは言うことを許可されている。
バレた時に、問答無用として化け物として処理されないように予め言っておけだそうだ。
ミオもオオタカも優しい。嫁さんのほうが優しいがな!!
外国人なんて、と言っていた父母はころっと参ってしまった。
もはや天狗だろうがどうぞ貰っていってくださいである。
可愛いは正義である。この子と空のためなら除隊もなんのその。
写真を片付けて、任務へと向かう。
表向き、操作ミスによる墜落になっているが、実はあれは撃ち落とされたのだ。
日本は平和なのではない。平和に見せかけているだけなのだ。
日に日に情勢が厳しくなっている中、油断はできないと気を引き締めた。
戦闘機にのって、緊急発進。
飛んでいると、戦闘機がエラーを吐き出す。
「今度は機体の故障かよ……。しょうがねえな」
「どうする!? 脱出装置が……!」
「こーする」
ガシャンと窓を割って脱出。上着を脱いで、翼を広げた。
更に窓を割って富田を救出。無理やり上着を脱がし、唇を奪った。
「俺にそんな趣味は……!?? 翼……!? 飛んで……!」
「ほらほら、頑張ってはばたけ。俺も飛ぶのまだ苦手なんだよ。お前1人抱えてなんてとっても無理だ」
「お、おお……! 飛べた!」
「上手いじゃね―か」
そして。俺は人魚のSOSを歌った。
SOSまで歌なんて優雅な種族である。
ひょこんと少年の人魚が顔を出す。
「コスプレ? いや、本当に人魚!?」
『船があっちにあるよ。案内する?』
『ありがとうな。ぜひ頼む』
「なあ! 人魚! 人魚だって!」
「はいはい、俺は天狗ですよっと。お、ラッキー。湾岸警備隊の船じゃん」
船の上では、人が大騒ぎである。俺を、少年を指差している。
少年を助けないと、とか、なんだか妙だ、なんて言っている。
少年に手を振り、なんとか(自称)優雅に船に降り立った。
その頃には少年の尾びれが透けて見える位置となり、皆大騒ぎだった。
翼を戻すと、富田がガクブルしながら、立ち上がった。富田からも翼は消えた。こっちは時間切れ。ギリギリだったな。
「航空自衛隊のものです。連絡をお願いします」
『さんきゅーな!』
ジャーキーを少年に投げて、そして振り向く。
「さ、さっきのは航空自衛隊の装備ですか?」
「そうです! さっきの少年も国家機密ですので、内密にお願いします!」
富田は震えながらもはっきりきっぱり言った。
「は、はぁ……」
その後、俺は上司にこってり絞られることになった。
もうすぐで退役だったんだけどなぁ。
基地に帰り、俺が上半身裸で羽を出すと、皆がおおーっと手を伸ばす。
「あー。もふもふは一般的には変態行為で恋人同士でもしないのでご遠慮下さい。あと、単純に風切羽に触られると怖え。飛べなくなるし」
「そこは鳥と一緒なんだな」
ぴたっと手を止め、残念そうに頷く。
「空飛んでみて下さい!」
リクエスト通りに翼をばさりと鳴らし、空を滑空する。
「すげー!」
「まだまだだけどな」
「厳選したビー玉を捧げると、天狗になれるのか」
「引受先の天狗の嫁さんが必要だけどな。あと、種族が変えられるんで、異種族婚は認められない。子供が可愛そうになるってことでかなり軽蔑されるし、ハーフは普通間引きされるらしい。飛べない子の血を拡散できないってことで」
「キスすると天狗になるってのは」
「天狗の使える妖術で、祈祷師じゃなくても短い間なら種族を変えられる。俺なら一日1人、3時間が限度かな」
「なるほど。日本の片隅に天狗村があると」
「というより、魔界の天狗村と人魚の村への通り道があるようでな。大抵は人間嫌いなんだが、変わり者なんかが、潜り込んでバイトして買い物していくみたいで」
「これは大変なことだぞ……! 日本国民を日本国民と認めていないと見るか、外国人が日本にフラフラ迷い込んでると見るか、どっちでも問題だ!」
「やっぱり?」
俺と巻き込まれた山口は大目玉を食らい、ミオたちと連絡を取らされたのだった。
撃墜らへんは、フィクションということで許して下さい。
日本は日本でも平行世界日本ということで。