追放ムーブ直後に前世記憶が覚醒した元阿呆勇者の俺は、ざまぁルートから離脱、強く生きていきます   作:辰の巣はせが

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第1話 勇者覚醒

「トシロー! お前はクビだ! 無能な奴は俺のパーティーには必要ない! 出て行け!」 

 

 ジリマーハ王国の王都。冒険者の酒場で雄々しくも宣言した俺は、この世界で三人存在する勇者の一人、ファルディオ・ヒューイ。由緒正しいヒューイ家の跡取りにして、勇者の一人だ。大事なことなので勇者の件については二回言わせて貰った。剣に纏わせた風による斬撃強化のみで敵を倒す、とても格好いい勇者の一人なのだ。おっと今ので三回目か。大事なことなので何回言っても構わないだろう。

 では、俺のパーティーメンバーについて紹介しておこうか。

 まず、この俺。現在二十歳で……。(三千文字ほど使うので涙を呑んで割愛) 

 次に頼りになるサブリーダー、マスル。男性重戦士で、スキンヘッドが特徴的だ。性格は豪快だが俺に従順。自分から意見することは滅多に無いので、俺を信じて諸々任せてくれているのだろう。年齢は三十代後半だったはずだ。

 二人目は、癒やしに定評がある大地神の女性神官、サキ・バスビーチ。ウェーブのかかった金髪とナイスバディが魅力的な、ゆるふわ系美人。俺とは男女の仲で……大きな声では言えないが、もう何度も寝床を共にしている。外に出してるから避妊はバッチリだ。

 三人目、王国の魔法学院で首席卒業を果たした才媛、クーロン・キジョウ。通称はクー。学院で学んだ魔法に関する豊富な知識は、魔法関連では本当に頼りになる。魔法も一つ一つが強力だ。ドジっ子気質なのか、たまに妙なことを言っては失敗するが、それはチャームポイントのようなものだろう。俺より二つ年下で、見た目は幼い感じだから妹のようなものかな。

 そして最後の四人目。この男こそが、たった今クビにしたトシロー・ザマフリー。

 パーティーの荷物持ちで、支援魔法の使い手だ。俺と同じ二十歳だったはずだが、冴えない風貌で見るべき点がない。だいたい、荷物持ちで支援魔法って何だよ。戦闘中は俺達の後ろでモゾモゾ動いてるだけだし、変に口出しはするし。荷物ぐらいなら、各自持ってるんだから、わざわざ荷物持ちなんて雇わなくていいだろう。希少なアイテムボックス持ちらしいが、重要なのは戦闘で役に立つかどうかだ。その戦闘面で支援……ぷっ……おっと失笑してしまった。そのよく解らない支援魔法しか取り柄がないトシローは、栄えある俺のパーティーには不要だ。第二王女から推薦されて、やむなく雇っていたが……試用期間は過ぎたと見て、俺の判断でクビにして問題なかろう。

 

「ちょっと待てよ! 俺が居なくなったら、お前らどうするんだ!? 支援魔法がなくなるんだぞ!?」

 

「支援魔法と言うなら、サキのホーリーシールドや、クーのマジックシールドがあるだろう? そこへ来て物理攻撃にはマスルの装甲だってある。鉄壁じゃないか?」

 

「いや、その魔法や、マスルを底上げしてるのが俺の支援魔ほ……」 

 

「見苦しいわねぇ。勇者であるファルディオ様が、不要だと言ったらなら貴方は不要なのです。言い訳を並べ立ててないで、風のように消えてくださらないかしら?」

 

 サキがトシローの言い訳を封殺しつつ、俺の援護射撃をしてくれている。普段は優しい物言いなのだが、ここぞというところで厳しい態度が取れるのは、やはり優れた神官である証拠だろう。

 

「トシローには、目に見える戦闘の成果を示して欲しかったと思う。もっとも、敵を倒すのはファルディオ達と、僕の魔法があれば十分なのだけど」

 

「クー! その魔法だって、俺の支援魔法で強化が……」

 

 またトシローが、訳のわからないことを言っている。ちなみにクーは『僕っ娘』だ。物静かな振る舞いにマッチしていて、実に可愛い。もう手を出してもいいんじゃないなぁ。

 ダン! と机を叩く音がした。見るとトシローが立ち上がって酒場テーブルを叩いている。酒場テーブルは木製だが、頑丈な造りなのでトシローが叩いたところでビクともしない。まったく、激昂して机を叩くとか下品でいけないな。ここは勇者として華麗に叱責するべきだろう。だが、俺が口を開く前にマスルが席を立った。そのまま右隣で居たトシローの胸ぐらを掴みあげると、右手一本でトシローの足を浮かせる。う~む、さすがの腕力だ。大の大人を軽々と……。マスルが仲間で良かった。トシローと違ってな。

 

「いい加減にしろ。とっとと失せやがれ! そして別な仲間でも見つけるんだな!」

 

 そうだ、そうだ。言ってやれ。けど、豪快さが売りのマスルにしては、仲間を見つけろだとか優しさが見えてるな。ちょっと意外だが、これもまた彼の魅力の一つだろう。うむ、仲間の美点を発見するとは、今日は何て良い日なんだ。

 その後、トシローは少し粘っていたが、俺が「迷惑料として、有り金全部置いていけ!」と命令したところ、顔を真っ赤にして激昂している。ふん、すぐにムキになるなど見ていられないな。奴は金袋をテーブルに叩きつけて去って行った。

 

「ふふん。いい気味ですわ!」

 

「ちょっと気の毒だけど……。ファルディオが決めたなら仕方ない……」 

 

「有り金全部は、ちょっと言い過ぎだったんじゃないか?」

 

 仲間達がトシローの出て行った方を見ながら言っているが、マスルは困り顔で俺に聞いてきた。ハハハ、本当に優しいなぁ。

 

「かまわないさ。あれぐらい言ってやった方がトシローのためだ……って、えっ? ぐああああああっ!?」

 

 瞬間、俺の頭痛が激しい痛みに震えた。

 え? 日本語がおかしい? 今、そんなことを気にしている場合では……って、日本語? 日本語って……あ、ああああああっ!?

 思い出したぁああああああ! 俺、トラックに撥ねられて転生した日本人じゃん! 本名は野仲悟郎。元は会社員で……ここは異世界か! 剣と魔法の世界で勇者様で、美人神官と僕美少女と仲良くしてて、もうハーレム決定じゃないですか、しかも勇者転生!? やったぁあああ!

 ……じゃなぁあああい! 仲間追放して得意げとか、ざまぁな目に遭う阿呆勇者じゃん! うっそだろ、マジかよ! これ、トシローに隠れた才能があるとかってパターン……いや、それ以前にトシローの支援魔法で、パーティー戦力が底上げされてたのを『俺』がまるで理解してなかったって展開か! やっべぇええ! て言うか、なんて人物に転生させて、なんてタイミングで記憶覚醒させてんだ、あの糞女神! 絶対に許さん! 

 ともかく、今はトシローを引き留めるのが先だ。俺は仲間達を放って、酒場から飛び出した。 

 




万事、こんなノリで行きます。

そんなに長く続かないと思うのですが……。
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