追放ムーブ直後に前世記憶が覚醒した元阿呆勇者の俺は、ざまぁルートから離脱、強く生きていきます   作:辰の巣はせが

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第11話 ワイバーンの洞窟

「スタジオの皆さん。俺達は今、真っ暗闇の中、ワイバーンの巣……洞窟まで来ています。ジリマーハ王国の王都から北東の山岳地帯の中腹。途中でキャンプしましたが、ここまで登ってくるのは実に辛かった。そして、聞こえるでしょうか? このワイバーンの寝息。完全に熟睡しています。これから巣をあさって、目覚めのバズー……」

 

「何をブツブツ言ってるんだ、ファルディオ?」

 

 後ろに居たマスルが話しかけてきた。

 今、イイ感じで昔の番組を再現してたのにな~……ネットの動画で見たんだっけ? 芸能人の寝室に忍び込んで、バズーカをブッ放すやつ。トークが軽快なレポーターのおじさん、好きだったな~。

 おっと、ワイバーン討伐の話だ。

 アーマーライノスを倒した後、俺達は順調にモンスター狩りを続け、大きなレベルアップを果たした。僧侶のサキ・バスビーチに関しては「そんな修行まがいの泥臭い活動、私は嫌です!」と、ごねていたが、俺が「じゃあ、もう来なくていいよ。いくら御実家が貴族でも、勇者パーティーの活動に非協力的なら困るし。親父さんには、俺から言っておくから。サキは、パーティー抜けってことで……」と言ったら、宿の部屋から飛び出してきた。さすがに、勇者パーティーをクビになった状態で、実家帰りする勇気は無かったようだ。

 俺としちゃあ、不安要素の彼女をクビにしたかったんだけどね~……。良い機会だったし……。でも……まだ、見込みはあるのかな? もうちょっと様子見かな~。

 で、そのサキを加えた状態で、雇った偵察士やレンジャーから連絡が来るまで、ひたすら修行。結果、ワイバーンの巣の場所が判明した時点で、パーティーメンバーの平均レベルが50を超えるところまで成長した。

 俺? 俺は……以下のとおりってやつよ。

 

 

 職業 :風の勇者

 レベル:7→67

 名前 :ファルディオ(本名、野仲悟郎)

 年齢 :20歳

 剣技レベル:3→27 法力レベル2→8

 

<習得魔法>

 治癒(小)、風刃(中)、風歩(中)

 

<勇者スキルレベル>

 風斬3→38、飛び風斬2→30、風壁2→33

 

 

 ふふふ……うわーはっはっはっ! げほごほ!

 どうだ、この数値! この勇者っぷり! 俺は、やれば出来る子なんだよ!

 魔法の風刃(中)は、風の刃を任意の方向に飛ばす魔法だ。スキルの飛び風斬があるじゃないかって? いや、魔法で出す風の刃は、スキルとは別なんだ。早い話、正面の敵に飛び風斬をかまして、同時に背後に向けて風の刃を飛ばしたりってのが可能になったわけ。訓練は必要だと思うけどね。スーパーロボットが、ビーム剣を振り回しつつ、肩のミサイルポッドからミサイルを乱射する……みたいな。まあ、そんな感じ? 

 風刃は、飛び風斬より威力と射程距離で劣るんだけど、複数出せて、今は10発同時までだな。発射方向は自由自在だけど、基本的に大雑把。イージス護衛艦じゃないんだから、複数同時捕捉とかできねーし。いずれ、できればいいな……。新人類的な『テキーン!』て感じでさ。

 風歩(中)は、風の足場を作って空中を走る魔法だ。今は20歩程度で、そこそこ使える感じだ。攪乱もできるし、階段を駆け上るように発動すれば、ジャンプの限界高度が上がる。

 ……高く跳びすぎると着地の時に「ぐきっ!」ってなるから要注意だ。あれは痛かった……。足首を大破しましたぁ! って感じだったな~……。

 マスルも、盾に精神力を纏わせるフォース・シールドとか、色んなスキルを覚えてる。フォース・シールドって魔法攻撃とかを弾くんだぜ? どんどん頼もしくなっていくのな。

 クーは、クーで、魔法の二重発動なんてスキルを覚えたから、パーティー戦力は増し増しだーっ!

 と、大喜びしたいんだけど、これで他の勇者に追いつけたかどうか……不安もある……。

 そもそも俺、立ち位置的に『ざまぁ系』の悪役だからな。これだけ頑張っても、他の勇者はともかく、トシローには置いて行かれているんじゃないか?

 ハハハ……まさかね~……。俺、レベル67だよ? 

 ……せ、せっかく強くなったんだし、今後は高難易度の依頼も引き受けていくか。

 まあ、アレだよ。レベルを極限まで上げて、ラスボスを一発で粉砕するとか! 可能なら、そういうのを狙っていこう。時間を掛けすぎると、人類側で被害が増えたりするから、その辺の見極めも重要だな。他の勇者が魔王を倒してくれるなら、それはそれでオーケー。俺、今の状態でもメチャクチャ強いから、冒険者として食べていくのに困らないんだもん。あ、ちなみに、この国の王国騎士団の団長さんで、レベル25ぐらい。

 一般人の喧嘩が強い人で、レベル3ぐらいってところだ。

 俺のレベル67が、どれ程やばい数値か解っていただけただろうか?

 このまま頑張ってレベル100ぐらいまで上げておけば、俺でも魔王を倒せるのかな? わからないな~。なんで、そういう目安的な情報が失伝してるんだろ? 魔王は何回も生えてるってのに……。

 そこは普通、重要な話だよな? ……また何かあるのか? 糞女神がらみとか?

 ……まあ、それは置いておくとして、そう言えば、トシローが抜けた後のメンバー補充をしてなかった。偵察士かレンジャーが欲しいんだけど、今のところモンスター討伐しかする気がないもんで、特に募集はしていない。そのうち、真面目に考えなきゃだな。

 

 グゴォオオオオ。グァアアア。ぴすぴす。

 

 迫力のある寝息なんだけど、ところどころ気が抜ける。

 本当に、噂で聞くほど強いのか? ワイバーン……。

 と言うか、寝込みを襲うんだから強さとか関係ないけどな!

 ……なければいいんだけど。

 一応、気づかれたくないので、俺達は慎重に洞窟を進んで行く。どれくらい慎重かと言うと、ランタンに当て木を貼り付け……簡易シャッターにして、必要最小限の照明で進んだりしてるわけ。もちろん、抜き足、差し足してるぜ!

 そして、洞窟の奥の凄い開けた場所……直径60m、高さ30mぐらいのドーム状の空間で、2頭のワイバーンを発見した。

 誤字? 違うね、2頭居るんだよ! 目の前に!

 嘘やん、1頭じゃなかったのか……。つがいってやつか?

 ん~……偵察士やレンジャーは個別で雇ってたから、情報を統括する役目の奴とか居なかったからなぁ……。

 しかし、困った……。

 当初のプランは、ワイバーンの寝込みを襲い……具体的には、俺が風斬で首チョンパすることだった。ワイバーンは高難易度の討伐対象だけど、過去に討伐事例があったから、外皮なんかはアーマーライノスより弱いってのが知られてる。俺の今のレベルだと、アーマーライノスの外皮装甲なんか問題にならないので、ワイバーンの首も切断できるだろうって考えだ。

 ただ、2頭居るのが面倒くさい。

 片方を倒してる間に、残った1頭が目を覚まし、それで飛んだりしたら厄介なんだ。

 え? 洞窟の中だろって?

 寝床にしてるところは、ある程度の高さが確保(自分達で掘ったのかね?)できてるから、ちょっとしたジャンプぐらいはすると思うんだ。サイズは全然違うけど、目の前にキリンが居たとして、それが全力で跳ねて上から降ってくるんだぜ? 

 ちびるわ~。あと、潰されて死ぬ。

 俺はクルッと身体ごと振り向き、マスル、サキ、クーを手招きして呼び寄せる。

 

「2頭居るんだが……。想定と違ってて大いに遺憾なんだけど……。こうなったら、2頭まとめてやっつけたい。どうかな?」

 

「ちょっと!?」

 

 声をあげたのは僧侶のサキだったが、マスルに睨まれて口元に手を当てた。美人だから絵になる仕草だけどさ、騒いでワイバーンを起こすのは勘弁して欲しいんだぜ。

 

(「ファルディオ! 正気ですの!? 1頭だけでも危険なワイバーンが2頭! ここは王都まで戻って国軍の出動を要請すべきですわ!」)

 

(「それをやったら、やむを得ないとは言え依頼放棄だろ? 勝ち目はあるんだから、頑張るの! 俺達は勇者パーティーだぞ!」)

 

 サキの言うことにも一理あるし、俺もそうしたいんだけど……俺の勇者って立場がね~、それを許してくれないのよ。これが自分の実力を弁えない、面子だけ優先させた方針決定なら敗北フラグだよな? けど、荒野のモンスター狩りで修行した後だから、確固たる自信はあるんだ。

 ワイバーンの首切りは任せろ~、ズバッシュ! てなもんよ。

 で、問題の2頭目だが……ここでクーの出番だ。

 

「俺が1頭目の相手をしてる間に、2頭目の翼を壊して欲しい。ファイアーボールを二重発動で当てたら、翼の皮膜とかボロボロに出来るんじゃないか?」

 

 ワイバーンやドラゴンは、羽ばたきだけで飛んでるんじゃなくて、おもに皮膜から魔力を放出して飛んでるんだとさ。羽ばたいてるのは、放出魔力に勢いをつけてるからだとか、飛行姿勢を安定させてるんだとか……。

 細かい理屈はさておき、皮膜自体も魔力とかで防御力はあるはずだけど、ファイアーボールを連発でくらって無事に済むとは思えない。少なくとも、使い物にならなくなるはずだ。

 

「……やってみる!」

 

 クーは乗り気だ。マスルには、クー達を護って貰い、1頭目が死んだら俺に合流して2頭目も倒すんだ。サキとクーは、法術や魔法で俺達を支援だ。

 割りと脳筋なことを言ってると思うけど、この十日間ほどの修行の成果を見せてやんよ~。

 ドラゴンもどきめ、中身が日本男児の勇者様を舐めんなよ。

 ……フラグとかじゃないからな? たぶん。

 

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