追放ムーブ直後に前世記憶が覚醒した元阿呆勇者の俺は、ざまぁルートから離脱、強く生きていきます   作:辰の巣はせが

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第12話 風の勇者、大勝利(ネタバレ)

 

 

 

 そろり、そろりと忍び寄る~。

 俺が着ているのはプレートメイル。板金鎧で、本来なら少しはガチャ付くところ。だけど、着慣れているから注意すれば音はほとんどしないんだ。もうちょっと早く動ければ……と思うけど、それをやると音がね~。この辺、偵察士やレンジャーは革鎧着用だし、装具を鳴らさない動き方とかも凄いらしいんだけど……。

 と言ってる間に、1頭目のワイバーンが目の前です。

 怖ぇえええ……。恐竜だよ、恐竜にしか見えねぇ……。

 しかも、フォルムはアーマーライノスより細身なのに、サイズ的に上回ってるって、どういうこと? 首か? 首の長さなのか?

 肩越しに振り返ると、少し離れた位置に居るマスル達が頷くのが見えた。

 プラン的には、首尾良く一発で首を落とせたら、クーが2頭目の翼目がけてファイアーボールを2連発。飛べなくなった2頭目を地上戦で仕留める。

 プランBも、ちゃんとあるぞ?

 1頭目が死ぬか戦闘不能になる前に、2頭目が起きて行動するようなら撤退だ。クーのファイアーボールで牽制しつつ洞窟出口まで行き、待ち伏せに移行。追いかけてきたワイバーン……おそらく2頭目を倒して、洞窟内へ戻り、1頭目にとどめを刺す。そんな感じだ。

 プランBでも、その場で2頭とも倒せると思うけど、最初に怪我した1頭目が生きてたら、火炎ブレスで攻撃してくるかもしれないしね。あと、毒針尻尾の攻撃も要注意。

 マスルとサキが居れば火炎ブレスも防げるんだろうけど、喰らわないに越したことはないんだ。

 ……できれば、最初のプランどおりに事が進んで欲しい。

 神に祈りたい気分だよ。でも、俺の祈りを聞いてくれる神様なんて存在するのかね~。

 さて、剣を……ああ、アーマーライノスを倒したときに風斬を連発したから、あのときの剣が駄目になってて、王都で新調したんだ。頑丈さ重視で切れ味は並だけど、そこは風斬でカバーだな。

 と、言うわけで俺は剣を抜いた。目の前にある土管みたいな首目がけ、剣を振り下ろす。勿論、歯を食いしばって声を出さないようにしてるぜ。何かの漫画で見たんだよ、「不意打ちするのに掛け声は良くない。良くないね……」って、敵のキャラが言ってるのをな……。

 

(風斬!)

 

 振り下ろしつつ風斬を発動。剣の本身よりも先に、風の刃がワイバーンの首……外皮に食い込んで……そこに剣が直撃。発動したままの風斬効果も相まって……。

 

 ざざざざっ……ずぱん! ガチン!

 

 肉を掻き分け、首を一刀両断。勢い余って首の下にあった岩肌を叩いてしまった。

 うげっ! これって……。

 

「ぶるる! ウガァ!?」

 

 このワイバーンの向こうに居る、2頭目が目を覚ましたのか! だよなー!

 みんな、ごめーん! 俺は、やっぱり阿呆勇者だーっ!

 け、けど、1頭目を倒しきった後だから、プラン変更なしだ!

 ということは予定どおり、後方からクーのファイアーボールが飛ぶ。スキルの二重発動を使っているから、2発同時だ。これが俺と死んだワイバーンを飛び越して、2頭目に着弾。俺達側の……左翼をボロボロにした。

 やったぜ! 洞窟の開けた空間だけど、これで飛んだり跳ねたりはできなくなったな!

 

「ファルディオ!」

 

 もう声を殺す必要もないと見たのか、マスルが呼びかけてくる。

 チラ見すると、マスルが駆けよって来てて、サキとクーは後方で待機。

 よし、打合せどおり。

 つがい(?)を殺されたことで、2頭目のワイバーンが怒り狂ってるが、俺達目がめて火炎ブレスがくるか? だとしたら、マスルのフォース・シールドと、俺の風壁で防ぐだけだ。と思いきや、重い風切り音が聞こえ、右側から……尻尾が飛んできた。

 

「任せろ!」

 

 マスルが前に出て、大盾で尾の攻撃を受け止める。フォース・シールドが発動している上に、自前の筋力増加スキルも使っているので、余裕とは行かないが上方へと尾を跳ね上げた。

 後で、マスルに聞いたら尾の一撃が、アーマーライノスの突進と同じくらい威力があったんだと。恐ろしすぎる……。魔力で強化でもしてたのかね。それを受け止めて弾いたマスルも、凄い成長ぶりだ。アーマーライノスの時は受け流しに成功したけど、吹っ飛ばされてたのに……。

 何にせよ助かった。俺の風壁は物理で殴られると、今の一撃なんかは受け止めるの無理っぽいんだよ。こいうのは水の勇者なんかが、氷の壁とか作って受け止められるのか?

 しかし、ワイバーンの攻撃は終わらない。

 跳ね上げられた尾の先端、毒針が俺を向いて突き出されてきた。

 尻尾を弾いたマスルじゃなくて、俺狙いか。もう1頭を殺したのが俺だってことを認識してるのか? やっぱり、つがいか?

 だが、俺狙いだろうが構うか! おっ(ぱじ)めた以上は最後までやる。逃げないプランなんだから、戦って倒しきるまでだ!

 俺は駆け出すや、頭上に向けて飛び風斬を撃ち出して毒針を迎撃する。もう毒針自体を見てないので、完全に勘での攻撃だ。しかし、レベルアップで刃の範囲が広がったおかげか、命中はしたらしい。

 

 バキーーン!

 

 金属音のようなものが聞こえる。

 

「ガゥッ!?」

 

 ワイバーンが驚いているようだが、俺は駆け続けた。

 尻尾をほぼ相手しない、ワイバーン側が驚いていて、俺は走り続けている。

 これらの要素が合わさり、俺は毒針攻撃以外、何の迎撃もされないままワイバーンの懐……下腹部に到達した。

 

「風斬!」

 

 繰り出した横なぎの一撃は、ワイバーンの下腹部を切り裂き、大量の血液と臓物を外へ放出させる。だが、俺はそれらを浴びていない。風歩によって空中を駆け上がり、途中で跳躍したからだ。着地地点は顔を下に向けたワイバーンの……後頭部。そこに降り立つや、俺は再度発動した風斬で首を斬りつけた。

 ぐはぁっ! 1頭目と違って、足で踏ん張ってないからスッパリと斬り飛ばせねぇ!

 アーマーライノスの時みたいに、風斬を連発するか?

 いや、ここは魔法……風刃だ!

 俺は、斬りつけたことによって生じた傷口付近に、風刃を連発した。飛び風斬より射程と威力で劣るけど、数だけは連発できる。これなら!

 

「グギェエエエエ!?」

 

 ワイバーンが絶叫した。

 見る間に、傷口が増えて、最初の傷には剣が食い込んでいく。風斬の効果が切れたので、再度発動!

 そりゃあ絶叫もしたくなるだろう。

 そして……。

 ワイバーンの首が切断され、その巨体は地響きを立てて崩れ落ちた。俺も華麗に着地だ。ちょっと足首にきたけど、グキッ! とはなっていない。

 やったぜ! 大勝利ぃ!

 2頭居るのを見た時は、かなりビビったけど何とかなるもんだ!

 まあ、あれだけ事前に調査しても想定外のことがあったから、今度から気をつけないとな。気をつけてどうにかなるものか不安だけど……いい教訓だったってことだ!

 

「やったな! ファルディオ!」

 

 一番近くに居たマスルが駆け寄ってくる。

 よし、怪我とかしてないな。遅れて駆けてきているサキとクーも無事だ。言うまでもないけど、俺も無傷!

 万事めでたしじゃないか。

 いや、慢心駄目! 絶対! ……けど、素直に喜ぶぐらいは良いと思うんだ。

 

「ファルディオ! 素晴らしいですわ! さすがは私の勇者様!」

 

 サキが飛びついてきて俺を抱きしめる。くそー、鎧着用じゃなければバインバインのオッパイの感触とか楽しめたのに……。

 

「ファルディオ、怪我はない?」

 

 息を切らせているクーが、ローブのフードをまくり上げて見つめてきた。

 うっ……瞳がキラキラしてて、可愛い……。子犬系ってやつ?

 俺はバインバインのナイスバディ派だが、クーのような美少女も、ストライクゾーンだ。

 クーは今、十八歳だっけ? 女子高生……いや、学校卒業してるから女子大生ぐらいか?

 ハハハ、モテてモテて困っちゃうな。

 ……しかし、サキは大丈夫なんだろうな? 

 このまま浪費とか、一般大衆に傲慢な態度とかかまして、パーティーの足を引っ張ったりしない?

 身体に残る記憶だと、そういう事やりそうなんだけど……。

 一応、気にはとめておいて、知らないところで何かしでかしたら……理由の立たない庇い立てとかしないように気をつける……ってところかな?

 下手すりゃパーティー崩壊……って、切り捨てる前提かよ……。

 我ながら吐き気がする。

 だけど、やらかした事に目を瞑ると、俺の方に悪いフラグが立ちそうだし……。

 サキが、『ざまぁ系』勇者パーティーの、落ちぶれ枠みたいになりませんように。

 俺だって、自分のことを慕ってる女性を切り捨てたくないんだから……。

 ……トシローは、今は上手くやってるかなぁ。

 例の『経験値集約取得』をイイ感じで取り回して、パーティーの戦力底上げに真っ当に貢献してたら、追い出されたりしてないと思うんだけど。

 今度は、俺が手紙とか書いてみるか?

 ……差出人の名前を見た時点で、破り捨てられそうだけどな……。

 




そう言えば、感想レスで書きましたけれど

・レベル上限なし
・種族及び称号によって、成長速度に格差あり(人間は底辺)
・魔法使用は、MPの『ゲージ』や『残量』が隠し扱い

と言ったシステムになっています。

称号は『力持ち』とか『軽業師』とか、そんな感じで
レベルアップ時の筋力増加と過敏症度の増加が、増し増しになるとか……。

ところがステータス値は隠し要素なので、お互いにステータスシートを見ても、把握はできない感じ。
レベルでしか上下を測定できないんですね~。
主人公の記憶覚醒前は、トシローのステータスを見ない方針だったので
彼の異常な成長には気が回らなかった……みたいな。
ちょっと無理がありますかね~……でもまあ、そんな感じです。

主人公は、レベルを上げるだけ上げて、ラスボスを一撃必殺……とやりたい感じなのですが、そうは上手くいかないかもなのです。

ラスボス一撃必殺は昔、ドラゴンスレイヤー6の英雄伝説でやったことがありまして。
レベルを上限まで上げて、ラスボス戦に突入し、味方の強化と、敵の弱体化をMPが尽きるまでやって、王子様に攻撃させました。
相手HPが9999だったような記憶があるのですが、3~4万のダメージが通って、即死したという……。
当時つきあいのあった友人に見せたら爆笑してました。
できれば、この路線で行きたいんですけど、書いてる内に変更になる可能性があります。

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