追放ムーブ直後に前世記憶が覚醒した元阿呆勇者の俺は、ざまぁルートから離脱、強く生きていきます   作:辰の巣はせが

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第3話 え? キャンセルできないとかマジ?

 

 ワイバーンの討伐。

 これが俺が……ではなく、記憶覚醒前の俺が女神官のサキに命じて依頼取りさせた内容だ。

 かなりの高難易度依頼である。

 ドラゴン程じゃないし、勇者的に楽勝だろうって? 

 いやいや、空飛んでるモンスターなんて、それだけで難儀な代物なんだよ。魔法が届かない高さまで飛ばれたらどうしようもないし、もちろん剣や矢だって届かない。一応、火だって吹くしな。尻尾の先に毒針とか有るんだっけ?

 ああ、こういう時にトシローが居てくれたら、魔法や矢の射程を伸ばしたりできたんだろうけどな~。もう居ないしな~。

 わかってるよ、俺のせいだよ。正確には記憶覚醒前の(以下略)。

 くそ~……言い訳も全部言わせてくれやしない。

 取り敢えず酒場に戻るか。高難易度の依頼なんてキャンセルして、もっと手頃なのを引き受け直せば良いんだよ。

 で、戻ってみて落ち着いたら、嫌なことを思い出した。

 勇者がさ、引き受けた依頼を破棄とかキャンセルするって……ヤバくね?

 酒場には冒険者ギルドの出張窓口があって……地方だと、酒場の親父が雇われて兼任してるんだが……そこで確認したら、キャンセルすることはできる。ただ、違約金は依頼報酬の倍。それは良いにしても、勇者としての名声に傷がつくって受付嬢は言うんだ。

 中身が日本人の俺としては、勇者の名声なんて無くて良いんだけど、覚醒前の記憶からすれば、名声の低下は物凄くマズい。

 第一に、勇者は国家としての威信であり名誉。

 他国に出向いて行った場合でも、勇者の肩書きは大きく働く。出張先の国王だって頭下げちゃうんだから、勇者って凄いよな。そもそも勇者というのは、神から与えられたギフトが強大で、魔王に単体で対抗できる戦闘力を有しているから、勇者なんだ。

 そういう勇者が生まれると国としてはお祭り騒ぎ。国家の英雄様扱いだ。

 けど、考えてみるとだ、この転移後世界に三カ国で一人ずつしか居ないって……少ないと思うわけよ。この先増えたらいいんだけど、どうも四人以上になったことがないそうで、誰か死んだら何処かで勇者が一人出現するらしい。

 赤ん坊で出現することもあれば、いい歳したオッサンが勇者として目覚めたりする。

 てことは三人が上限なのか、望み薄だな~。 

 まあ、人数が少ない分、一人あたりの戦闘力は強大だ。なにせ勇者様だもんな。

 もっとも、頭数や手数で押し切られたりするからパーティーを組んだり、こっそり行動して魔王と少数決戦に持ち込もうとするんだけど……。

 あ、魔王ってのは、いわゆる魔族やモンスターの親分なんだ。数百年に一度の割合で生えてくるんだと。それで、魔王が出現すると魔族の力が強くなったり、モンスターが凶暴化するわけだ。あと、モンスターの数も増える。

 魔王軍が大々的に攻めてくることは、歴史上無いんだけど、一部の将軍なんかが演習と称して都市を襲ったりするもんで、当然、大勢の人間が死ぬ。だから、人類側としたら魔王が生えてきたら早い段階で始末したいわけよ。面白いことに、魔王が生える直前まで勇者は寿命で死んでたりするんだけど、魔王が生えた途端、三人まで人数が復活するんだそうな。

 こりゃマジで、勇者は三人までなんだな。そういう人数制限って世界的なシステムみたいなものなのかね。知らんけど。

 ……そんな勇者の中身に、日本人の俺が転生したってのは異例だと思うんだけど、このあたりの事情は、また今度だ。

 さて、そんな阿呆な縛りがあっても魔王と真っ向勝負できる勇者は、その所属する国家にとって大きな政治的武器でもある。

 

「お前の国、危ないんだってな? うちの勇者を派遣してやろうか? ただし見返りを……」

 

 って感じだ。

 そんな風に運用されることがある勇者がだぞ? 一度引き受けた依頼をビビって「やっぱり止めます」なんてやれば、評判は落ちるし国王からも睨まれるわけだ。勇者側としては「うっせー! ばーか! 国の都合なんて知ったこっちゃねーよ! じゃあな!」とか言って余所の国に行くこともできるけど、そんな奴を誰が信用する? 勇者認定だって外されるだろうし、強力なギフトを持ってる一般人なんて危険視されるか、就職先はヤクザの用心棒ぐらいが良いところ。それどころか『次の勇者』を生えさせるために、国を挙げて討伐されかねない。場合によっちゃ、他の勇者も差し向けられるんだろうな~……恐ろしい話だ。

 何処かの土地で国でも作ればいいって? 誰も支配してない土地なんて、何処にあるんだよ。……富士山みたいな高所とかか? そんな住みにくい土地なんて支配したかないわ。仲間だってついて来ないだろうし。

 寝返り目的で魔界に乗り込むにしても、魔王側で話し合いの余地が無いらしい。歴代魔王の全員が、勇者を見るなり話も聞かずに襲いかかってきたそうだし。

 マジで、システム的な何かみたいな気がしてきた……。

 結論、真面目に依頼をこなして、実績と経験を積む。で、強くなったら魔王を倒す。これしかないよな……。できれば他の勇者と共闘したいところだけど、魔王城の中に勇者が複数居ると、勇者の力や魔力が一割程度まで低下するそうなんだ。しかも、パーティーメンバーまで戦力低下するとか嘘やろ? 

 聞いた話じゃ、「じゃあ、勇者一人あたりのパーティーメンバーを増やせば?」……とか考えた人が昔居て、色々と試したらしいんだよ。

 単純に勇者を指揮官にして、パーティーメンバーは百人……とか。

 三人の勇者が、一定期間ずつ数人のパーティーメンバーを鍛えて、魔王城の門前で全員集めて百人ぐらいにする……とか。

 いやいや、そうやって集めた精鋭ってのは、実は勇者とは何の関係もなくて、勝手に集まって来た冒険者だから! 勇者パーティーのメンバーとしてはノーカンだから! ……みたいなことも……。

 まあ、全部駄目で、城に入るなり戦力低下したらしいけど。

 更に検証が進んだ結果、勇者パーティーって、勇者以外は四人までじゃないと、魔王城の外でも戦力ダウンの法則が発動するんだと。五人以上集めて訓練したら、途端に弱体化したそうで、当時の勇者は愕然としたらしいね。気持ちは解る……。

 って、おいおい、出先でモンスターに襲われてる美少女とか助けたらどうするんだよ? 助けるだけ助けて放置か? ……と思ったら、保護対象ならパーティーメンバーとしてカウントされないんだそうな。実際、記憶覚醒前の俺が、そういうシチュエーションに遭遇してたわ。

 だったら「そいつら、途中で見つけた難民なんです」みたいな感じで戦力を……というのを、前述した色々試した中でもやったそうで、それも駄目だったみたい。

 なんかゲームマスターみたいなのが居て、あれは不可だとか、自分の判断ではアウトとかやってるのかね~。さしあたり神様あたりとか……。その神様ってのが、俺を転生させた女神じゃなくて、よその神様だとしたら、女神は無能だな。雑魚だよ雑魚。

 結局、歴代の魔王については勇者パーティーが一組で倒してるそうだから、真面目に修行してレベル上げろって事なんだろうな……。裏技対策が完璧すぎて泣ける……。

 もう、なんなんだよ! 意地でも勇者パーティー一組で魔王と対戦させたいのかよ。そんなとこをゲームみたいに再現しなくて良いっての。

 そう思って、周囲の奴に「変だよなぁ」って聞いても、皆、それが当たり前みたいな顔しやがるし。不思議に思って対策しようとしたのって、勇者自身とか極一部ってことか? そいつらだけオツムが特別製だったとか?

 やっぱ、この世界おかしいわ。もっとネット小説にあるみたいな、ありふれた剣と魔法の世界に来たかった……。

 

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