追放ムーブ直後に前世記憶が覚醒した元阿呆勇者の俺は、ざまぁルートから離脱、強く生きていきます   作:辰の巣はせが

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第4話 勝てばいいのよ、勝てば……

 考えれば考えるほど、この世界が嫌になる。

 ネット小説で「スキルガチャでチート無双します」とかってあるけど、「異世界転生ガチャで失敗しました」ってのはあまり聞かないよな。アハハハハ。

 ……探せばあるんだろうな~、ここにネットなんて無いけどな。いや、この変な世界に飛ばされた理由も、ある程度知ってるんだけど。その辺は、転生したときの糞女神関連だから、やっぱり後で話すわ。

 って、話す相手も居ないってのに何言ってるんだろうな、俺。疲れてるのかな……。疲れてるけどさ……。

 ともあれ、勇者の立場から逃げるわけにもいかない……つまりは、真面目に依頼をこなすしかないんだよな~。けど、ワイバーンだなんて、どうやって倒すんだ? ああ、トシローが居ればな~……いや、こうなったら作戦だ。作戦さえ練れば何とかなる。

 俺は、パーティーメンバーを連れて酒場へ戻ることにした。戻って最初に話し合ったのは……何故、トシローの後を追いかけたか……だ。何だよ? お前ら、俺の気合いのこもった土下座を見てなかったのかよ。ああ、後から来たんで見てないよな。

 しかし、どうしたもんかな。さっきは『俺は転生した日本人だ!』の話をまるで信じて貰えなかったし。

 ……このパーティーメンバーならいけるか? いや、駄目だ。ここは適当に話を作って、ワイバーン依頼の方を話し合おう。「お前、気でも狂ったんじゃないか?」なんて目で見られるのは一度で充分だからだ。思い出したら恥ずかしさの余り、布団かぶって寝込みたくなってきたよ。 

 

「トシローを追いかけた理由か? 考えてみたら、支援魔法も役に立つと思ったんでな。さっきの話を撤回し、謝り倒して戻って貰うように言ったんだが。駄目だった。ま、当然だな。俺も馬鹿なことしたよな~……」 

 

 こう説明したところ、サキのポカンとした顔ったらなかったな。

 まさに理解できていない状態だ。この娘、このままパーティーに置いてて大丈夫なのかね? いや、手は付けたけどさ。あ、記憶が覚醒してからはヤッてないよ? 記憶が覚醒したのって、ついさっきだもの。

 マスルは、「ようやく気がついてくれたか……。遅かったわけだがな……」と呟いている。ごめんな~……俺が、もうちょっと早く記憶覚醒してればね~……。

 その辺はマジで俺に責任が無いから、俺の転生を担当した女神を恨んで欲しい。具体的にどんな経緯だったかは……また同じ事を言うようだが、後で思い出すとしよう。

 クーロン……クーは、少し考え込んでいたようだが、やがて頷いてから俺の方を見ている。何をどう納得したんだろうな、聞いて確認したいが怖くて聞けねーよ。

 

「まあ、戻って来ないものはしかたない。今は、サキが持ってきたワイバーン討伐依頼を遂行することを考えようじゃないか」

 

 トシローのことは惜しかったが、悔やんでてもしかたがない。作戦タイムと行きますか……。

 

「ワイバーンを倒す作戦だが……」

 

 俺が話し出すと、マスル達は真剣な顔で頷いた。

 記憶が覚醒する前の俺だったら、どうしてたっけ? 出没場所にキャンプを設営して、ワイバーンが再び姿を現すのを待つだろうな。同じ所に来るとは限らないのにな。

 では、記憶覚醒後の俺としちゃあどうするかと言うと……。

 

「まず、情報を買い集める。そのワイバーンが直近で姿を見せた場所についての情報だ。どうせ依頼書の場所だけじゃないだろうし? 依頼書の目撃場所とはズレてるかもしれないからな。そこを確認したら、レンジャーを雇って見張りや捜索をさせる。最終的には、ワイバーンが飛んでいく方向を……幾つかあるんだろうけど調べて、奴の巣を探り当てるんだ。そういうのはレンジャー職の奴が得意だろ? なんなら偵察士を雇ってもいいし、双方を組ませて行動させてもいい。とにかく巣を探すんだ」

 

 そうして巣が見つかったら、ワイバーンが戻ってくるのを待って寝込みを襲う。これで依頼遂行だ。ま、倒すのは、それはそれで苦労するだろうけどさ。やりようってのは、あるもんだよ。

 この作戦の問題は人件費。間違いなく成功報酬よりも高くつく。すなわち赤字だ。だが、なぁにトシロー効果でパワーアップしていた時期に金は貯めた。ワイバーンを倒せて名声を稼げるなら許容範囲だろう。経験値だって稼げるしな! 言ってなかったかもだけど、この世界ってレベル制なんだぜ? ステータス画面は……自分のしか見られないがな。

 で、資金面について話の続きだ……。

 幸いなことに、俺がパーティー資金を確保しているので、パーティーメンバーによる無駄遣いは発生していない。やらかしそうなのはサキだが、それ系のイベントが発生してたら、俺の後頭部に十円ハゲができていたかもしれないな。

 

「なんだか……卑怯っぽくありませんこと?」

 

 サキが不服そうだ。聞けば、もっと勇者らしく正々堂々、華麗にワイバーンを倒して欲しいとのこと。

 え? 飛んでるワイバーンを真っ向勝負で? できねぇ! 

 と言うか、俺のギフトから来る技で、飛んでる奴を的確に攻撃できるってのが少ないんだよ。あってもレベルが低いから、威力不足だったりな……。

 魔法や弓矢に関しては先に言ったとおり届かないし。いや~、勇者認定されたあたりから頑張ってれば、飛ばす斬撃で倒したりできたかもなんだけど、記憶覚醒前の俺って努力とか嫌いだったんだ。

 勇者だから勝てて当たり前とか、事情を知らん無責任な連中が言うならまだしも、本人が言っちゃ駄目だよな

 まあアレだ、今から頑張るからいいんだよ。

 

「昔、偉い人が言った。卑怯もラッキョウもないってな。非道は勇者的に駄目だろうけど、モンスターの寝込みを襲うぐらいなら問題ないって。猟師だって、獲物の巣穴とか探したりするだろ? それと同じさ。でも、他に上手いやり方があるなら教えて欲しいな。俺、それが名案なら乗り換えるし?」

 

 そう言ってやるとサキは黙り込んだ。ちょっとキツい物言いだったかもだけど、対案の無い反対は無能か、足引っ張りたいだけの害虫がやることだ。関係ない第三者ならともかく、身内や同じ立場の奴がやるのは特に罪深い。と、俺は思うんだが、どうだろうか?

 その後、特に反対意見が出るでもなく、行動計画の調整が進み、本日中に冒険者ギルドでレンジャーや偵察士募集の広告を出すことにした。捜索対象がワイバーンなので危ない依頼だが、その分、手当や成功報酬には色を付けているので人は集まるだろう。ちなみに先着十五名とした。どれぐらい居たら間に合うのか解らんかったので、感覚で決めた数字だ。駄目なら増やす。

 雇用期間は十日にしている。これも感覚で決めた日数だ。できれば、最初の捜索隊で成果が出ますように……。

 こうしてワイバーン討伐の方針が固まったが、これだと捜索隊から報告が来るまで暇になる。

 その間、俺は王都の外……街道から外れた荒野でモンスターを狩ることにした。ちょっとでもレベルアップしておかないと不安なんだよ。『ざまぁ展開』の主人公(この場合はトシローの方)は成長早いのが定番だからな。気を抜くと実力差が広がっちまう。俺の記憶に無いだけで、元々引き離されてたりして……。

 と、取りあえず勇者って言える程度には強くなろう。最終目標は、魔王を倒せる程の強さだけど、目先の目標がないと息切れしちゃうわ……。

 この荒野での修行に関しては、マスルとクーが付き合ってくれることになった。サキはさっきの話でヘソを曲げたのか、宿で休むんだってさ。……これ、パーティー離脱ってことになるのか? サキが居ない状態で、新たに二人パーティーメンバーを増やしたらどうなるんだろうな? 試してみたいが、そのために二人雇って、駄目なときには一人辞めて貰うってのもな~。トシローを放り出してすぐ後なもんで、マスルが嫌な顔しそうだし……。

 こうして見てるとマスルって、阿呆な勇者からトシローを解放しようとしてた節があるんだよな。サキの場合は、出世欲とかで勇者に付いて来てるっぽい。最高司祭になりたいとか言ってた気がする。クーは……クーは何で俺に付いてくるのかな? 勧誘したのは記憶覚醒前の俺だけど、あの頃はトシローが居たらから俺は強かったし、ついて行って大丈夫と思ったのかな? わからん……。

 ここで「俺に惚れてるからだ!」って感じで自惚れたら痛い目を見そうだから、自重しないとな……。

 この作戦会議の後……マスルに、トシロー追放に賛同した真意を聞いてみたら、図星だったようで驚いていた。「なんで突然、察しが良くなったんだ?」とも言われたが、俺は記憶が覚醒した時点で、覚醒前とは別人に近いし……。そんなの説明できないから、適当に誤魔化しておいた。

 でも、マスルが良い奴だと解ったのは収穫だ。魔王を倒すまで、よろしくお願いしたい。

 

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