追放ムーブ直後に前世記憶が覚醒した元阿呆勇者の俺は、ざまぁルートから離脱、強く生きていきます   作:辰の巣はせが

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第6話 糞な事情と糞女神の本性

 俺が元居た世界の『呪詛』は、同じ世界でしか通用しない。

 そもそも俺の家系にかけられた呪詛は、術士からの働きかけにより、神様経由で俺の家系が不幸になるという仕組みだ。 

 初回一発で呪い殺したのでは術士の気が晴れないから、俺の家系は何代にも渡って事業に失敗したり、不本意な結婚をしたりと長々酷い目に遭わされてきた。それが、俺の代で限界点に達したらしい。神様による呪詛執行期間の終了って感じか? 

 最後の最後だからって文字どおり、死ぬ目に遭わされたのが俺で、その俺で家系が終わるから、俺が末代ってことだな。

 で、話は戻るんだが、神様の力というのは他の世界まで及ばないんだ。別世界まで神力を飛ばせないとかだっけ? だったら、異世界転生する俺にとって、呪詛はトラックに撥ねられて死んだあたりで終わりってことになるが……。

 

「という認識だったんだが……。……違うのか?」 

 

「その考え方で合ってますよ。で、異世界転生ですが……。これは元々、私の世界の都合による働きかけです。異世界の息吹が欲しい状況でして……。ですから、本来は呪詛とは関係なし。特別サービスで、トラック撥ねなしで転移できる予定でした!」

 

「じゃあ、トラックに撥ねられたのは、マジで呪詛とかのせいなんだな……」

 

 悪徳商人だったとかいう御先祖さんよ。子孫で末代の俺は、大変に迷惑しているぞ? 死ねよ……。……あ、もう死んでるのか。

 

「あなたも現世でネット小説を読んだように、大当たり! 死んだけど、別世界に転移してチート無双! となるはずだったんです」

 

 本来は? はずだった?

 え? このまま異世界でチート無双させてくれるんじゃないの?

 ……あれか? 貴族に転生したけど、才能が無いから虐げられてて追い出されて、能力が覚醒して成り上がる系とか?

 てゆ~か、さっきから『転生』と『転移』が入り交じってない?

 どっちなんだよ? 

 

「あなたの世界は、本当に想像力が豊かですね~……。そういう物語もあったとは……。でも、違います。呪詛を執行する神……その最後の呪いが……」

 

 ……ここで、おさらいだ。

 俺の家系に対する『呪詛』は、俺で期限切れらしい。

 最後の最後で地獄行きにしたいだろうが、それをやると術者が地獄に落ちる。

 術者は、とっくの昔に死んでるが、最初に地獄行きは無しと決めたので実行できない。

 本来なら、トラックに撥ねさせたところで『呪詛』が終了するはずだった。

 異世界へ行く件については、本来は『転移』だった。

 転移に関しては、他世界の女神の都合によるもので『呪詛』とは関係なし。

 

「私達の画策した異世界転移に干渉して、あなたを『転移』から『転生』に切り替えさせろ……と。そう言ってきたのは、呪詛を引き受けた神なのですけど……」

 

「転移と転生? ……それ、何か違うのか? ああ、違うのか……」

 

 『転移』だと、野中悟郎のままで異世界転移するが、『転生』だと何かに生まれ変わることになる。後者の場合は、例えば赤ん坊からのスタートになったりするが……。

 

「虫に転生させろとのことでしたが、さすがに横暴が過ぎますので抵抗しました。私の面子が潰れますからね。転生先は人間です。ならば転生先を、活動中の勇者にするよう言われまして……」

 

「けっこうな話じゃん? 勇者とか、格好いい~」

 

「実力と人格……それらが未熟かつ劣悪な勇者ファルディオ。その彼が、パーティーの要とも言うべき仲間を、言いがかりと無理解の末に追放したところ。そこから、記憶が覚醒するという……」

 

「待てや、こら……」

 

 それって、『ざまぁ系異世界転移』の悪役の方じゃねぇか!

 言い換えると悪役令嬢系の転生なわけで、冗談じゃないぞ! 

 

「あんたら、神様同士なんだろ? 俺が居た世界の……呪詛神か? そんな奴の言うことなんか無視しちゃえよ。さっきの虫転生の件みたいに、その転生指定のことも抵抗してくれよ!」

 

「それが、その……異世界神同士の会合で彼と会ったとき、お酒が入った状態でカードゲームをしまして……」

 

 ボロボロに負けてデカい貸しを作ったことを盾にされ、要求を呑むしかなかっただとぉおおお!?

 

「あんた! 麗しいのは見た目だけか!? んなことに、俺を巻き込むな!」

 

「し、仕方がない事なのです! 私の負けを帳消しにするためには……と、とにかく! きちんとした異世界転移は、いずれ時期を見て行います! 二百年ほどは無理ですが……。……下手をすると、世界の流れが魔族側に傾いて……人類側に被害が出ちゃうけど……。きょ、許容範囲かな~……。滅びはしないだろうし……」

 

 この女神、どんどん最低になっていくな……。

 虫転生の件で抵抗してくれたのも、自分の面子のためだし。

 てか、俺が勇者に転生しても、そういう事になるって予想しちゃうのかよ。

 余程追い込まれてるのか、勇者が無能なのか……。

 

「勇者が無能の方ですね。他に二人居ますけど、そっちは、そこそこ有能ですよ? ……そこそこ、ですけど……。本当、今世の勇者はハズレ揃いだわ……」

 

「今、何か言ったか?」

 

「いいえ、なにも。元々は、あなたを転移させて三勇者の対抗馬にし、競争意識を芽生えさせ……。今回、転生先になった勇者の……人格矯正の一助にしようとしていたのですけど……」

 

 回りくどいな……。

 いっそのこと、俺の世界から過去の英雄とか呼べば良いんじゃないか?

 源義経とか織田信長だとか、宮本武蔵とか舩坂弘だとか。 

 外国にだって色々と居るだろうに……。

 

「英雄や偉人の召喚は、コストが……」

 

 なんのコストだよ……。 

 

「とにかく、俺は嫌だ! そんな糞みたいなタイミングで、人格も未熟って勇者なんかに転生するのは絶対に嫌だ! そいつ、どうせ色々とやらかしてるんだろ? それを背負うとか真っ平御免だ! 修正を要求する!」

 

「無理です。もう決定しました。ここでこうやって説明しているのは、あなたの世界の神からの要求で、嫌がらせの一環ですが……。私は諦めましたので、あなたも諦めてください。それに、今回の『異世界転移』じゃなかった、『異世界転生』も悪いことばかりじゃないですよ。なにしろ勇者への転生です。あなたの世界の言葉で『ボロは着てても心は錦』というのがありますが、それって素晴らしいと思いませんか?」 

 

「ボロ着が勇者で、錦の心は俺ってことか。高く評価して貰って光栄だけど、そういう事じゃねぇえええ! オンボロ勇者に最悪のタイミングで転生させられる、俺の身にもなれよ!」

 

「ええい、しつこいですね! 仕方がないと言ったら仕方がないんです! 勇者としての人生は好きに送ってください! 魔王を倒してくれたらありがたいですけど、そこは追放される人が優秀だから、無理に頑張らなくてもいいかも? ああ、勇者だから魔王討伐の使命からは逃げられませんね。残念でした!」

 

 うわ、逆ギレし始めやがった!

 

「逆ギレじゃありません! 態度の悪い人間への正当な怒りです! 慈悲の心でペナルティは付けませんから、とっとと転生してください! あ、転生したら今度こそ『呪詛』とは縁が切れますから、安心してくださいね~っ!」

 

 お、おお!? 俺の身体が消えて行く! 異世界転移……ではなくて、異世界転生が始まるのか!?

 女神は、悪い笑顔で手を振ってやがる。

 てめぇ、覚えてろよ! 絶対に戻って来て、手籠めにしてやっからなぁああああああ!

 

 

◇◇◇◇

 

 

「むにゅ! 色々開発して、アヘ顔ダブルピースで御主人様と呼ばせてや……あっ……」

 

 朝か……。

 転生した経緯を思い出してるうちに寝てしまったら、夢の中で追体験するとはな……。

 あの糞女神め……。

 そういや名前を聞いてなかったな……もう糞女神でいいだろ?

 俺が思うにな、最初に『呪詛』をした術士や、代執行してる神とかは別に良いんだよ。先祖の悪徳商人が元凶だから、そいつに対する恨みとか怒りは仕方ないことだからな。俺を撥ねたトラックの運ちゃんも……まあ良いだろう。本人の前方不注意じゃなくて、『呪詛』のせいらしいし。

 だがな、だが……あの女神は許さん。先祖の悪徳商人も大概だが、もう死んでるだろ? けど、糞女神は生きてる。しかも俺的には、直接に恨みがあるんだ。

 強くなって……絶対に復讐してやる!

 ……手籠め云々は、まあ無しにしておくか。先祖の悪徳商人と同じことするのもムカつく話だしな。俺の鉄拳を手術道具にして、顔面を造成工事。このぐらいで勘弁してやろう。

 これがネット小説なら、タグに『リョナ』とか付くところだぜ。

 ……それも考えてみたら、嫌な話だな。

 ぐぬぬ。報復を考えている内に頭が冷えてきた……。

 いや、駄目だ! 女神に対する報復は絶対にやる!

 よし、最低でも一発ぶん殴ろう。

 昔見た、洋画のモンスターパニックもので、最後の最後で諸悪の根源みたいな女を殴って終わったのがあったけど、あんな感じだ。

 よ~し、やる気が湧いてきた!

 

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