追放ムーブ直後に前世記憶が覚醒した元阿呆勇者の俺は、ざまぁルートから離脱、強く生きていきます   作:辰の巣はせが

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第7話 鍛え直し

 まあ何だ、女神に対する復讐は努力目標だな。

 一発殴りたいのは、かなり本気だけどさ。当面は勇者活動を継続しよう。

 あとは、『ざまぁ小説』の悪役勇者みたいに落ちぶれないこと。

 これ、最重要。

 ボロ着レベルとは言え、せっかく勇者に転生したんだ。いい目だって見たいし、少なくとも……今一緒に居る仲間のためぐらいは頑張らないとな。

 さて……起きるか。

 今日は三人で荒野に出かけて、モンスターを狩ったりして修行だ。

 

「ステータス、オープン」

 

 俺は装具を身につけると、自分のステータス画面を開いた。

 

 職業 :風の勇者

 レベル:2

 名前 :ファルディオ(本名、野中悟郎)

 年齢 :18歳

 剣技レベル:2 法力レベル1

 

<習得魔法>

 治癒(小)

 

<勇者スキルレベル>

 風斬2、飛び風斬1、風壁1

 

 俺がスキル覚醒したのって、身体に残る記憶だと……確か14歳の頃だっけ? 他2人の勇者より2~3歳遅れてるけど、それでも4年ほどは勇者としての実働期間があって……なのに今の歳でレベル2って……。

 どういうことだよ……。

 魔王軍を舐めてるの?

 今まで何してたんだ……って、低ランクの依頼をチョコチョコこなしては、国からの援助金で飲み食いしてダラダラしてたんだっけか……。

 サキはともかく、他の2人は良く俺を見放さなかったな……。あと、トシローもだけどさ。正直、今の俺は駆け出しも良いところだが、これでもトシローがバフ魔法で底上げしてくれてたから、何とかなってたんだよな~……。

 他の勇者はどうかというと……え~と、炎の勇者と水の勇者だっけ? 最近聞いた記憶じゃあ、確かレベル30だったはず。

 この引き離され具合よ……。

 てか、地水火風の『地』だけ居ないのか。糞女神が何かサボったからじゃないだろうな?

 しかし、記憶覚醒前の俺は、レベルで引き離されていても「他の勇者と互角の強さだぞ!」とか言って鼻高々だったっけ。トシローのおかげだっつ~の。俺のバ~カ。

 むしろ、20レベル以上引き離されてて、それでもなお互角と思えるほど強化されてたってことなんだから、トシロー、やっぱスゲーわ。

 勇者スキルの風斬は、武器に風を纏わせるスキルだ。真空の刃を作って相手の装甲を断ち割り、直後に剣をブチ込むというエグい戦い方ができるんだぜ? 

 飛び風斬は、風の刃を飛ばすっていう良くあるアレだ。剣自体で斬りつけるのが無くなるから普通の風斬よりは威力が落ちるけど、3メートルぐらい飛ぶから、離れた敵にもバッチリ対応だ。

 ……射程距離がしょぼいのは、これから頑張って伸ばすから問題なし。

 風壁は……風のバリアだな。もっとも今のレベルじゃ、飛んでくる矢を払うぐらいしかできない。将来的には、ドラゴンブレスを遮ったりできる……ようになればいいかな?

 治癒魔法(小)については、RPGの勇者が基本的に魔法剣士ってのに由来してるのかね? 小規模の怪我なら直せるんだ。これは外傷の面積と深さが関係していて、指一本なら一発で接合できるけど、掌サイズの擦り傷になると数回行使しないと治癒できないって感じだ。これもまあ、ちゃんと修行やらしてたら、もっと使える感じになってたんだろうな。

 え? 将来的に「俺の治癒の方が凄いだろ! この役立たず!」とか言って、サキを追い出せるぐらいになるかって?

 無理。追い出すのは色んな意味で無理。

 だって俺、アンデッドを浄化するターン・アンデッドとかできねーし。神官職に特化した、法術とか使えねーんだもん。

 それにな、本当はサキより素行の良い神官を雇いたいところなんだけど、トシローを追放したばかりで、サキも……って訳にはいかないんだ。さすがにマスルが怒るだろうし、サキって貴族の娘さんなんだよね~……。言いがかりで追い出したら、親父さんに何されるか……。

 誠意を持って接したら、サキも解ってくれて、真面目になるのかな? 望み薄だけど、頑張ってみるか……。

 今度は俺が、サキに追放……捨てられそうな展開しか見えないけどな……。

 ええい、とにかく頑張るしかねぇ!

 さあ、出発だ! あ、いや……弁当とか調達してから出発だな。うん……。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 そんなわけで、やって参りました。

 ジリマーハ王国の王都……の西側街道を、南に外れた荒野。

 ちゃんと弁当持参だぞ?

 ここで日がな一日、モンスター狩りをするんだ。

 荒野で居るだけでモンスターが出るのかって? 出るよ。

 そもそも街道というのは、人が通るための道だ。金持ちの国だと、砂利を敷いたり石畳を敷いたりするが、人が通るという点については同じだな。

 で、そういう街道の通行人をモンスターが襲うと、冒険者や軍隊を差し向けられて徹底的に討伐される。モンスターにとって、街道は危険地帯で近づくと危ない。そういう風にモンスター達が認識することで、街道でのモンスター遭遇率は低くなるわけだ。そして、その分だけ街道外でのモンスター遭遇率は高くなる。

 こういう剣と魔法の世界じゃ、人間なんて基本的に弱者だから、街道から離れるほどに捕食者たるモンスターが……。

 

「あ、居た。しかも、アーマーライノス!」

 

 真っ先に俺が発見した。

 同行する重戦士のマスルと、魔法使いのクーロン・キジョウは顔を見合わせていたが、俺が見ている方向から黒い点が徐々に大きくなってくるのを見て、戦闘態勢を取った。

 

「ファルディオ。この距離で見つけるとは凄いな……」

 

 マスルが感心している。そりゃあ腐っても勇者ですし? 身体能力は、各部分で常人超えしてるんだよ~。レベルは低いけどな……。

 で、アーマーライノスっていうのは、デカいサイだ。見た目は甲冑を着込んだ黒いサイで、その背が大型運送トラックの……コンテナ天板に届くと言えば、大きさが想像できるかな。やっぱファンタジー世界って、すげーわ。

 地上ではダンジョンの狭さとか関係ないから、モンスターってのは種類によっちゃあ大きくなるんだよ。その中には、ダンジョンの階層ボス(その階層で一番強い個体)より強いってのが出没するんだが……アーマーライノスは、そういった強い奴の端くれだな。でも、魔法を使わないし、オツムは野生動物。その突進力と装甲の厚ささえ気をつければ、どうにかなる相手だ。

 ……普通の冒険者じゃあ、蹴散らされて終わりなんだけど。

 じゃあ、俺の勇者パーティーではどうかというと、トシローを追放したせいで勝てるかどうか怪しい相手になってる。トシローが居た頃には、倒したこともある相手なんだけどな。

 ちなみに、ワイバーンと強さを比べた場合、ワイバーンに軍配があがるね。前にも言ったが、空を飛べるってのがデカい。そして火を吐く。アーマーライノスは逃げながら焼殺されたり、背中から装甲を剥がされて喰われたりするわけだ。地上での取っ組み合いなら立場が逆になるだろうが、ワイバーンの方で地上戦に付き合う理由がないものな。

 

「ファルディオ! アレとやるんだな!」

 

「おう! ときに……マスルが、アレの突進を盾で受け止めるってのは……」

 

「俺が死んでしまうから却下だ! だが、受け流すぐらいなら……」

 

 そりゃそうか。異世界物の小説では、盾職で最強とかを見かけたけど、主人公枠じゃないとそんなものだ。マスルも、レベルとか上げたら、アーマーライノスを止められるようになるかな? 

 興味深いけど、今は目の前の獲物だ。

 

「クー! 突っ込んでくるところで、<閃光>を顔面にくらわせろ! マスル! 目の眩んだ奴を俺の方へ受け流せ! 転がしてくれたら、なお良し!」

 

「ん、わかった……」

 

「了解したぞ! 勇者殿!」 

 

 クーは、いつもどおりの反応だが、マスルの声が弾んでいる。喜んでるっぽいけど、今の会話で嬉しい要素とかあったか?

 とにかく指示は出したので、位置取りのために移動開始。

後方に魔法使いクー、アーマーライノスの真正面に重戦士マスル、マスルの右側……少し離れた場所に俺だ。

そして状況は、俺が描いた絵図どおりに進行した。

 

「<閃光>」

 

 ボソッと呟くような声と共に、クーが光の魔法を発動させる。それが目の前で生じたことで、アーマーライノスが一時的に視力を喪失。驚きか戸惑いで足が鈍ったところで、マスルが盾を使って俺の方へ受け流した。しかも、自分は吹っ飛ばされたが上手く着地し、アーマーライノスに関してはリクエストどおり、すっ転ばしてだ。

 やだ! マスルさん、格好いい!

 そして、アーマーライノスは横転や前転をしながら横倒しになり、今は俺に背をさらしている。

 

「よっしゃあああ!」

 

 俺は盾を放り出すと、愛用の長剣を両手持ちしながら駆け上がった。

 

「うおおおおおお! 風斬!」

 

 レベル2勇者の風スキルが発動し、俺の剣を風の刃が取り巻いていく。これ……他の勇者も似たようなことができるんだけど、炎や水と違って目に見えないから、一般大衆からの評判は芳しくない。くそ……地味だなぁ……。

 とか一瞬考えたが、俺は狙い目……装甲の継ぎ目目がけて剣を突き刺した。

 うわ、硬ったぁああ!?

 継ぎ目でも、こんなに硬いのかよ! 剣が止まっちまっただろ! 

 

「びぎぃいいいいい! ぐもぉおおおお!!」

 

 アーマーライノスが暴れ出したので、刺さった剣を握ったままの俺は振り回される。

 ちょおおおお!? このまま地面でローリングとかされたら、俺、潰れちゃう!

 

「ふ、風斬! 風斬! 風斬! 風斬! 風斬ーーーーーっ!!!」

 

 俺は声を限りに叫び続けた。

 重複発動した風斬は、アーマーライノスの身体と共に剣自身をも削り取っていく。だが、俺が上の方で居る内に、この剣を押し込まなければならない。

 くっそー! 早う死ね、アーマーライノス! さもないと俺が死ぬぞ!

 




 ストック使い切りました。
 この後は1~2週間隔ぐらいで不定期になります。
 ちなみに、前話で話題に出た映画は『リバイアサン』。
 ピーター・ウェラー主演の映画です。ネタバレして申し訳なし。
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