追放ムーブ直後に前世記憶が覚醒した元阿呆勇者の俺は、ざまぁルートから離脱、強く生きていきます   作:辰の巣はせが

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第8話 レベルアップからくる不可解

 

「や、やっと死んでくれた……」

 

 へたり込んでる俺の前で、アーマーライノスが死んでいる。

 背中の装甲の継ぎ目、そこから急所を貫いた結果だ。

 急所の位置を知っていた理由は、トシローが居た頃に倒してたからだな。記憶覚醒前の俺は、トシローの話をろくに聞かなかったが、モンスターに関しては興味があったので部分的に覚えてたんだよ。子供の頃は、「モンスター、すげー! 格好いい!」とか口走る変わった少年だったんだな~。

 そのまま純真に育ってくれてたら、俺が苦労しないで済んだのに……。  

 

「マスル~、怪我とか大丈夫か~」

 

 離れた場所に目をやると、こちらに向けて歩いてくるマスルが右腕を上げた。大丈夫らしい。怪我してないって意味じゃないんだろうけど、とにかく大丈夫のようだ。見れば、マスルの後方からクーが駆けてきている。自分の身長より長い杖を抱えているので、何となく可愛く感じてしまうな。 

 

「どっこらせ……(いだ)ぁああああああ!?」

 

 俺の、俺の左腕に激痛がああああああ!

 今、右手で身体を起こそうとしたんだけど、ダランと下がってる左腕が地面に当たって……って、なんじゃこりゃああああ! 左腕の関節が二つほど増えてる!

 

「て、てて、手の甲を骨とか突き破って……」

 

「アーマーライノスが転がったときだな……。身体が潰れなくて良かった……」

 

 近くまで来たマスルが膝を突いて分析しているが、怖いこと言わないでくれよ。

 サキに頼んで治癒を……って、今は居ないんだった!

 サイドポーチに右手を伸ばすと、不思議と割れていないポーション瓶に手が当たる。高級ポーションなので、これほどの大怪我でも治癒は可能だけど、片手じゃ……。

 

「私がやる。貸して……」

 

 遅れて到着したクーが、俺のサイドポーチからポーション瓶を出して俺の口元へ持ってきた。

「いや、右手が無事なんだし、栓さえ抜いてくれたら自分で……」

 

「黙って飲む……」

 

 言いつつ口に押し当てるので、やむなく飲んだ。くそう、恥ずかしいじゃねーか。

 そしてポーションの効果だが……。

 

 バキバキバキ! うじゅるるるる!

 

 聞こえてはいけない音と共に腕が修復されていく。打撲による身体の痛みも同時に治癒されたようで、すっかり楽になった。

 

「複雑骨折した腕が! こんなに重い石も持て……あ、手頃な石がないな……」

 

 昔読んだ漫画のシーンでも再現しようかと思ったが、いい感じの石がなかったので断念する。俺は、身体の各所を点検して、異常が無いことを確認すると立ち上がった。 

 

「助かったよ、クー。ありがとうな!」

 

「いい。勇者を助けるのは当然の務め……」

 

 素っ気なく言って顔を逸らすが、クーの頬が何となく赤くなってる気がする。わかりやすいな~……とは思うんだが、記憶覚醒前みたいに手を出すのは良くないだろう。俺自身、記憶はともかくとして、感情的にはサキやクーとどう接して良いか迷ってるし……。

 女の子に好かれているのは、悪い気はしないんだけどな~。

 ここから嫌われたりしないように頑張らなくちゃ!

 

「マスルは、怪我とかしなかったのか?」

 

「いや、擦り傷と打ち身程度だ。次の狩りに支障が出る可能性があるので、下級ポーションで治癒しておいた」

 

 おお! マスルも、アーマーライノスだけで帰る気はなさそうだな。

 クーも同じようで、俺達は修行の狩りを継続することにした。

 お互いに無事を確認した後は、アーマーライノスの処分に取りかからなくてはならない。俺達は、アーマーライノスを俺の魔法鞄に収納した。この魔法鞄は、いわゆるアイテムボックス的なマジックアイテムで、国からの貸与品。勇者スキルで、容量無限のアイテムボックスとかがあれば良かったんだけど、そうそう上手い話はないってことだ。

 普通の冒険者だと部位だけ確保して、後は放置するぐらいしか出来ない。それを考えると、丸ごと持ち帰って冒険者ギルドで売りさばける俺達は、楽してると言えるんだろうな。

 さて、次の獲物探しの前にステータスチェックだ。

 

 

 職業 :風の勇者

 レベル:2→7

 名前 :ファルディオ(本名、野中悟郎)

 年齢 :18歳

 剣技レベル:2→3 法力レベル1→2

 

<習得魔法>

 治癒(小)

 

<勇者スキルレベル>

 風斬2→3、飛び風斬1→2、風壁1→2

 

 

 おお~、上がってる上がってる!

 MPとか『素早さ』とかの表示は無いが、身体能力も増してる気がするぞ!

 試しに飛び風斬を使ったら、射程距離が3メートルから6メートルぐらいに伸びてた。威力も増してる。

 法力がレベルアップしてるのに、治癒法術が(小)のままだけど、使用回数とか効果範囲とかが増えてるのかな? 次に怪我したときに試してみるか……。

 しっかし、変だな……。

 アーマーライノスを倒したのってさ、今回が初めてじゃないんだよ?

 なのに1回だけ倒して、こんなにレベルアップするとか……おかしくね?

 トシローが居た頃には、もっと高難易度のモンスターを倒しまくってたのに、何で俺のレベルに反映しなかったんだ? レベル2とかじゃなくて、他の勇者みたいにレベル30ぐらい軽く到達してそうじゃん?

 見れば、マスルとクーも数段階ほどレベルアップした様子で、顔を見合わせて驚いている。

 どうなってんだ? トシローが居たときと居なくなった今で、何か違うことでもあるのか?

 そう考えた俺は、あることに気がついた。

 

「トシローの支援魔法が無くなってるからか?」 

 

 俺の口からトシローの名が出たので、マスルとクーが俺を見る。

 

「どうした、ファルディオ? トシローが何か?」

 

「ああ、いやな……」

 

 俺は思いついたことを話してみた。

 トシローの支援魔法の有無で、俺達の経験値取得に影響があるんじゃないか……と。マスルは唸っていたが、「そう言われると、そうかもしれんが……もう少し様子を見てみるべきではないか?」とのことだ。そりゃそうだよな、俺だって確証とかねーもん。

 

「クーは、どう思う?」

 

「私も保留。ただ、仮説で良いなら話すことは可能……」

 

 仮説、大いに結構!

 参考になるんだから、是非聞かせて欲しい。そう伝えるとクーは頷き、皆で座り込んで彼女の話を聞くことにした。

 

「まず、ファルディオが言っている……アーマーライノスを倒して急激にレベルアップをした件。それに不可解な思いをしているのは、私もマスルも同様。ちょっとだけレベルアップするならまだしも、以前に討伐実積のあるアーマーライノスを倒して、それでレベルが数段上昇するなんて、本当に不可解」

 

 そう前置きをして、クーは本題を語り出す。

 

「ここから、トシローに原因があると仮定して考える。彼の追放……パーティー離脱によって、私達には支援魔法がなくなった。パーティーとしての能力が落ち込む、あるいは元に戻ったことで戦力低下するのは当然。だけど、支援魔法の有無で、取得経験値に影響があるとしたら……何が考えられるか? それは……」

 

「「それは?」」

 

 溜めを入れたクーに、俺とマスルが顔を寄せた。クーは、俺を見て恥ずかしそうに目を伏せたが、やがて上目遣いで俺を見ながら口を開く。

 

「トシローの支援魔法が特別で、発動中に入った経験値は、トシローに多く分配される仕組みになってる……とか」

 

「「……」」

 

 俺とマスルは顔を見合わせた。

 つまり、クーの言ってることが正しいなら、トシローが支援魔法でパーティーを増強している間、ほとんどの経験値はトシローに吸われていく仕組みだ。なるほど、そりゃあ俺がレベル2のままなわけだよ……。

 

「だが、クーよ」

 

 マスルがクーに質問した。

 

「俺達のパーティーは、どんどん強くなっていたぞ? それは、どう解釈するのだ?」

 

「私達が成長しない代わりに、魔法で支援するトシローがレベルアップで成長していくとしたら? 支援魔法が強力になっていくのだから、強くなるのは当たり前」

 

「むう……」

 

 マスルが唸っている。俺も唸りたい。

 クーは仮説って言ってるけど、これ当たってる気がするな……。

 いや、本当に確証とかはないけどさ……。

 

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