遊戯王 X-age   作:発寒

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Tips
ドミル政権
現在、セントラルの政治の中心となっている政権。実権を握って十五年近くの年月が経っている。

セントラルの兵器
セントラルは平和なため協力な兵器はせいぜいリアルソリッドビジョンによるものしかなく、基本的に根幹にはデュエルモンスターズが関わっている。


第一話

~十五年後~

地下世界。あのような惨劇があってもベースドはいくらでもいる。今日も世界は回る。このお話はそんなひとりのベースドの物語。

 

地下世界のとある場所。少女はすらりとしたモデルのような外見に銀髪、そして深い青色の瞳を携えていた。しかし、その服装は小さめのサイズのTシャツとボロボロのジーンズというなんとも言えない危ない格好だった。

 

そんな少女…神遊(かみあそび)メアは地下世界の一角で寝転んでいた。ぼんやりとぱちぱちと消えたりついたりする蛍光灯を眺めながら。

 

天然パーマの銀髪を指で玩びながら彼女は物思いに更ける。

 

ここは地下世界において彼女のお気に入りの場所だ。誰もこないような狭い道を幾度と通ってたどり着ける彼女の秘密基地となっていた。

 

上体を起こしてダメージジーンズ(正確に言えば傷だらけで捨てられていたジーンズ)のポケットを探って自分のデッキを取り出す。一枚一枚丁寧に見ていく。

 

『殉国のナイト・メア』のカードをじっと見つめる。昨年死んだ父が自分に与えてくれたカードだった。というよりかはデッキのカードの大半が祖父から与えられたカードで構成されている。

 

殉国のナイト・メア

通常モンスター

星4/闇属性/アンデット族/攻2300/守0

死してもなお、自分の愛した国を求めて歩き続けるアンデット。呪われし武器たちが彼女のカラダとココロを蝕み続ける。

 

「…」

 

父、神遊進化(かみあそびしんか)は彼女の唯一の家族だった。身寄りのない彼女に名前と、この地下世界で生きる術を教えてくれた。

 

食事の確保の方法、トイレの場所、体を清める場所…そしてデュエルのやり方、相手との戦いかたもそうだ。

 

そんな彼が死に際に自分に与えてくれたのがこのデッキとデュエルディスクだった。

 

「やっぱりこのカードよりあれの方がいいかな…」

 

カードを入れ換える。完成したデッキをデュエルディスクにセットする。一日の始まりはデッキの改造とデュエルディスクへのセットだった。

 

カチャリとデッキがセットされる。

 

と同時に物陰から地面と靴底の擦れるガサッという音がした。

 

物陰のした方を見る。そこには、メアの知り合いが物陰から彼女を覗く姿があった。

 

「あーあ。見つかっちゃったか」

 

目の前に美しい少女のような人物が立っていた。身長はメアの頭一つ小さいくらいか、綺麗な金髪のストレートに、整った顔立ちと陶器のような肌が白く可愛らしい人形のようにその人物を魅せる。着ている服もそれなりに高価なものが揃っており、その人物がベースドであることに気づく者はほとんどいないだろう。

 

メアはその()()を見て、ため息をつく。

 

「また君か…悪いけど帰ってくれるか。一人でゆったりしたいんだ」

 

「まあまあ、そう言わずに。たまたま、メアを見つけただけだからさ♪」

 

「たまたま…ねえ」

 

メアは目の前の少年…ミオをジロリと睨み付ける。ミオはメアの初めての友人だ。メアも最初に出会ったときにミオのことを女の子と勘違いした。それほどミオは美しい。

 

「少なくとも君の住んでるところからここまでは偶然でたどり着けるほど単純な道のりじゃないよ。到着するとしたら私を尾行しない限り無理だね」

 

「いやいや!他にも可能性があるよ!」

 

「へえ…例えば?」

 

「へ?えーっと…」

 

ミオはしどろもどろになり始める。

メアは続ける。

 

「君のねぐらから五キロ近く離れてるこの場所に、どうやって、たまたま、私を、見つけた、って?」

 

「…愛ゆえじゃないかなあ?ほら、僕、メアのこと大好きだし」

 

「嘘つくな。クソヤロウ」

 

「え!?なんか僕悪いことした!?メアったら怒りすぎだよ」

 

メアの殺意が一気に増す。周りの空気がピリピリとするがミオはニコニコと微笑みながらメアに近づく。

 

「もう…そんなにツンツンしないの♪僕本当にメアのこと好きなんだよ?特にこの小ぶりできれいなおっぱいとか…」

 

そう言うとミオはメアの胸へと手を伸ばし…

 

 

 

そのまま後方へふっとばされた。

 

メアが胸を触ろうとするミオの腹をかなり強い力で蹴り飛ばしたのだ。ミオは数メートル後ろまで転がっていった。

 

いや、自ら転がったのだ。メアが蹴りを入れる直前に後方に跳んでダメージを和らげたのである。

 

「ケホッケホッ…あーあ。痛いなあ」

 

そのうえ、ミオは受け身も完璧にとっていたのでそこまでダメージはないだろう。

 

「で?用件は何だ?ウジ虫」

 

「ねえ。メア。いくらなんでもやりすぎだよ!何があったの!?メア!僕たち友達だろ!?」

 

「トモダチ?」

 

めあの殺気がさらに強くなる。ピリピリした空気となってしまい。ピキピキという音が聞こえそうなレベルだ。実際はミオが軽く手を出したのをメアが過剰に防衛したことなのでで非は完全にメアにあるのだが。

 

しかし、ミオは怯まない。

 

「な、なんだよ!メアが答えてくれるまでここからいなくならないからな!」

 

しばらくの沈黙。ここにいるのはメアとミオの二人だけだ。

 

そして、その静寂を破ったのはメアだった。

 

「分かった。()()()()

 

「え?」

 

「私と君でデュエルをしようって言ってるんだ。私が勝ったら()()()()()()()()()()()()1()()()()。君が勝ったら…そうだな。どうして私が怒ってるのか教えてやるよ」

 

「…分かった」

 

ミオが腕に装着しているデュエルディスクを振りながらメアを見る。なぜ、メアが怒っているのか。ぶっきらぼうに見えるが、本性は優しいはずの彼女が何をそんなに怒っているのか。

 

ミオはデュエルディスクにデッキをセットする。

 

二人はデュエルディスクを構える。

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

神遊メア LP4000

ミオ・パラノイア LP4000

 

「先行はもらうよ!僕のターン!」

 

ミオはカードをデュエルディスクに置く。

 

「パラサイト・フュージョナーを召喚!」

 

パラサイト・フュージョナー ATK0

 

紫色の不気味な姿をした虫のようなモンスターが現れる。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

 

ミオ LP4000

手札…2枚

モンスター

パラサイト・フュージョナー ATK0

魔法・罠ゾーン

伏せ2枚

 

メア LP4000

手札…5枚

モンスター

なし

魔法・罠ゾーン

なし

 

まさかの攻撃力0が棒立ち。明らかに誘っていることが分かる盤面だった。

 

長年の知り合いとしてミオのこのスタイルを見てきたメアは再びため息をつく。

 

「またそれか」

 

「そう思うなら早く攻撃して決闘を終わらせなよ?」

 

「そう言って罠にはめてくるから手に終えない。私のターン!」

 

カードドロー。引いたカードは…

 

「予想GUYを発動!」

 

予想GUY

通常魔法

(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

呼び出すのは彼女の名前の由来となった父親の使っていたこのカード…

 

「現れろ!殉国のナイト・メア!」

 

殉国のナイト・メア ATK2300

 

真っ黒な鎧を纏った女性の騎士が現れる。その土気色の肌から彼女がゾンビのように見える。実際にアンデット族でゾンビなのだが。

 

「レベル4で攻撃力2300。やっぱり驚異だね…」

 

しかし、間違いなくミオは罠を貼っている。下手に動くと危険だ。だが、メアのデッキの性質上、()()()()()()()ミオの戦略を逆手にとれる。

 

よって…

 

「ナイト・メア!パラサイト・フュージョナーを攻撃しろ!」

 

ナイト・メアは今は武器を持ってはいない。素手でパラサイト・フュージョナーに掴みかかる。

 

しかし…

 

「速攻魔法、リパラサイト!」

 

リパラサイト

速攻魔法

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンにどちらか1つしか発動できない。

(1):自分フィールドの『パラサイト』モンスター1体を選び破壊する。その後、同名モンスター1体をデッキから特殊召喚する。

(2):墓地のこのカードを除外することで発動できる。墓地の『パラサイト』モンスター1体を選んで特殊召喚する。

 

突如、パラサイト・フュージョナーが爆発する。掴みかかってたナイト・メアは吹っ飛ばされるがアンデッドはそこまで脆くはない。すぐに立ち上がる。

 

パラサイト・フュージョナーの肉片や血液が辺りに飛び散る。ドロドロとしたそれは1つに集まり新たなパラサイト・フュージョナーとなった。

 

「パラサイト・フュージョナーの効果発動!融合召喚を行う!」

 

パラサイト・フュージョナー

効果モンスター

星1/闇属性/昆虫族/攻 0/守 0

このカードは、このカードの(1)の効果を適用する場合のみ融合素材にできる。(1):このカードは、融合モンスターカードにカード名が記された融合素材モンスター1体の代わりにできる。その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。(2):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。融合モンスターカードによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「だが君のフィールドにパラサイト・フュージョナー以外のモンスターはいない!」

 

「そうだね。でも融合するのにおえつらえむきなモンスターがいるよ!君のモンスターさ!トラップ発動!」

 

パラサイト・マテリアル

通常罠

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。(1):『パラサイト』モンスターの効果で融合、シンクロ、エクシーズ召喚を行う場合、発動できる。このターンの間『パラサイト』モンスターの効果で素材にするモンスターを相手フィールドからも選ぶことができる。

(2):『パラサイト』モンスターが特殊召喚に成功した場合、発動できる。このカードを手札に戻す。

 

「当然、君のナイト・メアを素材にするよ!」

 

パラサイト・フュージョナーがナイト・メアの胸に装着される。するとメアが突如苦しみだし体が一気に膨張。鎧を突き破って一体の巨大な翼竜に姿を変えた。

 

「融合召喚!来い!パラサイト・ワイアーム!」

 

パラサイト・ワイアーム

融合・効果モンスター

星9/闇属性/ドラゴン族/攻2700/守2000

『パラサイト・コア』+通常モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

(1):このカードはモンスターゾーンに存在する限り、通常モンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されず、このカード以外のモンスターの効果を受けない。(2)このカードが破壊された場合、発動できる。デッキから『パラサイト』カード1枚を手札に加える。

 

「勝負ありだね。メア。教えて。何でそんなに起こってるの?」

 

ミオは心配そうにメアを見る。同性でもドキッとするような可愛らしさだ。融合モンスターでダイレクトアタックしても、メアのライフは1300残る。しかし、それもミオは削りきれる札を用意しているのだろう。

 

メアはじっとミオを見つめながら言う。

 

「相変わらずの寄生虫っぷりで。やっぱり君にピッタリなカードだと思うよ。パラサイト・フュージョナー(それ)

 

「ねえ。どうしたの?メア?なんかおかしいよ?僕への当たりが強いし、一体どうしたの?僕…」

 

「何だ?理解できないのか?ノーブルに寄生して生きている君にピッタリだって言ってるんだけど」

 

「…」

 

ミオはベースドだ。

 

しかし、普通のベースドではない。彼はベースドにしてはとても良い容姿をしているためにノーブルから金で買われることがある。そのお金で彼は生計を立てている。

 

いわば、『売り』。それが彼の仕事だった。

 

「別に『売り』自体を悪いとは言ってない。最近、知り合いに聞いたんだ。『売り』をしているベースドが他のベースドを連れ去ってノーブルに売ってるって。ああ。半ば強制的に人身売買をやってるってことだよ」

 

「…」

 

「調べたところ凄まじいスピードで規模が拡大してるらしいね。特に最近はわずか○歳くらいの子供を○○するビデオが流行ってるとか。ノーブルどもも趣味がいいことで」

 

「…」

 

「分かるよ。金があれば何でもできる。君たちは…あれだろ?」

 

…反逆したいんだろ?このクソみたいな世界に。

 

「くはっ…」

 

ミオが嗤った。そこにはさっきまでのミオはいない。

 

「すごい…すごいよ!大正解だ!ダメだなあ!誰か裏切り者がいたのかなあ!?おかしいなあ!?裏切りそうなやつはすぐにバンバン殺していったのに!」

 

「情報源の知り合いは蒸発したよ。君たちが殺したんだろ?きっかけはノーブルのカバンを盗んだときにたまたま見つけたのさ。ダメだよ?密売人は自分の情報を顧客には渡さない」

 

メアが1枚のメモを見せる。それはベースドの住む地下世界の地図が書いてあり、その中の数ヵ所に×マークがつけられている。それぞれの×マークにはその地点に誰が住んでいるのかが記されている。その中の1つにその名前はあった。

 

『ミオ・パラノイア』

 

『取り扱うもの。○○の臓器、体の一部のホルマリン漬け、○○、○○○もののA○、価格次第で専門外のものも請け負います』

 

「いやあ。盲点だったなあ。組織内で怪しい動きを警戒はしてたんだけど外部から調べてくるとは気づかなかったよ!拐うときは痕跡を残さないようにしてたし、顧客も法律に関われるノーブルのみにしてたからね!」

 

「信じたくなかったよ…ミオがこんなことしてるなんて…嘘であってほしかった。なぜこんなことをした?」

 

「なぜって?」

 

「なぜ人身売買(こんなクソみたいなこと)をした!?」

 

「…」

 

「ベースドだって人間だ!嫌なことがあったら苦しむし家族が消えれば悲しむ!お前がやってることは「犯罪じゃないよ?」…何っ!?」

 

ミオはめあを見つめる。

 

「だって僕たちに人権なんてないじゃん。だからどうしたって自由だよ」

 

「…!」

 

「それよりさっさとターンを終わらしてくれない?僕らには崇高な使命があるんだ。()()()()()()()なんて考えちゃいけないよ。メア」

 

「それは…革命を起こすってことか?」

 

「そうだよ!腐ったノーブルどもを叩き潰す!ベースドのみんなを救う!そのために金がいるんだよ!金が!結局世の中は金がすべてだ!」

 

しばらくの沈黙。メアは手札からカードを2枚引き抜く。

 

「カードを2枚伏せてターン終了」

 

ミオ LP4000

手札 2枚

モンスター

パラサイト・ワイアーム

魔法・罠ゾーン

なし

 

メア LP4000

手札 3枚

モンスター

なし

魔法・罠ゾーン

伏せカード2枚

 

「僕のターン!…メア。君がそこまで調べがついてるなんてビックリしたよ」

 

「どうも。私もビックリしたよ。それどころかシリアルキラーもビックリすると思うよ。このメモを見せたら」

 

「メア。お願いがあるんだ…降参(リザイン)してほしい。今ならまだ僕たちは分かり合えるはずだ」

 

ミオはまっすぐメアを見て言った。

 

「僕だって本当はこういうことをしたいわけじゃない。でもね、僕らはこれしか手がないんだ。ノーブルから金をできるだけ巻き上げてそれを元手に兵器を購入してやつらを倒す!ノーブル内部にも僕らに手を貸してくれる人たちがいる!」

 

「…」

 

「さっき僕はベースドに人権がないって言った。でもそれは事実だよね?セントラルの法律にはベースドの権利については何も書かれてない」

 

ベースドには人権がない。ミオのように気に入られているベースドは特別にお金をもらってそういうことができているが本当はレ○プされても文句一つ言えない。

 

ただ、ノーブル側にも一定のモラルがあるためノーブル同士の相互監視的な環境がそういったことを避けさせてきた。実際、ああいったものをお金を払って買っているのには他のノーブルに言わないようにといった口止め料込みといったものがあるのだろう。

 

しかし、その人権のないことが悲劇の引き金を引く。

 

「『ベースドハント』のことか…」

 

『ベースドハント』とは十五年前に支持率が振るわなかったセントラルの政権…ドミル政権が最後の賭けとして行った政策だった。彼らは直近の政治のみだれはベースドによるものだとしてベースドへの対抗感情を煽ったあとに公共の放送でベースドを殺すゲームを流した。

 

信じがたいことだがこれにより政権の支持率は急速に上がっていった。元々、平和で刺激に飢えていた人々にとってはとても楽しいものだったらしい。

 

これ以来、ノーブル、セミノーブルたちにとってのベースドへの価値観は変わった。ノーブルがベースドに被害をもたらすケースは大幅に増えた。実際、ミオたちの誘拐もメアは最初はノーブルの仕業だと思っていた。

 

そして、今でも問題のドミル政権は続いている。

 

「ドミル政権が続く限り僕たちベースドに明日はない。やつらは失脚寸前になったらまた僕らのことをスケープゴートにする気だよ。そして、その日は着々と近づいてる」

 

最近のドミル政権の支持率は落ちつつあった。最近、大規模な不祥事があったらしい。一部では失脚しろという声まであるようだ。

 

「だから、ドミル政権を打倒して僕たちが新たな世界を作る。ベースドが世界を変えるんだ。だからメア。僕に協力してほしい。僕と一緒に世界を「もういい。耳が腐る」…え?」

 

熱く語るミオに対してメアはとても冷めていた。切れ長の目はミオを冷たく睨みつけており。手は怒りで震えている。 

 

「なに都合のいいことばかり言ってるんだ?」

 

「な、なんだよ!何が間違ってるんだ!僕はベースドがこれ以上苦しまないように…」

 

「いや、別に君が信念を持って()()をやっているなら私は認めるよ。認めたくないけど、友人である君が選んだ道だ」

 

「…」

 

メアは続ける。

 

「たしかにベースドには人権はないから何したっていいわけだしそもそもこのままいくとドミル政権に私たちが虐殺されるのも分かる。確かにあいつらは倒さなきゃならない。どんな犠牲を払ってでも」

 

先ほどまで悪かったミオの顔色が少し戻る。

 

「じゃあ…協力して「だけどね」…」

 

「お前がベースドの犠牲を()()()()と言った時点で…お前も堕ちてるんだよ。あいつらのところまで」

 

静寂。今度のはパラサイト・ワイアームのうなり声とフシューフシューという鼻息という雑音が混じっているが。

 

「じゃあ…じゃあ、決別だね。僕たち」

 

ミオが絞り出すように呟く。一筋の涙がミオから流れた。

 

「私を殺すのか?ミオ」

 

「殺すよ。メアを殺すのは…嫌だけど」

 

ミオはメアを見据えて言った。

 

「ミオは私を殺さなきゃいけないんだろうが…悪いが私は勝つ」

 

「悪いけどそれは僕のセリフだよ。君のデッキは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。だから…」

 

ミオはメアの2枚の伏せカードを見る。

 

「そのカードたちはブラフ。勝ち目はないよ」

 

「どうかな?ミラーフォースかもしれないよ?」

 

「…僕のターン」

 

ミオがカードを引く。手札の『パラサイト・エクスプロージョン』を確認する。

 

パラサイト・エクスプロージョン

通常魔法

(1):自分フィールドの表側表示の『パラサイト』モンスターを全て破壊し、その合計レベル×200ダメージを与える。

 

パラサイト・ワイアームで直接攻撃してからメインフェイズ2で発動。それでメアのライフは0になる。

 

「バトルだ!ワイアーム!メアに直接攻撃!」

 

パラサイト・ワイアームが口から衝撃波を放つ。それがそのままメアを直撃する。

 

「ぐううううう!!これは…!まさか!」

 

メア LP4000→1300

 

メアの体が吹っ飛ばされる。メアの体は二転三転して壁に叩きつけられた。

 

「これは…ダメージが実体化している?」

 

「それだけじゃないよ。自分のデュエルディスクを見てみるといい」

 

メアがデュエルディスクを見ると、見慣れない『death penalty mode』という表示が現れていた。

 

「なんだこれは?いつこんな冗談みたいな細工をした?」

 

「決闘中にメアのディスクに僕のディスクからウイルスを送った。この決闘に負けた者のディスクに容量を越えた電流を流し込む機能が動くようにできてる」

 

「なるほどねえ。負けた方が感電死ってわけだ」

 

「これはノーブルから得た資金を元に作られた兵器の一つだ。試作品段階だけど今までの実験できちんと機能は働いてる」

 

「かいせつどーも。罠カード発動!」

 

メアは罠カードを発動させる。

 

「カースド・エレメント!」

 

カースド・エレメント

通常罠

(1):『殉国のナイト・メア』を素材にした融合モンスターの戦闘でダメージが発生した場合発動できる。自分のLPを半分にする。その後、その融合モンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える。

 

「自分のライフ半分と引き換えにナイト・メアを素材にした融合モンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える」

 

ワイアームの体の一部からナイト・メアの腕が突き出て、そのままメアの首を締めた。

 

「ぐう!あああああ!ぐっ!」

 

何とかもがいて締めつけからのがれる。

 

メア LP1300→650

 

ミオ LP4000→2650

 

「でも僕のライフは残ってる!もう終わりだ!パラサイト・エクスプロージョンを発動!ワイアームを破壊してその攻撃力の半分のダメージを与える!」

 

ワイアームが光輝く。エクスプロージョンのとおり爆発するのだろう。しかし、メアは笑っている。

 

「狙い通りだよ。君ならそうすると思ってた」

 

「な!?」

 

「パラサイトデッキは相手のモンスターを吸収してその力で攻めこむデッキだ。だからメインデッキのモンスターは限りなく低攻撃力。1300以上の攻撃力のカードはまずない。だから来ると思ったんだ。パラサイト・エクスプロージョンで」

 

「まさか…」

 

「速攻魔法!呪装解除!」

速攻魔法

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンにどちらか1つしか発動できない。

(1):自分フィールドに存在する『殉国のナイト・メア』を素材とする融合モンスターを除外する。その後、墓地から『殉国のナイト・メア』を特殊召喚する。

(2):『殉国のナイト・メア』を素材とした融合モンスターが特殊召喚に成功した場合発動する。墓地のこのカードを手札に加える。

 

「パラサイト・ワイアームを除外する!そして私の場にナイト・メアを特殊召喚!」

 

パラサイト・ワイアームが異空間へ消え去る。

 

そして、メアの場にナイト・メアが出現した。

 

「…終わりだ。ミオ」

 

「まだだ!僕はパラサイト・シンクロンを「その前に、行うことが私に残っている」…は?」

 

新たなカードを場に出そうとするミオをメアは制止する。

 

「私は『ナイト・メア』の召喚を二度行った」

 

「…それがどうした!?」

 

「何でか分からなかったんだ。どうしてこの力を与えられたのか…」

 

突然、ナイト・メアの体が輝きに包まれる。ミオはその光に驚愕し、メアを見る。

 

「な、何が起こってる!?何をした!?」

 

「ナイト・メアの力だ」

 

「バカな!ナイト・メアは通常モンスター!効果など…」

 

「このカードは『殉国のナイト・メア』の特殊召喚に2回以上成功したとき()()()から『殉国のナイト・メア』に重ねることで場に出せる」

 

メアが右手を挙げる。そこには白紙の何も書かれていないカードがあった。そのカードもナイト・メアと同様に光輝くと白紙ではない1枚のカードへと姿を変えた。

 

「神転召喚!現れろ!『救国の地母神ハウメア』!」

 

そこにいたのは様々な植物の葉や花びらを複雑に組み合わせた装束に身を包んだ美しい女性のモンスターが立っていた。いや、これはまるで…

 

「…神?」

 

「そうだ。このカードは幻神獣族だ」

 

「バカな!?デュエルモンスターズの中でも三枚しかないはずのあの!?ありえない!!」

 

「そうだな。私もありえないと思ってた。でも事実は覆せない。ハウメアは幻神獣族だ」

 

救国の地母神ハウメア ATK2500

 

「見ろ。想定外の事態にお前らの作ったシステムもエラー状態だ。これなら決着がついてもどちらも死なないな」

 

ソリッドビジョンで『想定外のエラー:『death penalty mode』を終了します』と表示される。

 

「クソ!なら僕は「ハウメアの効果発動!」…何!?」

 

「相手ターン中に神転召喚したこのカードの下にあるカードを取り除くことで…自分と相手のライフの差500につき1枚、相手のフィールドまたは手札のカードをデッキに戻す!そして、その枚数1枚につき100攻撃力を上げる!」

 

「そんな!」

 

「君の場にはカードがない!そして…手札は3枚!全てデッキに戻してもらう!」

 

「くっ…」

 

ハウメアが天を仰ぐ。地面から多数の植物の蔓がのび、ミオの手札を奪い取ると全てデッキに戻した。

 

救国の地母神ハウメア ATK2800

 

フィールドのカードと手札0のミオに打つ手はない。終わりだ。

 

「こんな…こんなカード、見たことがない!神転召喚だと!?」

 

「私も驚いたよ。いつのまにかあったんだ。何でこんなカードが私の手にあるのか不思議だったけどやっと分かった」

 

メアはミオを見つめる。

 

「私はこのクソみたいな世界を…終わらせる。ミオとは違うやり方で」

 

「なん…だと?」

 

「ミオの考えは分かるよ。でもやり方が間違っている。たくさんの人を苦しめて得る救いに意味はない。私は探すよ。正しい答えを求めてね」

 

「ふ、ふざけるな!ふざけんなよ!今まで…今まで色んなものを犠牲に僕たちはここまで来た!長い間世界を変えようと頑張ったんだ!それに比べてどうだ!?ぽっと出で!金もない!あるのは神のカード1枚だけ!それでこの状況を「きっと術はあるさ」…っ!!」

 

「私の手に()()()()()がなぜ現れたのか…きっとそこにこの事態を解決するヒントがある…気がする。今まで、幻神獣族のカードはあらゆる時代で波乱を巻き起こしてきた。今回もきっとそのはずだ」

 

「…」

 

「…」

 

「…はは。馬鹿げてる。…そんなカードで世界なんか…」

 

「たしかにそうだな。だけど私はこれに賭けるよ。金もない。名声もない。何もない。でも私にしかできないことだ」

 

「分かってる。メアは信じたことに一直線って…友達の僕が一番分かってるんだから」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…終わりだ。ミオ」

 

「…そうだね。さよなら、メア」

 

ミオのターンが終わる。

 

ミオ

手札 0枚

フィールド

なし

魔法・罠ゾーン

なし

 

メア

手札 3枚

フィールド

救国の地母神ハウメア ATK4000

魔法・罠ゾーン

なし

 

「私のターン!神の攻撃!ブレッシング・ゴッド・インパクト!」

 

ハウメアが天に両手を掲げる屋根があるにも関わらず、雲が発生しそこから凄まじい強さの雨が降ってくる。

 

そして、凄まじい威力の雷がミオを襲った。

 

ミオ LP2650→0

 

決闘が終わった。

 

ミオは気絶していた。ソリッドビジョンとはいえ、神の攻撃だ。精神的な負担はものすごいはずである。しかし、こういったことがこのカードが神のカードだということをメアに実感させる。

 

メアはハウメアのカードを見る。カードは白紙に戻っていた。

 

メアはミオを置いて走り出す。世界を救うため。自分にしかできないことを探しに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ。ミオが負けたんだあ」

 

ミオに着けていた()()()からのデータを聞いてバスローブを着ていた少女は嗤った。巨大で豪華なソファの上でくつろぎながら目の前に置いてある超高級なワインをあおる。

 

「キャハハ!マジかよ!!神のカードって!!いつからこの話は超常現象込みのホラーになったんだ?」

 

その隣ではミオに負けず劣らずの美少年が裸で爆笑しながらベッドの上を転げ回っていた。

 

「グス…グス…ひどいです。ミオくん…辛かったと思うんです…好きな人に振られちゃって…」

 

少年の隣で寝転んでいた少女も裸で体にはたくさんの傷がついている。最近つけられたのか新しい傷や打撲跡もあった。

 

「まあまあ♪神転召喚()()のことは気にしないで、今は私たち3人で楽しみましょう♪」

 

少女はバスローブをファサッと落とす。美しくきれいで淫靡な肢体がベッドで寝ている二人の前に現れる。

 

そのまま少女はベッドへ倒れこんだ。




Tips
ある老人のメモ①
なぜ、神のカードは3体も生け贄が必要なのか。それが古代エジプトの生け贄の概念なら他の文明ではどうか。この研究でそれが明らかになるということに楽しみしかない。

神転召喚
謎の召喚方法。決闘の外から神を呼び出す究極の儀式。
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