GATE オリンピックから繋がる異世界   作:イシグロ

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数話ほど、中島の闇案件を扱います。
今回はちょいと長い、具体的には6千文字…です。

エロいですが、ぎりぎり大丈夫ではという根拠のない自信。これで駄目だったら笑ってください。


ナルシストのペルソナ その1

『さぁ、委ねて…私はあなたの味方よ』

おぼろげな視界の中、酷く蠱惑的で色気のある声が頭の中に響く。むしろ、ねっとりと絡みつくような声だ。ぞわり…ぞわり…、背筋が痒くなるほどに身体を繊細な手つきで触れられている…。

再び、あの声が響き…絡みつく。

 

『フフフ…あなたの、望むようにしてあげる』

 

『あなたは私のかわいい生徒…。私の、私の…可愛い生徒』

 

下腹部が酷く熱い、おぼろげな視界が段々と鮮明になっていく。

ホテルの一室くらいに、程よい広さ。あの声ばかりに気にし過ぎていたようで、どうやらふかふかのベッドに寝転んでいるらしい。中は暗く、唯一の明かりは傍の備え付けられた照明一つ。自分の身体をよく見ると、服も何も来ていない…それに腕が拘束されている。心臓が高鳴る音を聞きながら…目の前を見れば、明かりに照らされ色白の細い身体と、すらりと伸びる四肢そして、…豊満な胸が視界に映った。

だらり、と長い髪がカーテンのように伸びている。

……女性と思わしき人は、俺の上で跨っている。長い髪から覗く、その表情は、どう見ても陶酔のソレだった。

 

俺は現在進行形で起きている出来事に酷く焦り、そのまま体を起こした。

 

 

─転生者の独白─

 

冒頭、俺はとんでもないエロい夢を見てしまった。

滅茶苦茶どこかで見た事のある女性で、しかも身体つきは酷く情緒を誘う程、整っていた…。あのまま寝ていれば、結構進んだような気がするが…あの時、俺の感情は真逆で、こんな事をしたくないと言う拒絶反応で一杯だった。それに、自分の身体じゃあ、無いと思える。

誰かに入り込んでしまった、そんな感じだった。

…さて、それよりも。

 

「ここ、どこだ?」

 

酷く霧深く、近くのモノでさえまったく見えないほど。

距離感など、一切測れない。

へたり込んでいる地面は固い床のようで、俺が着ているのは学生服。記憶によればこの日の全ての授業は終わっているようで、今の時間帯は放課後と仮定する。何で、俺はこんな場所に居るんだ…もしかして、飛ばされたのか?

考えても仕方ない、ともかくこのままジッとしても始まらないし。

周囲に注意しながら、俺は深い霧の中を歩くことにした。

 

…しばらく進んではみたものの一向に開けない視界、変わらず地面は固いまま。

途中、ナニカの置物に足先が当たった。しゃがみ触れてみると陸上で使われる障害物が、乱雑に倒れていた…少し目を凝らせば、幾つか同じやつが倒れている。…なんだ、此処って陸上のフィールみたいなところだろうか。地面に気をつけながら、足を動かす…すでに俺の心臓は、バクバクと脈打っている。

この得体の知れない場所を早く抜け出さないと、そう言った気持ちで一杯であった。

 

どれくらい歩き続けたのか、時間も分からない中…俺は歩き続ける。

幸い、霧の濃度も薄まりつつある。ぼやけてはいるが、先にどのようなものがあるかある程度分かる事が出来た。やはり、ここは陸上競技で使われるフィールドで、俺はその中に居るようだった。

何で、陸上競技…なんだろうか。

そうこうしていると、目の前にデカい空洞が現れた。よく競技選手が出入りする入場口だろうか、そのような奴に似ており先には長い廊下が続いている。その中に恐る恐る足を踏み入れ、周囲を気にしながら…また、歩き続けた。

歩き続けて感覚がマヒしているのか、異様に長い…ようやく曲がり角に差し掛かった時、足音が聞こえたが…直ぐに遠くへ行ってしまったかのように消えた。

角から様子を見ると、壁にもたれかかった中島を見つけた。

「中島!」

すぐさま駆け寄り、中島の様子を見る。…息が荒く、蒼白した顔。

衣服は乱れ、ベルトも外れている。頬には誰かと争ったのか、軽い殴打の痕が見られる。

「中島、中島!俺が分かるか?」

「……う、あ…おまえ、なんで」

「お前、何があった?」

「……わか、らない。気付けば、ここに寝転がされ…それで、あの…いや、化け物に喰われかけた」

「…ここが、どんな場所か分かるか?」

そう問いかければ、腹を抑えながら中島は横に振る。

何か言いかけた気がするが、今は脱出が先のようだな。中島が衣服を整えるのを待っていると、足音が徐々に近づいてきている。手元に武器は無い、中島を見捨てる事も出来ずモダモダとすると…。

「…!なんで、あんたたちが」

足音の正体は、白鷺だった。それの足元には…モルガナが二足歩行で立っていた。それもゲームの時のような姿、頭でっかちの可愛らしいイメージのやつ。…あれ、此処ってまさか誰かのパレスだったりする?陸上関連で俺の知っている奴といえば、…そう言う事なんだろう。

けど、何故か腑に落ちない…。

「おい、白鷺…お前なんでこんな所に居るんだよ」

「モルガナが急に走り出すから、後追って…気が付いたら、こんな場所に居たの。それより、中島くん顔色悪いわよ…ここから、早く出ましょ。さっきから、嫌な予感ばっかりなの」

「おう…中島、ちょっと我慢しろよ」

「…わりぃ」

ぐったりとした中島を背負い、白鷺とモルガナを先頭に俺が来た道を引き返す…はずが、入り口は先程まで開いていたのに、塞がれている。何時の間に、…めちゃくちゃデジャブ感があるが、今は中島を早く外に出さんといけないってのになんつうことしやがる。

闇雲に動いても体力が尽きるだけだ…とりあえず、奥へと進んでいくしかないな。

白鷺とモルガナを先頭に出してしまう事が何とも情けないが…、今の俺と中島は足手まといになっている現状、仕方ない。

「…お前、モルガナだよな。此処って、何なんだ?」

「お前、驚かないんだな。…そうだな、吾輩もここが何なのかはすべて理解していない。だが、ここは人の『ペルソナ』の中であることは理解できる」

「ペルソナ?何だ、ユングの…あー、内なる人格、本性ってやつ?」

「簡単に言えばな。だが、…吾輩もここを出たくてたまらぬ。何もかも全部、食われてしまいそうだ。

そこの男も、その影響だろう…一刻を争うほどにな」

「…待って、誰かいる」

すると、急に白鷺が手を伸ばし静止を促す。何かがこちらに近づいてきているようで俺は何時でも動けるように姿勢を整え、白鷺とモルガナから一歩ほど、後ろへ下がった。中島は相変わらずぐったりとしており、時折呻いている。

カツン、カツンと廊下に響き渡るヒール音。薄暗い空間で、灯りも無いが…ぼんやりと前方に淡い光が現れ、徐々に大きくなっていく。

光は程よい大きさと成り、そこに現れたのは…ふんわりとウェーブな長髪を持った体育教師、鴎女聖子(カモメショウコ)。元オリンピックメダリストで、引退後彼女の教え子たちはみな優秀な成績を残している、と聞いている。暗い話も上がるが、それもかすむほどに他者への指導力が高く、学校はそれを理由に引き込んだのだとか。

何で、鴎女先生がこんな場所に。

「何で生徒が…それより、大丈夫?怪我とかは無い?」

「え、と…中島がさっきからぐったりしていて…」

「そうなの、見せて頂戴。はやく」

見知った大人が居る事への安心からか、俺は鴎女先生の所へ駆け寄ろうとした…。一瞬の怒りを含ませた声に、気が付く事が出来ないほど…俺は、どうやら精神的に参っていたらしい。

しかし、白鷺は怪訝そうな顔で先生を捉えている。腕は震えているが、一向に俺へ静止をかけ続けている…モルガナも、毛先を立たせ威嚇している。二人とも、先生に対して何かを感じ取っていたようだ。

震える声で、白鷺は口を開き…問いかける。

「…誰、ですか」

「どうしたの、白鷺さん?…こんな場所だもの、精神的に錯乱するのは」

「先生は、…私に、優しくありません。前科者である、私には…決してやさしくはしません。…あなたは、誰ですか?」

その言葉を聞いた先生。

すると目の光が消え…口元を上げはじめた。

くつくつと、喉を鳴らし嗤いを耐える鴎女先生。それも長くは続かず、不穏を煽る様な高笑いを上げ…こちらに顔向けた瞬間、先生の顔は酷く歪んでいた。白目は一気に黒へと変色し、瞳は鈍い金色に輝いている。口から覗く鋭い犬歯…まるで、吸血鬼を思わせるほど、鋭い。

ベろり、と長い舌が唇を舐め取る…その仕草は、認めたくはないが酷くそそられる。

「やあね、これだからクソガキは…。さっさとその子を渡せばいいだけなのに」

「…逃げて!あいつの狙いは、中島くんよ!!!」

「気安く私の男を呼ばないで!」

鴎女先生は白鷺の言葉が逆鱗に触れたがごとく荒く声を上げた途端、白鷺へと一気に詰め寄り首を掴み、壁へと勢いよく叩きつけた。硬い材質の壁にクレーターが出来上がり、クレーターからあらゆる方向にヒビが入っている。ガラガラと破片が地面へと流れおち、白鷺も一緒に落ちた。

首元は青白くうっ血し、呼吸が…聞こえない。

「し、白鷺…!」

「サヤコ!」

足がすくんで動かない。

目の前の先生…いや、化け物は何なんだ。

モルガナが何か言っているが、今の俺は目の前の化け物が怖くて仕方がない。逃げようと思っていても、身体が岩のように重たくて動けない。まずいはずなのに、何で俺の身体は動かねぇんだ…!

先生は、恐怖に溺れる俺を見て…うっとりとした顔で舌を這わせる。

蛇に睨まれるカエル、まさにそんな状況だ。もっとも、その蛇は人を丸呑みするほど、たちが悪いが。

「あらあら…、恐かったわねぇ。ごめんなさいね、つい力加減を間違ってしまったわ。うふふ、その顔…可愛いわね。でも、私はその子の女…君は魅力的だけど、私にはその子だけなの」

「激情に身を任せ仮にも教え子に手を出すなど、不届き者めが!!サヤコを手に掛けても飽きたらず、挙句の果てには中島殿を籠絡するつもりか…。貴様は生かしてはおけん、このモルガナ…許さんぞ!!」

「うるさい害獣ねぇ…、殺処分してもらいたいわ。なにも、その子を渡せばあなたたちは見逃してあげると言うのに…」

中島を渡せば助けるだと、クソが…良い気になりやがって。無性にムカムカする…こんな奴の思い通りにしないと、生き残れないって言うのか?泥水を啜る覚悟はあるが、ダチを見捨てるほど…俺は生きたくもないね。

「…うるせぇぞ、くそアマ。誰がダチを見捨てるか、もう…見捨てはしねぇんだ!」

ようやく声を出す事が出来たが、…鴎女は俺たちを汚物と捉え蔑むようにこちらに視線を向け…冷淡な口調で言葉を紡いだ。

白鷺は一向に動かない…。

 

「はぁ…うるさいクソガキだ事。どいつもこいつも、一人前に吠えるだけで、後はとんだふにゃちん。その点、志水は気立ても良いし何より、全部相性が良くて…私の好みなんだもの…志水が居れば何もいらないわぁ。

あなたは知らないでしょうね…彼は可哀想なの、皆彼の才能に嫉妬してあんなことを仕出かす…クズよ。

だから、全てが敵だとしても…私が、私だけが志水の味方」

 

「だってそうでしょ、私は志水に何でもしてあげれられる。陸上を続けたいなら、私が指導してあげて上を取らせてあげる。金銭面でも援助してあげる、男の子だもの…そう言う事だって。

私は、オリンピック選手ですもの」

 

先生は、一呼吸でその言葉を一気に紡ぎ終えた。

俺は先生に見切りが付けた瞬間でもあった。第一、オリンピック選手というのは日々オリンピックに出場権を得る為、出場してもなお結果を残そうと力を蓄え続ける人だ。ハッキリ言って、他の奴…それも高校生の有力候補を支援できるほど、余裕無いはずなんだけどな…。

いや、全面または少し支援する選手もきっと居るかもしれないが…殆どは、余裕は無い。

それに、この女は酷く勘違いしてやがる。そんなに中島が大事なら、話している間にもさっさと俺を殺して、モルガナを吹っ飛ばして奪いにくるだろ。

それをしないでいる辺り…そう言うこと。

「勘違いしてんじゃねぇよ。お前が恋しているのは中島じゃねぇさ…、恋に溺れるお前自身に酔いしれてんだよ…泥酔女が」

「…こんの、クソガキ…キャ!」

すると、いきなり女の目の前に先ほどまで倒れていた筈の白鷺が立ち塞がる。

もはや先生なんてつけるほどの人間ではない…女、鴎女は驚きながらも拳を振るい白鷺をのけようとするが、…白鷺は鴎女の拳を簡単に受け止めた。頭は血だらけで、口元も真っ赤に染め上げぼたり、ぼたり…と血液が床にこぼれ小さな池を幾つも作り出していた。一向に動かない自身の拳に焦りの表情を見せる鴎女、その時…モルガナが動いた。

「吾輩たちが時間を稼ぐ、直ぐさま戦線を離脱しろ!!」

腰に差していたサーベルを抜き、ギラリと先端が光ると同時に鴎女に向け目では追い付けない速さの連撃を入れる。片手を捕られたまま、モルガナの攻撃をモロに受ける鴎女の表情は憤怒に満ち、今にでも爆発しそうだ…いや、あの性格では爆発しているだろう。

モルガナの言う通り、俺は中島と共にその場を離れる。

…俺はまた、見捨てるのか。いや、これは戦術的には良い判断なのだろうな。

 

 

来た道を迷うことなく走り続ける。

……納得がいかない。

足手まとい、それだけで俺たちはあの二人の足枷になっている。

未だ意識が朦朧としている中島でも、今の状況に対し酷く悔しそうであった。

 

不意に、背後から勢いよく頬をかすめる。しかし間を置かず、左足に激痛が走った…あまりの痛さに声が出ず、中島と共にそのまま床へとダイブしてしまった。

「が…アァアア!!!」

激痛で思考が定まらず、悲鳴を上げてしまう。ゆっくりと左足へと視線を向ける。太腿から足首にかけて、びっしりといくつもの長い針が貫通していた。何で、長い針が…そんな事を思うも、痛みで涙と鼻水が同時に出始め、どうにかなりそうだ…痛みが、我慢できない。

それでも我慢しなくちゃ、中島が危ないって言うのに…このままだと、あの女に追いつかれる。

グルグルとめぐる入り混じった感情を押しとどめ呻き声を上げ、這いずりながら中島を引きずり逃げるようにするが…ドサリ、と前方の床に何かが乱暴に放り出された。それは傷だらけで血だらけな白鷺とモルガナであった。…白鷺至っては、もう…駄目なのかもしれなかった。

足がひしゃげ、首元が真っ赤に染め上げている。モルガナの方が、息はあるが…酷く弱りきっている。

「しら、さぎ…モルガナ…?」

…返事がない。

「…あ、あ」

「手こずらせやがって…クソガキ共。さぁ、志水…私の元へ戻ってきて」

「やめ、ろ…ギ、ィいいっぃいい!!!」

突き刺さった針が鴎女の足裏で押され、沈みこんでいく。

「どう、痛いでしょ。そのまま死にかけてちょうだい…」

深く突き刺さる針が幾つもあり、頭がショートしそうなくらいに激痛が長く続いている。俺が呻いている間に、中島へと駆け寄る鴎女…そのまま、志水へと跨り始めた。意識が定まらない中島を良いように弄び、衣服に手をかけ始めた。

中島は何とか阻止しようと、力の定まらない両腕で鴎女を押しのけようとするが…力の差は歴然。

この女、ここでおっぱじめる気かよ…気が狂ってる。

「やめろ…俺は」

「志水、アァ…志水!…一つに、私たちは…!!私のモノに!」

おっぱじめる前からエクスタシーに酔いしれてやがる…くそ、痛い。中島から離れさせないとなのに、痛すぎる…。

 

「ふざけ…るな」

 

中島は、弱々しい声ながらも…冷たい声を発した。息を荒げ、何とか抵抗を続ける中島…その目は徐々に赤く染まっていく。

そう言えば、コイツ…確か…。

 

「俺は、…お前の、玩具、じゃねぇ」

目が紅へと染まる。ぐるり、と円を描くように三つの勾玉が浮き上がり回転する。

 

「俺の、……友達に、なにしやがる。…くそアマ」

三つの勾玉が徐々に溶け合い、一つの形を作り出した。

 

「俺の友達を、傷つけた…なぁ!絶対に、許さねぇ…俺は、お前を殺したい!!」

やがて勾玉は姿を変え、四ツ刃の手裏剣へと変化していった。再度、手裏剣は回転しそして…。

 

「別天神(コトアマツカミ)・アシカビヒコジノカミ」

目の前で、俺は写輪眼…それも、万華鏡へと一気に駆け上がった瞬間を目撃した。

 

 




元ネタらしく、写輪眼もそっち方向で。
ただ、ちょっと能力は違うようにしていきます。

バトル、ではないです。彼らは武道経験者は居れども戦えるかといえば現代っ子で子供、無理に近いです。
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