GATE オリンピックから繋がる異世界   作:イシグロ

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今回も長い、次あたりで中島の闇案件を締めたい。

転生者の過去もチラリ、と。…マジで全員やれるかな。GATEも絡ませにゃならんし。


ナルシストのペルソナ その3

深く、暗く…それでいて寒い。

深淵のようで、深海のような…真っ暗な不思議な空間に漂っていた。ただ、目の前に一筋の赤い光がぼんやり、と小さく輝いていた。それを目指すように、上へと夢中になって浮上していこうとする…だが、上がれども上がれども、その光に辿り着けない。手を伸ばし、なんとかその光を掴もうとした時…、ナニカが突き抜けた感覚が起きた。

ようやく、外へと抜け出せた…。

抜け出せたはずなのに…、辺り一面真っ赤な水で埋め尽くされ、水の上には黒く大小無造作に浮かぶ物体、それは…死体。自身の知っている人は誰もおらず、見知らぬ人ばかりなのだが…不思議と、懐かしさがこみ上げてくるような…気味の悪さ。

無残な死体から目を逸らすように、上を見上げた…。

 

空に大きな瞳、それもまるで天文図のように四つ刃の手裏剣を軸に三つの勾玉がグルグルと、廻っている。

 

すると、影が覆い被さった…そこには、俺と同じ姿をし…あの空に浮かぶ瞳を持っていた。いきなり自身が現れた事に驚いたのか、声も出せず口を魚のようにパクパクと、開けたり閉じたりとしてしまった。…ぼたり、と頬に何かが垂れ落ち男の目から、血が涙のように流れ出ている。泣いている、そう見えてしまう程に血を流し続けていた…。ふと口元を見ると、何か言っているが…聞こえない。

そして、自身に似た男の瞳の中に宿る手裏剣の回転を見た瞬間、視界が暗転した。

 

「…霧が深き…愛憎、……ネ…カタ…ス」

 

 

気が付けば全身汗が噴き出たかのように身体中がベタベタした状態で、目が覚める。目に映るのは、あの瞳ではなく…見知った天上であった。あぁ、俺は昨日の内に入院からようやく帰って来たのか…、こうなる前の記憶が浮かび上がっていく。

ズキリ、と両目が軽い痛みが走る。長引かない痛みだった…俺はベッドから降り、洗面台へと直行し鏡を覗いた。

そこには目を真っ赤に染め、あの夢の瞳と同じような模様が浮かび上がっていた。

「俺は…、そうか。“うちは”になったんだな…」

そんな呟きが、無意識のうちにこぼれた。

 

 

─転生者の独白─

 

あの事件から一週間とちょっと、俺…俺たちは学校へと通う事が叶った。

重傷であった白鷺やモルガナも、この日から復学が叶い一緒に授業をしている。モルガナは相変わらず、白鷺の机の中で丸まっている…たまに、先生からの指名で机の中で暴れられるくらいには元気だ。

…問題は、中島だ。鴎女…先生との溝の所為で鴎女先生を慕い、おそらく関係があったとされる生徒に絡まれる羽目になった。とは言え、流石にこの教室に来る馬鹿はいないらしく、ただのやっかみだろう…。

ぼんやりと、小説を読みふける中島を横目に見る。

「そっとしておくのが良い」

DEVU、…澁澤がそう呟いた。俺はどうも気になって仕方ないが、それがかえって本人によくないのだろう。

「…」

「愚民、お前は根っからの善人だ。気になってしまうのは仕方ないが…今は、変わらず接するだけで良い。区切りをつけるのは、俺たちではない…己自身の仕事だ」

「そう言うもんかね」

「どのような形でも、結局は己自身がやらねばならん。どんな状況でも、選択権を他人に押し付けても良いことは無いぞ」

時々、澁澤は俺たちよりもハードな人生を送っているんじゃないかと思う…。金持ちの覚悟、なのかはわからないが…決して人に委ねないぞ、っていう気持ちが強い。何と言うか、それで痛い目に合っているのだろうか…そうだとしたら、澁澤なりの忠告なのだろう。

…しかし、思えばどうやってあの異界へと連れて来られたのか。

全員に、放課後について聞いてみたが特に変わった様子は無かったと聞く。しいて言えば、俺と中島、白鷺は先に家路についた…それが原因なのだろうが、決定打にしては弱い。中島は鴎女と接点どころか重要人物、引きずり込むのは当たり前だ。だが、俺と白鷺はそこまでの関係ではない、白鷺に至っては嫌っている…分からん。情報が少ないと言うか、皆無だ。

俺の場合はただ単に、偶然巻き込まれただけだろう。

…鴎女はどうやってあのような化け物になりえるほどの力を得たんだ?そもそも、そんなニュースは聞いていない、報道すらもされていない。異界発生は小規模ながら、連日発見されたと言う報道されているが…。

 

 

…地面が固い。

俺は身体をおこし、辺りを見わたした…。そこは以前連れて来られた時と同じく、霧深い場所であった。

「な…!?何で…まさか、あの女生きて」

いや、落ち着け。

まだ、あの女…鴎女が作った異界とは限らない。とりあえず、ここに立ち止っても時間が過ぎるだけだ、せめて探索していく方が良い。

周囲に注意し、歩みを進めると…やはり、ここは陸上競技場のようで、地面には陸上で使われる道具が乱雑に置かれている。そう言えば、鴎女は陸上競技の元オリンピック選手だったな。此処は以前、俺の予想では中島の心理描写を表したのかと決めつけていたが…、思えば鴎女だったんだな。

 

歩けども、歩けども霧が晴れない…それどころか、段々濃くなっている。

いったい、ここは前回とどこが違うんだ?陸上競技場であることに間違いはない、変化があるとすれば競技道具の乱雑具合が、激しい事ぐらいか。

歩き続け床に散乱している競技道具も、徐々に酷く散乱していき足場に余裕がない。この散乱具合の変化を見ると、…奥へと近づいているからだろう。けど、何でまた、俺はこんな所に来ているのか。

考えても答えは浮かばない、歩き続ける他ないな…その内、ひらけた場所にぶち当たるだろう。

…噂をすれば何とやら、霧が薄れ競技道具も少なくなってきた。

先の視界がハッキリとした頃、目の前に黒い影…人影が立っていた。鴎女か、…それにしてはデカいし、男っぽい。

もしや…?

 

「…中島?」

 

そう、人影へと呼びかける。

すると、人影は振りかえりこちらを見つめる。中島と酷似した外見ながら…瞳は金色に輝き、白目の部分は黒く染まっていた。

「中島……っ!!」

もう一度呼びかけ、駆け寄ろうとした…ふと、足元を見てしまい声を失う。

足元に転がっていたのは、あの時の原型を失い化け物になった鴎女、と思わしき肉塊。左腕は当然なく、新たな変化として…あの時以上に、ぶくぶくと肉付きが増し、もはや球体に近いほどにまで、膨らんでいた。目は埋もれ、四肢は無くなっており人間のプロポーション等皆無に等しい。

人の手でここまで人…いや、化け物を醜くさせることは可能なのか?

俺は目の前の惨状に、どうしていいか分からずただ、唖然と見つめる他なかった。

この状態にしたのは、中島…仮名を裏中島、だろう。目の前の裏中島はこちらをじっと見つめる以外、どうこうせずにいる…精々怯えている俺に対し、嗤っているくらいか。不謹慎な話だが、顔が良いからか腹立つわぁ…。

「…お前、中島か?」

「…」

「沈黙は肯定とするぜ。…鴎女のその様子だと、お前の写輪眼の能力か。えげつない事するな、どんだけこいつが嫌いなんだよ」

「嫌い、か。あぁ、嫌いだとも…この女も、自分も嫌いで仕方ない」

お、喋るようになった。

しかし、自分が嫌いか。年齢的に多感なのだろうけど、…おそらく自分が行ってきたことに対し呆れと、後悔が混じっているんだろうな。俺は中島をそこまで知ってはいないが、スポーツニュースとかで結構な成績を出していたな。それに、やっぱり高校生の内に九秒台の壁をぶち破ったのが大きい。

その点を踏まえ、コイツの周りは一気に敵に回っただろうよ…なんせ、この時代はまだあの最速の選手はまだ登場していない。

だからこそ、みみっちいことが行われたのだろう。嫉妬という名の悪意による、イジメが…。

その所為で、中島は…あの事故を負ったのだ。同じ陸上部の奴らによる悪辣な傷害事件を。

 

「たった九秒を超えただけだ。それに対して、あいつ等は容赦なく俺を攻撃したよ…当時、俺のコーチの一人として鴎女先生も加わっていたことも、要因だった。あの女は顔も良く、成績のいい男をその容姿で堕落させていたらしい…俺も、まんまと引っ掛かった」

 

「情けない話だ、だからこそ…俺が嫌いだ。

あの女のお気に入りだったことで、あいつ等のいじめは加速…折れたよ。陸上を離れる時も、あの女の力で裏でのことは揉み消され…このクラスへと編入。…けどな、俺はお前を含め、クラスの奴らを好きになったようだ。後ろめたい過去を持っていたとしても、突き放さず馬鹿みたいに接してくれる…お前らを、俺は好きになった」

 

「…だが、俺はそれでも自分が嫌いで仕方ない。

この世界から、消えて無くなりたいほどに…俺は、自分に嫌気がさしちまったよ」

 

中島は一度顔を伏せると、直ぐに顔を上げ…こちらを見た。

あの金色だった目は、瞬時に紅色の写輪眼へと変化していた。四つ刃の手裏剣、俺が知っているその写輪眼は、おそらく幻術最恐の能力。といっても、原作をそこまで深く知らない…だが、そんな能力だったな。

「俺は、確実に負けるぜ?」

「負けてくれ。死んでくれ。…お前のその視界に映る、俺が何よりも…大っ嫌いだからな!!」

滅茶苦茶酷い言い訳だな、おい。

てか、コレってマジでまずいパターンじゃん。…鬼ごっこだとしても、コイツ…離れていたとは言え、陸上部。

 

フフフ、死んだな!!(絶望)

 

 

 

競技道具が散乱した陸上競技場。

とくにトラックの箇所は酷く散乱しているが、俺に掛かれば屁でもねぇ。スタートダッシュ時のあの瞬発力、流石に死を悟ったが…運よく目先は酷く散乱していた為空いた隙間の的確に足を踏み込めた。おかげで、あいつの序盤の加速を崩せることに成功、尚且つ散乱している道具を蹴飛ばし中島の妨害を怠らなかった。

流石に当たれば痛い様なので中島は、必ず避けた。避ける事で一瞬の隙が出来る、その分距離を縮ませる事が出来た。

俺たちはそれを繰り返し、トラック周辺を走り回っている。

そろそろ、妨害に仕える道具が心もとなくなってきた。いや、道具は大切に扱うべきなんだけど…状況的に、無理。

「うぉおおおおおっ!!!いくら走り特化でもぉお、俺の年季の入った鬼ごっこ技術には付いてこれまい、バーーーカッ!」

「くっそ…お前、どういった…」

いくら走り屋でもな、体力は必ずある…それも短距離なら、尚更だ。

走り続ける俺の背後から、低く冷たい声が聞こえる。

「…俺を、本当の中島と思っているのか?おめでたいな」

「いいや、お前は…ペルソナ。内なる本性だよ、それに俺はお前を殺せねぇさ」

目の前にあの時の入場口が見える。…しかし、近づけどもその先は深淵のように、真っ暗であった。俺はその光景を見た瞬間、まずいという一言がよぎった…良くない、これは良くない、と。

ギリギリまで近づき方向転換で、あの裏中島を入場口に叩き込めるだろう…。

だが、それでは中島が…死んでしまうのではという思いがあった。

 

どうする?

 

どうすれば…、どうすればいい。

 

「そら、目の前は真っ暗闇だぞ…?近くなってきたな」

「…」

近づいて来る。深淵が、暗闇が、…近づいて来る。

目の前の入場口の先で、誰か…ナニカの視線が、俺たちへと集中する。幻聴か、おいで…おいで、と言っているような気がした。いや、幻聴だ…目の前には、真っ暗異空間しかないだろうから。

だが、近づいて行くたびに…精神が削られるほどに、寒い。息切れが今以上に激しくなってきた。

「…中島」

「は?ふざけ…何だあれは、……おい、止めろ。まて、行くな…止まれ!!」

あと一歩のところ、入場口へと踏み込まずでグイッと背後に引っ張られた。裏中島が、俺の腕を掴み…急停止させた。足先が、入場口に触れていたが…俺はそのまま、裏中島へと倒れ込んでしまった。

後ろから、カエルが潰れたような悲鳴が聞こえたが…俺は、目の前の入場口に違和感を覚えていた。

いや、この空間自体が…異常なのだと言う事に。

俺の下敷きになっている裏中島から離れ、…問いかけた。

「…お前、ここの異界の主なのか?」

「違う、ここは変わらずこの鴎女のもんだ。…だが、アレは知らない…何だか、懐かしい…いや、違う気持ち悪い。気持ち悪いんだ…だが、俺が求めていた…求めていた場所だった」

どういうことだ?

いったい、何が…。…ナニカ、聞こえる上に、嫌な予感がする…!ゆっくりと振り返ると、そこには。

 

「ァァ…アアアア、ジ、ジジズィイイ、ジズイイィイイ!!」

 

俺たちの背後から耳障りで気持ち悪く…寒気を覚えるような声を上げ、こちらに迫ってくる鴎女の姿があった。四肢すらなくなっていた筈なのに、いつの間にか腕を四本生やし勢いよくこちらに近づいて来る。

まずい、このままでは裏中島が…!

考える間もなく迫る鴎女に咄嗟に俺は中島の腕を掴み、横へと跳んだ。着地が上手くいかず、そのまま二人で勢いよく地面へと叩きつけられた。

すげぇ痛い…。

勢いが良いのか、鴎女はそのまま入場口へとダイブしてしまった…呑み込まれるように、吸い込まれるように。入場口からあの声が聞こえるが、一向に此方に来る様子は無い…それどころか断末魔のような悲鳴が聞こえ、それっきり…静かになった。

…しばらく、沈黙が続く。

それを終わらすように、俺は口を開いた。震えている、俺は怖いと思っていた…この状況に、あの入場口に。裏中島なんか目じゃない程に、あれらに対し…俺は心から、恐いと実感している。

「なんだよ…一体、何が起きているんだ?」

「…分からない…。…そろそろ、異界が崩れる。戻れ、お前は此処に長居するな」

「おい、お前は…!」

「心配するな、俺は…ペルソナ。元の器に戻る、そろそろ夜が明けるからな」

待て待て、今の時間夜なの?今の俺の記憶、マジで最初の時と同じなんだけどぉ!!?しかも夜明けだと、じゃあ…俺ってば一人でこんな所まで飛ばされ…おい待て、視界がかすんでいく…んだが。

おい、ちょっと、ま……。

 

すやぁ…。

 




中島が顔と成績が良いばかりに、いろんな方面で敵と味方を作っちゃった感じです。
特に鴎女先生が地雷だったパターン。

まぁ、当の鴎女先生は落ちちゃいましたけどね。


転生者の過去も明かしていくつもりです。
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