Infinite possibility world ~ ver Sword Art Online   作:花極四季

11 / 11
ジャンジャジャ~~ン!!今明かされる(一部の)衝撃の真実ゥ!!

ここから設定が爆発していきますが、それでもストーリー展開は緩やかです。つまり、説明回。
それと、一部分かりにくい描写があると思いますが、仕様です。これからもそんな描写が続いて読みにくいかもしれないけど、仕様です。調整中です。

そんなことよりも、みんなShadowverse、しよう!



第十一話

木綿季と共に宿屋の一室で二人きりになり、幾許かの時間が経った。

先程から、抱き着かれたり匂いを嗅がれたりと流石に恥ずかしい行為が繰り広げられていたが、今はテーブル越しに座ってニコニコしている状態で落ち着いている。

どこまでも自分の知る木綿季で、違いと言えばせいぜい記憶にあるよりも髪が伸びていて、髪色が紫とも取れる濃い黒色になっていることぐらいだろうか。

 

正直、夢なんじゃないかと今でも疑っている。いや、疑わない方がおかしいのだ。

ゲームのアバターである以上、見た目が現実の住人と偶然同じになっても不思議ではないが、木綿季の発言に説明がつかない上に、そもそも此方もアバターの外見である以上木綿季からも断が付くはずがない。

――そんな理屈以上に、内から湧き出る強烈なまでの違和感が、目の前の木綿季は紛れも無く本物だと告げている。

頭にガンガン鳴り響く痛み。それと連なる形で脳に刻まれていく、全く知らない記憶。

木綿季はHIVに感染していて、闘病生活虚しく若い命を散らしている。これが、自分の知る記憶。

そして、もうひとつ。木綿季は今も生きており、メディキュボイドを用いた闘病生活を続けていて、徐々にではあるが快復に向かっているという記憶。

まるで木綿季の死を認められないが故に見た夢物語のようなそれを、自分は当然の如く受け止めている。

理解できない、が――それでも、このデータ越しに伝わる温もりが本物だと言うのならば、それをどうして否定出来ようか。

 

「本当に、木綿季なのか?」

 

「もう、それ何度目?ボクの言葉が信じられない?」

 

「いや、しかし……」

 

「……なんて、冗談。お兄ちゃんの懸念も尤もだよね。取り敢えず、お兄ちゃんがSAOに囚われてからの事を、全部説明するね」

 

――囚われていた?SAO、つまりゲームの中に、ということか?

その疑問を口にするよりも早く、木綿季が説明を始めた。

 

「そう、まずお兄ちゃんが茅場晶彦がSAO事件を引き起こしたすぐ後の事。茅場が何かを企んでいると睨んでいたお兄ちゃんは、ヴァンさんに後の事を託して自らもゲームの中にダイブした。ボクがそれを知ったのも、後にヴァンさんに聞かされたからだよ」

 

半ば予想していたとはいえ、荒唐無稽な内容が木綿季の口から語られ、頭が痛くなる。

頭痛の種は、そんな荒唐無稽な内容も、さも当然と言わんばかりに納得している自分自身にあるが。

彼女の口から未知のワードが出る度に、それを補完するように脳が記憶を上書きしていく。いや、掘り起こしている、と言うべきか。

まるで最初から存在したかのように融和する記憶。

全く同じ色の絵の具を混ぜ合わせたように違和感を与えないそれは、この未知の記憶もまた自分が持つ記憶である事を裏付けている。

だが、知らない。知っている筈がない。その事実に納得がいかない以上、疑問が解消されることはない。

しかし同時に、彼女の話を聞いていく内にそれも解決する。そんな根拠のない確信が自分の中にあった。

 

まず、茅場晶彦。

自分の知る茅場は、SAOを開発した(多分)ドS設定を盛り込んだ変態プログラマーって言うイメージだけの存在だったが、新たな記憶には量子物理学者、天才的ゲームデザイナーとして天才の名を欲しいままにした人物という情報が追加されている。

それだけではない。自分は茅場と現実世界で互いに顔を合わせている。

それどころか自分自身、そんな天才茅場の後継者と呼ばれる程の天才で、主に医学関係でその頭角を表した麒麟児だと持て囃されていたとのこと。

……流石にはぁ?と思ったね。なんだよそのハイスペックな奴、どう考えても自分じゃないわ。

しかし、その新たな記憶が真実であると告げている。認めたくはないが、何故か納得してしまう。

気持ち悪い。そうとしか言いようのない、不快感の無いしこり。

自分が自分でなくなっていくような感覚。バラバラになりそうな意識を繋ぎ止めるのは、木綿季が元気に会話を続ける姿。

 

それは、夢で見た光景。

叶わない筈の理想の残滓が、神様の悪戯か何かで形を得た、奇跡の産物。

初めて出会った時からHIVに感染していた彼女と触れ合えたのは、あの時が初めてなのだ。

それがデータ同士の触れ合いだとしても、あの時感じた温もりは、間違いなく木綿季の持つ暖かさだ。

手放したくない、失いたくない。そんな情けない執着心が、理性の崩壊を押し留めていた。

 

「ヴァンさんは、お兄ちゃんが提唱した新しいHIV医療技術の実現を進めると同時に、茅場の所在を突き止めるべく秘密裏に行動していたの。私が知るかぎりではまだ発見には至ってなかったけど、時間の問題だと思う」

 

ヴァン……そう、ヴァン=レーベル。

自分の記憶にはないが、新たな記憶には自分の専属サポートを務める執事であると刻まれている。

執事って……何なの?セレブなの?成金なの?

明らかに現実の自分とは境遇が違いすぎる。

うちはよくある一般家庭だ。少なくとも、執事なんて金持ちが雇うようなヘルパーに知り合いはいない。

なら、この記憶は何だ?

真実とは程遠い記憶、しかしどこまでも真に迫っている。それが意味する答え。

 

「――平行世界の私に憑依、したのか?」

 

導き出された答えもまた、荒唐無稽なものだった。

しかし、そうなると説明がつく事が多いのもまた事実。

未知の記憶は、平行世界の自分との記憶が混ざった結果。

それらの記憶に疑問を持てど違和感を感じなかったのは、それは元々あってしかるべきものだから。

木綿季が生きているのも、木綿季が存命中の世界に迷いこんだから。

如何に整合するとは言え、一笑に付す答えだ。そう、普通ならば。

その答えに至った途端、まるでパズルのピースが嵌ったかのように記憶が一体化していく。

本来ならば異物である自分が、現状を正しく認識することで、ようやくこの身体に適応出来たと証明するかのように、じわじわと最適化されていく。

 

「……お兄ちゃん?」

 

「……ああ、何だ?」

 

「いや、ボーッとしていたようだったから、どうしたのかなって」

 

「……なんでもないさ」

 

出来得る限りの笑顔で、そう返す。

この答えが真実だと言うのならば――自分は木綿季になんて残酷なことをしているのだろうか、と思わずにはいられない。

木綿季が微笑んでいるのは、自分(・・)ではなく()にだ。

しかし、木綿季はその事実を知らず、目の前の紛い物を兄と呼び慕っている。

反応から察するに、自分にとってキャラクターとして構成されていた人格は、私にとってはごく当たり前の反応なのは明白。

同一存在と定義してはいるが、振り返ってみればこんなにも大きな差異がある。

今は上手く噛み合っているだけで、これからも同じとは限らない。

病は精神的に強靭である程抵抗できるものだ。逆に言えば、精神的に弱っていればどんな病とて治らない。

難病を抱えている中、快復に向かっている彼女に真実を告げたらどうなる?

裏切り、虚無感、喪失感――とにかく沢山の悪感情で支配されることだろう。

それは間違いなく、彼女のコンディションに多大な影響をもたらす。そんなことは、絶対に許されないことだ。

だから――この真実は、いずれ問題がすべて解決するその時まで抱えておく。

問題の先延ばしだとしても、それが最善ならばそうすべきだ。

……決して、木綿季に侮蔑されたくないからではない。そうだ、間違いない。

 

「そう?じゃあ話の続きいくね。お兄ちゃんがこっちに来ている間に、アミュスフィアって言うナーヴギアの後続機が発売されたんだけど、それは絶対安全をモットーに作られたもので、その品質は実証と共に証明されて、今ではSAO以外のVRMMOと共に徐々に浸透されつつあるんだ。まぁ、アミュスフィアに関してはそこまで重要じゃないんだ。問題は、ゲームの方。ボクはそのゲーム――アルヴヘイム・オンラインにログインしていたんだ。ヴァンさんがインストールしてくれたんだけど……どうしてか、いきなりワームホールみたいなものが目の前に出たかと思ったら、こっちの世界にいたんだ」

 

「……信じる他あるまいな。しかし、他のサーバーから別のオンラインサーバーに強制転移だと?個別のサーバーである以上干渉など出来る筈がない。いや、しかし私と木綿季が使用しているネットワーク回線は独自のプロバイダを使用していることから、類似する信号データを探知してALOにログインしている木綿季がSAOに存在していると誤認された?だが、それだけでは実際に別のサーバに転移してSAOにログインされた理屈が説明できない。いや、それよりも木綿季がこの場に居ることが、私の考えなしの行動によるものだとすれば、どう詫びれば良いのか――」

 

「てい」

 

思考の海に溺れていると、鋭い刺激が額の一点を突く。

顔を上げると、むくれ顔の木綿季がデコピンの体勢で構えている。

先の刺激は、恐らくデコピンによるものだろう。そして、今も構えているのは、一種の脅しか。

 

「それ、悪い癖だよ。考察は結構だけど、考えたってどうにかなることでもないんだから。それに、って言うとアレだけど、ボクの場合ナーヴギアからのログインではないから、仮にこの世界で死んでも脳が焼かれることは無いかな―って。だからそこまで深刻にならなくてもいいんだよ?他の人には悪いけどね」

 

そう誤魔化し気味に笑う木綿季の言葉の一部が、一際脳を刺激する。

……思い出す。思い出したくもなかった、この世界の真実。

ゲーム内での死と共に、ナーヴギアを通じて電磁波が発生され、脳を焼き切る。

つまり、デスゲーム。本来ならば有り得ない、茅場の考えた限りない異世界への没入方法。

狂気に満ちた、異世界への羨望の果てが、これだ。

 

……ということは、キリトも、アスナも、クラインもエギルもシリカもフィリアもストレアもサチも、明日を掴むために必死に戦っている。

迫り来る死の恐怖に耐えながら、歯を食いしばり、声を張り上げ、重たい足取りながらも、確実に先へと進んでいる。

別世界からの来訪故に、自らを責めるのはお門違いであるとはいえ、果たしてどこからどこまで自分がいた世界と此方の世界が交わっていなかったのかを考えると、楽観的には考えられない。

自分の浅慮な行動が、知らないところで誰かの死を招いていたかもしれない。そう考えるだけでも、恐ろしくてたまらない。

そして何よりも――私自身、彼らの抱いている絶望とは無縁の所に居るという、決して超えられない壁があることを、知ってしまった。

 

茅場の野望を事前にある程度予見していた私は、市販のナーヴギアをベースに独自の改造を施したオリジナルのヘッドマウントディスプレイを使用してログインしている。

絶対という保証はないが、オリジナルのものを使用していることもあって、茅場の干渉できる領域からは外れている可能性は十分にある。

この世界の死は、私にとって何のデメリットの無い可能性があるのだ。

それが、この世界を懸命に生きる者達への裏切り行為のように思えて、酷く胸を圧迫する。

勿論、絶対ではない。だが、僅かに希望があるだけでどれほど差があるかなど、考えるまでもない。

木綿季は事故だとしても、此方の場合は故意だ。反論も弁明の余地もない。

選択したのが私であって自分には責が無いとしても、事情を知る者以外にそれは通用しない。

 

最早ゲーム感覚ではいられない。それは、戦いにおいても言えることだ。

だが、私にとってその感情は希薄なままだ。

自分が死という可能性を突きつけられて冷静でいられるのも、私が事情を言葉ではなく心で理解していたからこそであって、普通ならば発狂しても不思議ではない。

……そんな恐怖を前に、皆は前に進んでいる。ゲームクリアによる開放のために、迫る死への恐怖を押さえ込みながら。

その姿の、なんと美しいことか。

セーフティがある自分では決して辿りつけない境地に、彼らはいる。

だが、そんな不甲斐ない自分にだって出来ることはある。

単純なことだ。――彼らの倍、いや、それ以上に戦い抜くこと。それに尽きる。

ゲームオーバー=死が直結している彼らでは出来ない無謀な戦い方や戦術、作戦を担うことで、全体の生存率を上げる。

それが、安全をある程度保証された自分だからこそ出来る役割。

他人の死の重さに便乗することで、自らも決死の覚悟を保てる。逆に言えば、そうしなければいつまでも自分だけが浮足立った存在となり、皆の足を引っ張ることになるだけ。

これまで知り合ってきたプレイヤー達から、一人も犠牲者を出さない。

それぐらいの覚悟なくして、彼らと共に肩を並べるなんて出来やしない。

その為ならば、幾らでも傷つこう。地獄のような戦線の矢面に立とう。

だが、決して死ぬつもりはない。

自分の死が切っ掛けで戦線が崩れるようなことがあってはならない。

可能性が低いとはいえ、ゲーム内での死亡が現実にもリンクしていた場合、木綿季がもしも無事に帰還したとして、悲しませてしまうことは必定。

それに、自分は数少ないウィルスバグからの抗体を持つ可能性がある、替えが利かないポジションに身を置いている。

自分一人が死ぬことで、恐らくかなりの人間がねずみ算式に死ぬ。自分と違って、確実に。

その中に、何人知り合いがいる?分からない。考えたくもない。

悪夢ばかりが脳裏を支配する。それを振り払わんと、より一層決意を固め、心を震わせる。

それが、どんなに困難な道であろうとも。今の立場が所詮、借り物のものだったとしても。

今まで繋いできた絆は、決して嘘ではない筈だ。それが例え、世界の壁を超えた繋がりであったとしても。

そう、信じたい。信じなければ、立ち上がることさえままならない。

 

「……?お兄ちゃ――」

 

おもむろに立ち上がり、無言のまま木綿季を抱き締める。

 

「ひゃっ、え、お兄ちゃん、いきなり何を――!!」

 

「――護るから。絶対に、木綿季の事を護るから……!!」

 

一度この手からすり抜けた、命の灯火。

アバターの身体ではあるが、きっと本物の木綿季もこれぐらい細い身体なんだろう。

草花のように華奢で、硝子のように繊細で、太陽のように優しい温もり。鼻腔を擽る、女の子特有の不思議と甘い香り。

どれをとっても、とても愛しく感じられる。

こうしているだけで、木綿季を護りたいという思いがより一層深まっていく。

手放したくない、失いたくない。そんな子供の我儘のように直情的な感情が、溢れんばかりに湧いてくる。

 

「お兄、ちゃ――」

 

「……ああ、済まない。思い立ったら、こうせずにはいられなかった。不快だったか?」

 

耳元から漏れた吐息と呟きで、ようやく我に返る。

我ながら、なんて恥ずかしい事をしていたんだ。

木綿季とは家族同然の関係だが、だからといってこれはただのセクハラではないか。通報案件だよ。

 

「ううん……そんなこと、ないよ」

 

真っ赤に頬を染めた木綿季が、絞りだすように答える。

明らかに、無理をしている。此方を遠慮して敢えて何も言っていないのであって、心の底では間違いなく不愉快で一杯になっている筈だ。

今度からは、こんな軽率な行動は控えよう。セクハラ駄目、絶対。

 

よし、うじうじするのは止めだ。

悲観的なばかりでは、為すべきことも為せなくなる。

少なくとも、今はその時ではない。

 

「えっと……話、続けていい?」

 

「あ、ああ」

 

若い二人がお見合いの場に取り残されたような、妙にむず痒い雰囲気を残しつつt、再び話は再開された。

 

「ボクがここにいる理由は置いておくとして……ここに来たのは、SAOが始まってから一年半後ぐらい。逆算すると、二ヶ月前くらいかな?ALOはレベル制じゃなくてスキル制のシステムなんだけど、何がどうしてかこっちに来たらスキルはそのままにレベルは85あったんだよね。アバターもアルプって言う妖精みたい見た目な奴だったのに、羽もなくなったし耳も普通になっちゃった」

 

そう言って、耳たぶを弄って遊びだす。

何気ない仕草ではあるが、木綿季の無邪気な雰囲気と相まってとても可愛らしい。

……うーん、どうにも木綿季相手だと色々と甘くなっているな。義理とはいえ、妹ならばこれが普通……なのか?

ましてや、死別した身ともなれば、溺愛するのも仕方ないことだ、うん。

まぁ、嫌われないギリギリを見極めていけばいいさ。偶然手に入れた立場とは言え、敢えて腐らせるのは流石にどうかと思うし。

 

システム外だったボクのアバターを最適化した結果かは知らないけど、レベル1からとかじゃなくて良かったよ。そうじゃなきゃ、お兄ちゃんにも会えなかっただろうし」

 

それは確かに僥倖ではある、が――レベルが高いことで彼女に迫る危険もより大きなものとなってしまった。

 

「木綿季、君はこれ以上戦う必要は――」

 

「イヤ」

 

言い終える前に、ばっさりと切り捨てられる。

此方の思考を読んでいたかのように発せられた否定の言葉を前に、嫌が上にも萎縮させられる。

自分が知らない、力強い雰囲気。それは、彼女が快復に向かっている何よりの証拠で嬉しくもある、が――ちょっと怖いと思ったのは内緒だ。

 

「ボクを護ってくれるって言ってくれたのは嬉しかったよ。だけど、それとこれは別。ボクは現実と違って、護られるばかりの存在じゃない」

 

「お兄ちゃんが、ボクの為に沢山苦しい思いをしてきたこと一度たりと忘れたことはない。ボクの為に時間を裂いて、お見舞いを絶やさなかったことは私にとっての何よりの励みになった。ボクは、お兄ちゃんに救われたんだよ。だから、いつかはボクがお兄ちゃんの支えになろうって、医療関係の勉強だって少しずつしてきた。でも、今またお兄ちゃんに負担を重ねようとしている。それも、命を賭けるという形で」

 

木綿季の瞳の中に眠る、信念という種火が燃え上がる。

 

「でも、この世界ならボクにだってやれることはある。護られるだけで終わる存在にはならない」

 

「……気持ちは嬉しいが、私にとって君は大切な存在だ。無闇に傷つけるようなことはして欲しくないんだ」

 

「それは、ボクだって同じだよ。……もしお兄ちゃんが私を遠ざけて、それでお兄ちゃんが死ぬようなことがあったら――ボクも自殺してやる。お兄ちゃんの居ない世界に、意味なんてない」

 

「な――」

 

何を馬鹿な、と続けるよりも早く気付く。

――本気だ。木綿季は本気で自分の後を追う。本能でそう確信できた。

だからこそ、此方が折れるしか無いことも同時に理解してしまう。

 

「……分かった。だが、無茶をさせるつもりもない。技量が伴っているかも確認する。もし水準以下と判断したら、どうあっても連れては行かせない。これは絶対だ」

 

「うん、ありがとうお兄ちゃん。でも大丈夫、これでもボクは強いんだから!」

 

快活な笑みでそう答える木綿季。

どうにも心配だ。木綿季は安易な嘘を吐く子ではないのは分かっているつもりだが、先の様子を鑑みる限り無茶を押し通しそうな意志の強さも感じられた以上、断言は出来ない。

身内の情は捨てて、厳しく審査しなければ。

 

 

 

 

えー……結論から言いますと、うちの義妹は最強なんだ!!って感じでした。

木綿季はメディキュボイドによって24時間VR世界に意識を留められている。

SAOにログインしている者達と同じ条件――いや、それ以上のプレイ時間でVR世界と同調している彼女の動きは、控えめに言っても常人離れしている。

理由としては、メディキュボイドがナーヴギアと違い脳から脊髄に掛けてまで電磁パルスを発生させていることから、ナーヴギアを通して行われる動作よりも遥かに上回る速度で情報が伝達することが出来るからであろう。

現実においても肉体を司るのは脳から送られる電気信号であり、それがSAO内では脳から肉体ではなくナーヴギアへ、そしてSAOへと反映とワンクッション置く必要がある。

脳→ナーヴギア→SAOよりも、脳→肉体の方がナーヴギアを介していない分速いのは考えるまでもないだろう。

プレイヤーからすれば違和感を感じるレベルではないが、実際にゲーム画面と脳の電気信号の状態を比較できる場面があれば、一目瞭然の筈。

ナーヴギアは非侵襲型のヘッドマウントディスプレイである為、脳からダイレクトに信号が伝わる肉体と比較しても結果が出力されるのはどうしても遅くなる。

感覚器官を介さない代わりにナーヴギアがあると言っても、現実の肉体と同じ速度で出力するには、如何に茅場であっても現状の技術では不可能。

如何に最新鋭の技術といえど、人体の神秘と比較すれば、所詮は外付けのハードディスクと同じレベルまでしか真に迫っていないのだ。

メディキュボイドは、ナーヴギアを超える最新鋭技術によって作られている為、その欠点はより高次へと押し上げられることで多少改善されている。

そして、先の反射の話に繋がるという訳だ。

 

ぶっちゃけると、ハイスペックな機械使ってるんならそりゃすげぇわって事なんだよね。

別にズルって訳ではない。意図的でも何でもない上に、デスゲームと化したこの世界では大きくバランスを左右するレベルではない。

試しに適当な場所に二人で狩りに行って、それでは物足りないとデュエルまでして木綿季の強さを肌で実感したが、一向に勝負はつかなかった。

初撃決着モードでやっていたにも関わらず、互いに一撃を入れることは出来ないままで終わったのだ。

それだけ聞くと大したことなくね?と思ったそこの貴方。こっちは慣れていないとはいえ錬装の特性で武器チェンジが任意で出来て常に理想の間合いを取れるのに対して、木綿季はスタンダードな片手剣と盾のみの構成ですよ?

それが弱いとは言わないが、あそこまで完璧に攻守の入れ替えが出来るのは、やはり処理速度の差が大きいとしか言えない。

いや、実際ね?背中に目があるんじゃね?って言うぐらい死角からの攻撃を回避したりいなしたりするんだもん。もうやだこの子、強いし可愛いとか無敵じゃん(兄馬鹿視点)

 

「これで、認めてくれるよね?」

 

「……ああ」

 

「いえーい、やったー!!」

 

ぴょんぴょん跳ねて喜びを全身で表現する木綿季。

対して、自分の心は軽くブルー。言い出しっぺとはいえ、死地に赴かせるのは本意ではない。

それは、サチやフィリアに対しても言えることだが、彼女達には言ったところで今更だ。少なくとも、精神的タフさでは自分よりも上なのは確かだし、説得できる立場ではない。

それに、以前と比較して違和感のない行動を取らなければ、どこで木綿季に気取られるか分かったものではない。

そう言った意味でも、やはり今まで通りを貫くことが最善だ。

その代わりと言ってはアレだけど、彼女達もしっかりと護ることを誓おう。心の中でだけどさ。

 

「さて……そろそろキリト達とも連絡しないとな。説明できる範囲の事は説明して、後は虚構も交えつつと言った感じになるだろうし、裏口合わせ頼むぞ」

 

「嘘って……例えば?」

 

「別に事細かい設定は必要ない。秘匿するのは、せいぜい君がメディキュボイドの患者だということぐらいだ」

 

「そんなのでいいの?」

 

「むしろ、それが一番重要だな。今、SAO内は仕様外のバグか何かで変化が起きようとしている。そんな中イレギュラーの存在があると知れれば、悪意ある者からの格好の的になる。いらぬ波風を立てる必要もあるまい?」

 

「そうだね。んじゃ嘘をもうちょっと交えた方がそれっぽくなるんじゃない?」

 

「ならば、君なら何と答える」

 

「それはねー……ボクとお兄ちゃんは恋人同士だってアイタァ!!」

 

思わず反射的にデコピンしていた。

いや、悪いのは木綿季だよ?そんな心臓に悪いこと言うんだもん。

嘘だって言うのは分かるけど、彼女いない歴=年齢の自分にそんなことを言ってはいけない。

この世界の自分だって、平行世界の同一人物だと言うのなら、間違いなくその公式は当て嵌まるだろうし。……嵌まるよね?

 

「嘘でも言って良いことと悪いことがあるぞ」

 

「う~……何さ、お兄ちゃんはボクと恋人は嫌なの?」

 

「馬鹿を言うな。それこそあり得ん。だが、君は病のせいで身近に知る男を大して知らないからそんな軽い事が言えるのであって、完治して外の世界を知る事ができれば、嫌でも私など目に入らなくなるだろうさ」

 

「……そんなこと、あるわけ無いじゃん」

 

「木綿季?」

 

「なんでもないよーだ」

 

脳内自虐を繰り広げていると、突如木綿季が腕に思い切り抱き着いてくる。

鎧のお陰で阻まれて入るが、この体勢、普通に胸が当たっています。まずいですよ!

振りほどくのも憚られるし、やんわりと離そうとしてもガッチリ絡みついて離さないものだから、早々に諦めた。

 

「そうだ、木綿季にも紹介したい人達がいるんだ。私の仲間で、今共に行動している三人なんだ」

 

「……それって、女性?」

 

「よく気付いたな、その通りだ」

 

「……ふーん。それは楽しみだなぁ」

 

より一層、木綿季の抱きつく力が増す。何だというのか。

まぁ、ただ疲れて杖代わりにしているだけかもしれないし、そっとしておこう。

それに、この温もりに浸るのも悪く無い。自分としても、今まで出来なかった分、こうしていたいというのが本音だしね。木綿季から攻めてくるのなら、ノーカンノーカン……だといいなぁ。

 




取り敢えず、現状分かった主人公(SAO次元)のスペック

・木綿季とは義妹の関係
・医療関係の仕事に携わっており、ことその分野に於いては茅場をも上回る能力を持つ
・メディキュボイド開発に深く携わっており、加えて末期に近い木綿季のHIVを快復にまで持っていくことに成功している
・ヴァン=レーベルという執事を傍に置いている
・茅場とは知り合いの可能性が高い

ぐらいでしょうか。
オイオイオイ、設定盛り過ぎだわコイツ。
ていうか木綿季と義妹って時点で人生勝ち組だわ。死ね(理不尽)

Q:そんな木綿季だけど、何か不穏なんですけお……
A:そりゃ(才色兼備眉目秀麗で治療不可能と思われた末期症状を治療した命の恩人となれば)そう(依存するのも当然)よ。

Q:何で病み要素を入れた!言え!
A:木綿季みたいな人当たりの良い元気娘が病むのを見ると……凄いゾクゾクしません?こういうことが出来るのが二次創作の醍醐味よ。フヒヒ☆
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。