Infinite possibility world ~ ver Sword Art Online 作:花極四季
サチとフレンド登録しなかったことを全力で後悔しながら、あれからレベル上げを必死に頑張った。ぼっちで。
あんな別れ方した後で、間を置いてフレンド申請とか、恥でしかないもん!
こういう時、この作られたキャラ設定が邪魔だよね……。自業自得だけどさ。
そんなこんなで始まりの街付近でのレベル上げもそろそろ頭打ちになってきたので、次の街に行くことにした。
レベル上げを頑張りすぎたせいか、次の街であるトールバーナに向かうまで凄い楽な道のりだったよ。
あまりにも楽すぎたから、レベル上げで集まったコル(お金のことだよ!)で買った色んな武器を試しまくってたぐらいだ。
良く分かんないけど、このワールドでは多種の武器を使うことは推奨されていないらしい。
武器を交換することで得られるメリットがない上に、高熟練度で使えるスキルがどの武器も平等に強力。
更に言えば、実際に武器を振るうのは自分自身であり、毛色の違う武器はその人によって使い心地の感想が異なる。
両手剣が使いやすいという人もいれば、短剣が得意という人もいる。その逆も然り。
更に更に言えば、武器によって重心も構えも変化する以上、戦闘中に武器を変えてすぐに適応するには、ゲーム内の数値以上の努力が必要になってくる。
だからこそ、ひとつを極めた方が結果的に得をするという結論に落ち着くのだ。
だっていうのに、そんなに武器を使っている僕は頭がおかしいというか、マゾなんだろうね。
でもいいんだもん!楽しければそれでいいんだもん!
そんな一人問答をしている内に、トールバーナに辿り着いた。
西洋風な雰囲気漂うシックさの中に、人々が織りなす活気が混ざり合ったそれは、まさに典型的ファンタジーの街。
取り敢えず新しい街に来たらするべき事と言えば、お店の把握でしょう。
と言うわけで、武器屋に寄ったんだけど、そこで品揃えを吟味していると、いきなり声を掛けられた。
「やぁ、君も一層のボス討伐に参加する為に来たのかい?」
振り向くと、水色のウェーブ掛かった髪の青年がいた。
「一層のボス?」
「ん、知らないのかい?見ない顔だし、もしかしてここに来たばかりだったりするのか?」
「ああ。ついさっき到着したところだ」
「そっか、なら仕方ないな。俺はディアベル。実はさっき一層ボス攻略メンバーの招集を掛けたばかりなんだ」
「私はヴァルディだ。それにしても、間が悪かったようだな」
「別に後から参加を許可しないってことはないし、もしやりたいのなら歓迎するよ。少しでも戦力が欲しいのが本音だからな」
「一層のボスはそんなに強いのか?」
「難しいところだな。何せサーバーがオープンされてからの初の階層ボスだ。元々複数人による戦闘が前提の相手であるという要素に加え、俺達を罠に嵌めようとベータテストにはなかった新しいパターンが組み込まれていたとしても、別段おかしな話ではないからな。誰も死なせないで突破するからには、そういった面も視野に入れておく必要がある」
「ベータテストの情報を利用した初見殺しか。成る程、有り得ないことではないな」
デスペナルティの重さを考えると、人は誰しも慎重になってくる。
考えられる可能性は潰し、堅実に事を運ぼうとする。
そうなれば、折角のコンセプトもあまり面白みのないものになるだろう。
そんな事態になるのは、制作者側としても面白くないし、何より作った甲斐がない。
そこで、初見殺しの出番ですよ。
予測不可能か可能かは重要じゃない。限定された条件下で、かつ安易な行動を取れないシステムだからこそ、隠されたパラメータが戦況を覆す。
例えば、さっきまで斧を振っていた敵がいきなり剣と盾を装備したとしたら、どうなる?
多人数によるパーティープレイでは、画一化された情報による連携が重要になってくる。
しかし、その作戦にほんの少しの齟齬でも起こってしまえば、隊列は崩れ、指揮系統もバラバラになってしまう。
プログラム言語がたった一文字の打ち間違いによって機能を果たさなくなるのと同じ。
そこまで極端ではないにしても、不測の事態が起こって尚、一切の乱れがないなんてことは絶対に有り得ない。
ましてや、人が多ければ多くなる程、確率も高くなるのだから、間違っても初見殺しに引っかからないなんて事態は有り得ない。
イヤらしいことを考えてくれる、制作者。
だが、それがいい。
「そういえば、レベルはどれぐらいなんだ?低いなんてことはないだろうが」
「8だ」
「8なら申し分ない。改めて言うが、もし良かったら俺のチームとしてボス討伐に参加しないか?」
「私は構わないが、招集を掛けた後の参加もいいのか?」
「いいさ。招集と言っても声を張り上げて募集しただけの拙いものだし、形式張ったことは何一つない。それよりも、俺が言うのもアレだが、ボス討伐に参加するということは、その……死ぬ可能性だってあるんだぞ?」
こちらの様子を伺うようにそう問いかけるディアベル。
妙に臆病さが目立つ雰囲気を醸し出しているが、そうなるのも無理はないか。
何せディアベルはパーティー全員を纏め上げるリーダーだ。それだけでも責任重大だというのに、このドM仕様なデスペナルティもあるもんだから、気軽に誘うなんてことは難しいし、やったとしても今のディアベルのように萎縮してしまうのも無理はないことだ。
でも、こっちが良いと言っているのだから、そう畏まられても困るというのが本音だ。
「死なんてものは身近なものだ。例えどこにいようとも、それは変わらない。死を恐れて前を進むことを止めてしまえば、そこからは人生の蛇足だ。私は、そんな人生御免被る」
「……強いんだな」
「自分に正直なだけだ」
ディアベルは踏ん切りがついたのか、影の差した表情を、人なつっこい笑みに戻す。
「それなら、俺がこれ以上言うことはないな。……それにしても、茅場め。俺達のこんなやり取りを見て嘲笑っているのかと思うと、ムカつくぜ」
茅場……誰だ?
あ、もしかして、このドSな設定を作った人かな?
会話の流れ的にも、ほぼ確定でいいだろう。
ディアベルも、口ではなんだかんだ言ってるけど愉しんでるんだろ?知ってるよ。
ていうか、そうじゃなきゃこんな場所には来ないしね。フリみたいなものだろう。
「一緒に茅場の野郎の思惑を打ち破ろうぜ!」
「ああ」
拳同士を突き合わせ、意気込みを叫ぶディアベル。
それとは対照的に自分はローテンションですまんな。仕様なんだから許してくりゃれ。
あれからディアベルのパーティーを含めたボス攻略参加者との交流を図り、和気藹々としながらも気合い十分な親睦会となった前日の夜。
こんなコミュ症なキャラにも気さくに接してくれたみんなに感謝の念を抱きつつ、一層ボス部屋の前まで辿り着いた。
事前情報によると、一層のボスの名前は、イルファング・ザ・コボルド・ロード。
斧とバックラーを装備しており、 βテスト時点ではHPが一定数値まで減少すると、曲刀のタルアールに持ち変え攻撃パターンも変化していたという。
他にも、ルイン・コボルド・センチネルという取り巻きの雑魚もいるようで、パーティーメンバーが少なかったり、身体捌きに自信のない人達は、そちらを対応する手筈になっている。
流石に最序盤のボスということもあり、単調な変化で済ませているとはいえ、実際に肉体を動かすのは自分なので、そんな変化にさえもついていけない可能性もなきにしもあらず。
変化のタイミングばかりに意識が集中し、一連の動きが鈍くなったり拙いものになったりすることも大いに有り得る。
そう言った基本的なミスで揺さぶりを掛けて、振るいに掛ける。
小手先の技とはいえ、引っかかる人は多いだろう。
そこに更に、βテスト情報を利用した初見殺しが加わるとなれば、最早何を信じれば良いのかが分からなくなる。
いやぁ……たまりませんな。このハラハラ感。
今回の戦闘で使う武器は、両手剣だ。
メイン盾のディアベルがいるので、火力重視で瞬間DPSを底上げして負担を軽くしようと考えたのだ。
この手の武器は使い慣れているから、ボス相手とはいえそこそこ戦えると思うし、決して足手まといにはならない筈だ。
「みんな、ボス戦が始まる前に、これだけは言っておく。絶対に死ぬな!」
ディアベルの言葉に、攻略メンバーが沸き立つ。
うーん、こうやって言葉で誰かを引っ張っていける人って尊敬する。
リアル以上にこのキャラコミュ症だから、そういうのは無理くさいし、何より恥ずかしい。
重圧感のある扉が開かれた先には、巨大なコボルドが情報通りの装備を携えて仁王立ちしていた。
あれがボスか。巨大な出で立ちを除いては、それっぽい印象は受けないね。
まぁ、最初なんだからそんなもんだよね。
でも、油断してはいられない。
茅場とかいう開発者の外道罠がどこに張り巡らされているか分からないのだ。
「行くぞ!まず俺が突破口を開く!」
事前の作戦通り、ディアベル率いる我らのパーティが、先陣を切る。
ディアベルの牽制ソードスキルにより、ボスのヘイトが集中する。
それを皮切りに、一斉に皆が攻撃を始める。
身も蓋もないが、やってることはただのタコ殴りだ。
ダメージソーサーは、ヘイトが集中しない程度に攻撃を繰り返し、ヤバくなればスイッチで攻防を切り替えることで、範囲攻撃を重ねられない限り安全に回復に徹することができる。
基本的な動作が出来れば、そこまで苦戦する相手ではない。戦闘の序盤で、そう見切りを付けた。
問題は、初見殺しの部分だ。
どのタイミングで仕掛けてくるか。それともそんなもの存在しないのか。
疑心暗鬼になりそうな展開ではあるが、軌道に乗っているせいか皆の表情に不安の色は欠片もない。
二重の意味で調子に乗っていると言える状態だが、果たしてこのまま上手くいってくれるのかどうか……。
「みんな、下がれ!俺が敵の攻撃を伺う!」
ボスの残り体力も僅かとなった時、ディアベルが後方に下がるよう指示をすると共に、突貫していく。
事前に説明されていた、装備変化のタイミング。
初撃と同じく、ディアベルが武器変更後のボスの攻撃を受ける役回りを演じるつもりなのだろう。
だが、僕はディアベルの指示に従わず、僅かに遅れる形でボスへと突撃する。
嫌な予感がする。こういう時の僕の勘(経験の賜物)は良く当たる。
事実、嫌な予感は現実となっていた。
ボスが取り出した武器は、タルワールではなく――野太刀だった。
ここが、初見殺しポイント――!!
ディアベルも油断していたらしく、踏みとどまり二の足を踏む。
防御も拙さが際立っており、このままでは耐えることもままならない。
一歩、いや、二歩遠い。
その瞬間にも、ボスの一撃はディアベルへと迫っていく。
間に合うのか?いや――間に合わせる。
僕は地面を砕く勢いで踏み込み、ディアベルの眼前へと飛び出し、振り下ろされた凶刃を弾き飛ばした。
走馬燈、という奴だろうか。
イルファング・ザ・コボルド・ロードの持つ武器は、βテスト時代のそれとは大きく異なっており、それ故に対応の手段が思考に存在せず、動きも停止してしまう。
βテストからの差異は考慮していた。だが、それ以上にラストアタックボーナスに魅了され、無謀な行動を取ってしまった。
デスゲームとなったアインクラッドで生きて行くには、レアアイテムの存在は生きるか死ぬかの差を明確に分かつ重要なものとなる。
生き残りたい、という気持ちがあるのは誰しも同じ。
言い訳にしかならないが、俺は決して独りよがりな理由でこんな蛮行に出た訳ではない。
アインクラッドの攻略、引いては可能な限りのデスゲームに囚われた人達の生存を強く望んでいるからこそ、俺が導にならないと行けないと思った。
限りなく身近に死が存在する世界で、進んでリーダーになり前線に立とうと思う奴なんて、期待出来ない。
だから、俺が進んでそうなろうと思った。
だけど、ただ声を張り上げるだけでは、纏め役にはなれない。
だから求めた。人目を惹きつけるような外見の武器・防具。それに見合ったステータスを。
その先駆けとして、ラストアタックボーナスで出現するアイテムを手に入れ、それを勝利の証として見せびらかすことで、次の攻略に向けての意思の統一化を目論んでいた。
だが、俺はそんな器じゃなかったんだろう。
自分が物語の主人公だなんて言い張るつもりはないが、こんな始まってすらいない状況で終わるということは、つまり身分不相応な立ち回りを演じたからに他ならない。
勇者でも何でもない村人が、魔王に勝てる素養を持っている訳がない。それと同じこと。
稀にそう言う物語もあるが、世間が求めているのはそんなマイナーなものではない。
絶対かつ不変な正義。一目見て誰もが羨むような、そんな存在だ。
成り上がって事を成せるほど、この世界は甘くなんて無い。
そんな現実、今更理解したところで後悔の残滓と共に消えていくだけだというのに。
そら、目の前には一秒にも満たない時を経て、俺の命を絶とうと迫るボスの野太刀が――
しかしその時は訪れることはなかった。
部屋全体に響く重苦しい金属音。
その音を限りなく近くで聞いた俺は、刹那の恐怖を前に閉じた目を開く。
眼前では、両手剣の腹を盾にボスの振り下ろした太刀を受け止めるヴァルディの姿があった。
武器屋で初めて出会った彼の印象は、不思議な雰囲気を持つというものだった。
何というのか。俺がこの世界で見てきたプレイヤーとは、明らかに雰囲気が違う。
皆がマイナスの感情を少なからず抱いているこの環境下で、どこまでも自然体で、穏やかで余裕のある感じがした。
あくまで気がしただけで、まったくの勘違いかもしれないし、そんなことを不躾に聞くことも出来ないから、真実は定かではない。
しかし、俺は確かに彼に何かを見出していた。
それが光明なのか、願望から来る錯覚なのか。その時は分からないままだった。
だが、それが光明だったことは、今この時証明された。
一方的な考えではあるが、彼の存在が俺の命を繋いでくれたとなれば、それは確かに光明なのだ。
「ディアベル、立て。この程度の逆境、覆せなくてどうする。お前の想いは、こんな初めで躓いて良い代物ではないだろう!」
俺へと向けたヴァルディの叫びは、ボスの攻撃を押し返す推進力となり、更にはその足に深々とした傷を刻み込む。
その一連の動作の一切に無駄がなく、ボスに意思があったとすれば、斬られたことにさえ気づけていないであろう。そんな一撃。
そして、たった一人で巨大なボスの攻撃をいなしている。涼しげな表情を崩すことなく、だ。
それが如何に凄く、彼が常人とは違う存在なのかと証明する要素となっているのか、彼自身気が付いているのだろうか。
テスターだった自分なんかよりも、いや、あれほど洗練された動きが出来る者が果たしてこの世界に二人といるのか。
レベルが上がり、実力が上がっていく内に、秘められた才能が開花する可能性はなきにしもあらずだが、ここはまだ一層なのだ。
芽が開花するには、あまりにも早計。つまり、彼の技術は天性のものであり、以前より培われていたものであるということ。
何と心強い――俺と同じ思考に至った者は、等しくそう思ったことだろう。
しかし、やはりボスを個人が相手取るのは限界があるらしく、次第に動きに精彩を欠いていく。
あと数合交われば、拮抗した状況は崩壊する。そうなる前に、体勢を立て直さなければならない。
「みんな、彼に続け!このまま押し切るぞ!」
立ち上がり、後方で固まっていたメンバーに指示を出す。
「応」という気概の籠もった声と共に、一斉にボスを取り囲んでいく。
これは、俺が犯したミスだ。ならば、俺の力で挽回せねばならない。
俺に出来るのは、こうして皆の意思を統一させ、導くこと。
一度その責務を捨てた奴が、何を今更、とも思う。
だが、恥なら幾らでも呑もう。それで勝てるというのであれば、汚名だって着よう。
もう、覚悟は決まった。
「済まない、ヴァルディ。助かった」
「気にするな。仲間だろう?」
「……ああ、その通りだな」
仲間、か。その通りだ。
その仲間を裏切った男に、彼は声を掛けてくれるなんて、度量も深い。
誰しもが自分のことで手一杯なこの状況で、批難が先行せず他人を平然と尊重できるなんて、人が出来ている証拠だ。
「ヴァルディ、スイッチで一気に攻めるぞ!」
「了解!」
「【レイジスパイク】!!」
再び前線に躍り出た俺は、ソードスキルによる突進でボスの注目を集める。
俺一人が戦っているのではない。俺は俺のやれることを全力でこなし、共に戦ってくれる仲間に貢献するだけだ。
そうして熾烈を極めたボス討伐は、とある男女のペアの連携攻撃によって、幕を下ろした。
ポリゴンの残滓が、風に揺れるように消えていく。
その余韻に、誰もが口を閉ざす。
本当にボスを倒したという実感が、未だに得られていないからこその静寂。
そして、次第に沸き立つ歓声。
実感は現実となり、現実は更なる実感を与えてくれる。
不安で先の見えない、100層クリアという目標に、僅かではあるが近づいたのだと。
これがその始まりであり、自分達はその先駆者となったのだと。
特に、ラストアタッカーとなった一人の少年に、良くやったと言わんばかりに組み付いていくその様子は、まるで英雄を歓迎するかのようなものであった。
誰しもが自らの所業に沸き、感涙し、咆吼する。
そのどれもが喜びから来る行動であり、その喧しさを咎める者はいなかった。
――だが、俺は今からそんな彼らの感情に水を差す。
今のぐらい喜びに浸らせておきたいが、今でなければならないのだ。
期を逃せば、今この瞬間の喜びも、無に帰すかもしれない。
その為に俺は、汚れ役になろう。
「――みんな、聞いてくれ!特にキバオウさん。貴方は聞かなければならない事だ」
突然の俺の発言に、再び空気がざわつく。
「なんや、ディアベルはん。ワイらは勝利の余韻っちゅーもんに浸ってた言うのに」
「すまない。だが、俺のこれからの発言は、貴方の神経を逆なでするものになってしまうだろう。まずはそれを謝罪させてもらう」
「は?何言うてん――」
「俺は、ベータテスター。ベーターだ!」
キバオウさんの言葉を遮り、俺はひた隠しにしていた事実を言葉に乗せる。
「な、なんやいきなり。そんな冗談――」
「冗談じゃない。俺は、貴方が忌み嫌っているベータテスターその人であり、今の今までその事実を隠してきた。さっきの指示も、ラストアタックボーナスが欲しくて独断でやったことなんだ」
「そ、そんな……そんなのあんまりやろ!」
悲痛なまでのキバオウさんの叫びが、ボス部屋に響く。
ベータテスターに良くない感情を抱いている者からすれば、自らの命を嫌悪対象に預けていたという事実は、おぞましいものであることは想像に難くない。
「……済まない。俺の装備が欲しいというのであれば、全て譲っても構わない。だが、これだけは言わせてくれ。ベータテスト参加者だからといって、皆が俺のような奴ではないということを。この世界で生き残るのに必死なのは、みんな一緒なんだ。だからこそ疑心暗鬼になったり、自分にないものを他人へ求めてしまうのも分かる。でも、俺達の目的は100層攻略なんだ。こんな最初で不和を招いてしまっては、ただでさえ果てしない目的達成の道が遠のいてしまう。それじゃダメなんだ!」
拳を強く握り締め、思いの丈を叫ぶ。
俺の想いは届かないかもしれない。
それでも、誰か一人でも良い。この想いに共感する人がいれば、それは確実に次の糧となる。
「ベータテスターに対する不満や文句は、俺が引き受ける。だから、他のベータテスターのことを許してやってくれないか?」
「せ、せやかて……」
キバオウさんの心が揺れているのが分かる。
公然と意見を述べることが出来る彼の発言力は、この世界で生き残る為に重要な力だ。
それを、こんな小さいことで失うのはあまりにも惜しい。
そして何よりも、協力し合わないといけない状況下で分裂なんて悲しい結末は避けたい。
「――少し、いいか?」
そんな時、近くで閉口を貫いていたヴァルディが会話に割って入ってくる。
「あ、あんさんは確か、ヴァルディはんだったか?ディアベルはんが後にメンバーに組み込んだっちゅう」
「ああ。遅れる形ではあったが、このボス討伐に参加することが出来た。……それはともかく、だ。貴方は確か、キバオウとか言ったな」
「な、なんや」
形容しがたい覇気を孕んだヴァルディに気圧されるように、キバオウさんは狼狽する。
エギルさんのような強面とは真逆の線の細い印象の彼から、そんな不釣り合いなものが出ていることに普通ならば驚くのだろうが、あの戦い振りを見せられてしまっては、それも不思議ではないと納得出来てしまう。
「別に貴方の考えを批判するつもりはないが、話に聞くところでは、ベータテスト参加者でも階層攻略は全体の十分の一にも満たなかったらしいじゃないか。装備にしたって、こんな序盤も良いところのものを奪ったところで、益になる要素なんて何一つ無い。こんな世界だ、ディアベルの言うとおり、不和を招く行為は秩序の崩壊に繋がる。たかが一層のボスでさえ、これ程苦労して倒したのを思い出せ。如何にこれからの連携プレイが重要になるのかを理解した方が良い」
「…………」
ヴァルディの説得に、キバオウさんは遂に黙り込む。
いや、彼だけではない。この話を聞いていた誰もが、彼の発言を重く捉えている。
確かにベータテスターのもたらす情報は、絶対的なアドバンテージになる。
だが、それも所詮昔取った杵柄レベルの代物でしかない。
今回のボスの一件のように、自分の知る情報がそもそも間違いである可能性だって十分に有り得る。
不確定な情報を公開し、それが騒動の原因となり、悪戯に犠牲者を出すというのであれば、俺達の持つ情報はむしろ邪魔でしかない。
無いよりはマシ程度のものを巡って、それ以上に重要な要素を手放すようなことこそ、真の過ちだ。
俺にも言えることだが、刹那的な考えで100層攻略を目指そうだなんて、烏滸がましいにも程がある。
あまりにも途方がなさ過ぎて見えていなかったものを、彼はきちんと見据えている。
……俺なんかよりも、よっぽどリーダーとしての資質を持ち合わせているのは、最早語るまでもないことだ。
「……正直、ワイも言いたいことは山ほどあるが、あんさん達の言いたいことも理解できる。せやからここは、ディアベルはんの誠意に免じて、身を引きますわ。ベーターの奴らはまだ気に喰わんが、ディアベルはんは別や」
「そうか……ありがとう」
ヴァルディの助勢もあって、この場は丸く収まることになった。
だが、これからも俺達に悪意がないことを証明し続けない限り、いずれ同じことが起きてしまうだろう。
俺がこれからすべきことは、もう決まったようなものだ。
「みんな!そういうことだから、もし何か分からないことがあったら何でも聞いてくれ!ベータからオープンサービスに掛けての変化点もあるから、その情報が真実であるかの保証は出来ないが、それでも何かしらのヒントになってくれれば生き残れる確率も上がるかもしれない。こんな俺の言葉を信じてくれるというのであれば、是非訪ねてきてくれ!」
こうして、一層のボス攻略は完璧にとはいかないが、予想以上の成果を持って、真に終わりを告げた。
Q:ディアベルはん、主人公じゃないか。
A:主人公って誰だっけ……(困惑)あと、ディアベルとヴァルディって何か似てるから混乱する。
Q:アニメ準拠の筈なのに、この時点でストーリー破綻してるんですが、もうこれ(作者の言葉何信用すればいいのか)わかんねぇな。
A:そもそもサチが生存するって時点でもう破綻してるんですが、それは……。いっそのことオリストーリーも交えるかい?三話で一気に階層飛んじゃうし。
Q:SAOといえばバトル描写だろ!手抜きすんなよオラァ!
A:ユニークスキルが手に入ってから本気出す。ていうか主観視点じゃないなら、神の視点じゃないと細かい部分は描写出来ないから、まずはそうなる状況を作らないと(使命感)