Infinite possibility world ~ ver Sword Art Online   作:花極四季

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こういうの書いてると、当初の予定より文章量が多くなるのは何故だろう。


第四話

あれからのことだけど、キリト達とフレンド登録を終え、またソロで熟練度上げ(使い方の練習込み)をして、二層のボスに挑み、勝った。

省略すんなって?いや、別に語るようなことなかったし。

せいぜいあるとすれば、ボス攻略にはキリトとアスナも参加し、今回はキリト達のパーティーで戦ったぐらいか。

ディアベルが相変わらずボス攻略の中心だったので、その辺りの融通が利きやすくて良かった。

アスナの戦闘は初めて見たけど、キリトと同様の速さに重きを置いたタイプだった。

ぶっちゃけそれを知らなかったこともあり、二人についていけなかった。まだ両手剣だったしね。

戦闘中の武器変更は危険だってキリトに言われたから、両手剣で戦い続けたけど、やっぱり成果は芳しくなかった。

やってることは瞬間DPSを叩き出し、ヘイトを稼いだところをキリト達が連続攻撃を叩き込む手助けをしたぐらいか。

しかもそれは意識してやってたんじゃなくて、キリト達が良い感じに合わせてくれたから連携っぽくなったのであって、自分はやりたいようにやってただけなんだよなぁ……。

 

まぁ、そんな感じで適当にやること数層。

久々にクラインに会った。

 

「久しいなクライン」

 

「ああ……そうだな」

 

そう返すクラインは、どこか元気がない。

 

「最近噂になってる攻略組の一人の特徴が、お前と一致してた。だから俺はその事実を確かめる為に、必死にレベル上げしてきた。あんまり信じたくはなかったが、本当だったとはな……」

 

攻略組に僕がいると悲しくなるの?なんか酷い言われ様だなぁ。

あ、もしかしてクラインの方が先にやってたのに、追い抜かれたのが悔しいのかな?

ペースなんて人それぞれなんだから、別に対抗心燃やすことないと思うんだけど。

 

「はっきり言って、悔しいぜ。俺が師匠って立場のようなもんなのに、あっさり抜かれちまうんだもんな。だが、これからは俺もボス攻略に参加するから、頼りにしてくれよ!」

 

笑顔でサムズアップするクライン。

ああ、そういうことだったのね。少しでも疑うような真似をしてすまない。

まぁ、クラインはリアフレ達と楽しくやってたんだろうし、それはそれでいいじゃないか。

……ぼっちは負け組じゃないよ!敢えてソロでいるんだもんね!

 

「そういやフレンド登録してなかったよな。いつでも連絡取れるように、しておこうぜ」

 

「了解した」

 

そういえばしてなかったね。

その事実に気付かないレベルにフレンドがいないってことだよね、これ……。

えっと、フレンドは……キリト、アスナ、アルゴ、ディアベル、クライン……五人か。

比較対象がいないから何とも言えないけど、少なくはない、よね?

 

「そういや、俺ギルド作ったんだ。【風林火山】って名前なんだけどよ。身内ばっかりのギルドだけどお前も入るか?」

 

「申し出は有り難いが、先約もあって二つ返事では答えられない。折を見て答えを出させてもらう」

 

「そうか。ま、俺も無理強いするつもりはないさ。それより、ギルドといえばなんだけどよ」

 

「どうした」

 

「いや、ギルド申請の際にブッキングした他のギルドがいたんだけどよ。リーダーが女の子だったんだよ。しかも、メンバーは男オンリーときたもんだ」

 

「別段おかしなことでもあるまい。リーダーになる権利は平等にあるものだ」

 

「いや、言いたいことは分かるけどよ。その女の子ってのが、リーダーやりそうにない、こう、なんつーか、守られるよりも守ってやりたいタイプの儚げな印象だったんだよ。だから余計に印象に残ったっつーか」

 

ネトゲのキャラの外見は飾りだから、ねぇ。

言いたいことも分かるけど、それは偏見になっちゃうよ。

アスナやサチだって、中身は男かもしれないし……しれないし……。

いや、そんなことはないな。ソレハナイ。

 

「見た目など重要ではない。ましてや資質がなければリーダーを務められない、などと言うのも偏見だ。そもそも資質とは、経験に裏打ちされて初めて自覚するものであり、やろうと思わなければ自覚することさえ出来ないものだ。その女性は、何かしらの理由でリーダーを務め、そしてその才能があった。ただそれだけのことだ」

 

「確かにそうかもしれないけどよぉ……」

 

「クラインの考えも最もだが、凝り固まった思考は選択を狭めてしまう。リーダーを務めるのであれば視野狭搾ではいけない」

 

「……それもそうだな。忠告感謝するぜ」

 

「いや、こちらこそ説教臭くなってしまって申し訳ない」

 

それを切っ掛けに、僅かに場が沈黙に支配される。

こういうキャラだから、どうしても取っ付きやすさがないこともあって、咄嗟に話題が出しにくいんだろう。

対する自分は、ぶっちゃけ何を話すとか持ちネタがないので黙っているだけ。

コミュ症じゃない!このキャラだからいけないんや!

 

「それよりも、お前。ずっとボス攻略に参加しっぱなしだろ?ずっとそんなんじゃあ、いつか下手を打つかもしれないぞ。いや、お前の実力を疑っているつもりはないが、聞くところによると、お前ずっとレベル上げばっかりしてるらしいじゃないか。しかも一人で。こんな世界だけどよ、たまにはもっと違う所に目を向けてもいいんじゃないか?」

 

そう提案するクライン。

確かに、思えばこの世界でやってきたことと言えば、もっぱら戦闘だけだ。

それ以外の部分に目を向けようと思ったことさえなかったが、勿体ないのかもしれない。

 

「そうだな。それもいいのかもしれない」

 

「そうかそうか!なに、お前が抜けた穴は俺がフォローしてやるから、安心して羽を伸ばせばいいさ」

 

むん、と見えない力こぶを力ませるクライン。

何て言うか、頼りになるオーラがプンプンするぜッーーーーッ!!

兄貴っていうのは、クラインのような人の為にある言葉だよね。うん。

 

この後、他愛のない話をしながら一緒に狩りをして遊んだ。

クラインは曲刀が、というより刀が好きらしい。ギルド名からして、和好きなんだろう。

でも、刀格好いいよね。僕も曲刀の熟練度上げようかなぁ……。でも、両手剣、短剣、片手混、槍、体術で今のところ一杯一杯なんだよなぁ。

いずれ全部制覇したいとはいえ、風呂敷を最初から拡げすぎても収集つかないだろうし、ここは我慢だ。

 

 

 

 

 

ヴァルディと再び出逢ったのは、階層も二桁に達した頃だった。

噂でアイツの武勇伝を耳にする度、歯噛みしたもんだ。

アイツに負担は掛けられない。だからとっとと強くなって、アイツの代わりに俺が頑張ろうって、そう意気込んでいた筈なのに、結果はこのザマだ。

仲間と足並みを揃える為に匍匐前進を強いられていた、なんて言い訳にもならない。

俺のプライドの――男気の問題だ。

 

ヴァルディの強さは、前見た時以上に際立っていた。

色んな武器を使いこなし、モンスターを蹴散らしていく様は、武神と比喩されてもおかしくないものだった。

レベルではそこそこ追い付いてはいるが、ポテンシャルの差は如何ともしがたい。

俺のようなシステムアシストに頼らないとまともに立ち回れない奴と違って、ソードスキルもなしに俺以上の戦果を上げるヴァルディは、地盤からして違うのが一目瞭然だ。

だからこそ、アイツは戦線に立ってはいけない。

アイツの戦い方は、まさに命を賭けたそれだ。

他のみんなが命懸けじゃない訳じゃない。アイツが極端すぎるだけだ。

ギリギリまで敵を引き付け、最高のタイミングで迎撃し、そこから一気に仕留める。

理に適ってはいるが、デスゲームと化したSAOにおいて、それはあまりにも無謀極まりない。

まるで、戦場に死に場所を求めているように思えて、いたたまれなかった。

前線で戦力の最高峰として数えられているアイツを遠ざけるように仕向ける算段を立てている俺は、裏切り者なのかもしれない。

俺が説得して、仮に少しでも前線から遠ざかったとして、いつまでもそんな立場に甘んじようとするタマだとは思えない。

アイツの自由意思にしろ、他者の干渉にしろ、一度表舞台に立ってしまったからには、最早逃れることは不可能。

ならばせめて、まだ傷の浅い頃合いで、少しでも休んでもらいたいと言うのは我が儘なんだろうか。

 

当然、そんな周囲からすれば損しかない行為をするからには、責任は負う。

俺がリーダーの新設ギルド【風林火山】は、今日を以て攻略組に台頭する。

これは俺の勝手な判断ではなく、仲間の総意によるものだ。

ヴァルディの存在は関係ない。誰かがやらねばならないのなら、俺達がやろうと決意しただけのこと。

誰かがクリアをしてくれることを期待して待っていられるほど、俺達は腐ってはいないというだけの話だ。

些か足並みが遅かった感は否めないが、それでもまだまだ取り戻せる領域だ。

俺達の努力が、現攻略組の実力に劣るとは思えない。いや、思わない。

俺達全員の力を合わせれば、ヴァルディの穴を埋めるぐらいなら出来る筈だ。

だから、今は休んでいてくれ。

お前のいるべき場所は、必ずしも戦いが必要だとは限らないのだと、この機会にそれを知ってくれ。

 

 

 

 

 

久しぶりに下の階層に戻ってきたよ。

ぶらり旅みたいな感覚で一層から街並みや風景を楽しんでいます。

ソロライフであることに変わりはないけど、戦闘に明け暮れていた時に比べて、心の方に余裕が出来ている気がする。

ただひたすらに目的に突っ走っていたけど、たまにはこういうのも悪くないよね。

 

……でも、だからこそ。一人であるという事実が際立ってくるんだよね。

端から見ればただ歩いているだけの寂しい人。端から見なくてもそうだけどさ。

楽しくない訳じゃないよ?だけど、旅って一人だと寂しいよね?

そういうのがいいって人もいるんだろうけど、何だかんだで最後には人肌が恋しくなるもんだと僕は思うね。

つまり、何が言いたいかというと、だ。

 

「共が欲しいな」

 

ぶっちゃけると、旅仲間が欲しかった。

フレンドから誘えばいいんじゃね?とも思ったけど、キリトとアスナはなんか邪魔しちゃいけないオーラが出てるし、アルゴは情報屋として忙しいだろうし、ディアベルも言わずもがな、クラインに至ってはさっき別れたばかりだ。

つまるところ、アテがない。

 

「さて、どうするか」

 

独り言を呟いてしまうあたり、我ながら重傷だと思う。

ぼっち街道を脱出したいあまり、周囲をひたすらに観察する。

とはいえ、ここはフィールドエリアで、広大な世界だ。

探すにしても、狩り場とはまるで離れた人通りの限りなく少ない場所で、人なんて期待出来ない。

そう諦めの境地に達しそうになっていた時、ふと騒がしい空気が遙か遠くから吹くのを感じる。

探ってみると、少女と思わしき風体のキャラが、複数のモンスターから必死に逃げている姿が視界に入る。

アクティブの敵に襲われ、対処している内にリンク。そのまま逃走しているって感じかな。

僕以外の救援は期待できないだろうし、流石にこの状況で見捨てるなんて有り得ないよね。

と言うわけで、颯爽と助けに行きますかね。

 

 

 

 

 

自分に足りないものはなんだろう。まずはそこから始まった。

 

突然のデスゲームと化したSAOにおいて、自分の存在はひどく矮小で。それは現実においても同様で。

死ぬのが怖くて引き籠もって、時間が経つに連れてそんな自分が情けなく、不甲斐なく思えてきて。

ずっと現実から目を逸らして生きていかないといけないのかと思ったら、私は行動を始めていた。

とはいえ、自分ひとりで何か出来るなんて自惚れているつもりはない。

だから、パーティプレイでレベルを上げることから始めた。

幸か不幸か、メンバーには事欠かなかった。どうやら私は、マスコットキャラのような扱いでパーティに入れられていたらしい。

別にそれでも良かった。自分には何もないのだ。マスコット扱いだろうと、組んでもらえるだけで恵まれている方なんだから。

それに、そういう扱いのお陰もあってみんな良くしてくれる。率先して守ってもくれるし、アイテムだってくれたりする。

端から見れば嫌な女なんだろう。それを断らない自分は、そんな汚名を被ることを事実上受け入れているようなものなのだから。

でも、そうしなければ私程度の存在、すぐに消えてなくなってしまう。

だから、利用できるものは何でも利用するつもりだった。

 

そんな考え方をしていたのが、いけなかったんだろう。

無意識的に増長していた自分は、無謀にもソロでフィールドの探索に赴いていた。

安全マージンは確保されている場所だったとはいえ、パーティプレイを前提に活動していた自分は、ソロで戦えるほど技術が身に付いているなんてことはないし、守られることを前提としていたこともあって、ソロでも同じ思考で立ち回ってしまった。

その結果が、今にも死の淵にいる自身の無様な姿。

体力はレッドゾーンまで迫っており、回復するにも複数の敵に絡まれてしまった状況ではそんな暇さえ与えられない。

私に出来ることは、逃げることだけだった。

闇雲に走り回っていたせいで、全く分からない道に辿り着いていたことに気付いた瞬間、絶望で支配された。

もう、ダメだ。心が折れ、死さえも許容してしまった瞬間、一陣の風が吹いた。

 

「――――」

 

背後に重くのし掛かっていた死神が、瞬く間に消えていくのを理解した。

それと同時に、安心感に支配され身体が崩れ落ちる。

振り返ると、そこには頼もしい背中があった。

手に槍を携え、私とモンスターの間に割って入るその姿は、物語の騎士のようだと場違いな感想を抱いた。

そして、私が声を出すよりも早く、モンスターは駆逐された。

強い。今まで出逢った誰よりも。

具体的にどこが、とは言えない。抽象的にさえ表現出来ないほど、圧倒的な強さ。

考えるまでもなく、確信する。彼はボス攻略参加者であると。

 

「大丈夫か」

 

背中だけの身体が、おもむろにこちらへと振り向く。

 

「――――ッ!」

 

絶句。

絵本から飛び出てきたかのような美青年が、私を見つめている。

そんな彼に助けられた事実も相まって、顔がどんどん紅くなっていくのが分かる。

 

「立てるか?」

 

「あ――はい」

 

あまりに自然に差し出された手を取り、立ち上がらせてもらった瞬間、自分が何をしていたのかを理解する。

 

「あ、ああの、その、ありがとうございます!」

 

慌てて礼をする。

恥ずかしさの余り、勢いばかりの礼になってしまったが、そんなことを気に留める余裕なんてなかった。

 

「礼はいい。それよりも、事情は知らないが、危険なことは止めた方が良い。装備からしても、この辺りをソロで挑むのは些か早い」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「これから気をつけてくれるならば、それでいいさ」

 

怒るでもなく、淡々と説教されると、余計に申し訳なさが募る。

 

「取り敢えず、安全な場所まで送ろう」

 

「えっ、そ、そんな。いいですよ!」

 

「ここにいてはまた襲われるぞ?」

 

「うっ――」

 

それを言われては、返す言葉もない。

だが、助けられて、更には護衛まで買って出られるとなると、申し訳なくもなる。

しかし、ここで別れたら今度こそ命はないだろう。

選択肢は、ひとつしかなかった。

 

「お、お願いします……」

 

「任された」

 

そうして、私は彼に護衛されて戻ることになった。

転移結晶を持っていることをすっかり忘れていたのに気が付いたのは、彼と別れてからのことになる。

 

「そ、そういえば自己紹介していませんでしたね。私、シリカって言います」

 

「私はヴァルディだ」

 

彼の名前を聞いたとき、脳裏に何かが掠める感覚を覚えたが、すぐにそれは霧散した。

 

「ヴァルディさんは、どうしてあそこにいたんですか?」

 

「戦い詰めの毎日から少し遠ざかろうと思い、一人旅に勤しんでいた」

 

「旅……ですか」

 

「知人の薦めだがな」

 

知人さんが何を思ってヴァルディさんにそう薦めたのかは分からないけど、そのお陰で助かったのだから、知人さんには感謝しなければならない。

 

「それにしても凄いです、あんなに強いなんて……」

 

「経験さえ積めば誰でも強くなれる。ここはそういう世界だ」

 

ヴァルディさんの言うことは、紛れもない事実だった。

どこまでもプログラムで構築されたこの世界は、一定のルールに準じて私達を平等に導く。

敵を倒せば経験値が得られ、レベルが上がれば必ず以前の自分より強くなれる。

生死の概念といった、限りなくリアルに近い状況を再現しているとはいえ、RPGな世界観を準拠しているSAOでは、本当の現実ほど理不尽なことは強要されてはいないのだ。

強くなりたいのなら敵を倒し、スキルを上げたいならスキルを使い続ければ、誤差の程度はあれど必ず成果は出る。

これが本当の現実なら、出来ることとと出来ないことは必ず存在する。

いや、経験さえ積めばいずれは、という点は同じなのかもしれないが、絶対的な違いは実感にある。

ログを見れば、幾ら経験値が得られたのだとか、熟練度が上がったのだとかが分かるSAOとは違い、現実にはそんな親切な数値は存在しない。

だから上手く出来ない事柄は、余程のことが無い限り継続しないし、だから成長しない。

自分には才能はない。他の人ほど上手くやれないのなら、別に無理してやる必要はない。そう考え、諦める。

でも、ここではそんなことはない。

一定の水準で技術の変化が実感できるSAOの世界は、もしかしたら現実世界よりも生きやすいのかもしれない。

現実世界の肉体の死、というタイムリミットさえなければ、という前提がつくけど。

 

「私、少しでも自分一人で何か出来るようになりたくて、それであんなことになって……情けないです」

 

「失敗は成長の元だ。気に病むことはない」

 

「でも、それで死んでしまったら――」

 

「君は今、死んでいるか?」

 

私の不安を遮るように、そんな問いが投げかけられる。

 

「生きてさえいれば、君の経験は間違いなく糧となる。死を恐れるな、などとは言わない。だが、やはり何かを得たいと願うのであれば、相応の努力は必要になるし、その分危険に身を寄せなければならないのも事実。一人で何でも出来るようになりたいなら、その分他人を頼ることだ。気ばかり逸ったところで、必ずしも成果が得られる訳でもなければ、そもそもその境地に至るまで一人でいなければならない、なんてことはないのだから」

 

「……そう、でしょうか」

 

「そうだ」

 

この世界でこういう説教をされたのは、初めてかもしれない。

私がパーティメンバーの一員として求められる強さや技術というものは、なかった。

メンバーの穴埋め。マスコット的立ち位置。戦闘要員として、私は欠片の価値も見出されなかった。

更に言えば、私は強くなる必要なんてない、なんて言われる始末。

その人がどんな思いでそんな言葉を出したのかは分からない。でも、そう思われる自分が嫌で嫌でたまらなかった。

だからだろうか。ヴァルディさんは、初めて私を等身大に見てくれているのだと分かってしまう。

私の願望を理解し、それを肯定し、アドバイスもくれる。

初歩的なことしか言われてはいないけれど、そんなことでさえ、私は言われたことがなかったのだ。

嬉しい。ただ単純に、そう思う。

 

「――ありがとう、ございます。私、頑張ってみます!」

 

「そうか」

 

ぶっきらぼうに返されるけど、それでも良かった。

彼が私のことを肯定してくれていることは分かっている。だから、その素っ気ない言葉の裏に、優しさがあることも理解している。

なら、何を臆する必要があるのか。

 

「それにしても、一人で何でもは流石に難しいかもしれないが、それに近いことなら今すぐにでも出来るかもしれない」

 

「えっ?」

 

そう言うが否や、ヴァルディさんは進路方向を変える。

慌ててその後をついていく。

しばらくすると、大きな森が視界に映る。

そこへと直進していくのを見る限り、目的地はそこに違いない。

 

「あ、あの。あそこに行くんですか?」

 

「そうだ。目的は、ついたら話す」

 

有無を言わせないその態度を前に、私は大人しくついていくしか出来ない。

そうして辿り着いたのは、周りにちっちゃい色々な種類のモンスターがあちこち歩き回っている。そんな一風変わった森だった。

 

「あの、ここは?」

 

「使い魔の森。と言っても、私がそう呼んでいるに過ぎないが。ここにいるモンスターは、すべてがテイムモンスター判定を持つ。種類も豊富に存在し、軽く探索した程度では把握しきれない程度にはいる。レアモンスターだっているだろうし、ここには君の理想のパートナーがいるかもしれない」

 

「パー……トナー?」

 

理解の及ばない思考が、言葉だけを反芻する。

 

「一人で何でも出来るようになる、という目標を掲げるのは結構だが、千里の道も一歩からだ。テイムモンスターは性能が高い訳ではないが、+αの戦力向上ともなれば、決して馬鹿に出来ないものだ。他人の都合に合わせる必要のない、個として別でありながら純然たる君の力となってくれる。まさにパートナーと呼ぶに相応しいだろう?」

 

「パートナー、私の。私、だけの」

 

「まぁ、深く考える必要はない。君の眼鏡に適ったモンスターをテイムすればいい。まぁ、テイムは確率に依存するようだから、簡単にはいかないだろうが」

 

未だに思考が纏まりきっていないが、つまりこういうことだろう。

一人で何でも出来るようになりたいなら、その一歩としてテイムモンスターの力を借りて頑張ってみろ。

パーティかソロか。1か0かの極端な私の考えに差した、新たな光明。

それを無視し、

 

「が、頑張ってみます!」

 

意気込み、森の中を歩き回る。

モンスターの強さはそこまででもない上に、全てがノンアクティブということもあり、気楽な散歩気分でいられる。

可愛いモンスターが多いことも相まって、私はすぐにこの場所がお気に入りになっていた。

ヴァルディさんは、適当な場所に座りこちらの様子を伺っている。

そんな傍らにテイムモンスターが興味深げに近づいていく様は、見ていて和やかな気分にさせられる。

 

思えば、こんなに落ち着いた気分にさせられたのは、この世界に来て初めてかもしれない。

フィールド、街の中問わずどこにおいても気を張り続けていた記憶しかない。

噂では、この世界でもPKなんてものが横行しているらしく、相手が人間だからといって気が抜けなくなったのが理由だ。

思えば、如何に助けられたとはいえ、ヴァルディさんのことを全面的に信用し過ぎていたと、浅慮な自分を叱咤する。

だけど、そんな考え無しの行動が、今の幸福に繋がっていると思うと、何とも言い難いジレンマを抱かずにはいられない。

 

そうしている内に、見慣れた風景に異物感を覚える。

小粒ではあるが、その違和感は確実に私の意識を逸らす。

まるで、それこそ自分が望んで止まないものだと無意識に感じ取っているようで――

 

「あ――」

 

電流が走る、とはこのことなんだろう。

雑多なモンスターの中に、一際存在感を放つ小さな竜の姿があった。

名前はフェザーリドラ。鱗ではなく、水色の羽毛によって覆われた容姿からは、迫力や厳かな雰囲気は一切感じられない。

だからこそだろう。親近感というか、取っ付きやすい感じが前面に押し出されており、近づくことに躊躇いを持つことはなかった。

フェザーリドラも、こちらに気付いたらしく、互いに近づく形となる。

テイムというシステムのことは全然詳しくないけど、モンスターが友好的な態度を示してきた時、飼い慣らす最低条件が成立するらしい。

後は餌とかでどうにかする、ぐらいしか分かっていない。

如何にもレアで、かつここまでビビッときた相手を逃すなんて、有り得ない。

必死になって何か無いかを探し、クッキーが入っていたのを思い出す。

ちょっとしたクエストで得た報酬だけど、思いの外美味しくて、かつ何度でも受けられるものだったので常備するようになった代物だ。

 

「た、食べる……?」

 

恐る恐るクッキーをフェザーリドラへと近づける。

拒否されたらどうしよう、という不安が手元を狂わせる。

手から滑り落ち、自由落下していくクッキー。

しかし、それは地面に叩きつけられるより早く、その下を何かが通り過ぎ、クッキーごと視界から消える。

 

「え、え?」

 

訳が分からないまま周囲を見渡すと、それはいた。

全身紫色のずんぐりむっくりとしたそれは、人間の足のようなものが四本ちんまりと生えており、手らしきものは存在しない。

目は点、口はアルファベットのWそのものであり、腹の部分には水滴のような模様が描かれている。

フェザーリドラ以上に異質なそれは、私のクッキーを美味しそうに食べている。

名前は……チムチム?見たこともないし、この子もレアなんだろうか。

そんな益体のない思考は、クッキーを間接的に奪われて憤慨したフェザーリドラがチムチムに襲いかかる光景を見て霧散した。

 

「ちょ、ちょっと!まだあるから、ね?」

 

慌てて二匹に近寄り、クッキーを一枚ずつ差し出す。

クッキーと喧嘩相手を交互に見遣り、状況を理解した二匹は同時にクッキーを食べ始めた。

いきなり喧嘩した時は驚いたけど、意外と息が合ってる?

 

クッキーを食べ終えた二匹は、まるで値踏みするように私の周りをぐるぐると回り出す。

しばらくして、小気味の良い音と共にアイコンが出現する。

そこには、テイムモンスターとしてフェザーリドラとチムチムが登録されたことを証明する文章が綴られていた。

こう言ってはなんだけど、感慨深さも何もありはしない。

咄嗟に喧嘩の仲裁に入ったら懐かれたって、理解が状況に追い付かないよ。

 

「やったようだな」

 

「あ、ヴァルディさん……。正直、実感が全然沸いてきません」

 

「テイムという概念はベータテスト時代には見つかっていたらしいが、マイナーな部分があるのは否めないからな。そもそも懐けば良いと言われてはいるが、明確に条件が確立している訳でもないのが現状だ。行き当たりばったりに行動し、それで結果が出たとなれば困惑するのも無理はないさ」

 

「そういうものですか……」

 

「何にせよ、レアモンスターを二匹も、しかも同時にテイムした人物など、後にも先にも君ぐらいのものだ。自慢してもいいんじゃないか?」

 

実感も何もないのに、自慢も何もないと思うけど……。

でも、嬉しいことに変わりはない。一匹ほど予想外だけど、それでも愛嬌もあるしこれはこれで可愛いので問題はどこにもない。

 

「そうだ、名前。一匹分しか考えてなかったから、どうしよう」

 

「その名前とは?」

 

「ピナです。リアルで飼っている猫と同じ名前なんですけど……こっちの世界でもピナが一緒に居て欲しいって思ったから、もしテイムモンスターが手には入ったらそう名付けようって思って。……代替品扱いなんて、この子達にやっぱり失礼でしょうか」

 

「……ピナという猫は、君にとって掛け替えのない存在か?」

 

「はい」

 

「ならばピナと同等に思われているモンスター達は、幸せだと私は思うぞ」

 

「そういってもらえると、嬉しいです」

 

この世界に来てずっと大事にしていたピナと会えなくなった悲しみを、テイムモンスターで紛らわせようとしていた自分の黒い部分が、ほんの少しだけ彼のお陰で薄れた気がした。

 

「一番先に目を付けたのがフェザーリドラだったから、この子をピナにしようと思っています。でも、そうなるとこの子が……」

 

チムチムを両手で持ち上げ、視線を同じくする。

無垢な瞳の色が、期待の色で染まっているのが分かる。

 

「凝るのも悪いことではないが、名前とはつけられた者を象徴する言葉だ。分かりにくくても、ましてや本名よりも長いのもNGだ」

 

つまり、簡潔かつ四文字以内で収めるのが条件ということになる。

考える、必死に。

しかし、一体の名前を元ネタの引用でお茶を濁していた私に、ネーミングセンスなんてものがある訳もなく、無駄に時間が過ぎていく。

 

「……チム、じゃあ、ダメかな?」

 

遂に限界に達した私の脳が、最初に直感で浮かんだ名前を、無意識に吐き出させる。

分かり易く、二文字。条件は揃っている。

でも、あまりにも安直すぎるが故に仕舞っておいてあった、最後の手段。

しかし、チムチムは笑顔になる。受け入れてくれた、ということなんだろうか。

 

「喜んでいるようだぞ」

 

「い、いいのかなぁ……」

 

「本人がそれで良いと感じているのなら、こちらが気にすることではないさ」

 

ちょっと釈然としないけど、元はと言えば私のネーミングセンスが皆無なのがいけないのだから、こちらの不満はお門違いだろう。

 

「さて、これで君の求める自立への一歩が始まる訳だが……まずは親睦を深めることからだな。街に戻ろうか」

 

「は、はい!」

 

再びヴァルディさんに促されるまま、今度こそ私達は街に戻る。

彼には感謝してもしきれない。

無償の奉仕で、私は掛け替えのない存在と出逢い、そして共に歩むことが出来る。

いや、無償の奉仕になんてさせない。

私と彼では何もかもが天と地の差があるだろうけれど、それでもこの恩を返していきたい。

あれからフレンド登録もしたし、二度と会えない、なんてことは恐らくない筈。

だからまずは自分のやれることに目を向けよう。

一歩ずつでいいから、自分のやれることを模索し、いつかヴァルディさんに近づけるように頑張らないと。

ピナとチムも、これからよろしくね。

 




感想でこの勘違いキャラのベースがどうのってお言葉を頂いたのですが、冷静に考えたらこれ不動遊星っぽいなーって思った。
ハイスクールD×Dの方なんか絆を軸にしたお話だから、余計にそう見える。



Q:クラインマジイケメン
Aクラインみたいなキャラって、典型的「頼れる兄貴分だけど、そのせいで恋愛対象としては見られない」キャラだよね。

Q:オリストーリーですね。
A:シリカとピナの出逢いって子細に書かれてたっけ。分かんないからこんな感じになっちゃったけど、いいよね?

Q:チムチムってなんぞ。
A:クロス元のモンスターです。分かる人には分かる。もう少ししたら本格的に分かり易い元ネタ出す筈。

Q:サチと流れ似てる、ような……。
A:(話の流れ考えるの下手で)すまんな。

Q:サチがメインヒロインの筈なのに、まだ一回しか出てないとか……。
A:なんでや!地味に目撃情報出てるやろ!

Q:シリカ可愛い。
A:ALOのケットシーシリカいいよね。

Q:シリカの性格ってこんなだっけ。
A:調子に乗りやすい、っていうのは原作でも勢いでソロになっちゃった経緯があるから考えられなくはないし、それに付随した人格としては、言うほど矛盾はしてないと思ってる。デスゲームなんてものに参加させられて、心が荒まない人はいないだろうし、これぐらいは許容範囲でしょう。
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