差しウマ「エンドスコープ」の馬生   作:注釈n

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胃腸が酷いことになっていたのでこのタイトルです。自分の尿の色が変わるとは思わなかった(いやそれ胃腸か?)


以下要素説明とか。

謎のおじいちゃんっ子:たぶん今後の重要キャラ。

お爺様:ガーサント狂いの人。どけ! 私がお爺様だ!(健康状態的に)


いちょう

 勝った。

 

 勝った?

 

 勝った。

 

『勝ったんだ、僕は』

 ウイナーズサークルについて、ようやく実感が湧いた。何人かがぽんぽんと首を撫でる。ごつごつした手、ざらっとした手、皺がついた手、柔らかい手。

 

 雨はまだ土砂降りのまま。それでも、僕には辺りが明るく見える。

『また勝ちたい』――

 きっと、心からそう思った。

 

 

 --

 

「触るの? あれに?」

 私は不満を隠さずにそう言った。動物に触るなんて嫌だった。雨の中走っていたんだから、なおさら。

 けれども。

「そちらの方が、お爺様もきっと喜ばれますよ」

 そう言われると弱いのだ。

 私は、小さいころからずっと、いわゆる「おじいちゃんっ子」というやつだった。ひょっとすると、父よりも祖父と居た時間の方が長いかもしれない、というくらいの。

 もう先が長くない祖父が、少しでも喜ぶなら。

 

 私は、意を決してその馬に触れてみた。僅かに鼓動が伝わる。泥は思ったよりついていない。毛の触り心地はあまりよくなかった。

 

「撮りますよー」

 間延びした声がする。

 私とその馬はカメラの方を向いた。そのタイミングがおかしいくらいにあっていたものだから、私は写真用の笑顔をつくる必要がなかった。

 

 

 --

 

 何やら検査をされたり、少し放牧されたりと1ヶ月ほどが経った。

 結局ケガはなかったらしい。無事是名馬、だ。

 ようやく調教が再開されると、早速彼女との併せ馬があった。

『勝ったぞ、新馬戦』

『そう、おめでとう』

『……ありがとう』

 少しだけ気恥ずかしくなる。目を逸らした。

『サクラは?』

 僕は掛かり気味に話題も逸らす。

『私は函館で2走して、着外と2着。まだまだね』

『2着の方はGⅢだったんだろ。すごいじゃないか』

『知ってたの?』

『……まぁ』

 知っていた。かなり知っていた。どのレースで、何番人気で、どんなふうに走ったかまで聞いていた。厩務員がいちいち教えてくれたのだ。

 GⅢ函館3歳ステークス。12番人気から、第4コーナーで前に襲いかかると、叩き合いの末アタマ差の2着。

 はっきり言って、とてつもない活躍である。

 いまだに僕が併走相手を務めているのが信じられないほどに。

 

『それから、次はたぶん同じレースよ』

『いちょうステークス?』

『そう』

 オープン特別いちょうステークス。僕の次走もそこだと伝えられていた。

 GⅢで2着に入った馬(サクラ)が走るレースとしては、少し格が落ちるような気がする。まぁ、この時代の3歳戦は整備が進んでないから仕方ないのかもしれないが。

 

『……負けないから』

『僕は胸を借りるつもりで』

 言うと、彼女はぐっと加速した。

 

 

 1991年10月27日(4回東京競馬8日目)

 

 8R いちょうステークス(3歳オープン) 芝1600m

 

番号馬名騎手
1枠1番オフレコ杉本
2枠2番アンドウカンパク柴村正
3枠3番タイキロンドン佐波
3枠4番サクラトウジンボー田島
4枠5番クリミナルセーラ縦山伝
4枠6番レッドキング東雲
5枠7番ミサカサンクス西
5枠8番ダンシングテスコ大館
6枠9番エンドスコープ久保村
6枠10番カースタント飛田
7枠11番アドマイヤマイティ田茂
7枠12番ポートリファール柴村義
8枠13番マチカネタンホイザ岳寛
8枠14番タケヒロチャイルド蛇澤

 

 

 天候:雨

 馬場状態:不良




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