差しウマ「エンドスコープ」の馬生   作:注釈n

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四角先頭以外勝たん。ってマック(イーンの鞍上)でJK(JocKey)が言ってました。


以下要素の説明とか……は、もう言葉はいらないのか!


四角先頭

 すがすがしいほどの青空だった。

 背中にはいつも通り、あの久保村。

 

 これはGⅠ、「いままでで」などと付けずとも、一番レベルの高い競馬のはずだ。それなのに、僕はいままでよりもずっと自信があった。「勝ちたい」とか、「勝てるかも」ではなくて、「勝てそう」と思えた。

 あのニシノフラワーが居るのに。あのヤスダビューティが居るのに。もちろん、サクラも。

 今日は5番人気だから? 前走でサクラに勝ったから? 空が晴れているから? 

 どれもその通りで、どれも違う。

 

「ほいじゃあ、行きますか」

 

 それでも、僕は「勝てそう」だと思った。

 

 

 

 --

 

 

 輪乗りの間に、ヨドに話しかけようと思っていた。「勝つ」と言うつもりだった。

 だけれども。

『ニシノフラワーさん』

 この馬を見たら、先に声をかけねばならないと感じた。ヨドよりずっと小さな馬体に、彼女よりもずっと力強さが漲っていた。

 いつだったか、前に見たときは、せいぜいヨドくらいだったのに。

『勝ちます』

『……はい、負けません』

 それだけのやり取りで、私も闘志をかきたてられた。

「入って入って」

『あっ、すみません……』

 ゲート入りを促されていることに気づかないくらいに。

 

 

 

「今年から東西が統一されました。3歳牝馬によるチャンピオンの決定戦。態勢完了」

 

 

「スタートしました。おおクラブステージとエンドスコープが良いダッシュ。スガノサボテンとタカオリミランはちょっと出負けした感じ。さて何が行きますか。クラブステージがハナを奪いますが、外からターンオーバーが前に行きました。2番手はユーワジョンヌ、3番手にクラブステージでその後ろがエンドスコープ」

 

 私のスタートはまずまず。うまく決めたヨドは前の方に行ったらしい。向こう正面に入る*1頃には、馬群がばらけてくる。ちょうど、内にニシノフラワーさんが見えた。

 併走のように、ピタッと隣につく。それを嫌ってか、彼女は少しペースを上げた。

 私も着いて行く。

 しかし、そこで口元が後ろに引っ張られた。「行くな」のサインだ。私はしぶしぶ従った。

 

「さらにニシノフラワーが上がって行きました。このあたり、人気どころが固まっています。内からミサカサンクス、外からヤスダビューティ」

 

 

 --

 

 

「3、4コーナー中間に入ってまいりました。このあたりで先頭は、エンドスコープが並びかけてきまして、先頭はターンオーバーです。ニシノフラワーは3番手。ヤスダビューティとミサカサンクスはまだ中団です」

 

 残り600。僕に「行け」のサインが来た。

 脚に力を入れる。

 先頭の馬はもう体力が残っていなかったらしく、並びかけるとするする下がって行った。

 つまり、僕が先頭。

 

 

「直線に向いて、先頭はエンドスコープ3馬身くらいのリード。さらに脚を伸ばしていきます」

 

 

 

 第4コーナーから直線の入り口辺りで先頭に立って、押し切る。いわゆる四角先頭は、誰もが認める最強の競馬だ。理由は色々と言われている。それこそ、「シンボリルドルフが四角先頭で勝ち続けたから」なんてものまで。

 そして、今僕はその競馬をしようとしていた。そのはずだった。

 

 先頭に立って、突き放した途端。広いはずの視界から馬が消えた。いや、何も他馬が消滅したわけではない。耳には蹄の音がいくらでも突き刺さっている。

 しかし、見えないのだ。他の馬が、どこにも。

 

 それは、僕にとって初めての経験だった。思えばサクラとはじめて走った瞬間から、ずっと僕は他の馬を見ながら走っていた。前でも横でも、あるいは斜め後ろくらいでも、馬の身の広い視界には必ず他の馬が映っていた。

 

 それが、今は、ない。

 

 足が竦んだ。

 

 

 

「エンドスコープもう一杯になったか、ニシノフラワー追い上げる! ヤスダビューティは外に持ち出した」

 

 

 

 --

 

 

 

 直線に入って、ようやく「行け」のサインが出た。

 私は迷わず内々を選んだ。あのときヨドがそうしたように。

 他馬が右にも左にも見える。私は間を縫うようにくぐり抜けた。もしかしたら、それはただの幸運だったのかもしれない。しかし、事実、私は先頭馬をはっきり捉えていた。

 

 その馬は、ヨドではなかった。

 

 

「ニシノフラワー先頭! 外からヤスダビューティ差を詰める! 内を抜け出してミサカサンクスも来ているぞ!」

 

 

 だが、と思い直す。前に居るのが誰であろうと、私がやるべきことは変わらない。

 

『勝つ!』

 

「ニシノフラワーかヤスダビューティか! いやミサカサンクスが2番手にあがった!」

 

 あと、一頭。もう少し。脚が重い。でも、まだ動く。

 

「ミサカサンクス迫る! ニシノフラワー頑張る!」

 

『……!』

 

 また、届かない。

 

「ニシノフラワー先頭でゴールイン! 2着にミサカサンクス。3着がヤスダビューティ、4着エンドスコープです」

 

*1
この頃の阪神には外回りがない




えるしってるか。この小説は無双モノではない。
あのニシノフラワーに3歳戦で勝てるわけないだろ。

……でもT原なら、3A3QにあのT原がもし乗ってればワンチャン勝ってたんじゃないかって気はする(T原への評価が高すぎる)。
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