差しウマ「エンドスコープ」の馬生 作:注釈n
こんな小説より田原成貴のTwitterを見ろ。
勝ちに不思議の……?
何が。
『何が「勝てる気がする」だ!』
G Iを勝つ? 重賞を勝つ?
負けた。僕が、僕のせいで負けた。
足が竦んで。失速して。持ち直した時にはもう遅い。
それだけの負けだった。つまらない負けだった。
失望されたかもしれない。
『誰に?』
いつだか、「勝てば」と思い浮かべた顔と、同じ面子が浮かんだ。
そう思うと、普段通りに寝藁をかえる厩務員の目にすら疑心暗鬼になる。
首を振った。
「おうおう、落ち着け」
それでも、その思いが払えない。
『そんなわけないでしょ』
『……サク、ラ?』
だけれど。彼女は、今の僕にさえ、何も変わって見えなかった。
『変ね。本当に変よ』
はじめて会ったときと同じ言葉。
『たった一回負けただけじゃない』
『でも』
僕が何か言い返そうとすると、彼女は遮って続ける。
『いちょうステークス。私はあなたに負けた』
『でも、まったく差がない2着だったじゃないか』
『じゃあ、GⅢ札幌3歳ステークス。14頭立て13着の大惨敗よ』
『3連闘で負けるのはむしろ当然だろう』
『それなら、クローバー賞。8頭立て7着惨敗』
『それは連闘から間がなかったじゃないか。それに次のGⅢ函館3歳ステークスでは……』
『2着に健闘した?』
『そう、だから……』
彼女は大きなため息をついて、言った。
『それなら、ヨドも次勝ちなさい』
心臓が跳ねた。
次。それはたぶん桜花賞のトライアルで、この前のGⅠにも負けないくらいの面子が揃う。
それなら、この前に負けた僕は。
だから、考えたくなかったのだろうか。
でも、彼女ならきっとそう言うだろうとも、どこか思っていた。
『っ……でも、僕は、僕のせいで……』
違う。とっくにわかっている。きっと、ただ僕は――
『私は――次は必ず勝つ。だから、次は勝ちなさい』
彼女に甘えたかっただけだった。
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1992年2月2日 東京競馬場 10R。
デイリー杯クイーンカップ。
「前はもう一杯になったか。これは2頭の叩き合い。ミサカサンクス追う、クラブステージ逃げる、岡田のムチが飛ぶ! クラブステージ、ミサカサンクス、クラブステージ、ミサカサンクスがわずかに前に出た! ミサカサンクス1着!」
1992年3月22日 阪神競馬場 11R。
報知杯4歳牝馬特別。
「第4コーナーをカーブして直線へ。クラブステージ、クラブステージ岡田が外から上がってきたぞ。いや大外からエンドスコープも来ている。並ぶか、並んだ、かわった。この男は牝馬に乗せると本当に強い! エンドスコープ勝ちました」
……え、勝った?
クラブステージ:元ネタはディスコホール。史実でもクイーンカップでミサカサンクスの元ネタに負けている。