差しウマ「エンドスコープ」の馬生   作:注釈n

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田原成貴がTwitter開設したので、メイケイエールよりも掛かって投稿しました。


こんな小説より田原成貴のTwitterを見ろ。


1992年
勝ちに不思議の……?


 何が。

『何が「勝てる気がする」だ!』

 G Iを勝つ? 重賞を勝つ? 

 一頭(ひとり)じゃろくすっぽ走れない奴がよく言うよ。くそったれ。

 

 負けた。僕が、僕のせいで負けた。

 足が竦んで。失速して。持ち直した時にはもう遅い。

 

 それだけの負けだった。つまらない負けだった。

 失望されたかもしれない。

『誰に?』

 いつだか、「勝てば」と思い浮かべた顔と、同じ面子が浮かんだ。

 

 そう思うと、普段通りに寝藁をかえる厩務員の目にすら疑心暗鬼になる。

 

 首を振った。

「おうおう、落ち着け」

 それでも、その思いが払えない。

 

 

 

『そんなわけないでしょ』

 

『……サク、ラ?』

 だけれど。彼女は、今の僕にさえ、何も変わって見えなかった。

『変ね。本当に変よ』

 はじめて会ったときと同じ言葉。

『たった一回負けただけじゃない』

『でも』

 僕が何か言い返そうとすると、彼女は遮って続ける。

『いちょうステークス。私はあなたに負けた』

『でも、まったく差がない2着だったじゃないか』

『じゃあ、GⅢ札幌3歳ステークス。14頭立て13着の大惨敗よ』

『3連闘で負けるのはむしろ当然だろう』

『それなら、クローバー賞。8頭立て7着惨敗』

『それは連闘から間がなかったじゃないか。それに次のGⅢ函館3歳ステークスでは……』

『2着に健闘した?』

『そう、だから……』

 彼女は大きなため息をついて、言った。

『それなら、ヨドも次勝ちなさい』

 心臓が跳ねた。

 次。それはたぶん桜花賞のトライアルで、この前のGⅠにも負けないくらいの面子が揃う。

 それなら、この前に負けた僕は。

 だから、考えたくなかったのだろうか。

 でも、彼女ならきっとそう言うだろうとも、どこか思っていた。

『っ……でも、僕は、僕のせいで……』

 違う。とっくにわかっている。きっと、ただ僕は――

『私は――次は必ず勝つ。だから、次は勝ちなさい』

 彼女に甘えたかっただけだった。

 

 

 

 --

 

 

 

 1992年2月2日 東京競馬場 10R。

 デイリー杯クイーンカップ。

 

「前はもう一杯になったか。これは2頭の叩き合い。ミサカサンクス追う、クラブステージ逃げる、岡田のムチが飛ぶ! クラブステージ、ミサカサンクス、クラブステージ、ミサカサンクスがわずかに前に出た! ミサカサンクス1着!」

 

 

 

 

 1992年3月22日 阪神競馬場 11R。

 報知杯4歳牝馬特別。

 

「第4コーナーをカーブして直線へ。クラブステージ、クラブステージ岡田が外から上がってきたぞ。いや大外からエンドスコープも来ている。並ぶか、並んだ、かわった。この男は牝馬に乗せると本当に強い! エンドスコープ勝ちました」

 

 

 

 ……え、勝った? 

 

 




クラブステージ:元ネタはディスコホール。史実でもクイーンカップでミサカサンクスの元ネタに負けている。
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