新世紀エヴァンゲリオン for Children ~全ての子供たちのために~ 作:朝陽晴空
<第三新東京市 水族館>
使徒を空手の美しい『型』のユニゾンで撃退したシンジたちには、ゲンドウとコウゾウから特別にお小遣いを貰った。
本心ではシンジと2人きりのデートを楽しみたいと思っているアスカとレイ。
しかし同居を始めてユニゾン特訓をして、アスカとレイには友情のようなものも芽生え始めていた。
アスカとレイの間で抜け駆けを禁止する協定のようなものが結ばれ、シンジとアスカ、レイの3人で水族館に遊びに行く事になった。
どうせ3人で行くなら人数が増えても同じだと、アスカがヒカリに声を掛けると、トウジとケンスケもついて来たのだった。
「水族館に来たんは、妹のサクラを連れて来た時以来やな」
「そう言えば、トウジの妹の怪我の具合はどう?」
トウジが遠い目をしてポツリと呟くと、気になったシンジはそう尋ねた。
「私、鈴原君の妹さんにまだちゃんと謝っていない。お見舞い、行った方がいいかしら」
レイは最初に第三新東京市に出現した使徒を零号機で武力偵察をした時、倒壊させてしまった建物のせいでサクラに怪我をさせてしまったと負い目を感じていた。
レイはトウジを通じて手紙で謝罪はしたが、まだ返事は貰えていなかった。
「サクラの怪我の事なら心配あらへん、ネルフの先生がU細胞とか言うのを使って直してくれるそうや」
U細胞とはアルティメット細胞の事で、様々な臓器を再生する事の出来る究極の技術だ。
リツコは3Dプリンターやバイオマテリアルと組み合わせて、切断された腕や足などの復活も研究していた。
「良かったね、綾波」
「ええ」
U細胞の事を知っているレイは、シンジの言葉に嬉しそうにそう答えた。
「ほらシンジ、あっちの水槽を見に行きましょうよ!」
「碇君、こっち」
アスカとレイは争うようにシンジの腕を引っ張った。
「相変わらずうらやましいこっちゃ」
「トウジは別にうらやましがることないだろう?」
しみじみとした顔でため息を付くトウジに、ケンスケはそう声を掛けた。
「どういう意味や、ケンスケ?」
トウジが不思議そうな顔でケンスケに尋ねると、ケンスケはヒカリに話を振った。
「なあ、委員長もそう思うだろう?」
「あの、その、私は……」
いつもと違って歯切れの悪いヒカリに、トウジは怪訝な顔で問い掛けた。
「委員長、どないしたん? 腹でも痛いんか?」
「えっと……」
「もうええわ」
「あっ……」
下を向いて黙り込んでしまったヒカリを見て、トウジは関心を無くしたように視線を外した。
しょんぼりと元気を無くしたヒカリの様子にケンスケはため息を吐き出した。
そしてシンジ達はこの水族館の目玉である『晴空ペンギン』のブースを見に行った。
ペンギンたちが泳ぐ水槽を下から見上げる事が出来て、背景となる空を泳いでいるように見える。
「ペンギンって泳ぐのが意外と速いのね」
アスカは感心した様子で泳ぐペンギンを眺めていた。
「まるでペンギンが空を飛んでいるみたいね」
「ホンマやな」
ヒカリの近くにはいつの間にかトウジが立っていた。
まだヒカリはトウジに自分の気持ちを打ち明ける勇気はない。
こうして疑似デート気分を味わうのが精一杯だった。
「ミサトに言って家でもペンギンを飼いたいわね!」
「ペンギンって寒い所じゃないと暮らせないんじゃないかな」
興奮してそう話すアスカに、シンジはそう答えた。
「赤道近くに生息するガラパゴスペンギンと言うのがいるらしいわ」
「レイ、ナイスアイディア!」
この後加持家に帰ったアスカはペンギンが欲しいとミサトに訴えたが、「ペットを飼うなら責任が持てないとダメだ」と諭され、『ペンペン』と言うペンギンのぬいぐるみになってしまった。
シンジ達は他の水槽コーナーも見て回った。
「うわあ気持ち悪い。何、この魚」
深海魚として紹介されているオオグソクムシの水槽を見てそう呟いた。
「深海魚だね。光の届かない所で暮らしているからこんな姿になるんだって」
「やっぱり陽の光を浴びるって、美しい姿を保つには大切な事なのね!」
シンジの説明を聞いて、アスカは髪をかき上げてそう言った。
「私だって日焼けすれば碇君を……!」
「綾波、無理をしない方が良いよ」
アスカに対抗して日焼けサロンに通ってしまうかもしれないレイをシンジはなだめた。
深海魚のコーナーでは、急激に深海魚を引き上げると減圧で口から内蔵が飛び出たりする事も解説されていた。
「まあ、深海魚なんて飼うつもりないからどうでもいいわ」
「海水魚を飼うのは大変だって赤木博士が言っていたわ」
アスカの言葉に、レイはそう反応を示した。
リツコは水槽で魚を飼っている。
リョウジが魚を飼う女性は孤独な女性だと冗談めかして言ったところ、リツコは大変怒ったそうだ。
「碇、そろそろアシカショーの時間だぞ」
ケンスケが時計を見ながらそう言うと、アスカは慌ててシンジの腕を引いて走り出した。
「早く行っていい席で観ましょう!」
「別に僕は端っこの席でもいいと思うよ」
「アタシが良い席で見たいのよ!」
「仕方ないなぁ」
なんだかんだ言っても、シンジはアスカのワガママに甘かった。
レイももっとシンジにワガママを言ってみたいと思うのだった。
<第三新東京市 映画館>
水族館に行った後、昼食を挟んでシンジ達は映画館へ行った。
映画館でシンジ達が見たのは大型豪華客船が沈没する『ユミルニック』と言う映画だった。
船が転覆した時に船長が死んでしまい、生存者達は力を合わせて船からの脱出を目指す。
何度も船が転覆して床が突然天井になったり、途中でボイラー室の爆発したり、生存者同士の人間ドラマ等、退屈させない内容だった。
「アタシが海に投げ出されたら当然助けに来てくれるわよね、シンジ?」
アスカがそう言ってシンジに迫ると、シンジは困った顔で答える。
「ごめん、僕は泳げないんだ」
シンジは両手を合わせて拝むようなポーズで、アスカに謝った。
「それなら私が碇君を助けてあげる」
「綾波は泳げるの?」
「かっぱ巻きは大好きだから」
「それは関係無いと思うわ、綾波さん」
さすがの天然ボケにヒカリがツッコミを入れた。
「なんや、碇が泳げないなら、ワシが修学旅行で教えてやるさかい」
「修学旅行って何?」
トウジがそう言うと、アスカが旅行と言う単語に反応した。
「同じ学年のみんなで遠くに旅行に行って、同じ場所で泊ったりするのよ」
「へえ、ドイツの学校ではそんな事無かったから、楽しそうね」
ヒカリの話を聞いたアスカはそう呟いた。
「今年の修学旅行は沖縄だって言うから、大当たりだぜ。ジメジメとしたここら辺と違って爽やかな場所だからな」
ケンスケの言う通り、セカンドインパクトのせいで地球温暖化が急速に進み過ぎた日本では、旧東京より沖縄の方が気温や湿度が低いと言う逆転現象が起きている。
ちなみに第三新東京市の最高気温は連日40度を超している。
「沖縄ではスキューバダイビングをするみたいよ。空を飛んでいるみたいな感じで、周りには青い世界や海の大自然が広がって、楽しかったってコダマお姉ちゃんは話していたわ」
「話を聞いているだけでワクワクして来るわね!」
ヒカリの話を聞いたアスカは、興奮も最高潮と言った様子だった。
しかしそんなアスカに冷や水を浴びせたのがレイだった。
「でも私達は修学旅行には行けないわ」
「何でよ!?」
レイの言葉を聞いたアスカは目を剥いてレイに詰め寄った。
「エヴァのパイロットには待機任務があるもの」
冷静にレイがそう告げると、アスカは悔しそうに歯ぎしりした。
アスカだって、エヴァのパイロットとしての任務の重大さは理解している。
これ以上のワガママは言えなかった。
「アスカ、たくさんお土産を買ってきてあげるから、ね?」
ヒカリはそう言ってアスカを慰めたのだった。
<第三新東京市 加持邸>
家に帰ったアスカがミサトから聞かされたのは、意外な話だった。
「修学旅行に行く事は許可出来ないけど、スキューバダイビングはさせてあげるわよ」
「えっ!?」
このミサトの話にはアスカだけでなく、シンジとレイも驚いた。
「日本海溝の底に、卵の状態の使徒が見つかったの。それで、初めて使徒の捕獲作戦が決定されたのよ」
「使徒を捕まえるなんて、水族館で見世物にでもするつもりなの?」
「まさか。でもリツコの話によれば、こちらから使徒に攻撃を仕掛ける事も出来るようになるみたいよ」
アスカの質問に答えたミサトは、マスター・スクーバ・ダイバー(MSD)のライセンスを取るための講座のパンフレットをシンジ達に見せた。
本格的にスキューバダイビングをさせられる事に、シンジ達は驚いた。
「あのミサトさん、僕は泳ぐのが苦手なんですけど」
「お父さんに怒られたいの?」
時には厳しいミサトにそう言われると、シンジは観念した。
シンジに嫌われたくないアスカとレイは強くシンジに言いにくかった。
MSDのライセンス取得は原則として15歳以上であるが、特例としてシンジ達はMSD講習を受ける事になった。
「MSDライセンスの取得は大変だけど、辛い事ばかりじゃないよ。君達はクラスの友達より先に沖縄に行く事が出来るんだからさ」
ヨシアキはそう言ってシンジ達を励ました。
シンジ達が苦しいだけの特訓にならないように、ミサトは景色の美しい沖縄でもスキューバの訓練をする事にしたのだ。
「エヴァの待機任務はどうなるのですか?」
「沖縄での特訓は交代でする事になるわ。残りの2人はネルフ本部の施設で特訓する事になるの」
レイの質問に対して、ミサトはそう答えた。
リョウジは現地の沖縄に行ってシンジ達を受け入れる準備をしているようだ。
「シンジ、沖縄のビーチの水着ギャルに鼻の下を長くするんじゃないわよ! インストラクターの女がいくら美人でも浮気は禁止!」
自分とアスカは正式に交際しているわけでは無いのに、とシンジは思った。
でも少し沖縄のビーチの光景や美人のインストラクターに優しく教えてもらう事を期待した事は確かだ。
アスカとレイの心配事はもう1つあった。
2人のどちらかが沖縄に行っている間、ネルフ本部やこの家でシンジとアスカ、シンジとレイが2人きりになってしまう時間が存在してしまう事だ。
恋愛自由主義(?)を掲げるミサトや兄のヨシアキに恋のブレーキ役は期待できない。
アスカとレイはお互いに牽制するような視線を送り、2人きりになっている間にシンジと結ばれてしまうのではないかと恐れた。
仕方ないが、それが恋する乙女心というものだ。
ミサトはこの点に関しては、作戦は失敗したかなと思った。
せっかく上手く行ってアスカとレイの関係がギスギスしている。
しかしアスカもレイも、シンジと結ばれるまでの一線は超えないだろうとミサトは考えていた。
それよりもエヴァが8,000mの海の底に潜れるように短期間でパイロットを鍛える方が大変だ。
MSDのライセンスは目安の1つにしか過ぎない。
<沖縄 N.E.マリンクラブ>
特務機関ネルフは秘密裏に世界各地に施設を持っていた。
このマリンクラブもネルフの関連施設の1つだった。
「シンジ君はやはりあの事件を目撃したから、水に潜るのが苦手になったんだな」
「はい、ごめんなさいリョウジさん。僕のせいで訓練が中止になって」
気を落としたシンジを、リョウジが励ましていた。
スキューバダイビングの途中で、気分を悪くしてパニックに陥ったシンジを、インストラクターをしていたリョウジが助けたのだった。
直ぐに訓練は中断され、シンジは陸に揚がってこうしてリョウジと話している。
シンジは幼い頃、エヴァの実験で母親のユイが『泡』のように消えてしまったのを目撃してしまった。
スキューバで湧き上がる泡を見つめ続けたシンジはそれを思い出して水の中に居る事が出来なくなってしまった。
「仕方ないさ、作戦はアスカとレイの2人に任せよう。アスカはシンジ君と同じ体験をしているし、レイも分かってくれるさ」
「でも、僕だけ作戦に参加しないなんて……」
シンジは悔しそうに身体を震わせてリョウジにそう答えた。
使徒とは3人で力を合わせて戦うとシンジは心の中で誓っていたのに、使徒と接触する事も出来ないなんて悔しかった。
「それで、あの日に起きた事はどれくらい思い出せたんだい?」
「母さんと一緒にアスカのような子と話した事や、アスカのお父さんが暴れていた事はおぼろげに思い出しました。でもアスカとあの時婚約したからと言って、今すぐアスカに対する態度を変えることは出来ません」
リョウジに尋ねられたシンジは真剣な表情でそう答えた。
「まあそうだな。アスカにとっては宝石のような思い出でも、幼い頃の約束だ。俺はアスカと長く居たから情が移ってしまったが、君の気持ちを曲げさせるつもりは無いよ」
そう言ってリョウジはシンジの肩に手を置いた。
ミサトを通じてシンジの事情を明かされたアスカとレイは、シンジとの三角関係を崩す事はせずに、スキューバの特訓へと励んだ。
アスカは楽しみにしていた沖縄行きを辞退して、レイも同じくネルフ本部での訓練続行を希望した。
シンジは2人に気を遣わせてしまったとさらに落ち込んでいたが、アスカとレイはシンジに思い詰めないように明るく声を掛けた。
アスカとレイは争うようにスキューバの訓練を続け、MSDのライセンスを取得した2人は作戦の決行日を迎えた。
<太平洋 日本海溝付近洋上 OTR艦隊旗艦>
OTR艦隊には、弐号機が使徒と戦った時に使った艦同士をつなぐ鎖が残っている。
再び迅速に甲板の列を作り広い足場を海上に造ることが可能だった。
なのでミサトは作戦遂行のためにOTR艦隊を指名した。
「これほど早くまた君たちに会えるとは思ってもみなかったよ」
「艦長、この度は危険な作戦に巻き込んでしまい、本当に申し訳ございません」
頭を下げるミサトにOTR艦隊の艦長は笑顔で答える。
「いやいや、大した準備も必要なかったから、気にしないでくれ」
使徒は1体だけ、しかも卵の状態だとは聞いていたが、ミサトは前回の使徒との戦いの失敗を繰り返さないようにとエヴァ3機を出撃させた。
弐号機と零号機、実際には潜る予定の無い初号機も鎖で組まれた戦艦の水上足場へと降り立った。
ミサトとリツコ、ネルフのオペレータはOTR旗艦のブリッジで作戦指揮を行う。
「エヴァは1万2,000枚の特殊装甲を持っているから、水圧で押し潰される事は無いけど、海溝の底へと落ちたら自力で海面へ浮き上げるのは困難よ。だからワイヤーロープはあなた達の命綱、心しておきなさい」
「はい」
シンジ達はリツコの言葉にそう返事をした。
ワイヤーロープは弐号機と零号機、初号機にも結び付けられていた。
L.C.Lから必要な酸素は肺に取り込まれるのでエヴァに酸素ボンベのような装備は必要ない。
深い海溝に潜るので、浮袋やフィン(水かき)もあまり意味を持たず、軽量化のためにも余計な装備は付けなかった。
「それじゃあアスカ、頼んだわよ」
「見て見て、ジャイアント・ストライド・エントリー!」
使徒の卵を捕獲するための透明なケースを持った弐号機は船の縁をまたいで、片方の足を大きく前へ一歩踏み出した形で海へと飛び込んだ。
リツコに言わせると、この使徒を捕獲するためのケースの制作がとても大変だったらしい。
エベレストを逆さまにした水深8,000mの水圧に耐えられる頑丈さが無ければいけない。
弐号機は順調に海の中へと潜って行く。
煌びやかな魚が集まる水深1,000mほどまではスキューバだとはしゃいでいたアスカだが、深海魚の生息する深さまで潜ると退屈そうな表情となった。
やがて弐号機の視界は真っ暗な海へと染まった。
「あーあ、退屈。ちゃっちゃと終わらせて帰りたい」
「アスカ、もう少しで海底よ。気を引き締めなさい」
すっかり油断した様子のアスカにミサトが注意を促した。
「パターン青、使徒です!」
オペレータのマコトが報告すると、弐号機のアスカからも、不気味に発光を繰り返す巨大な卵のようなものが見えた。
「うえっ、気持ち悪っ!」
アスカはそう言いながら弐号機で使徒の卵を特製の透明ケースの中に捕獲した。
このケースは強化ガラスの何百倍もの強度を誇る。
滅多な事では壊れないはずだ。
後はこのまま使徒の卵をゆっくりと地上へと引き上げるだけ。
そう思っていたが、警告のサイレンがブリッヂに鳴り響いた。
「リツコ、何が起こったの!?」
「使徒が孵化を始めたの、計算より早すぎるわ!」
弐号機の目の前で、発光する卵にヒビが入り、使徒は稚魚のような形へと変化し、使徒の卵を捕獲してしたケースを突き破った!
「これってどうするのよ、ミサト?」
「捕獲作戦は中止、直ちに使徒せん滅作戦へと変更!」
ミサトの指示を聞いた弐号機は、肩の部分からプログレッシブナイフを取り出し使徒を切りつけるが、固い装甲に覆われた使徒に傷1つ付ける事も出来ない。
使徒は深い水圧にも耐えられるように進化しているのだから当然とも言えた。
表面に使徒のコアが露出している様子もない。
ミサトは使徒を倒す方法を思い付かずに焦りを覚えた。
「加持一尉、私達この前水族館で深海魚の水槽を見ました。そこには減圧の事も書かれていました」
レイの言葉を聞いたミサトは何かを思い付いたような表情になった。
「アスカ、弐号機でそのまま使徒を捕まえて置いて!」
ミサトに言われた通り、弐号機はプログレッシブナイフを投げ捨てると体当たりをしようとしてきた魚の姿をした使徒を腕で締め付け、脇でガッチリとホールドした。
「弐号機のワイヤーロープを引き上げて、早く!」
リツコは高速で弐号機のワイヤーロープを巻き上げるように指示を出した。
水深8,000m近くの海底から2,000m位の水深まで一気に引き上げられる。
すると使徒の口から内蔵と思われるものと一緒に赤く光る使徒のコアが飛び出した!
「アスカ、今がチャンスよ!」
「了解、レイのお陰で助かったわ!」
ミサトの言葉にアスカはレイにもお礼を言うと、使徒を締め付けていた腕を緩め、もう片方の肩から2本目のプログレッシブナイフを取り出した。
そして混乱した動きで漂う使徒のコアに向かってプログレッシブナイフを突き刺した!
コアを攻撃された使徒は最期の悪足掻きに、尾びれで弐号機を吊り下げているワイヤーロープを切り裂いた!
「えっ!?」
命綱であるワイヤーロープを切断された弐号機は海底に向けて沈下して行く。
このままでは弐号機は日本海溝の海の底へと落ちてしまうだろう。
弐号機は助けを求めるように腕を真っすぐに上へと伸ばした。
「アスカっ!」
シンジがそう叫ぶと、初号機は頭から水面に飛び込み、弐号機の腕をしっかりと掴んだ。
「うぇぇぇっ!」
しかしシンジはその直後水に対する拒絶反応を示した。
その苦しみからか、シンジの目からあふれた涙が初号機のエントリープラグ内のL.C.L.に漂った。
それでも初号機が弐号機を掴む手の力は緩む事は無かった。
「バカシンジ、アンタはトラウマで水に潜れないって言うのに、無理をし過ぎよ!」
アスカの目からも涙が溢れ出す。
「碇君!」
初号機のワイヤーロープだけでは弐号機と初号機の重さを支えきれないと判断したレイも零号機で急いで飛び込んだ。
零号機がガッチリと初号機を掴んだところで、初号機と弐号機のワイヤーロープは巻き上げられた。
「碇君」
「どうしたの、綾波」
「沈んだのが零号機でも、碇君は飛び込んで私を助けに来てくれた?」
「そんなの当たり前じゃないか」
シンジはレイの質問に笑顔でそう答えたが、必死にアスカを助けようとするシンジの顔を見た後では、アスカが羨ましいと思うのだった。
<第三新東京市 加持邸>
その日の夜、アスカはシンジが熟睡しているのを確認してシンジの部屋へと忍び込んだ。
「今日はアタシを命懸けで助けてくれてありがと。やっぱりシンジは誰が何と言おうと、アタシの王子様よ」
アスカはそう言うと、寝ているシンジのおでこに軽くキスをした。
「今はこんな形でしかお礼が出来ないけれど、ゴメンね」
アスカはそう言うと、シンジの部屋を去った。
レイはそんなアスカの行動をこっそりと見守っていた。
アスカはレイとシンジの気持ちを考えて、自分の感情を抑えてくれているとレイは思った。
それでもレイはアスカに一歩リードされてしまったように感じた。
思いの籠った言葉も、実際の行動の前には無力である。
だけどまだシンジに対する気持ちはアスカに譲る気持ちは無いと、改めてレイは強く心の中で誓うのだった。
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文章量少なめのハイペースで進めた連載ですが、補完した方が良いでしょうか? 最終話だけ別のアンケート(続編について)になります。
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