新世紀エヴァンゲリオン for Children ~全ての子供たちのために~   作:朝陽晴空

17 / 30
第十七話 四人目と五人目の適格者(2022/06/19 0:03)

<ネルフ本部 司令室>

 

 シンジ達が使徒を殲滅させた後、ゲンドウはネルフの支部長達との会議を開いた。

 各支部の計画の進捗状況を確認する為だった。

 

「チルドレン3人の成長振りを聞くと、頼もしい事だな」

「お褒めに預かり光栄で御座います、キール所長。しかしこの度の勝利は奇跡的なものです。我々にはさらに使徒と戦う力が必要となります」

 

 会議の冒頭に投げ掛けられたキール議長の労いの言葉に、ゲンドウは冷静にそう答えた。

 

「使徒が人間の心に興味を持ち始めたとは、今までにない事ですな」

「左様、使徒は自身の生存本能と我々人間への闘争本能で動いているだけだと思っていたが、大変な事になりおった」

「使徒は知恵を付け始めています、我々も計画を急がねばなりません」

「ダミープラグの開発は進んでいるのか?」

「チルドレン達の心の成長が著しく、思わしくありません」

 

 キールに尋ねられると、ゲンドウは正直にそう答えた。

 アオイ、カエデ、サツキの3人も頑張ってはいるが、シンジ達の心境の変化に驚くばかりで、何度もデータの収集と書き換えに追われているのだった。

 

「それでエヴァパイロットの増員が必要だと言うのかね?」

「はい、3人だけでは負担が大きすぎます」

 

 キールに尋ねられたゲンドウは、真っすぐキールに視線を向けながらそう答えた。

 

「スーパーマンも休息が必要と言うわけだな」

 

 アメリカ支部長が明るい口調でそう言うと、笑い声が上がり、会議の空気は少しだけ和んだ。

 

「即戦力となるフォース・チルドレンは有力候補が挙がっています。そこでキール所長……」

「私にフィフス・チルドレンを差し出せと言うのかね?」

「キール所長が彼を戦場に送り出す事に危惧を感じているのは分かります。ですが手段を選んではいられません」

 

 ゲンドウは厳しい視線でキールを見つめた。

 

「しかしパイロットが2人増えても乗せるエヴァが無いぞ?」

「参号機と肆号機は実用段階に入っているな?」

 

 キールが苦肉の策とも言える反論をすると、ゲンドウはアメリカ支部長にそう尋ねた。

 

「だがS2機関の稼働実験は成果がまだ出ていないぞ」

「今、動かせるエヴァは貴国の2機だけなのだ、頼む」

「分かった。ホワイトハウスも経済対策に困っている。日本がエヴァを買うと言えば喜んで差し出すだろうぜ」

 

 アメリカ支部長は肩をすくめてそうゲンドウに尋ねた。

 

「キール所長、御決断をお願いします」

「……分かった、本部へ行かせよう」

 

 フィフス・チルドレンが来日すると言う事で話はまとまり、会議は終了となった。

 

 

 

<ネルフ本部 実験棟>

 

 ネルフでは使徒レリエルとの戦いの後、初めてのシンジたちの定期ハーモニクステストが行われた。

 順調に少しずつ高まっていたシンクロ率がグンと上昇した事に、リツコとミサトは感心のため息をもらした。

 

「前回のテストから時間が経っていないと言うのに、3人とも凄いシンクロ率の伸びね」

「あの使徒との戦いで、シンジ君たちに何かあったみたいね」

 

 シンジとアスカ、レイは幼い頃に養育者の愛情を受けないで育ったと言う負の共通項があった。

 それを克服するための第一歩を踏み出し、他者から与えられる愛を信じられるようになったからこそエヴァとのシンクロ率も上がったのだとミサトとリツコは推測した。

 

「ミサトの家にシンジ君達を集めた判断は正しかったと言うわけね」

「別にあたしはエヴァのパイロットの適性を高めるために同居を始めたわけでは無いわ」

 

 少し意地悪な言い方をしたリツコにミサトは心外だと若干怒りの表情を浮かべながら答えた。

 

「そうね、戦略自衛隊の少年兵の子供達も預かっているわけだし。でも、少し気になる事があるのよ」

「どうしたの?」

 

 いつも冷静な表情を浮かべているリツコが不安げに顔を曇らせたのが、ミサトには気になった。

 

「霧島マナ、ムサシ・リー・ストラスバーグ、浅利ケイタ。この3人のダミープラグも作るように碇司令に命じられたの」

「まさか、4人目のパイロットはあの子のはずよ?」

 

 リツコの言葉を聞いたミサトは驚きの声を上げた。

 シンジ達3人の負担を軽減するために予備兵となるエヴァを増強する、と言うゲンドウの方針をミサトは甘んじて受け入れていた。

 マナ達3人までエヴァのパイロットにする計画が持ち上がっているとはミサトは思わなかった。

 

「シンジ君たちのシンクロ率は好調なのに、さらにそんなにもたくさんのパイロット候補者を必要とするのはどうして?」

「それは多分、あなたのお父さんが提唱して碇司令が進めているあの計画に関係していると思うけど、あなたに心当たりは無くて?」

「分からないわ。あの子も私も、父の研究について司令達ほど詳しく知らないもの」

 

 ミサトもリツコもシンジ達のハーモニクステストに集中出来ずに難しい顔をしていた。

 

「とりあえず明日学校であの子に会って、フォース・チルドレンの承諾を取らないといけないわね」

「シンジ君たちには前もって知らせないの?」

「あの子達はナイーブな所があるから、フォース・チルドレンの事を教えたら眠れなくなるわ」

「母親役兼・姉役兼・担任教師役も大変ね」

 

 リツコはそう言ってミサトを気遣うため息を漏らした。

 

「何を言ってるの、リツコだってレイにとってはお姉さんみたいなものじゃない」

「そうかしら?」

 

 親友のミサトがリツコを気遣って母親と表現しない事を察したリツコは皮肉めいた口調で尋ね返した。

 リツコが母親ならば、ナオコはレイにとってお祖母ちゃんとなってしまう。

 それもあるのかもしれないとリツコは思った。

 

「ねえリツコ、今日のハーモニクステスト、いつもより長くない?」

「ごめんなさいアスカ、つい気を抜いてしまったわ」

 

 アスカに指摘されて、リツコはミサトと話している間に時間が経過している事に気が付いた。

 

「リツコもミサトもしっかりしてよ!」

 

 アスカは勘が鋭い。

 ミサトは気取られないようにいつもの様子を取り繕った。

 

「シンジ、今日はメットヴルストが食べたいわ」

「メットブルドック? ヨシアキ兄さんに頼みなよ」

「いつまでもお兄さんに甘えている気? いつかは家を出て自立しないといけないのよ」

「アスカの言う通り。私はコンニャクステーキが食べたい」

 

 テストを終えると3人は夕食の話に花を咲かせる。

 ミサトは明日からもこの笑顔を守り続けなければと気合いを入れるのだった。

 

 

<第三新東京市 第壱中学校 2-A>

 

 朝、登校したシンジたちが教室で他愛もない話をしてHR前の時間を過ごして居ると、教室の前方のドアから、銀色の髪をした美少年とも言える第壱中学校の制服を着た少年が自然体で入って来た。

 

「何やアイツ?」

「俺も知らないぞ」

 

 トウジに尋ねられたケンスケはそう答えた。

 ミサトからは知らされず、情報通のケンスケも知らないとなると、全く持ってその少年は謎の存在だった。

 クラス中の好奇心に満ちた視線を釘付けにした少年は、黒板にチョークで整った字で『渚カヲル』と名前を書いた。

 

「転校生の渚カヲル、よろしくね」

 

 カヲルは気障とも言える流し目で教室を見回して、そう言った。

 得体の知れない存在となると、放って置けないのがアスカだった。

 

「アンタ、何者よ! 新しいエヴァのパイロットが来るなんて、ミサトから聞いてないわよ!」

「君と同じドイツ支部からやって来た、フィフス・チルドレンさ」

 

 カヲルがそう言うと、アスカは驚きの余り固まってしまった。

 ドイツ支部のエヴァパイロットは自分だけと思っていたからだ。

 しかし冷静なレイはカヲルの発言の矛盾点を捉えていた。

 

「フィフス? フォース・チルドレンも決まっていないのに、どうしてあなたがフィフスなの?」

 

 怪訝な顔をして尋ねるレイの言葉に、シンジもおかしい事に気が付いたようだった。

 

「フォース・チルドレンならそこに居るじゃないか」

 

 カヲルがそう言って誰かを指差そうとする前に、教室にミサトが姿を現した。

 

「どうしたの、いつもより騒がしいじゃない」

「ミサト、コイツ知ってる?」

「え?」

 

 ミサトはアスカが指差したカヲルを見るが、キョトン顔になった。

 カヲルの事はミサトに知らされていなかったのだ。

 

「ミサトが知らないって事は、アンタはフィフス・チルドレンを語る偽者よ!」

「フォース・チルドレンがすぐ側に居るだなんて言って、私達を騙したのね」

 

 レイが鋭い目つきでそうカヲルを責めると、ミサトはカヲルが本物のフィフス・チルドレンであると瞬時に確信した。

 

「僕は嘘は付いてないさ」

「ストップ! 私はこのクラスの担任の加持ミサト、よろしく! あなたは?」

 

 カヲルが誰かを指差そうとするのを、ミサトは強引に握手して阻止した。

 

「渚カヲル、ところでフォース……」

「みんな、渚君と仲良くね!」

 

 またもミサトは大声でカヲルの言葉を遮った。

 

「えーっ!? コイツを追い出さないの!?」

「人を何度も指差すのは失礼じゃないかな」

 

 アスカが大声でそう言うと、カヲルはそう指摘した。

 

「そうよ、アスカはドイツに居たんから分かっているでしょう」

 

 ミサトがあきれた顔でため息をついてカヲルの意見に同調した。

 

「君は隣に居る立っている子よりも色気が不足しているね」

「アタシより、シンジの方が色っぽいって言うの!?」

 

 カヲルにそう言われたアスカは、目を吊り上げて怒った。

 

「私も渚君に同感、アスカは男勝りな所を直した方が良いよ」

 

 マナにまでそう言われたアスカは孤立無援状態となり、シンジに視線で助けを求めるが、こういう時のシンジは気の利いた事が言えない。

 

「ホームルームを始めるわよ、みんな席に着きなさい」

 

 ミサトの号令で、2-Aの生徒達は席に着いた。

 

「よろしく」

 

 着席したカヲルは前の席に座るレイに向かって声を掛けたが、レイは振り向きもしなかった。

 

「無視するなんてひどいな、僕は君を怒らせる事をしたかい?」

「あなたは碇君の事をいやらしい目で見ていた」

 

 レイがそう言うと、教室は再びざわついた空気になった。

 

「アイツの写真も撮ったら売れるかいな」

「まあ惣流と同じく、性格は写真には写らないからな」

 

 トウジとケンスケはそんな事を囁き合う。

 いつもなら静かに! とヒカリの注意が教室に飛ぶところだが、今日はそれが無い。

 ヒカリは自分の大きな一歩を踏み出す事で頭が一杯だったのだ。

 

 

 

<第三新東京市 第壱中学校 屋上>

 

 その日の昼休み、ヒカリはトウジを屋上へと呼び出した。

 

「何や、飯の前に2人だけで話したい事って?」

「鈴原! 私のお弁当、食べて欲しいの!」

 

 ヒカリが勇気を振り絞って、お弁当箱を包んだ袋を突き出すと、トウジは困惑した顔になった。

 

「あのなあ、ワシも自炊して妹やおとんの分の弁当を作ってるんや」

「じゃあ、鈴原のお弁当を私が食べる!」

 

 その日のトウジの弁当は特製のスペシャルカレーだった。

 寝かせて3日目、一番美味しい時期でトウジ自身も楽しみにしていた。

 

「や、やっぱりダメかな……?」

 

 トウジが返事を躊躇していると、ヒカリは瞳を潤ませた。

 ここで女を泣かせては男やないと浪花節全開のトウジはヒカリの弁当箱と自分の弁当箱を交換した。

 

「委員長、ワシ特製のスペシャルカレーや! 味わって食うてみい!」

「うん!」

 

 トウジはヒカリの無邪気な笑顔を見て、小学校の頃の事を思い出した。

 幼い頃は良く遊んだのに、中学になってヒカリが委員長になると、トウジはヒカリの怒る顔ばかり見ていた。

 ヒカリも委員長としてクラスを仕切らないといけないと気負ってしまった部分もあったのだろう。

 

「あの……もう1つお願いがあるの」

「なんや、言うてみい?」

「私、鈴原の事を前みたいにトウジ、って呼んで良いかな? それで……」

「分かってるって、ワシもヒカリと呼べばええんやろ?」

 

 トウジは自分から委員長では無くヒカリと呼ばせてくれとは言いにくかったので、ヒカリの提案は渡りに船だった。

 

「トウジのカレー、とっても美味しい!」

「せやろ? ヒカリのお握りも塩梅がええで」

「ありがとう……でもトウジもこのカレー、食べたかったんでしょう?」

「まあええ、カレーはまた今度作れば……」

 

 トウジの言葉はそこで塞がれた。

 カレーを口に含んだヒカリが、トウジにキスをしたのだ。

 2人のファーストキスはカレー味だったが、トウジはヒカリの柔らかい唇も味わった。

 

「ミサト、昼休みに鈴原君を呼び出してフォース・チルドレンの話をするのでは無かったの?」

「まあまあ、もう少し待ってあげてよ」

 

 第壱中学校には生徒達には秘密だが、至る所に隠しカメラが設置してある。

 リツコとミサトは2人の様子をしっかりと見ていた。

 

「ヒカリちゃんってば、きっと今は天にも昇る心地でしょうね」

「ミサト、私はこの後も予定が詰まっているんだけど」

 

 ミサトと違ってリツコはあくまでも冷静だった。

 

「それなら私が鈴原君に説明するから、リツコは先に本部に戻っても良いわよ」

「ミサトじゃ説明しきれない部分もあるでしょう。それに私も2-Aの副担任だもの」

「おおっ、ついにリツコにも教師の自覚が芽生えたか?」

「私は学者肌よ。教師には向かないわ」

 

 茶化すように言うミサトに、リツコはそう答えた。

 ミサトはヒカリになるべく長く幸せの余韻を味合せてあげたかったが、リツコのスケジュールを考えるとそうもいかない。

 トウジを生徒相談室に呼び出す校内放送を流すのだった。

 

 

 

<第三新東京市 第壱中学校 生徒相談室>

 

「ミサト先生、ワシに話って何です?」

 

 何かやらかしてしまったか、とトウジはミサトのお説教を覚悟してバツが悪そうな顔で生徒相談室のドアを開けた。

 そしてリツコが部屋に居るのを見て驚いた。

 ミサトが学校に来れない時にホームルームを担当するリツコの事はトウジも知っていた。

 

「赤木先生まで雁首揃えてどうしたんですか?」

 

 ただならぬ雰囲気を感じたトウジは後退りをした。

 

「実はね鈴原君、あなたはエヴァのパイロットに選ばれたのよ」

 

 単刀直入にミサトがそう告げると、トウジは耳を疑って聞き返した。

 

「ミサト先生、今何て言いはりました?」

「鈴原君が驚くのも無理はないわ、でもこれは冗談でも無く本当の事なの」

 

 トウジはミサトとリツコの表情から、とぼけて逃げる事は出来ないと察して椅子に座った。

 

「でもワシはロボットを操縦した事なんてありまへんで? 霧島たちの方が適任やあらしまへんか?」

 

 もっともな意見を述べるトウジに、リツコが答える。

 

「エヴァはロボットでは無いわ。パイロットと神経接続をして動く、人造人間なのよ」

「へえーっ、あんなんでっかいもんが人間やと言うんすか」

 

 リツコの説明にトウジは感心の声を上げた。

 

「パイロットはエヴァと心を通わせる、すなわちシンクロする事で動かすの。だから操縦桿もペダルも無いのよ」

「シンクロ?」

「鈴原君の思い通りにエヴァを動かせるって事よ」

 

 リツコの専門用語に頭を捻ったトウジに向かって、ミサトはかみ砕いて説明した。

 

「でも何回も尋ねて失礼やと思いますが、どうして自分が?」

 

 カバディが得意な以外、何の取り柄も無いと思っていたトウジは、どうして自分に白羽の矢が立ったのか納得がいかない様子だった。

 

「それはエヴァ参号機のコアとシンクロする適性能力が高いのがあなただからよ」

 

 リツコはそう言うと、頭に巻くバンドとケーブルで繋がっている四角い機械を箱から取り出した。

 

「これはあなたが乗ってもらうエヴァ参号機とのシンクロ率を簡易測定する機械よ。この四角い機械にランプが10個があるのが分るでしょう?」

「はあ」

 

 リツコは今は消灯している10個のランプを指差した。

 

「このランプが多く点くほど、エヴァ参号機とシンクロしやすい事を示しているわ。じゃあ、ミサトで試してみるわね」

 

 リツコの説明の後、ミサトがバンドを頭に巻いた。

 すると、10個のうちランプは3つだけ点灯した。

 

「次は私ね」

 

 リツコがバンドを頭に巻くと、ランプは2つしか点かなかった。

 

「さあ鈴原君、着けてみて」

 

 トウジは祈るような気持ちでバンドを頭に巻いた。

 これでランプが点かなければ、自分はエヴァのパイロットにならずに済む。

 しかしトウジの祈りも空しく、ランプは7個も点灯した。

 

「ほ、ホンマでっか……」

「ごめんなさい、鈴原君。私達はあなたに頼るしかないのよ」

 

 ミサトはそう言ってトウジに向かって90度近く身体を深く折り曲げて頭を下げた。

 大人にそんな深々と頭を下げられた事のないトウジは焦った。

 

「ミサト先生、顔を上げて下さい!」

「あなたはパイロットの有力な候補者であって、決定事項ではありません。拒否する事も出来ます」

 

 リツコは冷静な口調で、トウジにそう告げた。

 ミサトは顔を上げずにトウジの返事を待っている。

 そんな事されたら、断れるわけないやんか、ミサト先生、とトウジは心の中で呟いた。

 

「今朝転校して来たけったいなヤツ、アイツもエヴァのパイロットと言ってましたけど?」

「ええ、彼は5番目のエヴァのパイロット。アスカと同じドイツ支部から来日したのよ。シンジ君たちの負担を軽くするための増員よ」

 

 トウジの質問に、リツコがそう答えると、しばらく部屋は沈黙に包まれた。

 

「ミサト先生、ワシ、エヴァのパイロットになりますわ。だからいい加減顔を上げてください」

「ありがとう、鈴原君……」

 

 ミサトはそう言って身体を起こした。

 

「でもワシなんかがパイロットになって、足を引っ張ったりせえへんやろか?」

「そんな事はないわ。カバディ部で鍛えた身体能力はアスカにも引けを取らない。そして今、先頭に立って戦闘しているアスカは少し感情に流されやすい面があるけど、鈴原君は物事をよく見て考えて冷静に判断を下せる子だと思っている。それで何よりも大切なことは、相手のことを思って真っすぐに話せること。シンジ君たちに欠けている部分を補ってくれる、そう思うわ」

「そないな褒められると、恥ずかしいですわ」

 

 トウジは照れくさそうに身体をむず痒そうにしながらそう言った。

 

「でも鈴原君、本当にいいの?」

「ワシらの住んでいるこの街は、何べんも使徒に襲われました。そのたんびに碇たちはエヴァに乗って使徒と戦って、ワシらは守うてもらうばかりでした。その借りを返せる機会をもらえるちゅう事は、嬉しい事ですわ」

 

 ミサトに念を押されたトウジは晴れやかな笑顔でそう答えた。

 

「鈴原君。よく決意してくれたわね。ではここにサインをお願い」

 

 リツコに差し出された契約書に、トウジは自分の名前を書いた。

 

「これでワシはエヴァのパイロットになったんですか」

「そうよ、鈴原トウジ君」

 

 リツコにそう言われた直後、トウジの身体はガタガタと震え出した。

 

「ミサト先生、ワシ、手も足も震えて立てないのですわ」

「使徒と戦うことになるんだもの、怖くなって当然よ」

 

 トウジに近づいたミサトはそう言ってトウジを抱いて背中をさすった。

 

「そうだ、今日は私の家に来なさい。シンジ君たちと話せば気持ちも軽くなるかもしれないわ」

「おおきに、ミサト先生」

 

 ミサトとトウジが廊下に出ると、顔を真っ青にしたヒカリが立っていた。

 

「ヒカリ、ワシらの話を聞いてたんか?」

「トウジが生徒相談室からなかなか戻って来ないから、トイレに行くって言って授業を抜け出して……ごめんなさい!」

 

 真面目なヒカリが授業をサボるとは前例のない事である。

 ミサトはそんなヒカリに優しく声を掛ける。

 

「今日は鈴原君を私の家に招待しようと思うんだけど、ヒカリちゃんも来る?」

「えっ、でもまだ授業中で、それに私、家で夕飯を作らないと……」

「それならお姉さんと妹さんとお父さんも呼んであげるから、ね?」

 

 ミサトはそう言ってヒカリに向かってウインクする。

 

「それじゃあリツコ、私は鈴原君と洞木さんをケアするから、副担任として私のフォローをよろしく♪」

「全くもう、仕方ないわねミサトは」

 

 リツコはそう言いながらも、ショックを受けたトウジとヒカリをミサトが支える必要があると理解していた。

 参号機とのシンクロ率を測る装置など、全くのダミーだ。

 ランプの点灯する数は、リツコが操作して、トウジを騙したのだ。

 零号機のコアは例外だが、初号機・弐号機のコアはパイロットの母親の魂が入っている。

 それならば参号機のコアはトウジの母親の魂を使うのか。

 いや、トウジの母親はかなり前にネルフ本部で起きた『不幸な事故』で人で『なくなっている』。

 

(まさか、あの事件で亡くなった被害者のL.C.L.を保存していた事が役に立つなんてね、母さん)

 

 ネルフ本部で一部の職員がL.C.L.化すると言う痛ましい事件が起きた。

 原因は“1人目”のレイの暴走。

 アンチA.T.フィールドが発生し、レイの周囲に居た人間はA.T.フィールドを失った。

 トウジの母親やリツコの母親であるナオコ博士も被害者となった。

 そして被害者のL.C.L.は回収され、ネルフ本部に保管されていたのだが……。

 授業が終わるまで学校に居なければならなくなったリツコの本部での仕事のフォローは、マヤがする事になった。

 

「ヨシアキ? まだ授業中? 今日はみんなを家に呼んで夕食を食べるから用意しておいてね」

 

 ミサトはトウジとヒカリを愛車に乗せて家路へと向かう途中で万能メイドの息子ヨシアキに電話を掛けた。

 後部座席ではトウジとヒカリが身体を寄せ合って座って居る。

 お互いの身体の震えを、肩を抱き合う事で抑えているようだった。

 誰かの体温を感じる事が出来るだけでも、安心できるとミサトは思った。

 

 

 

<第三新東京市郊外 加持邸>

 

 車をドリフト走行でピッタリと駐車場に止めたミサトは、運転席から降りると後部座席のドアを開けて体を持たれ合うトウジとヒカリに声を掛ける。

 

「2人とも歩ける?」 

「ヒカリがずっと側で手を握ってくれてたんで、落ち着きましたわ」

 

 そう言いながらもトウジの顔色は優れず、ヒカリも不安げな表情を浮かべている。

 トウジはミサトとヒカリの肩を借りて歩き出した。

 

「膝がガクガク震えて、ほんまワシは情けないやつや……」

「ううん、そんな事無い、そんな事無いよ……」

 

 ヒカリはそう言ってトウジを励まし続けた。

 母親が居ない分、兄として妹の前で強がっていたトウジだが、14歳の普通の少年だ。

 ヨシアキのように幼い頃からゲリラ兵として育てられていた少年とは違う。

 シンジは考える暇を与えられずに初号機に乗せられたが、トウジの場合は悪い想像が頭を駆け巡ってしまっているのかもしれない。

 自分がシンジ達の足手まといになる事は確実、使徒との戦いで命を落としたら妹とヒカリはどうなる……。

 

「さあ、このソファに座って。心が落ち着くような飲み物を持って来るから」

「えろうすんまへん」

 

 加持邸のリビングのソファにトウジを降ろしたミサトは、キッチンでミルクココアを作りトウジとヒカリの2人に渡した。

 リラックス効果が強すぎて眠気を誘発してしまうかもしれないが、コーヒーや緑茶のカフェインで神経を張り詰めさせる事も無いだろうとミサトは思った。

 ミルクココアを飲んだ2人は、張り詰めていた緊張の糸が切れたかのように眠りに落ちてしまった。

 ミサトは2人にブランケットを掛けると、ため息をつきながら浅い眠りに入った2人を見つめた。

 自分が出来るのはここまでだ。

 言葉は時には無力で、実際にトウジにエヴァに乗って自信を身に着けてもらうしかない。

 

「母さん、父さんと食材を買って来たよ」

 

 学校で授業を受けているシンジ達より一足先に、ヨシアキとリョウジが帰って来た。

 さすが2人は気配を殺す事にはエキスパート、足音でトウジとヒカリを起こす事は無い。

 ヨシアキは手慣れた様子でエプロンを羽織ると、キッチンの扉を閉めて料理を始めた。

 美味しい料理の他にも、トウジとヒカリの不安を和らげる料理を作ってくれるに違いない。

 

「ミサト、俺達の子供をまた増やすか?」

 

 リョウジが耳元でミサトに囁くと、ミサトは首を横に振った。

 

「鈴原君と洞木さんには家族が居るわ。私達の勝手な都合で引き離すわけにもいかないわよ」

「……そうだったな」

 

 シンジやアスカ、レイ、マナ達の6人は天涯孤独に近い立場だったので家に連れ込む事が出来たのだ。

 これ以上家族を増やすとなると相部屋の必要が出て来て、シンジ達のバランスを崩してしまうかもしれない。

 ミサトとリョウジがしばらくソファで寝息を立てている2人を見守っていると、家の外が賑やかになった。

 ネルフの諜報部員に迎えに行かせたトウジの妹のサクラと、ヒカリの姉であるコダマ、妹のノゾミ、父親のブンザエモンが到着したようだった。

 

「お邪魔しまーす!」

 

 元気な声で入って来たのは小学生コンビのサクラとノゾミ。

 

「あーっ! お姉ちゃんと鈴原の兄ちゃんが抱き合ってる!」

「キスはもう済ませたん?」

 

 ノゾミとサクラの声で目を覚ましたトウジとヒカリはパッと身体を離した。

 

「そんな、キッスなんぞしとらんわ!」

 

 トウジは激しく動揺しながら否定したが、顔を真っ赤にしているヒカリを見ればトウジが嘘を付いている事は明白だった。

 

「アネさんまで、ニヤニヤした顔で見んといてくださいわ!」

 

 トウジはコダマに向かってそう言うと、近くに居たブンザエモンと目が合って思わず頭を下げた。

 小さい頃にヒカリを引っ張りまわしていたトウジは、ブンザエモンに怒られていて頭が上がらないのだ。

 

「鈴原君。娘とは節度ある交際を頼むよ」

「はい、もちろんですわ」

 

 腕組みをしたブンザエモンに答えたトウジは、すっかりエヴァの事を忘れてしまっているようだった。

 やはりトウジやヒカリの家族も夕食に招待して正解だったとミサトは思った。

 

「これはこれは、今晩は御招待頂きありがとうございます。いつも娘がお世話になっております」

「いえいえ、ヒカリさんにはクラスの委員長として私も助けてもらっています」

 

 ブンザエモンが挨拶をすると、ミサトもそう答えた。

 

「ところで庭のスイカ畑ですが、見事なものですな」

「分かります? 夕食までの間、ご案内しましょう」

 

 スイカ畑に興味を示したブンザエモンにリョウジは嬉しそうに答えて、2人で庭へと姿を消した。

 サクラとノゾミは広い加持邸を駆け回り、鬼ごっこの様な事をしている。

 トウジとヒカリは仲がどこまで進んでいるのか、コダマの質問責めにあっていた。

 

「さて、そろそろシンジ君たちが帰って来る頃ね。もっと賑やかになるわ」

 

 ミサトがそうつぶやいた後間もなくして、シンジ達も加持邸へと帰って来た。

 ケンスケとカヲルのおまけ付きだ。

 

「ちっ、なんでアンタの歓迎会なんてしなければならないのよ」

「これからは仲間なんだから、つれないことを言わないで欲しいな」

 

 アスカに睨まれたカヲルは涼しい顔でそう答えた。

 学校から通学路を歩いて帰って来たシンジ達は、パイロットの歓迎会をするとミサトに言われていた。

 トウジがフォース・チルドレンに選ばれた事を知らないシンジ達は、カヲルの歓迎会をするものだと思っていた。

 レイはカヲルに得体の知れない不安を感じて、警戒して距離を取っていた。

 自分の正体を見透かされている、そんな気がしたのだ。

 

「あれ、ヒカリのお姉さんたちも来てたの?」

 

 アスカはコダマたちの姿を見て、違和感を覚えた。

 急用でトウジとヒカリとミサトは早退したと聞いていたが、今まで気にかけていなかった。

 

「シンジ兄ちゃん、お邪魔してるで」

「こんにちは、サクラちゃん」

 

 すっかりケガが治って駆け回っているサクラを見て、シンジは嬉しそうに答えた。

 

「何でコイツのお祝いに、鈴原とヒカリの家族まで呼ぶワケ?」

 

 口を突いて出たアスカの言葉の意味に気が付いたシンジの表情が凍り付いた。

 

「ミサトさん、もしかして四人目と五人目のエヴァのパイロットって……トウジと委員長なんですか?」

「何だって!?」

 

 心の中でエヴァのパイロットに憧れていたケンスケが驚きの声を上げた。

 3人の幼馴染の中で、自分だけが置いて行かれた感覚になった。

 

「四人目のパイロットが……鈴原君なのよ。恋人の洞木さんには、鈴原君の心を支えてもらう為に来てもらったのよ」

 

 ミサトがそう答えると、アスカはヒカリに声を掛けた。

 

「そっか……ヒカリ、鈴原と付き合う事になったんだ」

「うん、お互いのお弁当を交換したの」

 

 いつもならばここからヒカリを冷やかしにかかるアスカだが、この重苦しい雰囲気ではそんな軽率な事は出来なかった。

 サクラやノゾミ達も、トウジがエヴァのパイロットになる事を聞いて驚いた顔になった。

 

「兄ちゃん、エヴァに乗るんか?」

「そうや。でも怖うてな、身体の震えが止まらなかったんや」

 

 トウジは弱気な表情になって、サクラにそう答えた。

 そんなトウジの肩に手を置いて声を掛けたのはシンジだった。

 

「僕だって、父さんに呼ばれていきなりエヴァに乗れって言われて使徒と戦った時、とても怖くて逃げ出したくなったよ」

「そうなんか?」

 

 シンジの言葉に、トウジは意外そうな表情で尋ねた。

 

「でも、ミサトさんやアスカや綾波が助けてくれるから、僕は初号機に乗り続ける事が出来る。トウジもきっと大丈夫だよ」

「せやか」

 

 力強いシンジの励ましの言葉に、トウジの心も上向いて来たようだった。

 シンジの背後から元気にマナ達3人も飛び出してトウジに声を掛ける。

 

「わたしたちの紫電・雷電・震電もついてるよ! 時田さんのジェット・アローンも居るし」

「まあ先陣はアタシたちに任せなさい」

「あなたは死なないわ、私が守るもの」

 

 アスカとレイにも励まされて、トウジの表情はだんだんと明るくなって来た。

 

「なんかワシ、やれるような気がしてきたわ」

 

 この様子なら楽しい夕食会を始められるだろう、とミサトはキッチンに居るヨシアキに合図を出した。

 

「みんな、お待たせ。鈴原君には心が落ち着く料理を作ったけど、その必要は無さそうだね」

「そないな事ありませんわ、おおきに」

 

 エプロン姿のヨシアキが料理が満載したワゴンを押してリビングに隣接するダイニングテーブルに料理を並べる。

 そんなヨシアキの手をカヲルが突然握った。

 

「美しい人だ。僕は君に合う為に生まれて来たのかもしれない」

「アンタバカァ!? その人は男よ?」

「僕はそれでも構わない……」

 

 アスカの言葉にそう答えたカヲルだが、ヨシアキの魔眼を見て言葉を失った。

 

「手を放してくれるかな?」

「綺麗な薔薇には棘があるんだね……」

 

 そう言ってカヲルはヨシアキから飛び退くように離れた。

 

「コイツの心配はしてやる必要はないんじゃない?」

「あはは……」

 

 アスカの辛らつな言葉に、シンジは乾いた笑い声を上げた。

 

「でも渚君、あなたはエヴァに乗る事は怖くないの? 正直に自分の気持ちを話しても良いのよ」

 

 ミサトが優しくカヲルに声を掛けるが、カヲルの表情は変わらなかった。

 

「僕は怖さを感じません。僕にとって生と死は当価値なんです」

 

 カヲルの言葉を聞いて、ミサトを含めてシンジとアスカ達も驚いた顔になった。

 

「アンタバカァ!? それって死んでも構わないって事じゃん!」

「そんな考えなら、私、あなたを守る事が出来ない」

 

 アスカとレイが直ぐにカヲルの言葉に噛みついた。

 ミサトもカヲルに危ういものを感じていた。

 カヲルは昔のシンジ君よりも自分の価値を軽んじている。

 生きる事の楽しみを知らない、生きる事への執着心が無い。

 事前にカヲルの来日すら知らされていないミサトは、カヲルがどんな生い立ちだったのかもわからなかった。

 ドイツ支部のキール元所長が秘匿して来た少年で、同じドイツ支部に居たアスカですらその存在を知らなかった。

 この子もこのままエヴァに乗せてはいけないと感じたミサトは、カヲルに質問を投げ掛けた。

 

「渚君、あなたが興味を持っている物は何?」

「敢えて言えば本と音楽ですね。それしかする事がありませんでしたから」

「そうだったの……」

 

 カヲルと言う少年はおそらくネルフドイツ支部の奥深くに軟禁されていた。

 生きとし生けるもの陽の光を浴びなければ身体もおかしくなってしまう、それは人間も同じだ。

 陶器のような白い肌は、モグラのように閉じ込められていた証拠だ。

 

「渚君、あなたは光の差す地表へと出て来たのだから、毎日必ず朝陽を浴びなさい。それが最初の命令よ」

「そんな簡単な事で良いのかい?」

 

 ミサトの言葉にカヲルはひょうひょうとした表情で答えた。

 

「生き物には体内時計って言うのがあってね、朝陽を浴びないと昼と夜の感覚が分からなくなってしまうの。人間は夜行性のコウモリとは違うのよ。朝起きて、学校に行く。エヴァのパイロットとしての任務の前に、人として当たり前の生活を学んでもらうわ」

 

 ミサトの言う事は正論だと、シンジ達も思った。

 今のカヲルは人間味が感じられない。

 

「ミサト、コイツも同居する事になるの?」

「ええ、渚君には御両親も居ないし、保護者はドイツだしね」

「でもでも、部屋が足りないわよ」

 

 アスカは理由を付けて、カヲルとの同居を拒絶しようとした。

 

「シンジ君、あなたの部屋にパーテーションで仕切るから、渚君を相部屋にしてもいいかしら?」

「……あ、はい、構いませんよ」

 

 ミサトの質問に答えるまでに間があったのは、内心ではシンジは嫌がっていると言う事だろう。

 この際物置部屋でも良いから自分1人のパーソナルスペースが欲しいと思っているかもしれない。

 シンジは1人になる場所が必要な子だとミサトは思っていた。

 

「ヨシアキに手を出したガチホモ、シンジに変な事をしたらただじゃおかないわよ!」

「おや、キミは碇君の配偶者なのかい?」

「そんな事は無いわ、同僚で、同居する家族なだけよ」

 

 レイが真っ先にカヲルの言葉を否定した。

 シンジの部屋にはベッドが1つしかない。

 ミサトは至急ネルフの総務課に連絡を入れてベッドやパーテーション、机や椅子など家具一式を揃える事にした。

 最初はミサトはカヲルを同居させるか迷っていた。

 しかしカヲルに肉親がおらず、かつてのシンジ達と同じ死に至る病を抱えていると判断したミサトはリョウジに相談する事無く家族として迎え入れる事を決めたのだった。

 

「あのミサト先生、トウジは……」

「鈴原君は今まで通り、お父さんと妹さんの居る家で暮らしてもらうわ。洞木さん、あなたが鈴原君の心の支えになってあげてね」

「はい……」

 

 ミサトの言葉に、ヒカリは顔を赤らめてそう答えた。

 トウジはシンジやケンスケ達といるうちに、心身共にリラックス出来たようだった。

 まだカヲルと他の子達との距離はあるものの、同室になったシンジが音楽と言う共通の趣味で埋めてくれると期待していた。

 戦場での中心はアスカやトウジに譲る事になっても、チルドレン達の絆の中心はシンジなのだ。

 庭のスイカ畑を見ていたリョウジとブンザエモンも帰って来て、賑やかな夕食会は盛り上がりを見せた。

 

「立て続けに5番目の子まで選出されるなんて、碇司令は前の使徒戦がそんなにショックだったの?」

「5番目なんてまだ氷山の一角さ。各地の支部はエヴァを製造している。リッちゃんの話によるとこの家に同居する家族の子達のダミープラグまで作り始めらしいじゃないか」

「これからさらに適格者が増えるって事ね……」

「ミサト、俺たちに出来ることは子供たちが安心できる場所をつくってあげることだ。そうして子供たちを死に至る病から救ってあげるのさ」

 

リョウジはそう言ってミサトの肩を抱いた。

 ミサトはリョウジに身体を預ける。

 2人とも肩を寄せ合い、サクラやノゾミ達を加えて大はしゃぎをする子供たちの姿を見守るのだった。

 

 

 

<ネルフ本部 司令室>

 

 加持邸での夕食会も宴もたけなわだった頃、ネルフ本部では次なる作戦の下準備が行われていた。

 ゲヒルン元所長キールからネルフ総司令ゲンドウに託された死海文書には、次の使徒の出現が予告されていたのだった。

 

「中国支部と韓国支部から報告がありました。例の物が完成したそうです」

「さすが仕事が早いな」

 

 リツコが報告すると、コウゾウは皮肉を込めた口調でそうつぶやいた。

 中国は高層ビルを建てるにしてもエヴァを建造するにしても、そのスピードだけは世界一だった。

 乗用車と日本へのライバル意識を燃やす韓国支部も威信を掛けてダミープラグの製造をしていた。

 

「やつへのギフトはそれぐらいで良い」

 

 ゲンドウはそう言って口を歪ませた。

 アメリカ支部から参号機と肆号機を買うのと同時に、ゲンドウは中国と韓国の支部にも仮設伍号機の建造を依頼していたのだ。

 

「この作戦は極秘に行われる。情報の漏洩は無いようにしろ、2人とも」

 

 作戦に関わる人数が多くなるほど情報は漏れやすくなる。

 ゲンドウはミサトやリョウジの事を信用していないわけではないが、シンジ達との距離が近すぎる。

 この作戦、シンジに知られては困るのだ。

 

「息子に憎まれる事を覚悟しての作戦か。安心しろ、ケアは私達がしてやる」

「私はシンジを傷付ける事しか出来ません。嫌われるのならばこれ幸いです」

「強がりを言いおって」

 

 コウゾウがそう言って生暖かい目でゲンドウを見ると、ゲンドウは不機嫌そうな口調でリツコに尋ねた。

 

「ドイツ支部が一度は失敗した、コアの作成。上手く行くのか?」

「魂そのものは捉える事は出来ませんでしたが、生理学的に持ち上げれば可能です」

「そうか。初号機のダミープラグの方はどうだ?」

「シンジ君のパーソナルパターンに変化はあるものの、それは織り込み済みで開発中です。初号機を動かせるくらいにはシンクロ可能だと思われます」

 

 ゲンドウの質問にリツコはテキパキと答える。

 

『敵を欺くにはまず味方から』

 

 これからネルフにとって初めての心理戦が始まろうとしていた。

文章量少なめのハイペースで進めた連載ですが、補完した方が良いでしょうか? 最終話だけ別のアンケート(続編について)になります。

  • 本文は今の量が読みやすいので外伝形式で
  • 本文の量が増えても加筆修正が良い
  • 外伝で活躍させたいキャラ(メッセージで)
  • 第〇話の修正希望(メッセージで)
  • こんなifストーリーどう?(メッセージ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。