新世紀エヴァンゲリオン for Children ~全ての子供たちのために~   作:朝陽晴空

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EX2.二人のシンジ

 第3村のネルフ第2支部N109棟跡。

 かつてネルフの海洋生物を保護施設があった場所だ。

 大部分が崩壊し、海の底へと沈んでしまっている。

 水辺では1人の少年がうずくまって涙を流していた。

 

「ううっ、僕は綾波を助けようとしただけなのに。カヲル君も僕の身代わりになって死んでしまった。何で上手くいかないんだよ」

 

 

 

 その少年の名前は碇シンジ。

 第壱中学校の2年生。

 この世界で二度のニアサードインパクトを引き起こしてしまった。

 第3村に来てからはほぼ毎日、朝から晩までこの場所で涙を流す日々を送っている。

 

 そんな彼を物陰から見守る2人の少女がいた。

 1人は式波・アスカ・ラングレー。

 もう1人は綾波レイのそっくりさんと呼ばれていた。

 

 2人の少女は自分が作られたクローン体であることは自覚していた。

 オリジナルのアスカが、この時惣流アスカと顔を合わせているとは知らない。

 レイの方もオリジナルの動向については興味すら持っていなかった。

 

 

 

「ここから海の底へ潜ってしまえば、もうみんなを苦しませずに済むのかな」

 

 シンジが立ち上がってフラフラと赤い海の方へ近づくのを見て、アスカとレイは物陰から飛び出した。

 

「あのバカっ! いつかやると思ってた!」

 

 しかしアスカ達より先にシンジの前方に現れて自殺をくい止めたのは、銀色の光をまとった人影だった。

 驚いたアスカとレイは急ブレーキをかけるが、お互い同じ地点を目指していた2人は肩でタックルする形となった。

 弾かれて横向けに倒れた彼女たちは、それでもシンジから目を反らさなかった。

 

 

 

「痛てっ!」

 

 正面から人影にぶつかった形になったシンジは尻餅をついた。

 銀色のオーラが収まった後、姿を現したのは彼そっくりの顔をした少年だった。

 違うところといえば、背丈と髪の毛が少し伸びている点だ。

 

「き、君は誰?」

「僕は別の世界からやってきた碇シンジ。君たちの世界を助けるためにやって来たんだ」

 

 この世界へとやってきたシンジは、物腰柔らかな笑顔を作って質問に答えた。

 彼の兄であるヨシアキと同じく、穏やかさを持ち合わせている。

 

 

 

「アンタ、バカァ!?」

 

 よろよろと立ち上がって「何言ってんだこいつ」とツッコミを入れたのは式波アスカだった。

 たった1人の人間が世界を救う?

 頭のねじが外れているのではないかと彼女は思った。

 

 

 

「君は……僕のアスカじゃないみたいだね」

「はぁ!? 誰がアンタみたいな内罰的な泣き虫男の女になるもんですか!」

 

 アスカの言葉を聞いたこの世界のシンジは、自分はそう思われていたのかとまた傷付いた。

 

「僕はアスカと一緒に手を繋いでこの世界にやって来たんだけど……はぐれちゃったみたいだな」

「何よその余裕たっぷりな態度。恋人が居なくなったのなら、取り乱すものじゃないの?」

「それはね……」

 

 アスカとシンジは息を飲んで彼の言葉を待つ。

 

 

 

「僕とアスカは愛し合っているからだよ。だからまた会えると信じている」

「ドヤ顔でそんなこと言わないでくれる? 鳥肌が立ってきたわ!」

 

 そう言って両腕をさするアスカとは対照的に、この世界のシンジは彼に圧倒されていた。

 同じシンジだと言うのに、自信に満ちた表情。

 他人を気遣う余裕すら見せている。

 それに対して自分はただ泣いている子供ではないかと自分を恥じた。

 

 

 

「えっと……君のことはシンジと呼んで良いかな。僕のことは……そうだなシンイチと呼んで欲しい。シンジが二人だとややこしいし、僕は今から君のお兄さんだ」

「兄さん?」

 

 今までシンジにはカヲルやトウジと言った親しい友人は居たが、兄といえるような人間は居なかった。

 リョウジは人生の先輩のような存在だったが、15歳差と歳が離れすぎている。

 

 

 

「さあシンジ。一人で泣いている時間は終わりだ。みんなのところに行こう」

 

 シンイチはそう言って、人の活気があふれる第3村の中心部の方を指差した。

 

「嫌だっ!」

「お兄さんのいうことは素直に聞くものだよ」

 

 シンジは抵抗しようとするが、笑顔のシンイチに肩を組まれて逆らうことが出来ない。

 引きずられるように水辺から離れて行く。

 

「綾波とアスカも僕と話を合わせてね」

「はい、碇君のお兄さん」

 

 レイはいち早くこの状況に順応したようだ。

 

 

 

 アスカは返事こそしなかったが、否定することもしなかった。

 元々彼女は第3村の人間と顔を合わせるつもりもない。

 

「アスカ、どこへ行くの?」

「……ケンケンのところへ帰る」

 

 これ以上アスカは、シンイチと話していたくはなかった。

 彼女は感じ始めていた。

 シンイチに心を引かれていく自分を。

 綾波・式波シリーズのクローンである自分はシンジを好きになるようにインプットされていることは彼女も知っている。

 

「アタシは、そう仕組まれているだけよ」

 

 そう言い訳をしながら、アスカは逃げるようにシンジ達と別れ、自分のねぐらであるケンスケの家へと帰るのだった。




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