戸口所属魔法使いは猟鬼と呪術師のせいで胃が限界   作:犬(ゆきいろ)

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第四階梯 司書 戸口
第三階梯 訪問者 猟鬼
第三階梯 異端者 猟鬼
第三階梯 外典 猟鬼

とかいう地獄みたいな分科会、はっじっまっるよー!


第1話

ここ最近、胃の痛みがヤバかったが、今思い返せばあの程度の胃痛へでも無かった。あの程度なら焼肉食べ放題に行けた。

 

今現在は胃を裏返してそのまま吐き出しそうな気分を味わっている。

 

「あの、これは…一体どういう集まりで……?」

 

趣味の良い使い込まれたテーブルとイスに、柔らかな紅茶の香りが添えられるが、気分はカチコチ。

この異界の主であり、この分科会を招集した第五階梯の魔女……というか、多分こいつ、うぅん。この人の本性は獏だ。

異端者ではあるが、半ば神獣の類な為無駄に階梯を上げており滅多な事は言えないが、彼女はにほにほと微笑んでいる。

 

「もちろん。禁書回収する為に結成された分科会です」

 

当然の質問にも柔らかく応対してくれる。

 

胃痛の原因はそれではない。

 

彼女や自分と同席、というか席に付く事無く『休め』の体勢をキープし、じろりと此方を見詰めてる三つの目だ。

 

そう、三つ。

大抵の生物なら目玉は二つ。一対の眼球を持っているだろうが、今自分をガン見している三人は猟鬼。三人とも、皆が皆。

軍服の様な威圧を持った黒い服に、揃いの眼帯をした猟鬼に囲まれている!

 

猟鬼所属の魔法使い三人に囲まれたら、そりゃ、胃も痛みますわ。

自分なんかした?ねえ、何か……ごめんなさい!戸口に所属してる身としては、なんかアレとかコレとかそれとか不味かったかな!?ってのめっちゃ出てくる。

さ、最近は会合とかさっぱりだったし、だったし、だったし…!!

止めてください自分、か弱い司書なんです……本当です……疚しいことは何も……。

 

「離反者がでたようなのです。回収済みだった禁書を持ち出して。……それが、どうやら貴方のスカウトで大法典へ迎えられた訪問者なのですが……」

 

ほ、ほげぇえええええええ!?!?!?!?!?

 

めのまえが、まっしろになった。

 

 

 

 

「落ち着かれました?別に、他意があってのメンバーではないのですよ。偶然、今回の任務に向いているかと、選ばれただけですから」

 

「アッハイ」

 

一瞬マジで意識飛びかけたのを、上司に繋ぎ止められた。

 

「あなた達も初めての分科会結成で緊張して居るのは分かるけれど、情報を話しますから座りましょう?」

 

そう未だ『休め』の状態で控えていた魔法使い三人に声を掛ける。

すると、オリーブ色の肌に赤銅色の髪の青年がにへら、と表情を崩し真っ先に席へ座る。その姿に先程までの威圧感はない。

腰に吊られていた剣も、椅子にぶつけトンでもない音を立てているほどの、気の抜けっぷり。

 

「ほんとぉ?お言葉に甘えちゃう~。俺、終始びしっとしてんの駄目だわぁ」

 

余りの豹変ぶりに呆然とするしかない。なにこの人。

 

「俺はパルド。マルコ・パルド。第三階梯~。まぁ猟鬼には属してるけど、ちょっと訳アリな傭兵異端者さんだから、気軽に雑用押し付けてよ」

 

ふにゃりとどこか色気のある顔で微笑まれ、握手を求められる。

 

「あ、こちらこそよろしくお願いします。戸口に籍を置いております、上中三夏です」

 

異端者と言うからには、魔力と魔法を産まれ持ってる何らかの妖物とかなのだろうが、酷く人間臭い。

というか……、なんか……、うだつの上がらん陰キャな大店の三男坊とは決して相容れない何かを感じるぞこいつ。

 

「さあ、あなたちも座って?皆初対面ですし、自己紹介を」

 

もう一度促され、残りの二人も席に着く。

 

「はじめまして。風贄ナナチです」

 

猟鬼の中で唯一の女の子が、ぴんと背を伸ばしてお辞儀をする。

低い位置でぞんざいに束ねた黒髪が、尻尾の様にぴゅんと跳ねた。

 

「第三階梯の訪問者です。学院で一通りは学びましたが、実務に当たるのはこれが初めてなので、あの……よろしくお願いします!」

 

「ナナチは可愛いですね」

 

肘を着いてスコーンに大量のクリームを乗せて齧っていたパルドが、今にも吹き出しそうにしながらわざとらしく言う。

相容れなさそう、と思ったが、こいつさては同類か?

表の顔として、漫画喫茶の店長をやって居れば、パルドが何を言いたいのかはまあ、理解できる。

 

「信条は書籍卿は見つけ次第殺す!です!」

 

訪問者という事もあり、初々しい子だなぁ…なんて一瞬ほっこりしたが前言撤回。殺意が高い。

 

「あ!もちろん上中さんも魔法の悪用が発覚した場合には即殺斬ですので、よろしくお願いします!」

 

フレッシュな笑顔で此方に向き直り、改めてお辞儀をした。

めっちゃ殺意高い。きりりと真面目に初々しく殺意高い。

 

そして最後の一人。

ただひたすらに穏やかな笑みを浮かべて、そこに存在する青年は、名乗りを聞く前から正体は分かり切っている。この魔力の質は判断出来る。

円卓の呪いにより、奴隷と化した禁書だ。その上でさらに猟鬼に籍を置いていると言うのだから、最早狂気だ。

 

「ほら、ジラーチ」

「ジラーチ、自己紹介」

 

にこにこと微笑んでばかりいる外典を、残り二人が名前を呼んで促す。

笑顔の形を張り付けたままに、はっとするなんて器用な事をしながら頷く。

 

「外典、題目を『祈りは破滅を乞う』と言います。魔法名は『はめつのねがい』です。人間の名前、ないので、二人はワタシをジラーチと呼びます。第三階梯です」

 

「……えっと、ポ●モンお好きなんですか?」

 

「中学生くらいまでは、それなりにやってました」

 

「日本のそーゆーのに嵌った切欠なんだぁ、ポケ●ン」

 

風贄とパルドが返すが、当のジラーチ(仮)と名付けられている外典はさっぱり分かっていない様だ。

 

「皆、上手くやっていけそうで安心しました」

 

それでは改めて、今回の件で分かっている事を話しましょう、そう獏の魔女は告げた。

 

 

先ずは大法典から禁書を持ち出した魔法使い、『橘日歌』。

正真正銘の17歳。少し前までは、魔法なんて知らずに生活していた訪問者だ。まだ第二階梯程の実力で、学院に所属していた。

 

「彼女は直接魔法災厄に見舞われた訳ではないんですが、親族が運命変転で皆亡くなっています」

 

そして先程既に言われたが、自分がスカウトして来た人物だ。そこまで魔法の素質が高い訳ではなかったが、書籍卿に付け込まれては、と半ば保護の心算でのスカウトだった。

 

「学院の寮で同室だった子です。その……大法典へ所属する経緯が似ていたので、それなりに親しかったと思います」

 

風贄が一瞬悲痛な表情を浮かべた後に、直ぐにまた姿勢を正し、きりりと答える。

 

それぞれが付け足したことばに、魔女は頷いて見せる。それらも全て承知しているようだ。

そして、と今度はジラーチの方を見て伝える。

 

持ち出された禁書の名は『呪いは興隆を与える』。

羨望や妬み、欲望を煽り人心を惑わせ狂わせ、理性と倫理を欠いた事件を多発さる。一見超常的な結果を残さないので、ソレと気づいた時にはとんでもない被害になっている。

 

「ワタシ、のきょうだい……?対のような禁書です。少し騒々しい子ですがワタシと同じ、人間の願いを叶えたい子です」

 

極真面目なその言葉に、もうし訳ないが顔が引き攣る。

だってしょうがないじゃない!?『当人』の意識では人々を幸福に導く存在の心算なのだろうが、前提として禁書は『祟る』。人に取り憑き悪事を成す。

同じ所属かつ、(仮)の名前を着けた二人すらもちょっと口角がひくついて居る。

 

「書籍卿の存在は確認されていますか?」

 

いくら回収済みとは言え、第二階梯程度の魔法使いが単独で大法典から禁書を持ち出すと言うのは考え……ってそういう事!?この分科会内通者候補の集まり!?

流石に外典の反逆は難しいとちゃうん!?いや、自身では何もせず呪いに触れない様に魔法使いを使う術を見つけてしまった可能性!?いやでも猟鬼所属が!?

うっ……胃が痛い……!

 

「個人を特定出来ていませんが、一人、橘日歌の痕跡が途絶えた地点で確認されています」

 

「消滅した、訳ではないんですね?」

 

無言で肯定し、魔女は続けるが穏やかな口調のままに、すこし首を傾げて困った様にする。

 

「そして今の所、禁書が起こしたと思われる魔法災厄は確認されていません」

 

は???ごめんなさい、ちょっと司書、意味が分からなくなって来たかな????

第二階梯のこが禁書を抑え込んだまま姿隠して逃走中?そんな馬鹿な。じゃあその隠れるのが上手い

 

「続けますね。分かっている事は、学院所属、第二階梯橘日歌は禁書『呪いは興隆を与える』を大法典から持ち出し、ある地点で禁書共々所在不明になりました。そして一人、学派や個人の特定は出来ていませんが同地域に書籍卿らしき魔力を感知しています」

 

そこまでは把握した、と皆頷く。

 

「そしてこれが現在掴めている情報です」

 

獏の魔女がふぅう、と甘く微睡む様な息を中空に吹きかけると一人の少年の映像が浮かび上がる。如何にも明るく、快活そうな好青年だ。丁度年齢は風贄と同じくらいだろうか。

 

「彼が唯一、人界で橘日歌と接触しています。名を『虎杖悠仁』。魔法災厄ではない要因で、死亡しています」

 

くるりと一つ空中の空気を整えられた爪で掻き混ぜ、映像を切り替える。

今度は先ほどの少年と同い年位だろうが、如何にも生真面目そうな綺麗な顔立ちの少年が映し出される。

 

「そして彼と最後に言葉を交わした人物。『伏黒恵』」

 

中空に現れた映像を再び微睡む様な吐息で掻き消す。

 

「『呪術高専東京校』の生徒という共通点があります」

 

その名前を聞いた瞬間、あっ(察し)となり、思わず服の胸元を握り絞める。胃痛通り越して、心筋梗塞起こしそう。

 

「……うちの本部に……連絡してもよろしいでしょうか?」

 

終始ゆったりとした口調で説明を終えた、上位の魔女と第三階梯の後輩的な面々の手前、実際には叫ぶことは出来なかったが、脳内では大絶叫で、己の組織の長の名前を呼んだ。

 

張さん助けてぇえええええっっ!!!!!!!!!!!!

戸口所属魔法使いの選ぶ、日本の関わりたくない異端者コミュティ第一位だよぉおおおおおんんんっ!!!!!!!

 

 

 

 

ぴえん。

 




第四階梯 司書 戸口 男性
名前『上中三夏』表の顔『漫画喫茶の店長』魔法名『』真の姿『』
信条:できるだけ穏便に事件を解決したい。してください…。
日本人。江戸中期の産まれ。大店の三男で暇を持て余し偶然手に入れた魔道書に手を出し魔法使いになった。
現場組。どこもそうだが人手が足りなくて過労で胃が痛い。どちらかと言えば、辻褄合わせや事後処理に駆り出されている魔法使い。交渉事はそこまで得意ではない。
今回の事件は殊更胃が痛い。
呪術師という『種族』の存在は把握して居たが、『関わらない』という決定だったのに今回で、胃が死にそう。出来れば関わりたくない。物凄くびびり散らしている。
一応位階は一番高いが腰が低い。

穏便に事を運ぶ為なら土下座も辞さない三男坊。

表面は常に年下でも位の低い相手にも丁寧に接するが、過労とストレスで胃とか脳内は荒れている。
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