戸口所属魔法使いは猟鬼と呪術師のせいで胃が限界   作:犬(ゆきいろ)

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第6話

風贄さん見た時から……いや、わりとここ数十年思ってたけど、最近の日本人でかくね?おかしくね?特にここ数年急激に平均身長が伸びている気がする。

表の顔の漫画喫茶で雇ってるバイトととか、年々若者がデカく、手足が長く成ってる気がする。

 

と、胃がきりきりするままに約束を取り付けた時間になったので、訪れた呪術高専で顔には出さずに慄く。

時間より早くについてしまったせいか、人の気配の少ない校舎(というにはあまりしっくりこない空間)を案内され、応接室に通され、しばし一人でぽつりと待つ。

 

大法典の学院の様子との違いに物珍しさを覚え、ほんの少しきょろきょろと視線を走らせていた辺りで、やべぇ奴らがやって来た。

 

思わずヒェッって音に出さなかったのを褒めて欲しい。

生徒数が少ない為か、仔細までは伝えなかった為か、担任だけならまだしもわざわざ学長まで出て来た。

 

しかも外観がだいぶふぁんきー。圧がやばい。一般市民的様相の商家の三男に襲い掛かるプレッシャーがやばい。この件の冒頭に猟鬼三人に囲まれた程度には臓器にダメージはいりゅ……。

それでも一、社会人らしく名刺をお出しする。学校の先生がそうなのか、呪術師という生き物がそうなのかは知らないが、相手方の名刺は無いらしく、普通に紹介された。

 

まじで教師?最近の人間こわ。いや、正確には異端者だ。愚者や一般人とは違う、異なる種だ。うん。そう思おう。特に顔の造形とか、気にしてはいけない。

何となく興味本位で、五条さんの顔面透視したら、あまりの格差にメンタル死にかけた。現代っ子まじこわいわ。自分の知ってる日本人じゃねぇ。

 

そうは思いながらも、表情にも声質にも出さず、人当たりの良さを繕って話を進める。取り敢えず、店で問題行動があっただとか、法に触れる様な事態ではないと伝えると、両者ともに若干力が抜ける。

自分は緊張しっぱなしだけどな!こぇえんだわ!

 

もう早く帰りたいから、さくさくと話を進める。事後処理ばかりやってる自分に、驚くような話術は無いので、手っ取り早く済ませる手段を取る。

 

「これから話す事を即信じて頂くのも難しいと思うので、私が真実のみを語ると証明する為……えっとそちらでは縛り?でしたか?私的には、こちらの契約書の方が効力を信じられるのですが」

 

魔法使いは世界の外側に行ってしまったモノだから、世界の内側のルールがちゃんと適応されるのかは定かではない。

大法典から発行される、魔法で編まれた契約書を上へ向けた掌の中にに再構築する。こっちなら確実に自分にも効力があるが、信用されなければ意味は無いので、お気に召す方を、或いは二重に契約を重ねて貰えればいい。

 

「どちらの方法でもいいので、私に『今回の件に関して嘘偽りを述べない』と誓わせていただけませんか?」

 

正直既に独自の文化とコミュニティーを持ってる異端者達に、全く別の価値観を持ち込むのは相手方にも傍迷惑だろう。こっちだって迷惑だし。

でもなぁああ!上司がやれって言ったからなぁああああああ!!!!!

 

朗らかに笑ったまま、契約書を差し出した形で相手の反応を待つ。

先程の思考の通りに、新たな文化なんぞ迷惑だろうと考えてるのをよそに、担任氏はあっさりと契約書に手を伸ばす。

 

ちょっと引く位のあっさりさ。例えるなら、最近の荒れに荒れてる胃にもやさしい、ほんのりお出しの御粥くらいにあっさり。

逆にあっさりし過ぎで引くわ。

 

じっと魔力で編まれた契約書を見つめる。

 

「名前ここでいいの?」

 

「アッハイ」

 

え、こわ。魔法に関わった事無いのに(六氷の例もある為、恐らく個人が偶然魔法に触れる事はあるのだろうが)得体の知れないモノに、あっさり署名しようとしている。

やっぱ異端者って人間と感覚違うの?危機感大丈夫?

 

と思ったら学長氏は普通にぎょっとしていたので、多分五条さんだけがおかしいのかも知れない。そう言われてみれば、どことなくシーリーコートの連中に空気感が似てる。妖精の類の混血なの?やめて?

正直自分は妖精もあまり得意ではない。まだ神の方が付き合いやすいと思って居る。人それぞれだろうが。神はまだ(外宇宙産とかでなければ)人間の信仰の上に存在するが、妖精はだめだ。根源が違い過ぎて、こう……ともかく……無理ぃ!!この人いやぁ!妖精と同じ空気してる!あと猟鬼の視線!!!あの常時監視中でぇすなファッキン義眼!!!全部透過して監視して報告してるあのプライバシー侵害義眼!胃がきりきりする奴!!!!!

最悪のコラボレーションしてんだわ!!!まじで呪術師って気味の悪い種族だな!!!!帰りたい!!!!!

 

「ありがとうございます」

 

目隠し越しにだって察知できる異端さに脳内で『まじむり』としながらも笑顔を崩さずに契約書を受け取った。

 

「では、少々長く成りますが宜しいでしょうか?先ず……」

 

他の異端者との交流は無いにしても、自身達も『異端』であるのだから、世界の外側と魔法についての話は半信半疑ではある様だ、一応頷かせる事は出来た。

 

それここからが本題、今回の魔法災厄の確認出来ない事案と、離反者、そのアンカーに成って居る筈の虎杖少年について語ろうとした。のだが、既に長く成ってしまっているので、もう一度時間の確認をしたところ、何だかスケジュールのミスが発覚したよう、担任氏が上司である筈の学長氏にアイアンクローを食らわされた。普通に引いた。どうやら五条さんの伝達ミスらしいが……わざと臭い。やっぱ妖精(仮)の思考回路はヒトと同じに考えたらあかんな、と思った。まる。今回限りの付き合いにしたい。関わりたくない。

 

そんな要因もあり、一時的に学長氏は別件へ走って行った。

なんだろう。外見は怖いけど、胃薬分けてあげるか、魂抜いて身体を並列に数機別行動させる方法を教えてあげたくなったなあ……。苦労してそう。

 

僅かな憐憫を抱き、心の内でのみほろりとするなどしたが、無事に対談は終わる。割と重要な所は学長氏不在だったが、担任の先生がこっちだけで大丈夫、と言ったのでまあ、平気だろう。そっちで何とかしてくれ。用はすんだから帰りたい。

 

契約してしまっているので、聞かれたら『今回の件』に関しては全て正直に話さなければいけないから、深く突っつかれる前に戻りたいんじゃぁ~~~~~正直求愛行動してる外典と求愛されてる呪霊(断章憑き)が心配。

 

目前の呪術師二人は釈然としない顔のままだが、自分的には知りたい事は知れたので、この話は終わりだ。

張さんや、先輩方には協力的なら、使えそうな辺りだけでも抱き込め、とのお達しだが、万年人手不足なんて話聞いちゃったら、そんなド畜生な事できない。

オーバーワークで脳味噌とか胃とか心臓とかダメージ受けちゃってるもんだから、人手不足は共感しかない。これ以上の仕事とか押し付けるなんて、カワイソ過ぎる。

穏便に記憶を消してとっとと帰ろう。

 

自分に残っていた良心に感動しつつさくっと記憶操作しようとした瞬間、魔力の動きに視線を上げる。ほぼ同時に五条さんの見えない視線がちらりと天井付近を見上げるのと、焦った声と同時に空間がさけ、そこから猟鬼の少女が降って来た。

 

「上中さん!上中さーん!なんですか!これ!これ、なんですか!?」

 

魔道書と言うには余りにも物騒な斬首用の斧を片手に、もう片手には引き千切られた大男のものらしい腕を掴んでいる。

 

「きゃぁーーーーーっっっ!?!?!?!?!?風贄さん何持ってきてるのそれ!?それな、いや屍典!?それ屍典ですか!?」

 

外見年齢三十路男の口から、絹を裂くような悲鳴を出してしまった…。今すぐ全員の記憶を破壊しなきゃ…かっこ使命感。

 

少女の手に握られた、土気色の腕の皮膚にはびっしりと悍ましい紋様が焼付けられている。三百年程大法典に所属して居ればほぼ魔法戦ベタの事後処理要員だって、話位は聞いた事ある。肝心の頭部は無いが、恐らく死獣。【闇の心臓】が創り出す屍典。

屍典に関する文献は、閲覧は厳しく禁じられ、万一遭遇した場合も破棄が徹底されている。その上で学院を突っ走り、今回が初仕事の訪問者、風贄は知らなかったらしい。

 

言っちゃえば、超禍々しい製法の書籍卿版外典だ。ジラーチ(仮)の邪悪な色違いだ。

 

そんなもんの千切れた腕と、斧を持ったガチ女子高生が応接セットの机の上に着地したと言うのに、叫んだの自分だけだ。

 

呪術師は大抵の場合、普通の人間と同じような寿命だ。厳めしい、大晦日にビンタしてそうな学長だって自分の半分も生きてないだろうに、静かに風贄を見て居る。なに、この人も竜なの?なんなの?

担任氏に至っては、声を上げて笑いながら「やべー」と指さしている。

やべーのはこいつらだな、と外交窓口司書は思った。普通の人間っぽい形態と生態してるが、やっぱ呪術師は異端者なんやなって、実感する。こわ。

 

どう見ても胡乱な男二名の視線を集めた風贄は「ヤクザの事務所……!?」と、とても訪問者らしい別の意味で、非常に善良な市民的恐怖を覚えたようだ。

 

斧と切断した腕をぶら下げて居たが。

 

 

 

その後、説明要求やらもろもろを強引に振り切り、『いつもの』と化しつつあるカラオケのファミリールームで分科会のメンバーが揃い、情報の擦り合わせと考察が成された。

ついでに猟鬼三人組のスピード伝達により、何があったのか、綻んでるパルドは開口一番に「りぃだー、黒塗りの高級車に追突したってほんと~?後ろぉ、無事?」と大爆笑で宣った。

 

思わず28秒程仕事をストライキして、29秒後に復帰した。意味が分からないと首を傾げる風贄とジラーチ(仮)に、知らなくていいと首を振っておく。君らはそのままでいるんだ。

そして綻んでるパルドに一発チョップをかました。

 

あとからちょっと怖くなった。

別になんのお達しもなかったので、セーフだったようだ。良かった!!!!!

 

名刺渡したせいで五条さんから着信があったのはヨクナカッタ。

 




上中
一応外交担当だし、表の顔で店長も務めているので人間とちゃんと対話できるタイプの魔法使い。自分を未だに真っ当な類の人間だと思っている。
ただしそれは対人だけであり、魔法を扱う辺りに関しては完全に人間捨てている。でなきゃ自分の魂抜いたり、身体増やして並列で別行動させたり、魔法災厄でない(大法典や、魔法使い達と無関係に人間の世界の事情で愚者が死んでるだけだ)からと普通に真人の存在もスルーしている。むしろどうやって断章剥ぐんだよ!?折角だから、バイトしていこうよ!位にしか思ってない。
でも突然切断した腕を持って来られると女々しい悲鳴を上げる。戦いに、とても、向かない。ひ弱。

事前に六氷に話は聞いていたので、ちゃんと呪術師の前では真人の話をしない様にしていた。わざわざ『今回の件』って制限つけて真実しか話さないって契約したのに、そこ突っ込まれて事態がややこしく成ったら嫌だから早く切り上げたかった。

魔法名『閑居の魔』
領域:星
特技:黄金、異界、自由、時、謎
魂の特技:諦観


※おまけ
この人だけモデルのPCが居る。
基本的にギャグシナリオに振り回され気味。六分儀市よりヤバそうな冬木市に飛ばされたり、Y談しか話せなくなったり、お嬢様になったり、魔法少女にされたり、例の出れない部屋に閉じ込められたりした。真面目なのに可哀想。混血主義者きらいぃ(血涙)
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