マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 2作目です。
 今回の主役はお目々がシイタケで可愛らしいあの子!

 前作はこちら。

ゴールドシップとの3年間
https://syosetu.org/novel/255533/


1、運命の人

 ――今日は大安吉日。だって、神様がそう言ってるから!

 

「見つけました! 私の運命の人!」

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 トゥインクル・シリーズ。ウマ娘たちが競い合い、誰が一番速いのかを決めるレース。

 そこに出場するためには、チームに所属しなければならない。

 そして、そのチームは5人以上いなければならないのだが……。

 

「なあ、トレーナー。3人しかいねーけど、どーすんだ?」

 

 話しかけてきたのはゴールドシップ。俺の初めての担当ウマ娘だ。

 新人トレーナーの専属システムを使って、チームを作らず二人三脚でトゥインクル・シリーズを3年間勝ち進んできた。

 

 そしてついにチームを作らなければならないということでウマ娘たちを呼んだ。今ここにいるのは俺がスカウトして見つけてきた3人だ。

 銀メッシュのソーラーレイ、長身のコルネットリズム、金髪ロングのトモエナゲ。

 ゴールドシップは初めてのURAファイナルズで優勝した、初代チャンピオン。

 そんな彼女に憧れて、とりあえずお話なら……と言ってくれた3人だ。

 

 というか、ここまでの実績を経ても3人って……。自分の実力不足を嘆いた。

 このままでは、3人がはいったとしてもレースに出走することができない。

 

「うっし! こういう時はゴルシちゃんに任せろ!」

 

 グッとガッツポーズをするゴールドシップだが、任せると大変なことにしかならない。

 ただ、もうあてもないのでこの破天荒にかけよう。

 

「レーダー受信、レーダー受信。ウマ娘の反応アリ」

「私たちもいますけど……」

 

 妙な動きでふらふらと動くゴールドシップ。

 少しして、ハッと顔を上げた。そして俺を担ぎ上げる。

 

「え?」

「あ、あら?」

 

 あ、いつものことだから気にしないでほしい。

 そう言った直後、ゴールドシップがトレーナー室の扉を蹴破った!

 

「えぇ!?」

「あっちが匂うぜ! ゴルシちゃんダーッシュ!」

 

 今日は解散して明日連絡するからなああああー。

 ドップラー効果を起こしながら2人で去っていく。

 

「……大丈夫かな、トレーナーさん」

「ゴールドシップさんですし、しかたないよ」

「僕、心配だー」

 

 残されたトレーナー室の面々でそんな話があったとかなかったとか。

 

 

 

 

 

「ここだ!」

 

 着いたところは神社だった。

 トレセン学園の近くにある、長くて急な階段がある有名な練習の場所だ。

 その階段の前で下ろされる。本当にここにいるのだろうか?

 

「まあ、上ってみようぜ。運試しもしてーからさ」

 

 どうやらおみくじを引きたかっただけらしい。

 ゴールドシップは占いが好きなわけでもないのに、やたらとやりたがる。

 特におみくじみたいな当たりハズレのあるものは大好物で、絶対にやるのだ。

 

 何故そんなに引きたがるのか聞いたら、おもしれーじゃんと答えられた。

 まあ、うん。確かにそうだけど。

 

「相変わらずの階段だよな。アタシがマンボウだったら血吐き出してるぜ」

 

 虚弱すぎる! 確かにトレーニングに使われるぐらいだからキツいけど。

 ゴールドシップにペースを合わせてもらい、階段を上がっていくと小さめの神社が見えた。

 正月お参りに行くところはまた別の場所だから、少し新鮮だ。

 

 おみくじを引きたがるゴールドシップを引っ張り、先にお参りを済ます。

 チームに入る娘たちが楽しく怪我せず走れますように……そしてもう1人入ってくれますように!

 

「………」

 

 ゴールドシップも目を閉じて真剣にお参りしている。何を願っているのやら。

 ま、ゴールドシップのことだからな。きっと自分のことよりみんなの健康のことをお願いしているのだろうけど。

 言動は奇怪だけど、気遣いできて優しい娘だからな。

 

「ふぅ……んあ? なんだよ、深海魚みてーな顔しやがって」

 

 温かい目で見ていたら随分と失礼なことを言われた!

 おみくじを引いてくると言って手を差し出してきたので、500円渡すと小走りで引きに行った。

 

 メンバーはどうしたものかなーと木の下で考えてると、視界の端にピコピコ動くものを見つけた。

 何だと思って目を向けると、1人のウマ娘がドドドドドと音を立てて走ってきた!

 

「おおおおーーーーっ!!!! その襟についたバッジ! まさしくトレーナーさん!」

 

 目がキラキラしたウマ娘が突撃してきて、俺の目の前でブレーキ。

 そのまま感極まってぎゅっと手を握り締めて体を揺らしている。

 な、なんだこの娘は……?

 

「シラオキ様が言っていました! この神社に現れる人物! それこそ待ち人であると!」

 

 むふーっと得意げに話し、ピンと指を立てる。

 ……とりあえず話を全部聞いてあげよう。腰に手を当て、続きをどうぞと促す。

 

「そして今日は大安吉日! つまり、スーパーラッキーデイ! これを信じずして何を信じればよいのでしょうか!」

 

 ニコニコ笑顔になって体を左右に揺らし、機嫌よく話を続ける。

 なんか怪しい勧誘みたい。

 

「わわっ!? 違いますよ! 決して怪しいウマ娘なんかじゃありませんから!」

 

 慌てて手を振るウマ娘だが、どうにも怪しい。

 トレセン学園の制服を着ているから学園の娘なんだろうが、何をしにここにいるのだろうか。

 

「目的ですか? もちろん、待ち人を探していたのです!」

 

 待ち人って探すものなのか……?

 

「運命の人を今か今かと待っていましたが、ようやく現れましたね!」

 

 運命の人……やはり宗教勧誘だろうか。

 一歩下がろうとしたら、また慌てて手を振り出す。

 

「ち、違いますって! 運命の人というのはトレーナーさんです!」

 

 トレーナー……? ウマ娘がトレーナーを探しているということは、スカウト待ちということだろうか。

 今は模擬レースの時期だ。俺もそこでゴールドシップと出会っている。その後はひどい目に合ったけど。

 

「さかのぼること数時間前……シラオキ様からのお告げに導かれてこの神社に来たのです。そして、おもむろにおみくじを引いてみました」

 

 まずそのシラオキ様というのが何なのかわからない。そしてそのお告げというのも怖い。

 俺が若干引いて見ているのを知らず、こぶしを握って目を閉じ、粛々と話を続ける。

 

「そしたらなんと! 『運命の人が来る』と書いているではありませんか! ほら、これです!」

 

 懐から取り出したおみくじを見せられる。

 末吉だ。

 

「き、吉兆はどうでもいいんです! 見てくださいここ! ここですってば!」

 

 ぐいぐい押し付けるように見せつけられる待人と書かれたところを見る。

 ……確かに、『運命の人来たれり』と書いてある。

 

「はい! このおみくじに書いてある通りです! そしてじーっと待っていたらトレーナーさんが来たのです! これはまさに運命ではありませんか!」

 

 人違いです。そう言ってゴールドシップのところへ行こうとすると、服にしがみつかれた。

 ええい、なんだこのウマ娘は! ゴールドシップとはまた違った方向で奇怪だぞ!

 

「待ってくださいぃいーーーっ!!! 人違いじゃないですぅーーっ!」

「おいおいトレーナー、何してんだ? マルゼンが持ってたしがみつく人形みてーなの連れて」

 

 ゴールドシップがおみくじを引いて帰ってきたようだ。

 よく分からないウマ娘が怪しい勧誘を! そう言うとしがみついているウマ娘は違うんですーっ! とまた叫び始める。

 

「なんだ、ぶつかり稽古か? ならアタシもやるぜ! おれぇい!」

「なんとっ!? うぎゃーー!」

 

 うわーっ! しがみついていたウマ娘ごと俺を吹き飛ばしてきた。

 うまくかばいながら受け身を取って立ち上がり、倒れている娘に手を差し出して起こしてあげる。

 

「うぅ、ありがとうございます……ってあれ? あなたはゴールドシップさんでは!?」

「あん? ゴルシちゃんのこと知ってんのか?」

「知ってるも何も、URAファイナルズを優勝した最強のウマ娘じゃないですかー! え! トレーナーさんがゴールドシップさんの!?」

 

 そうだよ、と頷くと、えぇーっ!? と驚く。

 ゴールドシップに注目が行き過ぎて、トレセン学園のウマ娘の中では俺の存在が薄いということは聞いていた。

 SNSだと何故か人気らしいけど。

 

「こ、これは生涯に1度のチャンス……! お願いします! 私のトレーナーになってください!」

「お、なんだ。勧誘してたのか?」

 

 なんというか、もうわけがわからないよ。

 状況が全く理解できないが、とにかくこの娘は担当してくれるトレーナーを探しているということらしい。

 チームに誰か入れたいという気持ちは山々だけど、この娘について何も知らないからなぁ。

 

 まず、キミのことを知りたいから、名前を教えてくれる?

 そう言うと、ハッとした顔をした。

 

「そういえば、言ってなかったですね……」

 

 困ったように頬をかき、改めてこちらに向き直る。

 

「申し遅れました! 私の名前は、マチカネフクキタルです!」

 

 ――こうして俺は、マチカネフクキタルと出会ったのだった。




 マチカネフクキタルってかわいいですよね。
 何がかわいいって感情が素直なのがいいです。
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