マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ 作:あぬびすびすこ
3度目の、ね。
「ゴルシちゃんがマジに面白いレースってやつを見せてやるからな! いくぜ、トレーナー!」
そう言って控室に入っていった、真っ赤な勝負服を着たゴールドシップさんとトレーナーさん。
中でバタバタ色々な音がします。しばらくして手を痛そうに擦るトレーナーさんが出てきて、観客席に戻ってゴール板前に陣取りました。
「GⅠレース! 楽しみデス!」
「うん、わたしも楽しみ!」
今日はタイキさんも来ています!
レイさんと一緒にウキウキしながら手すりにつかまっています。
私も、今日はどんなレースになるのか楽しみにしていたのですが……。
「うるせーぞおめー! 頭ン中で般若心境唱えろよな!」
『ああっと! ゴールドシップがゲート内で暴れています!』
『きゃーっ!?』
――ガタン!
『きゃーっ!』
『スタートしました! ゴールドシップ! 大きく出遅れていますっ!』
こんなことになるなんて~~~!?
周りのみんなが大絶叫していますよぉ~!
「やっべ!」
ああ、耳のいいウマ娘であることが今は恨めしいですぅ~~~!!!
昨日ゴールドシップさんに占ってほしいって言われて占った結果が凶でしたけどぉ~!
まさかこんなことになるなんて……シラオキ様、何故こんな試練をぉ~!
「ゴールドシップ!?」
「ホワッツ!?」
「隣の娘がうるさかったみたいだけど、そんなぁ!」
何バ身も後ろで慌てて走ってます……あぁ、もうダメですよぉ~。
みんなお悔やみムードです……。いつもなら1度目の正面で応援の声が出るのに、ざわめきしかないです。
トレーナーさんも苦笑いしてほっぺをかいてます。
……あれ? あんまり慌ててないですね。
「トレーナーさん、なんでそんなに普通なんですか? ゴールドシップさん、すっごい出遅れていますよ!」
特に気にもしない雰囲気で言いました。まあそんなもんじゃないかな。
トレーナーさんの言葉を聞いて、私も含めてみんなが唖然としてしまいます。
あのクールなスズカさんもぽかんと口を開けているぐらいです。すごい衝撃ですよ!
「トレーナーさん、あの……もうレースにならないぐらいの出遅れだと思うんですけど……」
「そうデス! すっごい出遅れデスヨ!」
出遅れはいつものことだしなー。
そう言って気にしない様子でいます。
と、トレーナーさん……もしや今の出遅れを見ておかしくなってしまったのでは……。
「うぅ……トレーナーさん、壊れてしまったのですね……。ならば、マルゼンさんから教わったこの斜め45度のチョップで!」
私が手刀をトレーナーさんに向けると、突然体をターフ側に乗り出して、大声を上げました!
――ゴールドシップ! プランGだ!
ターフを見ると、丁度バ群が通り過ぎるところでした。その後方で、ポツンとゴールドシップさんがターフの中央を走っています。すごい外にいますね……。
チラッとこっちを見たかと思うと、ニヤリと笑って舌なめずりをしました。
……え? ここからやる気なんですか!?
――やっちまえー!
トレーナーさんの声が響いたその時、ゴールドシップさんからとんでもない爆発音が聞こえてきました!
「レースと爆発は同じだよなァ!?」
ドォン! ドォン! ととんでもない音を出しながらコーナーに入っていきます!
あ、あれは! ゴールドシップさんのレースの映像で何度も見ました!
「トレーナーさん! ゴールドシップが凄いパワーで走ってマス!」
「ええ……映像で何度も見たけれど、迫力が違う……」
「す、すごい……」
最後方にいたはずなのに、コーナーを回り終わって向こう正面に入ったところで、もうバ群後方につけてます!
あ、あんな最初からスパートをかけるんですか!? トレーナーさんを見ると、そうだよ? と当たり前じゃないかって顔でこっちを見ました。
どれだけ非常識な走りなんですか!
『ゴールドシップがじわじわと上がってきました! あんなにも出遅れたのに、既に中団の後ろにつけています!』
『全体のペースも上がってきましたね! ゴールドシップの得意なレースになっていますよ!』
向こう正面なのに、ここまでドン! ドン! と走る音が響いてきます。
あんなプレッシャーをかけられたら、勝手にペースが上がっちゃいますよ。併走トレーニングで普通に走ってもすっごい圧なんですから!
「トレーナーさん、もしかして……」
スズカさんがトレーナーさんを見ると、うん、と頷いた。
――出遅れは想定外だけど、第1コーナーからスパートっていうのは作戦だよ。
驚いて口からおみくじが出るかと思いました。
確かにスタミナがすごいのは知ってます。トレーニングしていて、いつも息を切らさないですから。
だからって、第1コーナーなんて……最初からずっとスパートしてるようなものじゃないですか!
「すごい作戦……トレーナーさんは、ゴルシさんができると思って決めたんですか?」
できるできないじゃないんだ。やるんだよ、ゴールドシップは。
絶対の自信をもってニッと笑い、コーナーを走ってくるゴールドシップさんを見つめています。
これが、人バ一体ってことなんでしょうか……私は関係ないのに、ほぅと息が漏れてしまいます。
「とっても素敵デス!」
「ええ。そう言ってもらえるように、走らないと」
「かっこいいなぁ……」
みんなも同じみたいで、目がキラキラしてます。
これが先ほど言っていた、プランGなのですね……。すごい作戦です!
『さあ、最終コーナー回って最終直線に入ります! ここから誰が出てくるのでしょうか!』
『中団から突っこんできたのはやはりこのウマ娘! ゴールドシップ!』
ゴールドシップさんが最終直線で一気に走りこんできました!
あんなに出遅れたのに! 運勢だって凶だったのに! そんなの関係ないとばかりの勢いです!
「っぱゴールドシップよォ! いけェーーー!!!」
「きゃーーーっ!!! ゴールドシップーーッ!!!」
「爆発だー! つっこめー!!!」
観客の皆さんもヒートアップしてきました!
もちろん、私たちも体がどんどん熱くなってきて、おみくじがこみあげてきます!
「ゴールドシップ! ゴーゴーッ!」
「頑張って! ゴールドシップー!」
「ゴルシさーん! いってー!」
「ゴールドシップさ~ん! 1着は大吉ですよぉ~~~!」
――見せつけてやれー! ゴールドシップーッ!
声が聞こえたのでしょうか。ゴールドシップさんは目を見開いて、歯をむき出しにして笑いました。
そして舌なめずりを一度すると、今まで以上のパワーで踏みこみました!
「これがゴールドシップ劇場じゃーーーーいッ!!!」
ドゴォン! ドゴォン! とすごい音を立てながら、一気に坂を駆け上げります!
す、すごいです……みんなブレーキがかかっているのに、ゴールドシップさんだけ加速しています!!!
『ゴールドシップが一気に上がってきた! 坂を駆けあがってごぼう抜きだぁー!』
『残り100mです! 先頭はゴールドシップ! もう誰にも止められない! ゴールドシップが一気にマクってゴールインッ! ゴールドシップ、前人未到の3連覇ッ! 黄金の不沈艦! 航路はまだ続いてゆきますッ!』
うわぁーーーーーー!!!! と歓声が爆発しました!
私たちも飛び上がって、みんなで喜びます!
トレーナーさんはグッとガッツポーズしてますね……ちょっと控えめです。
たくさん喜んで動き回っていたら、ゴールドシップさんがこちらを見ました。
トレーナーさんがグッと親指を立てて見せると、ゴールドシップさんはニッと笑ってこぶしを突き上げます。
その姿を見て、また歓声が爆発するのでした。
「おれぇい!!!」
ぐわあーーっ! と叫びながらトレーナーさんが吹き飛んでいきます!
「ゴールドシップ!?」
「オウ! ビューティフルなドロップキックデス! エルにも見せたいぐらいデス」
器用に受け身を取って、何事もなかったかのように立ち上がるトレーナーさん。
あっ、ウマッターで見たことあります! 「ウマ娘のドロップキックを受け流す最強のトレーナー」ってトレーナーさんだったんですね!
「だ、大丈夫? トレーナーさん」
「平気だろ。そんなやわじゃねーからな! だろ?」
もちろん、と言ってゴールドシップさんと拳をぶつけ合ってます。
すごい信頼関係です……私も、運命の人であるトレーナーさんと、あのぐらい信頼し合えるように頑張らないとですね!
みんなもそう思っているのか、グッと拳を握って気合を入れていました。
そうこうしている内にインタビューの準備ができました。でも、ゴールドシップさんが台に乗るのを嫌がってます。
トレーナーさんがタックルするように押し込んでなんとか乗せていますけど……ゴールドシップさんもトレーナーさんも、やりとりを楽しんでませんか?
「宝塚記念、前人未到の3連覇です! おめでとうございます!」
「おう! 世界線の違いを見せつけてやったぜ! 平行世界のゴルシちゃん、見てたか?」
危ないレースでしたが、なんとか勝てましたとのことです。
トレーナーさんが通訳してます……あ、これもウマッターで見ましたね!
一昨年ぐらいから話題になってたトレーナーさんがまさか運命の人だったとは……。
「大きく出遅れてしまっていましたが、何かあったのでしょうか」
「隣のやつがブツブツすげーうるさかったんだよな。がんばるがんばるってよ」
やっぱり隣の娘が原因だったみたいです。
静かに待ったほうが自分にもいいんですが、気合を入れたり集中するためにちょっとつぶやくのはレースだとままあることだと聞きます。
ゴールドシップさんはそれがすごいイヤみたいです。
「ま、レースはアツかったしおもしろかったからな。おめーらは気にすんなよ!」
集中するために呟いたりというのはありますから、問題だと捉えないで下さいと言っています。
……トレーナーさんの通訳がないと、別の方向に捉えてしまいそうですね。
「トレーナーさんはチームを結成したとお聞きしましたが、いかがでしょうか?」
全員メイクデビューで1着ですし、強い走りを見せてくれています。今後のレースで活躍すると自信を持って言えますよ。うちのメンバーは、強いです。
トレーナーさんの回答を聞いて、少しほっぺたが熱くなります。にへっとしてしまいますね~。
チラッと他の方を見てみたら、タイキさんもニコニコしていますし、スズカさんも少し嬉しそうです。レイさんはほっぺたに手を当てて目をキラキラさせてます。
トレーナーさんは、私たちを強いと言ってくださいました。
フクキタルの名前に恥じないように、トレーナーさんに福をあげたい! そんな思いを抱くのでした。
「トレーナーさんがプランGと仰っていたと聞きましたが、今日の作戦の名前なのでしょうか?」
「プランG? んなもんねーぞ」
その場にいた全員がずっこけました。
というわけで、この小説のゴールドシップには3連覇していただきました。
何故こうしたかは、活動報告に詳しく書きます。ちょっと長くなっちゃうので。
興味がある方は見てくださいね。
トレーナーくんのヤバさと、2人の人バ一体となっている姿を見て、がんばりたいと思うメンバーたち。
どのように成長していくのか、お楽しみに。
【追記】
活動報告
→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=263089&uid=303554