マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ 作:あぬびすびすこ
現実だと獲得賞金とか抽選とか、優先出走権とかありますけど。
やっぱりファン数なんでしょうかね。
さて、宝塚記念が終わったということで夏合宿の時期になるわけだが。
今年はゴールドシップが凱旋門賞に向けて体調を整えなければならないため、ゴールドシップは参加しない。
そしてデビューしたばかりのジュニア級のメンバーは合宿に参加できない。レースを始めてすぐのウマ娘には、合宿所でのキツいトレーニングはケガの可能性が高いからだ。
正直フォーマルハウトのメンバーは、ゴールドシップ用のトレーニング以外に、筋肉や関節をしっかり鍛えてもらっているから負荷がキツくてもいけそうだけど。
ケガをしないようにと思って基礎のトレーニングをかなり重視しているが、みんな文句や弱音を吐かずにやってくれている。
「トレぴっぴよー、飽きてきたぜ」
ゴールドシップを除いて。
学園内のトレーニングルームにて、懸垂用のバーに足の甲を引っかけて、逆さまになりながらバーベルスクワットをしている。とんでもない体幹だなぁ。
バランスボールトランプタワーに切り替えてもいいよと話すと、うっし! と気合を入れて飛び降り、バーベルを片手で振り回しながらバランスボールを取りに行った。
「すごいパワーね……あ、レイ。もう少しだけ押してもらえる?」
「このぐらい?」
規格外のフィジカルを見せるゴールドシップを横目に、スズカはレイと協力してストレッチを行っていた。
スズカは速いスピードで走り続けるからな、脚は念入りに柔らかく、強くしてもらわないと。特別に毎日足首トレーニングもしてもらっているから、変に踏みこまなければケガもしづらいはず。
「レッツ、サイクリング!」
「ふにぃ~~~っ!!!」
タイキとフクキタルは2人でフィットネスバイクを使って脚を鍛えてもらっている。
とにかくタイキは足が本調子ではないから、調整しながらトレーニングをしなければならない。
フクキタルは単純に末脚の強化だ。力強くターフを踏めれば、その分加速力も増す。成長がわかりやすいのもプラス……だと思う。
正直に言うと、トレーニング方法が正解かはわからない。
何故かと言うと、ゴールドシップにトレーニングしてもらっていた時は、成果が出てるのか出てないのかあんまりわからなかったから。
だって最初から明らかに身体能力がおかしかった。クラシック級でシニア級に勝てる上、長距離レースで最後方からロングスパートをかけてもスタミナが切れない。
そんなフィジカルを基準にしてトレーニングをやってもらっているから、もしかしたらかなり辛いかも。
そう思いながら、みんなの様子を見ている。今のところは不平不満はない、と思う。
うんうん悩んでいると、急に後ろから耳を抑えられた。
「だーれだ」
何してるんだゴールドシップ?
声をかけて振り向くと、口をとがらせていた。
「なんだよ、つまんねえなー。そこは火星人とか言えよな!」
久々に理不尽だ! というか普通は目を隠さないと。
「それじゃあ普通だろ。爆発でもしねーと面白くないぜ」
そこは普通でよくない?
そう言うと、またぶーぶー言い出した。
「細かいことはいいんだよ! ほら、トレーナーもやるんだからな!」
そう言ってゴールドシップのバランスボールトランプタワーに付き合わされた。
なんというか、ちょっと気を遣わせてしまったようだ。
ありがとうと話すと、苦しゅうないと答えられた。どこかの将軍なのだろうか。
今日はフォーマルハウトの部室にて次の出走レースについて話し合いだ。
ホワイトボードにレース名と距離を書いて、どれがいいのかを決めていく。
距離適性のあるレースで走るのがいいだろうから、ある程度は絞ってあるけれども。
フクキタルは中距離、スズカはマイルから中距離、タイキは短距離からマイル、ソーラーレイはダートのマイルまで。
フクキタルとソーラーレイはスタミナを鍛えれば距離が伸びても問題なさそうだ。
スズカとタイキはスタミナを鍛えても距離は伸ばさないほうがいいだろう。明らかに短い距離がいい走り方だし。
というわけで、現時点でよさそうなレースをいくつかあげてみた。
「ワオ! シンザン記念! 重賞デスネ!」
タイキシャトルは現時点でマイラーとして非常に優秀だ。なので、年明けのGⅢ、シンザン記念を勧める。
重賞を取れたなら、その次にGⅠレースのNHKマイルカップに挑戦するという算段。
そのためのステップレースにしようということだ。タイキもやりマース! と気合十分だ。
「わたしは、カトレア賞です」
ソーラーレイはOPのカトレア賞。こちらはダートの1,600mだ。
デビュー戦の1,800mとは少し違うだろうが、後半一気に加速していったあの脚なら問題ないだろう。
「あの……わがままじゃなければ、これがいいです」
スズカはGⅠレースの朝日杯フューチュリティステークスを選んだ。
デビューは2,000mだったが、スズカはマイルでも大逃げでそのまま行けるだろう。
因みにタイキが朝日杯に出ない理由は、スズカと被るからではなくタイキの脚の調子がまだまだ整わないから。
メイクデビューでもなんとなくモヤモヤしていたらしい。なので、万全を期して年明けのレースを目標にしたのだ。
そして最後。ずっと悩み続けているフクキタルだが。
とりあえずあげているのが、スプリングステークス、毎日杯、そして弥生賞。
フクキタルはクラシック路線に向かうから、ステップレースとしてこの3つを提案してみた。
「うぐぐ……トレーナーさん! なんで全部重賞なんですか~!」
うぎゃあ~! と言いながら頭を抱えるフクキタル。
毎日杯はGⅢ、それ以外の2つはGⅡだ。特に弥生賞とスプリングステークスは皐月賞へのトライアルレース。勝てば有力バとして出走できるのだ。
だからこそ、是非にと思ってあげてみたのだが。
「私なんかじゃ絶対勝てないですよぉ~! それに、弥生賞なんてスズカさんも出る予定じゃないですか!」
「ええ。朝日杯の後、もう1つレースを走りたいし」
「無理ですよ~! 私だけの力じゃ勝てませんよぉ~!」
あびゃあぁ~と泣き出すフクキタルに、それじゃあ力を借りればいいと肩を叩く。
「え……? 力を借りる?」
不思議そうに俺を見るフクキタル。
ゴールドシップに声をかけて、手を差し出す。
「ふぉふぉふぉ。ゴルゴル星の神からのお告げじゃよ」
見えないひげを撫でながら手の平に乗せてきたのは、ウマ娘の人形が乗せられた、穴が開いている樽。
そして3色のプラスチックナイフたち。これをフクキタルの目の前に置く。
「あの……トレーナーさん?」
「オウ! 見たことありマス! キキイッパツというやつデスネ?」
「ウマ娘危機一髪だね……え、もしかして、フクちゃんこれでレース決めるの?」
みんなが不思議そうにしながらこちらを見てくる。
フクキタルの信じる占いや神様に、俺も頼ってみようと思って。
そう言って、フクキタルにナイフを手渡す。
赤はスプリングステークス、青は毎日杯、黄色は弥生賞だ。刺して飛び出した時に使ったナイフの色で出るレースを決めよう。
そう話すと、少し迷った様子だったがナイフを受け取った。
「トレーナーさんが私に与えてくれた占いチャンス……ここでやらねば、マチカネフクキタラズです!」
「どちらにしても、福は来ないと思うけど……」
「いきますよぉ~! ハッピーカムカム! 福よこ~~~い!」
勢いよくナイフを突き刺すフクキタル。
いくつものナイフが樽に刺さっていくが、一向に飛び出さない。
謎の緊迫感に包まれているこの部室。フクキタルは一筋の汗を垂らし、手で拭う。
「フクちゃん……!」
「ファイト! フクキタル!」
「フク! そこだ! 刺せ!」
「みなさん……いきますよぉ~!」
「そういう催しじゃないと思うんだけど……」
スズカ以外がフクキタルを応援し、それに応えるようにナイフを刺しこむ。
そして残り少なくなってきたところで、フクキタルがひと息つく。
「ふぅ……残りわずかですね。これで決めますよ! シラオキ様、私に幸運を!」
ズムッとナイフを刺しこんだ瞬間、ウマ娘が樽から勢いよく飛び出した!
そのままテーブルに落ちてゴン! と音を立てながらゴロゴロと転がっていく。
「や、やりました~!」
「コングラチュレーション! フクキタル!」
「やったね、フクちゃん!」
わいわい祝われているフクキタル。
そんな中、スズカは樽を手に取り、そしてフクキタルを見た。
「フクキタル、よろしくね」
「はい! よろしくお願いしま……はい?」
ほら、とスズカに見せられたのは、最後に刺しこまれたナイフ。
その色は黄色。つまり……。
「弥生賞、一緒に走りましょう」
「あ、あぁ……!」
段々と顔面蒼白になっていき、最後には頭を抱えて大きくのけぞり、叫びを上げた。
「ぎゃぼ~~~~ん!!!」
こうしてフクキタルは弥生賞に出走することになったのだった。
というわけで、フクキタルは弥生賞に出走します。
スズカvsフクキタルの1戦目ですね。
ゴールドシップ以外はアプリ版に沿って出走してもらいます。
なので、スズカにはファン数5,000人の目標達成のために、とりあえず朝日杯を走ってきてもらいます。
ホープフルステークスでもいいんですけど、弥生賞までの休養を考えて朝日杯です。ケガ無く楽しくがモットーのチームですからね。