マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 本作のゴールドシップは前作主人公なので、アプリ版メインストーリーより活躍してます。代わりに前作で大体完結しちゃったので、後はもうサポート要員になってますね、ハイ。


13、ゴールドシップの走り

 じゃあ今日もトレーニング始めよう。

 そう言ったトレーナーさんのお顔には、蹄鉄の跡がくっきりとついてました。

 とってもげっそりとしていて、いつも通りの楽しそうな雰囲気もありません。

 

 これにはとっても悲しい理由があるのです。

 なんと、トレーナーさんは凱旋門賞に行けないのです!

 ゴールドシップさんだけフランスに行くことになってしまいました。

 

 ゴールドシップさんと仲のいいウマ娘さん、それにとっても強いウマ娘さんとの3人が凱旋門賞に出走する予定になってました。

 しかし、URAからトレーナーさんはチームを発足したばかりだから、私たちのトレーニングを優先したほうがいいよと言われたようなのです。

 海外遠征はウマ娘だけで行くことが多いと聞きますし、現地にいる海外遠征中のトレーナーさんが見るのが普通みたいですね。

 ただ、それを聞いたゴールドシップさんはトレーナーさんが来ないなら行かないと空港で暴れてしまって。

 

『なんでこねーんだよー。まったくよー。トリコロールにうらみでもあんのかよ』

 ごめんな、ゴールドシップ。俺も行きたいけど……。

『うるせぇ! 謝ってんじゃねー!』

 うげぇーーッ!

 

 凄まじいパワーのドロップキックを受けて吹き飛んでいました。宝塚記念の時に見た楽し気なものではなく、かなり痛そうでした。

 機嫌が悪そうに目を細めてむいっと口をとがらせて腕を組んでいましたけど、ちょっと寂しそうでした。目線はずっとトレーナーさんを向いてましたから。

 

 結局暴れるゴールドシップさんをトレーナーさんがなんとか説得して押し込んで、フランスに行ったわけなんですけど。

 トレーナーさんはかなりどんよりしてます。朝の運勢で最下位を引いた日の私みたいです。

 

「トレーナーさん……大丈夫ですか?」

 

 スズカさんが憔悴しているトレーナーさんを心配そうに見ています。

 大丈夫だよ、と言いますが、全然大丈夫そうには見えません。

 それもそうです、トレーナーさんとゴールドシップさんは人バ一体なんですから。

 

 トレーナーさんは、話してくれました。

 自分が一緒に行けないのは悔しいけど、現地のターフを知ってるトレーナーが調整したほうがいいからね。今までもそうやってきているわけだし。

 ただ、ゴールドシップが凱旋門賞を楽しく走れるのか、それがすごい気がかりなんだ、と。

 

「そんなにぐったりしちゃうくらい、心配なんですね」

 

 私がそう言うと、疲れてるのは別の理由なんだと言われました。

 えっ、とみんなで驚いていると、トレーナーさんがふぅと息を吐きます。

 ――寝不足なんだ……ゴールドシップがずっと電話かけてきて……。

 

「あっ。ゴルシちゃん、時差とか気にしないで電話してるんだ」

 

 そうなんだ、とトレーナーさんは頷きました。

 どうやら疲れているのは心配しているからじゃなくて、ゴールドシップさんが夜中に電話しているからのようです。

 聞くところによると、夜中の2時ぐらいがフランスの夜7時だそうで、夕ご飯食べ終わってから町を歩き回ってずっと電話しているらしいのです。

 フランスの街並みやその場で起きていることをテレビ電話で見せてくるから、興味深いのもあってずっと話しちゃうんだ、と目を擦っています。

 

 ……ゴールドシップさん、寂しいのでしょうか。

 そう思っていたら、他のみなさんも同じことを思っていたみたいで、おめめをパチクリしていました。

 

「ゴールドシップはサミシガリなんデスネ! ワタシといっしょデス!」

「あはは……でも、ゴルシちゃんらしいかな」

 

 ゴールドシップさんってトレーナーさんとの時間を大切にしていましたからね。

 もちろん、私もトレーナーさんと話したり、トレーニングしたりする時間は大切ですよ!

 

「トレーナーさんが見てくれているわけですからね! がんばりますよ~!」

「そうね。トレーナーさん、よろしくお願いします」

 

 みんなでぐっと気合を入れると、トレーニングが始まりました。

 今日はぱかプチダッシュをやるみたいです。ゴールドシップさんと違って、小さいぱかプチを使います。

 大きいものはまだまだ実力不足で、コーナーで減速している時にターフにこすっちゃいますからね。

 

「今日のラッキナンバーは56です! いきますよぉ~!」

「フクキタル、56周はしないわよ……?」

「あはは……トレーナーさんにもやめなさいって言われてますから……。自分のペースで、5.6周! いってきます!」

「10分の1……成長した、のかしら」

 

 スズカさんのつぶやきを背に、走り出します!

 ぱかプチダッシュは直線なら落とさないでいけますね! これもトレーナーさんのトレーニングの成果です!

 問題はコーナーです。スピードを落とさないと回れないんですが、落としてしまうとぱかプチも落ちちゃいます。

 ゴールドシップさんは減速しないでものすごい綺麗に回ってましたけど、私はあんなに足腰が丈夫ではないです。

 

 でも、ゴールドシップさんにコツを教えてもらいましたからね!

 

「ゴールドシップさん直伝のコーナーワークですよぉ~~!」

 

 体を傾けても、頭だけは必ずまっすぐに、傾けない!

 これがゴールドシップさんの教えです!

 

「開運ダ~~~~ッシュ!!!!」

 

 外に膨らまず、スピードも落ちずに綺麗に回れました!

 するとそこで後ろから足音が聞こえました。

 

「っ!」

 

 スズカさんです。

 ゴールドシップさんから教えてもらった通りに走っています。グンッと加速して、私を追い抜かしました。

 流石スズカさん……もうコーナーリングのコツを身につけたのですね!

 

「でも、負けませんよぉ~!」

 

 私だってちゃんと教えてもらったんですからね!

 ゴールドシップさんとメンコで勝負した時のことを思い出しながら、私はスズカさんを追いかけるのでした。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 凱旋門賞当日。

 部室にあるテレビをつけて、ゴールドシップの走りを見守る。

 

「トレーナーさん! 始まりますよ!」

 

 フクキタルに手を掴まれて揺すられた。

 俺の担当ウマ娘が海外レースか……なんか実感が無いな。

 

「ゴールドシップ、調子はどうでショウ」

「昨日電話した時は元気そうだったけどね」

 

 昨日のトレーニング後、フォーマルハウト全員でテレビ電話を繋げて、ゴールドシップにエールを送ってある。

 3日目の佃煮ぐれーだなと言っていたから、そこそこ調子はいいはず。

 ただ、とても気になる点がある。

 

「トレーナーさん?」

 

 不安そうに見ていたのがわかったのか、スズカが首を傾げていた。

 走る気があるかどうかが気になる。そう言うと、みんな不思議そうにする。

 

「ゴールドシップさん、レースに乗り気だったじゃないですか」

「そうデス! 楽しそうデシタ!」

 

 フクキタルとタイキはそう言うが、うーんと唸ってしまう。

 ゴールドシップはレースへのフラストレーションを溜めなければ、レース当日にやる気がなくなってしまう。

 今までは楽しく走ってもらえるようにトレーニングを考えたり遊びに行ったりしてきたが、現地のトレーナーはやれてないだろう。電話で聞く分には、手が付けられないと言っていたし。

 

 やりたいことしかやらない稀代のクセウマ娘だ。レース当日までまともに何もできていないとなると、もうどうなるかわかったものではない。

 ……入場を見て大丈夫かどうか判断しよう。

 

「あ、みなさんターフに出てきましたよ!」

「すごいボディデス! みんなパワフルデスネ!」

 

 出走するウマ娘たちが順番にターフへと入ってきた。

 そんな中、1人のウマ娘が観客たちの前に姿を現した。

 

「……何しているのかしら?」

「ファンサービスかなぁ……ゴルシちゃんだねぇ」

 

 観客たちを見ながらくるくる回ったりムーンウォークをしたりと好き勝手し始めた。

 同じく日本から参加しているウマ娘たちは、ゴールドシップを完全に無視している。同じ国出身だと気づかれたくない様子だ。

 

「いや~、ゴールドシップさんですね~」

「ファイト! ゴールドシップ!」

 

 いや、これはヤバい。

 そう言うと、えっとみんながこっちを向いた。

 

「ヤバいってどういうことです? ゴルシちゃん、調子よさそうですけど」

 

 レースを走りたいっていう気分じゃないぞあれは。

 フランス観光に来た旅行者の顔だ。

 げんなりした様子でそう言うと、みんな驚いてテレビにかじりついた。

 

「……わ、わからないです」

「ムムム……ゴールドシップ、そんなにやる気ないデスカ?」

 

 見ればわかるよ。頭をかきながら椅子に座る。

 今日はヤケ酒かなぁー。

 

 しばらくしてレースが始まった。

 相変わらずの出遅れで、内枠から最後方へ。まあ、これはいつも通りだ。

 実況解説は唸ってるけど。

 

 そのまま隊列が変わらず最終コーナーに差し掛かった。

 バ群が横並びになり、ここからだ、とウマ娘たちがスパートをかけ始める。

 と、そこでゴールドシップの前方にいたウマ娘がブン! と大きく腕を振った。

 

「危ない!」

「あわわ……大丈夫ですか!?」

 

 ゴールドシップの顔に当たりかけたが、なんとか避ける。

 いつもならこの辺でニヤリと笑って圧をかけるわけだが……なんだこいつとチラ見しただけで、全然上がってこない。

 

「ゴールドシップ……?」

「スパートかけないねぇ……」

 

 そのままスピードもあまり上がらず、残り100mぐらいで腕を振り上げたウマ娘をぶち抜いてゴールイン。

 結果は14着。うん、やっぱりフラストレーション溜まってなかったな。

 

「あぁ……」

「オウ……」

 

 かなりずぼらな走りだったせいか、みんな唖然としている。

 よく覚えておいてほしい。これが、楽しく走れなかったウマ娘だよ。

 そう言うと、神妙に頷くフォーマルハウトの面々だった。




 凱旋門賞は史実通りでした。
 アニメでもトレーナーは海外に行かないで、トレセン学園で指導していたのでそのようにしました。
 やべーやつのタッグは離してはいけない。

 フナボシメンバーは、今のところ曲線のソムリエのコツは覚えたけどスキルポイントが足らないです。なのでコーナー加速だけとってる感じですね。
 コーナーで減速しないスズカはアカン。
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