マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ 作:あぬびすびすこ
そういうものだから!
アニメのウマ娘でも、エルとかスズカとか、チーム所属の娘が海外遠征行ってもトレーナーは行ってなかったので、それに合わせてみました。
活躍させすぎると主役のフクキタルがかすみます故……すまぬ……。
「よう、トレーナー。海行こうぜ海!」
フランスから帰ってきたゴールドシップの第一声がこれだった。
来ていたトレーナーや一緒に帰ってきたウマ娘たちは、何とも言えない顔でこちらを見ている。
それもそうだろう。トゥインクル・シリーズであれだけ活躍したウマ娘が、凱旋門賞であんなレースをして帰ってきての一言目がアレでは誰だってそうなる。
メディア関係者も一緒に出待ちしていたが、唖然としてインタビューもできていなかった。
まあ追及されると面倒だろうし、さっさと連れて帰ろう。
手荷物をもらって、自然な流れで出口に歩いていく。
後ろからドタバタと慌てた足音が聞こえてくるが、ゴールドシップが振り向いて一言。
「おぉ! ウィンブルドン制覇したウマ娘じゃねーか!」
驚いたように遠くを眺めるゴールドシップを見た取材陣が、えっと声を漏らして後ろを見た。
いるわけないんだけどね。
「うぇひひ、さっさと行こうぜ」
いたずらが成功してニヤつくゴールドシップと共に、そそくさと空港を後にした。
「おかえりなさい、ゴールドシップさん!」
「おかえり、ゴールドシップ」
「ハイ! ゴールドシップ!」
車に乗り込むと、後部座席で待っていたフクキタルたちが出迎えた。ソーラーレイはもうすぐレースがあるからトレセン学園でトレーニング中だ。
ゴールドシップは苦しゅうないぞ、と言いながらお土産が入った鞄を3人に渡す。
わいわい盛り上がっている間にエンジンをかけて、見つからない内に発進する。
トレセン学園に戻ったら、どうせやまほど記者の人たちがいるんだろうからな。帰国後ぐらいはゆっくりしてもらいたい。
運転してからしばらくすると、騒ぎすぎたのか後ろの3人が静かになる。眠ってしまったらしい。
空港に来るまでフクキタルとタイキがずっとはしゃいでいたからな。挟まれていたスズカはずっと困っていた。
思わず苦笑していると、ゴールドシップがチラッとこっちを見る。
「レース、つまんなかったわ」
ぽつりと一言。
見ててわかった。そう言うと、腕を組んでそっぽを向いた。
「次は来いよな」
飛行機にしがみついてでも行くよ。
肩をポンと叩くと、手を掴まれた。
何だろうと思っていたら、どこからともなくとりだしたペンで左手にラクガキをされてしまった。
「ま、これで許してやるよ。フナボシのヌシたるゴルシちゃんのマントルを突き抜けるぐれーの懐に感謝しろよな!」
ははーと頭を下げると、ふぉふぉふぉと機嫌よく笑う。
「船」と書かれた左手を見ながら、学園へと帰るのだった。
◆ ◆ ◆
相変わらずの暴走インタビューで、業界とトゥインクル・シリーズファンにいつも通り激震を与えてからしばらくして。
スズカが年末にGⅠレースに出るということで、勝負服の申請をしていた。
どうせみんな年度明けにGⅠレースへ挑戦する計画だから、いっぺんに出してしまえということで全員分出したわけだが。
ゴールドシップが帰国して数日後、みんなの勝負服が届いた。
ということで、着用してメンバーにお披露目することに。
「イメージ通りデス! 明るく楽しく狙い撃ちマース!」
カウガール風の意匠が爽やかなタイキ。
嬉しそうにくるくる回りながら、腰のホルスターからリボルバーを取り出してくるくる回す。
なんでそんなものつけてるんだと思うところはあるが、ライスシャワーも短剣を腰に忍ばせていたからそういうものなのだろう。
試しに撃ったら本当にパン! と破裂音がして、みんな飛び上がって驚いていた。
「動きやすい! いっぱい走れそう!」
ソーラーレイは水色のスポーティな見た目の勝負服。
フォーマルハウトには入らなかったが仲のいいコルネットリズム、トモエナゲと同じメーカーで作ってもらったのだとか。
嬉しそうに跳びはねて、勝負服の感覚を確認している。
「うん、いい感じ」
スズカはスッキリとした制服のような勝負服だ。
彼女らしい静かで清楚な印象。なんとなく、そのまま走り去ってしまいそうな感じに見える。
「幸運に満ち溢れています! ラッキーパワー全開ですよぉ~!」
そしてフクキタル。肩が少し出ているセーラー服……のように見えるが、体中にフクキタルらしいグッズがたんまりと。
まず左腕に数珠のブレスレットを2つ。腰には「大吉」「必勝」と書かれた絵馬。背中の襟には陰陽マークに八卦。
何より一番目立つのは、背中に背負っているでっかい招き猫! 鞄紐にはお守りもくっついているが……招き猫のバッグなのだろうか。
「ふっふっふ~。見てくださいトレーナーさん! にゃーさんです!見覚えありませんか?」
嬉しそうに背中を見せて体をゆらゆらと動かすフクキタル。バッグの招き猫の名前はにゃーさんと言うらしい。
……確かにその招き猫、なんとなく見覚えがある。
「そうです! トレーナーさんと一緒に取った最強の開運グッズです!」
あぁ、ゲームセンターで取ったぬいぐるみ!
ぬいぐるみだと思っていたが、どうやら背負うタイプのバッグだったらしい。
「部屋に戻ったらファスナーがついているのに気付いて……いやぁ、私もぬいぐるみだと思っていたんですけどね~」
バッグとして使えるように、紐が中に入ってたのですと楽しそうに語る。
ニコニコしながらバッグを降ろすと、ファスナーを下ろして中身を取り出した。
……でっかい水晶玉だ!
「お、フク! 随分いい水晶玉じゃねーか!」
「わかりますか、ゴールドシップさん! この水晶玉はですね、それはもうすばらしいもので……」
水晶玉の周りを手でふにゃふにゃと撫でまわすように動かし、得意げに話しているフクキタル。
あれ、走る時にバッグに入れないよな……? いや、フクキタルならやりかねん。
それ入れて走らないでねと言うと、なんでそんなこと言うんですか~! と詰め寄られた。
「霊験あらたかな、とってもご利益のあるお寺から譲り受けたものなんですよ! これを持たないなんてとんでもないです!」
「フクキタル、パワーストーンと勘違いしてないかしら……」
「パワーがあるならいいんです~! だって、スズカさんだって幸運があるほうがいいと思いませんか!」
流石は占いアプリで凶が出たら怒りながら大吉が出るまで連打するパワー型だ。
ふんぎゃろー! とスズカに詰め寄っていくフクキタル。
なんというか、運でなんとか走り抜きたいという気持ちはあんまり変わっていないみたいだ。
フクキタルが水晶玉をバッグに入れていても走れると豪語したため、じゃあやってみようと言うことで練習場に来た。ついでにみんなの勝負服がきちんと体に合っているかも確認するために。
それぞれ1,600mと2,000m、どちらかのタイムを計って確認してみようとストップウォッチを片手にみんなで走ってみたわけだが。
「イエース! 調子は絶好調デス!」
「いくらでも走れそう……もう少しだけ走ってもいいですか?」
「うん、いい感じかなぁ」
タイキやスズカは、いつも以上に好タイムを叩き出した。やはり走りやすいらしく、それでいてやる気や気持ちが前向きになるようだ。
そして問題のフクキタルだが。
「どうですかトレーナーさん! これが開運パワーですっ!」
みんなと同じように好タイムだ。さすが勝負服、不思議な力がみなぎるようだ。
でも、そのバッグはないほうが走りやすくないかなぁ……そう思っていると、フクキタルが俺の袖をぎゅっと握った。
「いやですよぉ~! このバッグだけは、絶対にいります!」
涙目で縋りつかれてしまった。
フクキタルが走りやすいなら別にいいんだよ。ウマ娘じゃない俺からすると、スズカみたいにスッキリしてるほうがいいのかなって見えるからさ。
そう言うと、このバッグを背負っている方が力が出ます! とキッパリ言われた。
「あの、トレーナーさん。トレーナーさんから見ると、ちょっと走りにくそうに見えるかもしれません。でも、私たちはとてもよく走れるんです」
「イエス! トレーナーさん、ワタシたちを信じてくだサイ!」
スズカとタイキにそう言われる。
確かに、ホープフルステークスの出走前、ゴールドシップに腰のバッグ走りにくくない? って聞いたらあったほうが気分がいいって言ってたし。
気持ちよく走れるなら、あったほうがいいな、うん。
じゃあ、招き猫で幸福呼び込もうか。そう言うと、フクキタルは目を輝かせた。
「はい! トレーナーさんの幸運パワーを身につけた私は、つねに大大吉ですよ~!」
グッと拳を突き上げたフクキタルを見て、ウマ娘って不思議な力が働くんだなーと思うのであった。
フクキタルの勝負服についてのお話でした。
ゲーセンでとったぬいぐるみは「にゃーさん」だった!
ちょっと無理やりでしたかね?