マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ 作:あぬびすびすこ
ここから一気にレースが盛りだくさんになってきます。
クラシック級のメインレースが目白押しですからね!
ゴールドシップが戻ってきてから、フォーマルハウトのメンバーは次々にレースへと参加していった。
まずは11月のカトレア賞。ソーラーレイが出走した。
『全員好スタートです。注目の1番人気ソーラーレイ、後ろからのレースになるようです』
『コーナー回りまして、外からソーラーレイが上がってきている! 綺麗なコーナリングから早めのスパートです!』
『最終直線でソーラーレイ! 一気に上がっていきます! 先団をごぼう抜きだ!』
『そのまま差し切ってゴール! 1着はソーラーレイ! 素晴らしい走りでした!』
丁寧なコーナリングで上がっていき、そのまま早目にしかけて一気に差した。
トレーニングでゴールドシップが教えた通りの丁寧なコーナー加速。身につけているようだ。
お次はサイレンススズカ。
新規メンバー初のGⅠレース、朝日杯フューチュリティステークス。
作ってもらった勝負服を身にまとい、気合を入れていたわけだが。
『各ウマ娘一斉にスタートしましっ、おっと! サイレンススズカがすごい好スタートだ! 一気に前に出た!』
『かなり速いペースです! そして大逃げ! このペースで持つのでしょうか!』
『コーナーに入りました! サイレンススズカ、ほとんど減速せずに回っているぞ! 後続は追いつけるのか!』
『最終直線です! 先頭は後続を大きく突き放してサイレンススズカ! これは誰も追いつけない!』
『サイレンススズカ! 1着でゴールイン! なんという大逃げでしょうか! ジュニア級王者は間違いなくこのウマ娘ですっ!』
大逃げも大逃げ、しかも距離がマイルとあってぶっちぎりで1着だ。
レース慣れしていないジュニア級の強者たちをハイペースで潰して、好きなように走ってきたわけで。
楽しかったと笑顔で語る彼女に、一緒に走ったウマ娘たちは戦々恐々としていた。
続いてタイキシャトル。
年明けのシンザン記念。
『少し出遅れたかタイキシャトル! しかし一気に上がって先団に取り付きました!』
『コーナー回りまして、タイキシャトルが少し前進! 位置を上げています!』
『最終直線に入りました! タイキシャトルが抜け出した! 先頭に出てそのまま突き放す!』
『強い走りだ! そのままゴールイン! 勝ったのはタイキシャトルです!』
相変わらずよそ見してスタートを遅れたが、明らかに他のウマ娘たちとは違うパワーでずんずん走ってそのまま勝った。
ポテンシャルはあるから、もっとレースに集中して楽しめればいいんだけどなぁ。
そして本日。中山レース場にて、弥生賞が始まる。
芝2,000mの中距離。出走するフクキタルとスズカはどちらも得意な距離だろう。
「うぅ……スズカさんと走るなんて、口からおみくじが……」
「よく言ってるけど、口からおみくじってどういうこと……?」
控室で気持ちを落ち着けている……はずの2人。
フクキタルは緊張しすぎて顔が青いが、レースで走ればなんとかなるだろう。
2人にこのレースでの作戦を伝える。自分のチームで2人出るからといって、結託したり潰しあったりはしない。
真っ向勝負でどちらが速いのか、その勝負を楽しんでもらうための作戦だ。
「わかりました! スズカさんに追いつけるようにがんばりますよ~!」
「フクキタル、よろしくね。私、先で待っているから」
バチバチするのとも、仲良くするのとも違う、互いに尊重し合いながら勝ちたいと走る不思議なライバル関係だ。
ちょっとズレているフクキタルと天然なスズカだからこそなのだろうな。
笑い合って気持ちを高める2人を見て、レース本番がより楽しみになった。
◆ ◆ ◆
ゲートの前でぎゅっと手を握り、シラオキ様に祈ります。
なんにもない私ですけど、トレーナーさんに言われた通り、作戦を成功させます! 幸運をください、シラオキ様!
私がゲートに入る番になったので、ゲートインします。今日は18人フルゲートです。4枠8番と真ん中になりました。
今日のラッキーナンバーは3だったのでムムムって感じですけど、トレーナーさんのラッキーナンバーは4でした。4枠と8番! つながりがあっていいですよね!
気合を入れてスタートの体勢を取ります。いきますよぉ~!
『各ウマ娘、ゲートイン完了しました』
――ガタンッ
『スタートしました! サイレンススズカ、今日も素晴らしいスタートです!』
『常に勢いがあるウマ娘ですね! GⅠレースも大逃げしてそのまま勝ってしまいましたから!』
流石はスズカさん! タイキさんと一緒にゲート練習をがんばっている成果が出てますね!
タイキさんはゲートが狭いって暴れてましたが、スズカさんは落ち着いてましたから。
他の逃げが得意なウマ娘さんたちはスズカさんに追いつこうと追いかけてますけど、好スタートで行ってしまったスズカさんに追いつくのは容易ではありません。
あの瞬発力がすばらしいタイキさんでもスタート勝負で追いつけないんですから!
『先頭はサイレンススズカ! 大方の予想通り、大逃げをしています!』
最初の坂を駆けあがりながら、スズカさんの背中を追いかけます。
ゴールドシップさんからの教えで、上り坂のコツは知ってますよ! もちろん、スズカさんもですけど。
周りのみなさんを見ながら内側に寄ります。脚をしっかり溜めますよ!
『サイレンススズカが最初のコーナーに入ります! 先頭から先団にかけては5バ身ほどとなっています』
『かなりハイペースですね。朝日杯同様、一気に逃げ込むつもりなのでしょう』
スズカさんは計算して逃げるなんてことはしません。トレーナーさんが言っていましたから。
好きなだけ、好きなように走ればいい。一番楽しく走っておいでと。
そう言われてから、スズカさんはいつだってハイペースでぶっちぎるんです!
模擬レースでもですよ! 計算した逃げなんて見たことないです!
中団にいる私たちもコーナーに入っていきます。
スズカさんのハイペースに押されてみなさんかなり焦っています。わかっていても、このペースは困りますよねぇ~。
もちろん、私も困ってるんですけど!
『先頭のサイレンススズカが向こう正面に入りました。1,000mは58.6! クラシック級ではかなりのハイペース! しかし脚色は衰えません!』
『すばらしいスピードとスタミナです! しかし少しずつですが後続も近づいてきましたよ!』
前走を見て、今から動かないとダメだと思ったのでしょう。
先団も中団も、ぐいぐいと前に進出しています。でも、一緒に走ってるからわかります。
このペースで行っても、まだ追いつけません。
『先頭から先団まで3バ身程度空きまして、コーナーに入っていきます』
『そろそろ仕掛けどころですね。どのウマ娘が出てくるのでしょうか!』
先団はコーナーに入って、一気に仕掛けていきました。スズカさんを必死に追いかけています。
私たち中団も、コーナーに入るところで仕掛ける方がいました。
「ここで……!」
「わあぁ~~~!!!」
中山の直線は短い、トレーナーさんも言っていました。
ですが、もう少しだけ、もう少しだけ脚を溜めます!
私の仕掛けどころは、第4コーナーです!
『さあ最終直線に入ろうとしています! サイレンススズカが未だ先頭! 後ろの娘たちは間に合うのか!?』
第4コーナーに入ったところから、一気にスピードを上げます!
スズカさんのペースで走ったせいで、みなさんコーナーで膨らんでます。その間を、バ群の中央を突っ切ります!
これがトレーナーさんが授けてくれた、マチカネハリイトトオシです!
さあ、来てくださいシラオキ様! ここからが運の使いどころなのですから!
「ここですねっ!」
ぐっと足に力を入れると、目の前に進むべき道に光が差し込みました。
ここを行けということですね、シラオキ様!
ゴールドシップさんに教えてもらったコーナリングで、光差す方へ全力ダッシュです!
『最終直線、先頭は依然としてサイレンススズカ! 後続は追いつけない! このまま独走か!』
『脚色は衰えないどころか、さらに加速していますよっ! なんてウマ娘なんでしょう!』
流石はスズカさんです! みんなと特訓していた最終直線でもう一回ギアを入れて、逃げて差す走り。もう実戦で使えるんですね!
でも、私だってたくさん特訓したのです! 祈るだけでは、罰が当たってしまいますからね!
トレーナーさん! シラオキ様! 見ていてください!
――行けぇー! スズカーッ!
――つっこめー! フクキタルーッ!
……聞こえました! さあ、行きますよ~!
「開運ダ~~~~ッシュ!!!」
『ここでバ群を切り裂いて抜け出したのはマチカネフクキタルだ! 驚異的な末脚! サイレンススズカを猛追!』
『すごい末脚です! サイレンススズカのハイペースの中でもしっかり脚を溜めていたようです!』
他のみなさんは追い抜きました! あとはスズカさんです!
ですが、ぐうぅ~~!! やっぱり速いですよぉ~~~!!!
『残り100m! マチカネフクキタル追いつけるか! 4バ身! 3バ身! 2バ身っ!』
「ふににぃ~~~~!!!!」
「っ!」
あともう少し! あともう少しですっ!!!
あと……もう少しなんです~~~!
『マチカネフクキタル伸びていくが届かないか! サイレンススズカが先頭でゴールイン!』
『2人ともすばらしい走りでした! クラシックのレースが楽しみですね!』
あぁ……届きませんでした……。
「はぁ……はぁ……」
……やっぱり追いつけないのですね。
スズカさんはすごいです。私と違って、あんなに速くて、あんなに強いです。
今日はラッキーナンバーも外しちゃいましたから、運が悪かったですね。
……でも。
「はぁ……ふぃ……うぅ~~~!」
くやしいです~!
あそこまで追いつけたのに!
あとちょっとだったのに!
あぁ~、これではトレーナーさんから失望されてしまいますよぉ~……。
とぼとぼ歩いて涙を拭っていると、背中をトスンと叩かれました。
振り向くと、スズカさんが手を伸ばしていました。なんでしょう?
「フクキタル、すごかったわ」
「ふぇ?」
「最後の直線、あなたの足音だけが聞こえてきたの。抜かされちゃうかと思ったわ」
微笑んでいるスズカさんを見て、私は言葉が出ませんでした。
ぽかんとしていると、スズカさんが観客席のほうを指さしました。目を向けると、ゴールドシップさん、タイキさん、レイさん。
そして、笑顔で手を振っているトレーナーさんがいました。
「スズカー! フクキタル! おめーらやるじゃねーか! アツいレースだったぜ!」
「アメイジング! とってもホットデシタ!」
「すごいすごい! 2人とも圧倒的だったよ! 感動したぁ!」
――2人とも最高だったぞ!
「あ……」
みなさんの声を聞いて、きゅっと胸の前で手を握りました。
何か、体の奥からこみあげてしまいそうなんです。
「私、とても楽しかったわ。フクキタル、また走りましょう」
スズカさんにそう言われて、目から涙があふれてしまいそうでした。
私……みなさんに認めてもらえる走りができたんですね。
慌ててゴシゴシ目を擦って、スズカさんを見てはっきり答えました!
「はい! 次は負けませんよ~!」
ぎゅっと手を握ってそう言うと、スズカさんはにこりと笑って頷いてくれました。
――私の弥生賞は、1バ身差の2着で終わったのでした。
フクキタルは2着。スズカは1着でした。
アプリ版準拠なので、スズカは既に大逃げ路線ですし、フクキタルも開運パワーでバ群をぶち抜きます。でも今はスズカが優勢ですね。
いっぱい仲間がいるので、フクキタルは育成ストーリーよりはかなりいい方向に前向きです。キャラストーリーのフクキタルの精神面で育成ストーリーって感じで考えていただけるとわかりやすいと思います。