マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 次のレースは、フクキタルの育成ストーリーに合わせますよ!


16、次走に向けて

 弥生賞での白熱したレースから、しばらくして。

 フクキタルにお願いされて、2人で神社にやってきた。

 

「トレーナーさん! よろしくお願いします!」

 

 そう言って渡されたのは、その神社のおみくじ筒だ。

 何がしたいのかわからないが、とりあえずじゃらじゃら動かして棒を出す。

 

「56番ですね!」

 

 番号を見たフクキタルは、そそくさと56と書いてある箱からおみくじの紙を1枚取り出した。

 

「ムムム……南無参!」

 

 おみくじを開いたフクキタルは中身を見て、耳と尻尾がピン! と跳びはねる。

 

「みぎぃ~~~!!! 日本ダービーですか~~!?」

 

 日本ダービーは左回りだぞ。

 

「そんな小ボケはいらないんですよぉ~! 見てください、これをっ!」

 

 おみくじの紙を渡されたので受け取って中身を見る。

 なるほど、これはウマみくじというおみくじらしい。可愛らしいデフォルメされたウマ娘の絵が……これゴールドシップか?

 

 まあ、それはそれとして。

 『あなたの運勢はGⅠ! ラッキーレースは日本ダービー!』と書いてある。

 なんだ、大吉だぞ。そう言うと、そうじゃないんです~! と半泣きですがりつかれた。

 

「このおみくじで次のレースを決めようと思って、トレーナーさんを誘ったんですよぉ~! そしたら、まさかダービーが……いぎゃあ~~! こんなことってぇ~~!!」

 

 顔を青くしながら頭を抱えるフクキタル。どうやらピンポイントにクラシックのGⅠレースを引き当ててしまったようだ。

 運がいいのか悪いのか。でも、別に挑戦してみてもいいと俺は思っている。だって、弥生賞であれだけの好走だからな。

 

「でもぉ……スズカさんだって出るじゃないですかぁ~」

 

 弥生賞後の話し合いで、スズカは皐月賞には参加しないことになった。が、ダービーには出るというのだ。

 フクキタルに差されかけたことで、自分の走りがまだまだ足りないことを痛感したらしく、もっとトレーニングしてからレースに臨みたいらしい。

 走る楽しさ以外に、レースの楽しさを覚えた結果、もっと走らなきゃ……という結論になって、皐月賞ではなくダービーを見据えるとか。走るのが好きだなぁ、スズカ。大舞台のレースに興味が薄いのもまた面白い。

 

「あぁ~~! どうしたらいいんですかぁ~!?」

 

 タイキもマイル以下、ソーラーレイはダート路線ということで、王道のクラシックGⅠはフクキタルとスズカだけしか参戦しないことになったわけだが。

 どうするかと思っていたらおみくじでダービーが出たのでちょうどいい。

 がんばろうね。肩をポンと叩くと、ぐぬぬと悔しそうに上目遣いで見てきた。

 

「ぐぬぬ……」

 

 本当にぐぬぬと言い出した。

 

「うぅ~~……しかし、トレーナーさんがおみくじで引いた以上、出ないわけにはいきません。わかりました、わかりましたよぉ~!」

 

 俺から距離を取ってビシっとこちらに拳を出す。

 

「やりましょう! 日本ダービーで、走り切りますとも!」

 

 ヤケクソ気味にそう宣言したフクキタル。

 こうして彼女の日本ダービー参戦が決まったのであった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「フクー! もっと脚を前に出せー! そんなんじゃヤドカリにも負けちまうぞー!」

「ふぎぎ……ふんぎゃろぉ~~!!!」

 

 ゴールドシップがフクキタルと並走しながら檄を飛ばす。それを聞いて残っている力を振り絞り、一気に加速していく。

 フクキタルがゴール地点に来たところでタイマーを止める。うん、いい調子だ。

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

「お、いい感じじゃねーか! フク、タイムまた縮まってるぜ!」

「ご、ゴールドシップさん……すごいスタミナですね……」

 

 必死に息を整えている彼女をよそに、ゴールドシップは俺の手元の記録用紙を見ていた。

 スタミナで勝るものなしと言わんばかりの体力だからな。あの天皇賞春連覇のマックイーンに相当するレベルだし。

 

「2,400mの併走はオラつくんだよなー。がんばらねーといけないっつーかさ」

 

 ダービーやオークスなど、クラシックディスタンスと呼ばれる2,400m。

 長距離を走るウマ娘も中距離を走るウマ娘も、丁度限界ギリギリになる距離だ。

 しかも直線が525mもある東京レース場。とにかく根性と運がものを言う距離……と、先輩たちからは聞いている。

 

 正直ゴールドシップが今一ノらなかったレースだからトレーナーになってからはあんまりいい思い出がない。

 トレーナーになる前は熱狂して見てたんだけどなぁ。

 

「ふぅ~……落ち着きました。あ、お水お水」

 

 フクキタルがようやく落ち着いたようで、水分補給をしていた。

 弥生賞が終わってからトレーニングに真剣で、とてもよく頑張っている。

 頑張りすぎてこの前はバランスボールごと転がって壁に激突したぐらいだ。転びそうになったら降りなさいとあれだけ言ったのに。

 

「トレーナーさん! 終わりマシタ!」

「あの、もう少しだけ走ってもいいですか?」

「スズカさん、まだ走るのぉ……?」

 

 ウッドチップコースで上り坂のトレーニングをしていた3人も戻ってきた。

 スズカはまだまだ走りたそうにしているから、フクキタルと併走トレーニングしてもらうか。

 

「スズカさんとですね! わかりました。今日こそは負けませんからね!」

「私も負けないわ。じゃあトレーナーさん、行ってきますね」

 

 少し水を飲んだスズカは、フクキタルと一緒にスタート地点に向かう。

 2人ともやる気は十分で、併走というか模擬レースだな、これは。

 ゴールドシップがスタートの合図をすると、2人とも駆け出していった。

 

「2人ともグレイトデスネ!」

「うん。いつも楽しそうに走ってるよねぇ」

「あれがきのことたけのこのライバル関係というものじゃよ。ふぉふぉふぉ」

 

 目を細めてうんうん頷くゴールドシップ。

 なんというか、2人の関係は言葉で言い表せないな。

 仲のいい友人で、チームメンバーで、勝ちたい相手。でもバチバチに対抗しているわけでもなく、本当に仲がいい。

 タイキとソーラーレイも入れたら仲良し同期組だ。不思議な関係性だなぁ。

 

「いきますよぉ~!!!」

「抜かせないからっ」

 

 楽しそうに走る2人を見て、いいな……と語彙力の低下を感じるのだった。

 

 

 

 

 

 次のレースに向けて作戦を考えなければならない。

 一番近いのはタイキ。オークスの前週、GⅠレースのNHKマイルカップだ。

 タイキについてはとても簡単だ。先行につけて、そのまま最終直線でぶっちぎる。それだけで今のクラシック級ウマ娘には勝てる。

 単純にパワーが違うのだ。ゴールドシップでも思っていたが、タイキはクラシック級にいていいウマ娘のパワーではない。ダート専門のソーラーレイも追いつけないパワーで走るからな、マイルではほぼ無敵だろう。

 

 さて、問題の日本ダービーのフクキタルとスズカだが。

 

「エコエコアザラシ、エコエコオットセイ……勝利よ、カムトゥミ~~!!!」

 

 ころころと鉛筆をころがすフクキタル。

 部室にいるみんなで見守っていると、止まったところで書いてあるのは中吉だ。

 

「……まあ、そこそこですね!」

「チューキチ! 知ってます! ビミョーというヤツデスネ!」

「ぴぃ~! そういうこと言わないでくださいよタイキさん!」

「でも、本当のことだし」

「スズカさんもひどいですよ~! 少しぐらいこう、盛り上げてくれてもいいじゃないですか~!」

 

 占いで決めます! と自信満々に言っていたので見守っていたが、どうしたらいいのだろうか。

 結局普通に考えればいいのか?

 

「えっと、それでお願いします」

 

 まず、皐月賞で1着をとったシャインフォート。彼女は逃げウマ娘で、スズカとは違いペースを巧みに操るタイプだ。

 人気が11位なのに勝ち切って、次走のダービーでは逃げますと自信満々に言っていた。あれは間違いなくスズカなどの逃げウマ娘への牽制だろう。

 浮かれていると言われていたインタビューをゴールドシップと見て、2人して思ったことがある。

 

「こいつ、本気だな」

 

 明らかに作戦だ。自分をマークさせないために、あえて浮かれたように見せかけている。

 ゴールドシップを見てるからよーくわかる。あれは演技だ。しかも、マジで勝ちにいこうとしている、本気の作戦だ。

 

 ダービーで走ったら間違いなくペースメイクされて逃げられる。差し追込は不利だ。ならば、先行するのがいいだろう。

 トレーニングで鍛えたわけだし、先行でいってみよう。そう話すと、少し驚いていた。

 

「せ、先行ですか? あんまり経験ないですが……ペースを合わせて走ればいいんですかね」

「あの、私はどうすれば……」

 

 スズカは好きに走っていい。ただし、シャインフォートには気をつけて。前に行かせたら間違いなく負ける。

 そう強く言うと、フクキタルもスズカも真面目な顔になった。

 

「シャインフォートさん……皐月賞ウマ娘ですね」

「わかりました。私、もっと速く逃げます」

 

 今回のダービーはかなり難しいレースになると思う。気を引き締めて頑張ろう。

 そう言うと、2人は力強く頷いた。

 

 日本ダービー果たしてどんな展開になるのだろうか。




 というわけで日本ダービーです。
 スズカも史実ではダービーに出走していたので、一緒に出てもらいます。
 ボスキャラとして登場するのはサニーだれだれくんことシャインフォートちゃん。陣営が本気で勝ちにいくために、様々な策を練ったお馬さんですね。
 若葉Sからダービーまでの一連の流れが美しいので、是非特集や記事なんかを読んでいただけると!
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