マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 予約投稿を間違えてそのまま出してしまいました(掛かり)
 お昼ごろに出したやつの再投稿です!

・追記
 前作のゴールドシップとの3年間でおまけを投稿したのでお暇な方は是非!


18、夏合宿 上

「ウミィー!」

「海だぁ!」

「ヨーソロー!」

 

 夏合宿。7月から8月にかけて行われるトレーニング期間。

 より負荷の強いトレーニングができる場所で練習するということになるが、海での練習ということでいつも以上にみんなのテンションは高い。

 

「ゴールドシップ、よかったの?」

「あん? 唐突激突太郎だな」

「宝塚記念。出なかったでしょう? 走りたかったんじゃないかなって」

 

 ゴールドシップは今年の宝塚記念に出走しなかった。

 それはもうぶっちぎりの人気投票1位だったのだが、「その日は山でウニを獲るからパス」と言ったために登録もしなかったのだ。

 ちゃんとした理由があるのだが、理事長からまだ公表しないでほしいと言われているからゴールドシップの気まぐれということになっている。

 彼女の名誉のために早く言える日が来ることを願っている。

 

「他におもしれーことがあるからいいんだよ。それによー、おめーらもデカめのレース走っただろ? それで帳消しだな!」

「イエス! 勝ちマシタ!」

「まあ、確かに走りましたけどぉ」

 

 タイキはフクキタルとスズカがダービーに出る前に、NHKマイルカップに出走していた。

 見事なまでに全員を千切り、マイルで4バ身開いての1着というパワーの違いを見せつけたレースになっていた。

 

 そして同じ時にソーラーレイも走っていた。青龍ステークスという、ダートのOP戦。

 ここでタイキ同様後方から千切って1着。ダートではこのウマ娘! そのぐらい注目の娘になったわけだが。

 

 この2人をフクキタルたち同様、同じレースに出した。

 それはユニコーンステークスという、ダートのGⅢレース。

 タイキはダートでも通用するパワーがあることと、とにかくマイル戦を走りたいという彼女の希望に合わせた結果の出走だ。

 ソーラーレイは今月前半に行われるダートGⅠレース、ジャパンダートダービーに出走するための力を示すため。

 

 結果としては、タイキが余裕の先行で走り、そのまま上がり最速の脚で駆け抜ける結果になった。

 ソーラーレイはタイキを追いかける他のウマ娘たちに押し上げられて仕掛けが速めになり、苦しい展開になったがそれでもタイキに次ぐ末脚を見せて3着。

 2人とも素晴らしい結果となった。

 

「うぅ……私は全然でした……やっぱりダメダメです」

「フクキタル、ここから頑張りましょう」

「そうだよぉ、フクちゃん。私も頑張るから!」

「レイさん……そうですね、いつまでもじめじめしたマチカネヤミキタルでは、シラオキ様にも怒られてしまいます」

 

 ぺちぺちと顔を叩き、むん! と気合を入れるフクキタル。

 ダービー後から1ヶ月、ようやく立ち直ってきたようだ。

 ソーラーレイは最後の調整、他のみんなはしっかりトレーニングをがんばろう!

 

「「「「おー!」」」」

「なあ、アタシのスキレット知らねーか?」

 

 こうして夏合宿が始まった!

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「おっとっとっとぉ~! みぎゃ~~~す!!!」

「オウ、フクキタル!」

 

 50mのござを往復する水上ござ走りで海の中に吹き飛んでいくフクキタル。

 ゴールドシップ専属だった時に一緒にやっていたトウカイテイオーやメジロマックイーンもかなり苦戦していたし、やはり難しいみたいだ。

 今のところ完走者はゴールドシップのみ。タイキは片道だけなら余裕で走っているので、完走に一番近そう。

 

「次は、私が行きますよぉ!」

「がんばって、レイ」

 

 ソーラーレイがヤケクソ気味にござへ突撃していった。

 先日出走したジャパンダートダービー。やる気も十分、スタートも良好。

 しかし、今までの活躍のおかげで1番人気になっていたため、ブロックされたり不利を受けたりと厳しいレースになってしまった。

 最後はなんとか抜け出して一気に突っこんだものの、脚を溜めれず5着。悔しい結果となってしまった。

 

「次は、勝つんだぁ~~! わぁ~~!」

「レイさ~~~ん!」

 

 叫びながら走っていったソーラーレイは、声を上げたまま海の中へと吹き飛んでいった。

 次は私が、とスズカがござへと走っていった。

 

「これで忍者の弟子が増えたぜ」

 

 そう言って笑いながら隣に立つゴールドシップ。

 水筒を手渡されて一口飲み、キャップを閉める。冷たい水がこの暑さの中で心地いい。

 

 ゴーフォーイット! いけますよー! と応援しているみんなを見ていると、ゴールドシップがべしべしと尻尾で背中を叩いてきた。

 何だと思って彼女を見ると、ニヤっと笑っている。

 

「アタシって強すぎただろ? 罪な女だぜ」

 

 本当にそうだよ、俺はそう答えた。

 

 そう、ゴールドシップは強すぎたのだ。

 彼女と走り切った3年間。その中でゴールドシップが走ったのは、メイクデビュー以外すべてがGⅠレースだった。

 ホープフルステークス、クラシック三冠に宝塚記念を2回、天皇賞春秋制覇と有マ記念も2回。そしてURAファイナルズ。

 その中で日本ダービー以外は全て1着。走りは強くて盛り上がる追込から先行までもできる。その上ケガなんてほとんどしなかった。

 

 やる気があって楽しく走れば勝つと思っているのも、ゴールドシップがそうだったからだ。

 そうすれば誰にも止められない走りをしてくれていたのだから。

 他のウマ娘たちも同じ……そんなわけはなかった。

 

 ゴールドシップのように最初から凄まじいフィジカルがあるわけじゃない。

 完成されたストライド走法のような、しっかりした走りを体得しているわけでもない。

 無尽蔵のスタミナや規格外のパワーで、自分の走りを押し付けられるわけはない。

 

 全て彼女のを基準に考えすぎていたんだ。

 ふぅ、と息を吐いて眉をひそめていると、また尻尾で背中を叩かれた。

 

「トレーナー、フクキタルがチームに入ってから浮かれてたからなー。ちょっとは落ち着いたろ?」

 

 落ち着いてねーならごぼうしばき合い対決だからな、と言ってにししと笑う。

 確かに、かなり浮かれていたように思う。

 トレーニングでも答えがわかったみたいに指導してたし、楽しく走ろうなんて、ふわふわした目標を立てていた。

 これで勝てていたのは、ひとえにフクキタルたちが元々持っていたポテンシャルによるものだ、と改めて感じる。

 

 1年も大分失礼なことをしてきたな……そう言ってはぁ~とため息を吐くと、そんなもんだろと言われた。

 

「楽しきゃいいだろ? アタシはそこそこ満足してるぜ!」

「次はゴールドシップさんの番ですよ~!」

 

 フフンと笑ったゴールドシップは、そのままござに向かって走っていった。

 テイクオーフ! といいながらござの上を突っ走る彼女を見て、もっとみんなと向き合うべきだな。そう思うのだった。

 

 

 

 

 

 というわけで、午後のトレーニングを抜いて、たくさん話をする時間にすることにした。

 

「つまり、昼はバーベキューってことだな!」

 

 そういうことである。

 

「どういうことですか!?」

「バーベキュー! 嬉しいデース!」

 

 フクキタルやスズカたちは驚いていたが、タイキは同時に跳びあがって喜んでいた。

 ゴールドシップとタイキに協力してもらい、サクサクと火を起こして肉を焼き始める。

 

「お肉はワタシに任せてくだサーイ!」

「あん? ゴルシちゃんとやりあおうってのか! 受けて立つぜ! 河原で釣りしてたおっちゃんに教えてもらったこの竿さばきで!」

 

 焼くのは2人がやってくれるということなので、その間にフクキタルたちと話すことにした。

 まずはごめんな、と謝ると3人ともキョトンしていた。

 訳を話すと、ほえーとフクキタルから声が漏れた。

 

「トレーナーさん。私、トレーナーさんでよかったと思ってます」

「あ、私もですよ! 運命の人ですから!」

「うんうん。最初はちょっと不安だったけど、よかったって思うなぁ」

 

 ありがたいなぁ……と照れくさくて頬をかく。

 楽しく走れば勝つっていうふわっとした指導だったけど、本当に楽しくやれているならそれはそれで嬉しい。

 

「確かにこう、変わったトレーニングだな~って思う時はありますけどね」

「でも、私がトレーニングの後に走りたいって言うと、たくさん走らせてくれるわ」

 

 スズカは走りたがりだから、いつも走りたいと言ってくるのだ。

 トレーニング後に走るのを見越して、わざと脚への負担が少ないトレーニングを組むこともあるぐらいだ。その時は好きなだけ走らせている。

 

「そういうところですよぉ。わたしたちが、嬉しいなって思うのは」

「トレーナーさんは今のままがいいんです! 優しいままでいてください! もっと優しくなってくれてもいいんですよ~?」

 

 ぐっと両手で親指を立てるフクキタル。

 でも、結果が中々ということもあるしなぁ……そう思っていると、スズカが腕にそっと触れてきた。

 

「あの、トレーナーさん。私、自分の好きなように、楽しく走って勝ちます。必ず。見ていてください」

「私も、絶対にトレーナーさんを信じます! もちろんシラオキ様も! あと、ほんのちょっとだけ自分も……」

「うん。わたし、トレーナーさんにあげるからねぇ。ダートのGⅠレース1着」

 

 3人の強い言葉に、思わず熱いものがこみ上げてくる。

 この娘たちを、必ず勝たせる。それも、自分の走りで。

 そのためにがんばろう、改めて決意した。

 

「おう、焼けたぜ!」

「カモン! 食べまショウ!」

「おぉ、おいしそうな匂いです! 行きますよ~、トレーナーさん!」

 

 フクキタルに手を引かれ、ゴールドシップたちのところに走っていく。

 気持ちを新たにして食べるバーベキューは最高に美味しい。笑顔のみんなを見て、そう思うのだった。




 というわけで気合を入れ直すトレーナーくんでした。
 みんなはモチベーション高くやれているので、次は勝つから待っててねという感じです。
 トレーナーくんが思っているより、みんな成長しているのです。

 ゴールドシップが宝塚に出なかった理由は別に出走予定のレースがあるからです。
 アプリ版で定期的にある特別なレース、アレです。
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