マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 京都新聞杯の開催日が変わってる!?
 なら大賞典に出ればいいじゃない。


21、京都大賞典

 京都大賞典。

 フクキタルはこのレースに出たいと言ってきた。

 京都大賞典は神戸新聞杯、セントライト記念とは違ってシニア級ウマ娘も出走するレースだ。

 菊花賞に向けてもう1レースということらしいが、それだと菊花賞まで期間を開けずに3連戦のようなもの。

 

「お願いします! 菊花賞の前にもう一度だけ走りたいんです!」

 

 みんなの心配をよそに、フクキタルは強くお願いしてくる。

 ……足の調子は大丈夫?

 

「はい! 大丈夫です! 問題ありません!」

「気合入ってるじゃねーかフク! うっし、ゴルシちゃんが教えてやるぜ! レース前の過ごし方ってやつをな!」

「お願いしまああぁぁ~~~!?」

 

 ゴールドシップがフクキタルにズタ袋をかぶせて担ぎ、走り去っていった。

 いぎゃ~~!! と悲鳴を聞きながら、今日のトレーニングメニューについてみんなに説明する。

 

「トレーナーさんだなぁ」

「慣れるとこうなるのかしら……」

「クレイジーデスネ!」

 

 散々な言われようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「体中からおみくじがでてしまうかと思いました……」

 

 京都レース場。

 その控室で、フクキタルはぐったりとした様子で椅子に座っていた。

 

「フクのやつおもしれーんだ。足ツボ連れてったらすげー叫び声出してよ」

「だって痛いんですよ~!? トレーナーさんもやればわかりますよぉ!」

 

 ゴールドシップによって連れまわされたフクキタルは、様々なところで体中をいじめられたようだ。

 といっても、ゴールドシップのレース前の過ごし方といえば、とにかく遊んで体を休めるだからな。気疲れの反面、体は絶好調だろう。

 

「なんであんなに色々されたのに体が軽いのでしょうか……」

「フクちゃん、おかしくなっちゃったかなぁ」

「もとからフクキタルはストレンジャーデスヨ?」

「ちょっと待ってください! 聞き捨てなりませんよタイキさん!?」

 

 やいのやいのと盛り上がる控室。

 パンッと手を叩き、空気を変える。

 ――フクキタル、作戦を伝えるぞ。

 

「は、はい!」

 

 といっても、大きく何か変えるわけではない。

 フクキタルの長所を存分に活かしてもらうだけだ。

 

「私の長所? ありますか、そんなの?」

 

 フクキタルは最終コーナーから直線に入る前、光の道が見えるという話をしていた。

 ゴールドシップたちに聞くと、そんなものは見えた試しがないと言う。

 

 しかし、10人ぐらいの模擬レースで光の道どおりに進んでもらったら、なんと密集したバ群の中を接触なしで、妨害や降着になる動きもなくぶち抜いた。

 ゴールドシップのロングスパートのような、フクキタルだけが持つ長所だ。

 

「シラオキ様のお告げですね! でも、それを信じるのなんてあたりまえなんですよ?」

 

 そのあたりまえが、フクキタルの長所なんだよ。

 そう言うと、う~んと唸っていたが、うんと1つ頷く。

 

「わかりました! トレーナーさんがそう言ってくれるなら、信じましょう!」

 

 むん! と気合を入れるフクキタル。

 

「フクキタル、がんばってね」

「はい! スズカさんも見ていてください! 私、やりますよぉ~!」

 

 スズカの声援を受け、目をギラギラ光らせている。

 今日のレースもかなりいいものになりそうだ。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 ゲートの前で足首をしっかり回して、調子を整えます。

 今日は2,400mですからね。長めの距離ですから、しっかり準備運動をしますよ!

 

「マチカネフクキタル!」

「ぴぃ! は、はい!」

 

 急に声を駆けられてビクッとしてしまいます。

 振り向くと、腕を組んで仁王立ちしているウマ娘が。

 

「キヌノセイギさん?」

「そうだ!」

 

 キヌノセイギさんでした。ダービーで2着になった強い方です。

 神戸新聞杯ではスズカさんの逃げで掛かってしまったようで、奮わなかったみたいですけど。

 

「神戸新聞杯、すばらしかった」

「あ、ありがとうございます」

「故に! 今日はこのセイギが勝つ!」

 

 そう言ってキヌノセイギさんはゲートへ入っていきました。

 ……あ! 宣戦布告ですかぁ~!?

 

『各ウマ娘、ゲートイン完了しました』

 

 少しびっくりしながらゲートイン。

 気持ちを落ち着けます。

 トレーナーさんをちゃんと信じれば勝てるとわかりました!

 なので、今日も信じますよぉ~!

 

 ――ガタンッ

 

『スタートしました! 全員好スタートです!』

『クラシック級とシニア級が混じる本日の京都大賞典! どうなっていくのでしょうか!』

『先頭はメジロファラオ! 快調に飛ばしていきます!』

 

 ゲートを出て走り出します。

 ゴールドシップさんのおかげで体がとても軽いです! ありがとう、足ツボ! ありがとう、ドクターフィッシュ!

 そして今日は7枠7番! 数字も絶好調です! 力が溢れますよぉ~!

 

『1番人気3枠3番ドゥーブルパッセ、2番人気7枠8番キヌノセイギは共に後方からのスタートです』

『3番人気マチカネフクキタルは中団後ろを進むようですね』

 

 キヌノセイギさんは私の後ろです。後方からの追込みが強い方ですからね。

 お互いに仕掛けどころは同じ……ですが、負けませんよ!

 

『京都芝2,400mは最初の直線が600mもあります。枠順有利はほとんどありません』

『さあ、最初の直線です。観客からの声援を受けながら進んでいきます、11人のウマ娘たち! 果たして誰が勝利するのでしょうか!』

 

「いいポジションだぞー! そのまま火星に行けー!」

「フクちゃん、ファイトー!」

 

 みなさんの声援が聞こえてきます!

 私としても、自分が走りやすいポジションを取れました。

 まあ、直線が長いですからね。トレーナーさんも好きなところを位置取りするといいよと言ってましたし。

 ただし、それはみなさんも同じですよね。少し気を引き締めて、コーナーへと意識を向けます。

 

『先頭のメジロファラオ、第1コーナーに入りました。バ群はやや詰まっているでしょうか?』

『少しペースが遅いかもしれません。前残りがありそうです』

 

 コーナーを回っていきます。

 ゴールドシップさんに教わった通りに走れば、体力も使わないで楽々走れます!

 走る体勢もブレませんからね。トレーニングの成果がでてますよ!

 

『向こう正面に入りました。1,000m61.1秒です』

『シニア級の混ざるレースとしてはスローです。しかし、京都には坂がありますからね』

 

 コーナーが終わって直線に入ります。

 体感では結構遅いですね……日本ダービーのシャインフォートさんみたいな走りにくさがあります。

 でも、この後上り坂がありますからね。スタミナを残しにいっているのでしょう。

 

『さあ京都の上り坂! 高低差4mの坂を駆けあがっていきます!』

 

 ゴールドシップさんから坂の上手な上り方を教えてもらいましたからね!

 どれだけキツい坂でも、スピードを落とさずに走れますよ!

 でも、加速しすぎても前に他の方がいますからね。前に出れないのでスタミナを温存します。

 

『第3コーナーに入りました! 坂を上り切ってここから下り坂!』

『ドゥーブルパッセがじりじり上がってきました! スローな展開を嫌ったか!』

 

 ドゥーブルパッセさんが前に上がってきましたね……!

 下りで加速してそのまま一気に行くつもりなのでしょう。

 ですが、私はまだ動きません。シラオキ様が道を示してくださるまで。

 トレーナーさんがそれを信じろと言ってくれたのです! だから、作戦通り最終直線まで待機します!

 

『下り坂を駆け下り、最終コーナー! 先頭は変わらずメジロファラオ!』

 

 先頭はメジロファラオさん。ペースをしっかりと守っています。

 長めの直線のおかげで、一息入れやすいこのレース。だからこそ、先行が有利とも言えます。

 ですが! 脚を溜められる分、末脚で追いかけますからね!

 

『さあ最終直線に入った! 後ろの娘たちは間に合うか!』

「しゃーっ!!!」

『ここでドゥーブルパッセが一気に上がってきた! 凄まじい勢いだ!』

『後ろからキヌノセイギが追い上げてくる! どんどん追い抜いているぞ!』

 

 ドゥーブルパッセさんがついに行きました!

 よし、私もコーナー終わりから一気に行きますよ~!

 ここに幸運を来させます! シラオキ様、ハッピーカムカム!

 

「いきますよ~!」

 

 ぐっと足に力を入れると、目の前に光の道が見えました!

 おぉっ!? ば、バ群の中ですかぁ~!?

 しかし、トレーナーさんは言ってくれました! 私の見えるこの道こそが私の長所なのだと!

 ならば! ちょっと怖いですけど……!

 

「信じますよぉ~~!」

 

 光に沿って、一気に走るだけです!

 

『後方からキヌノセイギが一気に上がってくる! ドゥーブルパッセも伸びる!』

『あっ! ウマ娘たちの間を縫って! バ群の中からマチカネフクキタルだ! マチカネフクキタルが突き抜けてきた!』

 

 す、すごい……! 光の道を進んだら、だっっっれにも当たらずに前に出てしまいましたぁ!

 これなら!

 

「全く負ける気がしませんっ!」

『マチカネフクキタル! 驚異的な末脚だ! 一気に前に出た!』

『キヌノセイギはドゥーブルパッセを抜いた! しかしマチカネフクキタルがどんどん差を詰めていく! すごい末脚ッ!』

 

 キヌノセイギさんがちょっとだけ前にいます!

 でも、直線はまだまだありますよ……!

 

「フクキタルー! もう少しデース!」

「かませー! フクーッ! 信楽焼の仇を取れー!」

「フクちゃーん! フクちゃーんっ!」

 

 みなさんの声が聞こえます。

 体にどんどん力があふれてきそうです!

 

「フクキタルー! 行ってー!」

 ――フクキタルーッ! ぶち抜けーーーッ!!!

 

 スズカさんとトレーナーさんの声を聞いて、さらにグッと力を入れます。

 さあ! ここから、もっともっと頑張りますよ~!

 

「開運ダ~~~~ッシュ!!!!」

『残り200を切った! マチカネフクキタルだ! さらに加速していく! キヌノセイギは苦しいか!』

『マチカネフクキタル! その差を1バ身! 半バ身! 並んだ! 並んだ!』

 

 もう視界には外側にいるだろうキヌノセイギさんが映りません!

 キヌノセイギさんが隣なのか、ちょっと前にいるのか、後ろなのか。

 わかりませんけど、私はただ、精いっぱい走るだけです!

 

『マチカネフクキタルが少し優勢か! キヌノセイギも追い上げている! ドゥーブルパッセもまだまだ粘っているぞ!』

『マチカネフクキタル! キヌノセイギ! マチカネフクキタルだ! マチカネフクキタルが前に出た! マチカネフクキタルが今先頭でゴールインッ!』

『神戸に続いて京都でも福がやってきた!』

 

 ゴール板を駆け抜け、ゆっくりスピードを落としながら息を整えます。

 さ、流石にあの長さの直線は辛いです~!

 

「ぜぇ……ぜぇ……ど、どうでしょう?」

 

 掲示板を見ると、一番上の数字は7番。

 私も、7番……よ、よし!

 

「や、やりましたぁ~!」

 

 ぐっと手を上げると、ワァーーーッ! と歓声が上がりました。

 また勝てました! この私が! す、すごいっ。

 

「マチカネフクキタルっ」

「ひぃ!? あ、キヌノセイギさん……」

 

 急に声を駆けられてビクッとなります。

 さっきと同じですね……。

 

「やはり素晴らしい! とてもすごい末脚だった!」

「ありがとうございます! キヌノセイギさんもすごかったです。今日は何とか勝てました」

 

 掲示板を見たらクビ差での勝利でした。ドゥーブルパッセさんもクビ差。

 ほとんど変わらないですね。

 

「菊花賞! 出るのだろう?」

「はい! 菊花賞のためにレースに出ていますから!」

「なら、次は負けない! 菊花賞で勝負だ!」

 

 そう言って歩いていきました。

 そうです、今日は菊花賞に向けたレース。

 本番は次……頑張らないとですね!

 トレーニングもそうですけど、神社にお参り、占いもたくさんやらないと。あと、お守りもいっぱい買いたいです!

 

 この後の運気アップをどうするか考えながら、みなさんに手を振るのでした。




 というわけで、さらなるライバルとの戦いでした。
 京都大賞典は、シルクもにょもにょさんことキヌノセイギくんが本来1着です。
 話の展開上勝たせていただきました……すまぬっ。

 自分の長所がすごいことに気づいてしまったフクキタル。
 そう、君は強いんだよ。
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