マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 フナボシの現状はこんな感じ。


25、金鯱賞に向けて

 トレーニングをしっかりと積んだ我らがチームフナボ……フォーマルハウト。

 メンバーで一番最初にレースへ挑んでいたのはソーラーレイだ。

 

 2月後半のフェブラリーステークスに出走するため、前哨戦として1月後半の根岸ステークスへ参戦。

 ここでなんと驚異的なパワーを見せつけ、フクキタルのように後ろからバ群の中をぶっちぎる快走。2バ身差をつけてフェブラリーステークスへと挑んだ。

 そしてフェブラリーステークス。スタートで出遅れ最後尾につけたものの、レース半分過ぎてからゴールドシップのようなロングスパート。

 そこからグングン加速していき、先頭でぶっちぎっていたウマ娘に追いついて競り合い、ハナ差での勝利となった。

 1着2着から4バ身差離しての3着だったため、2人がどれだけ強いのかを知らしめたレースだった。

 今回は素晴らしい勝ち星だったが、ダートは他にも強いウマ娘がさらに出てきている。ソーラーレイは今年、大きな戦いとなるだろう。

 

 GⅠ初勝利に号泣して喜ぶソーラーレイの姿は新聞に載り、『フナボシのウマ娘、再び号泣!』と書かれたのは記憶に新しい。

 本人はとても恥ずかしがっていたけど。

 

 次に走る予定なのはフクキタルとスズカの金鯱賞だ。

 現時点で2強と言われている。それぐらい同年代ではぶっちぎって強いと俺も思ってるし実際そうだ。

 フクキタルは神戸新聞杯などで見せたあの末脚と、バ群の中をまっすぐ抜いてくるあの走り。ブロックしようにも、何故か接触もなくするりと抜けてしまうから、中々マークできない。シャインフォートがアドバイスをくれるおかげで、逃げのペースメイクにも強くなった。

 スズカは逃げに磨きがかかりすぎている。2,000mだと、1,000mを58秒台で逃げて残り1,000mも58秒台で逃げる。しかも最終直線で失速しない。もうスタートで止めない限りもう止められないのだ。

 

 俺なりに考えてみんなのやりたい走りをしてもらえるようにトレーニングを作ってやってもらっているけだけど。

 うーん……この娘たち、みんな天才すぎやしないだろうか。

 タイキもマイル全勝で、そのパワーに期待したURAから海外レースへの挑戦を期待されているし。

 ゴールドシップはドリームトロフィー・リーグに移籍して暴れる予定だ。物理的にではなくレースで。

 

 チーム全体が大活躍しているわけだから、俺も気を引き締めてみんなを見ないとな。

 

「ふぅ……トレーナーさん、タイムはどうでしたか」

 

 気合を入れていると、スズカが1周して帰ってきた。

 スタートからハイペースで走った上で2分を切っている。スタミナも脚の状態も良く、いい調子。上がり3Fもハイペース逃げを考えればかなり速い。

 かなりいいよと言ってタイムを見せると、少し微笑んで頷くが、まだ納得できない様子。

 

「あの、もう一回走っても……」

 

 おずおずと聞いてくるスズカに、休憩してからもう一回やろうかと声をかける。

 嬉しそうにしながらとことこ水分補給へと向かった。

 

「ふぃ~~! どうですか、トレーナーさん!」

「この10kgの蹄鉄思ったよりめり込むぜ! ウッドチップじゃなかったら農耕だな! 目指せコンバイン!」

 

 続いて併走していたフクキタルとゴールドシップが戻ってきた。

 フクキタルのタイムは併走のおかげかスズカ同様好タイム。上がりはウッドチップの練習場であることを考えると、かなり速い。流石の末脚だ。

 ゴールドシップはあの重量の蹄鉄を履いてフクキタルとほとんど同時にゴールだからもう意味が分からない。多分走りのフォームが丁寧だから負担がかからないんだと思うが……。

 タイムを見せると、うんうんと満足そうに頷いた。

 

「そこそこいいですね! でも、まだコーナーが甘いんでしょうか? もうちょっと縮むかなと思ったのですが」

 

 うーんと唸りながらフォームの確認をし始める。

 それを見ていると、ゴールドシップが楽しそうな表情で近づいてきた。

 

「フクのやつ、アタシがプレッシャーかけてんのにアレだぜ? 自信ついてきたみてーだな」

 

 ゴールドシップの言葉に強く頷く。

 菊花賞以降、未だに占いに頼る部分はあるが、走りについてはかなり前向きだ。

 最初の選抜レースの時のように占いの結果で勝てないと叫ぶこともないし、スズカと一緒のレースになっても泣き言を言わなくなった。

 むしろ頑張ります! とやる気になっている。シャインフォートとの一件は、フクキタルに良い影響を与えたみたいだ。

 

「ゴールドシップさん、もう一回コーナーの走り方を教えてください!」

「おう! じゃ、また行ってくる」

 

 フクキタルに呼ばれたゴールドシップは、にっと笑いながらコースへと駆けていく。

 みんなシニア級になって、さらに本格化している。次走がとても楽しみだ。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 金鯱賞での作戦を考えるため、スズカとフクキタルを別々に呼んで相談することになった。

 まずはスズカだが。

 

「はい。大逃げ、ですね」

 

 今まで通り、最初から最後まで、誰にも先頭を譲らないで走り抜く。

 スズカの走りで、ぶっちぎりで勝つ。正直作戦も何も無いとは思う。だって駆け引きとかも無いからな。

 

「金鯱賞は、私、勝ちます」

 

 真剣な表情で、ぐっと拳を握る。

 フクキタルに差された神戸新聞杯。スズカにとっては本当に悔しい一戦だったようで、闘志の炎が見えるぐらいの意気込みだ。

 それとは別に、自分の走りを見せたいという気持ちがあるのだとか。

 

「スペちゃんに見せてあげたいんです。私の走り」

 

 同室のスペシャルウィークは、今年クラシック級となる。

 そして、今年のクラシック級は素質のあるウマ娘たちだらけ。黄金世代と呼ばれている。

 スペシャルウィーク、セイウンスカイ、キングヘイロー、グラスワンダー、エルコンドルパサー。

 この5人はデビュー前からここまでのレースの中で有り余るほどの才覚を見せ、クラシックの冠は誰の手に、と今までにないほど盛り上がっている。

 

 スペシャルウィークは日本一のウマ娘になるという夢のために頑張っていると聞いていたが、スズカはそれを後押ししたいということらしい。

 走りで勇気を与えたいというのは、なんというか、ウマ娘って感じだ。でも、それをスズカから聞くとは思わなかった。

 だって、ただただ走りたい気持ちが強い娘だったから。

 

「もう、トレーナーさん。私だって、走ること以外も考えているんですよ」

 

 少し不満げなスズカ。ごめんな、と頬をかく。

 シャインフォートやスペシャルウィークとの交流や、フクキタルとの走り。

 それらを経て、精神的にも成長しているんだなと思うのだった。

 

 

 

 

 

 続いてフクキタル。

 スズカは先頭でぶっちぎれと言うだけだが、フクキタルは違う。

 そのハイペース大逃げの対策をしなければならないのだ。

 

「金鯱賞は中京レース場ですよね……スズカさん有利ですねぇ」

 

 中京芝2,000m。坂はあるものの、基本的には平坦なコースだ。

 しかもスタートは坂の中間から始まるから、そこを抜けられたらもう止められない。

 まあ今のスズカを止めるということ自体相当難しいけど。スタートダッシュとんでもなく上手になってるし。集中力が違う。タイキも見習ってほしい。

 

「むむむ……スタミナ切れはもう期待できませんからね……」

 

 ゴールドシップに頼んで、最初から最後まで全力で走ってしまうスズカに一息入れるという技術をつけてもらった。

 つまり、最後の直線でもう一段階加速するというスズカの走りをさらに強化したわけで。

 正直どうやってこの走りに追いつけばいいのか……。

 

 多分、正解は神戸新聞杯のように、最後の最後でスズカ以上のスピードで末脚を叩きこむ。それか、ゴールドシップのように中盤からどんどん加速する。この2つしかない。

 だってあの走りをそもそも邪魔できないんだから、自分の走りをする以外に勝ち筋がない。

 

「最後に全力で差すしかないんでしょうか……うーん、やっぱり強いですねぇ、スズカさん」

 

 うーむと頭をぐるぐる回しながら考えるフクキタル。

 とにかく、最終直線に行った時に5バ身以上離れていたら、フクキタルの末脚であってもおそらく間に合わない。

 周りのウマ娘のことは一切考えないで、自分のペースで走るしかない。スズカとトレーニングでタイムを競う時と同じ走りをするわけだ。

 スズカに合わせていたら、ゴールまでには絶対に追いつけない。そういう走りができるようにしたんだ、俺は。

 

「わかりました! 私はトレーナーさんを信じます! 私は私の、スズカさんはスズカさんの走りをします! それで勝負ですね!」

 

 むん! とやる気を見せるように、ぎゅっと拳を作る。

 ……成長したなぁ。なんともいえない感動で、腕を組み頷いてしまう。

 

「あ、一応占っておきましょう。えーと、何がいいですかね」

 

 そう言ってトレーナー室の占いグッズ置き場を漁り始めた。

 俺の感動を返してくれ。楽しそうに探しているフクキタルを見て、思わず苦笑してしまうのだった。




 スズカ、ほぼ完成。
 ハイペースで逃げてるのに最終直線前のコーナーで回復してしまうという。
 結局勝つには末脚を叩きこむしかないですね、うん。

 因みにタイキシャトルは安田記念を目指しているので、普通にトレーニングです。
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