マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 ファンの反応やいかに!


28、ファン感謝祭

 ファン感謝祭。

 去年と一昨年はURAファイナルズやら初のチームのクラシック級だったりでわさわさ忙しく、感謝祭にきちんと参加できなかった。

 今年はある程度落ち着いているし、みんなレースが直近に無いから素直に楽しめる。

 

 というわけで、朝一で始まったゴールドシップの木魚ライブを見に来た。

 感謝祭スタート直後だというのに、人混みがすごい。

 関係者特権で一番前で待機していたが、それはもう許してほしい。

 

「あれフナボシのトレーナーじゃ?」

「マジだ! ゴルシのトレーナーじゃん!」

 

 何か俺が凄い注目されている気がする。

 早く始まってくれ、と思っていつものように指パッチンすると、ゴールドシップがステージ上に降ってきた。

 ズダン! と音が鳴り、みんなの視線がステージへと向かう。おお、とどよめきが聞こえると、用意されていた木魚を布でひと撫で。

 

「おっしぇーーーい! 木魚ライブのはじまりじゃーーーい!!!」

 

 凄まじくリズミカルに木魚を叩き始めた!

 まるで生きているかのようにポクポク音が鳴り響き、まるで魚が泳いでいるかのようだ!

 

「流石ゴールドシップ! 俺たちが想像もしていないことを平気でやってのける!」

「痺れるぜー! でも憧れねーっ!!」

 

 あまりのパッションに見ているみんなのボルテージも上がっていく。

 ゴールドシップのライトファンは相当困惑しているが。許せ、これがゴールドシップだ。

 

「すごいっ!! いいリズムだね!」

 

 わいわい盛り上がってるところに現れたのは、チケゾーことウイニングチケット。

 次の演目であるダービークイズに出演するためにここにいるのだろう。

 

「よーし! あたしも挑戦だあ~っ! いくよ、エアギター!」

 

 ギュインギュイン! と言いながらゴールドシップの横に立つと、ギターをかき鳴らし始める。

 ゴールドシップはチケゾーの出現を見て楽しそうにしながら、さらに鮮やかなバチさばきを見せた!

 

「わぁ……す、すごい……」

「嘘でしょ……本当に木魚を叩いてる」

 

 困惑した声がしたので見てみると、スペシャルウィークとスズカが木魚ライブを見てドン引きしていた。

 スズカはゴールドシップの奇行に困惑しているが、スペシャルウィークはあふれ出る木魚の生命力に驚いているようだ。

 いや、木なんだけどね。でも水の中を泳いでるかのような生命のパワーを感じるパッションがある。

 

「何してんのチケット……」

「ふむ、随分と奇抜なライブだな」

 

 チケットがステージに来たからか、一緒にいたであろうタイシンとハヤヒデも出てきた。

 かの有名なBNWがそろったことで、観客たちも色めき立つ。

 

「あっ、ハヤヒデー! タイシ~~~~ン!」

「うるっさ……てか何してんの」

「見てよっ! エアギター!」

「おめーらも来い! 一緒にバンドやろうぜッ!!!」

 

 チケットとゴールドシップが楽しそうにしているのを見て、ハヤヒデはうんと頷く。

 そしてステージに上がると、ゴールドシップがどこからともなく取り出した鍵盤ハーモニカを吹き始めた。

 あまりにも自然に動くから思わず笑ってしまう。そういえばハヤヒデも結構お茶目だったな。

 

「ハヤヒデも……」

「タイシンタイシンタイシ~~~ン! いっしょにバンドやろうよーっ!」

「ああ、私とタイシンはファンに楽しんでもらう機会があまりないだろうからな。こういうのもたまには、な」

「~~~~っ!」

 

 すごく嫌そうな恥ずかしそうな顔をしながらステージに向かうタイシン。

 ゴールドシップから子供用のおもちゃマイクを手渡され、ボーカル!? と驚いている。

 そして何かを相談をすると、バチでリズムを取り出す。

 観客がみんなゴクリと息をのむと、音色と歌声が響き出した!

 

「凄いです、みなさん!」

「ええ……そうね、本当に」

 

 純粋にキラキラした目で見ているスペシャルウィークと、やや困った様子のスズカ。

 ゴールドシップ with BNWの木魚ライブは感謝祭にふさわしい大盛況となったのだった!

 

 

 

 

 

「いやー、面白かったな!」

 

 ご満悦のゴールドシップを連れて屋台を練り歩く。

 タイシンによるGIRLS' LEGEND Uはとても素晴らしかった。あまりライブで見ないが非常に人気の歌だったため、もう大盛り上がりだった。

 楽器はエアギターと鍵盤ハーモニカと木魚なのにね。

 

「ところでフクの店ってどこだ?」

 

 多分今行ってる方向で合ってると思う。

 しばらく進んでいくと、この前見せてもらった看板が見えた。

 

「表はあっても占い……ここだな!」

 

 占いの店らしく、紫っぽい布をかぶせてある。

 そこそこ繁盛しているようで、一般のお客さんやウマ娘たちも並んでいる。

 占いは結構人気らしく、マチカネ相談室という占い相談もやっているのだと聞いたこともあるぐらいだ。

 フクキタルの占いでレースを勝ったりとかもあるからな。実はメジロパーマーの爆逃げを勧めたのはフクキタルだと言うし。あの逃げは本当に凄い、なんで長距離で勝てるんだろうか。

 

 自分はあんなに自信なさげなのにな。よくやってると思うよ。

 

 ゴールドシップがファンサービスでサインしたり写真を撮ったりして順番を待つ。

 俺たちの番になって中に入ると、フクキタルが座っていて、その前には水晶玉が置いてあった。

 そして背後にはメイショウドトウ。うーん、あの娘の役割ってなんなんだ?

 

「おや! トレーナーさんとゴールドシップさんじゃないですか!」

「この方がトレーナーさん……あの、初めまして。メイショウドトウですぅ~……」

 

 挨拶されたのでこちらも挨拶を返す。

 メイショウドトウかぁー……デビュー前だからあんまり詳しいことはわからないが、トレーナー間では自信のなさを指摘する声が多い。

 本人はそれを直そうと頑張っているから、俺は評価しているんだけど。この前なんかアイスのあたりが欲しいと言ってアイス食べまくってたからな。フクキタルが10年前のアイスのあたり棒を渡して応援していたのを見た。

 結果あたりを引いて特賞のいい布団をもらったらしく、すぐにその布団を使っていたとか。アイスの食べ過ぎで。

 

 まあ、がんばろうと思ってるけど空回りしてしまうっていう娘だな。

 フクキタルとウマが合うらしく、最近は一緒にいる所をちょこちょこ見る。

 よろしくねと声をかけると、は、はいぃ~……と小さくなってしまった。

 

「あの~、気になっていたんですけど、トレーナーさんはなんで胸を擦ってるんですか?」

「アタシがドロップキックしたからだな!」

「さっきの大きな音はゴールドシップさんのせいですか~!?」

「救いはないんですかぁ~……?」

 

 何故かファンサービスでドロップキックが見たいと言われたのでやったのだ。

 リクエストするのはいいけど結構な衝撃だからな、ドロップキックって。

 

「ま、いいだろ! フク、占ってくれよ。アタシの時代が来るかどうかをな!」

「いいでしょう! 占いますよ! ふんにゃか~はんにゃか~」

 

 水晶玉を見つめながら手をくねくねと動かして周りの空気をなでつける。

 毎回思うが、水晶占いのこれは何の意味があるのだろうか。

 

「きませいきませいっ! はいっ、出ましたよ!」

「おぉ……っ!」

 

 ゴールドシップが身を乗り出し、フクキタルは力強く頷く。

 

「来ません!」

「ぶっとばすぞ」

 

 この後必死でゴールドシップを止めるのだった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 その後もタイキとソーラーレイのにんじん食い競争や、スズカの紅白対抗リレーでエアグルーヴとのデッドヒートを見たりと楽しんだ。

 そしてファンお待ちかねのふれあいトークショー。

 時間的な問題で、チームごとのトークとなった。俺たちのチームからは代表してゴールドシップ、マチカネフクキタル、サイレンススズカの3人を出すことに。

 タイキシャトルとソーラーレイは個別にファンと交流するブースで楽しんでいる。そちらはそちらで面白そうだ。

 

「次の目標は決まっていますか?」

「おう! ゴルシちゃんはおめーらの頭の中に入りこむからな!」

 

 ドリームトロフィー・リーグへの参戦です。

 そういうと、ファンや混ざっていた記者からおぉ! と声が上がる。

 最近イベントレースへの出走が多かったからな。期待されていたのだろう。

 

「私はたくさん走ります」

 

 スズカはとにかく走りたいレースに出る。

 基本的にはマイルから中距離。欲を言うなら、1,800mが理想だ。

 

「マチカネフクキタルはどうでしょう?」

「私ですか……えっとぉ~……縁側でおせんべいを食べながらお茶を飲むことです。ずずず……」

 

 本人にとっては真面目なはぐらかし、ファンからするといつも通りの小ボケで笑い声が聞こえてくる。

 

「あはは。それで、本当の目標は?」

「げぼっ! 容赦ないですねこの人!?」

 

 ガンガン聞いてくるインタビュアーに思わず声を出すフクキタル。

 困った様子でこちらを見るので、好きに言っていいよと促す。

 

「うぅ~……え、えっとですね……宝塚記念に出たいな~と思って、ます」

 

 頬をかきながらそういうと、周りからパチパチと拍手が鳴り、口笛を吹くファンもいた。

 歓迎されていることに困惑しているフクキタルに、声援が上がる。

 

「頑張れよー、マチカネフクキタルー!」

「応援するからなー!」

「えっ、えっ……み、みなさん? 私、金鯱賞であんな走りをしたのに……」

 

 そう声を漏らすと、ファンやインタビュアー、そして記者も不思議そうな顔をした。

 

「あんなって……すごい頑張ってたじゃないか」

「そうそう。サイレンススズカに追いつけるのはマチカネフクキタルしかいないって思ったもんな!」

「素晴らしい走りだったよ! でも次は、いつもの末脚を見たいかも!」

「もしダメだったとしてもさ、いい時も悪い時も一緒だよ。俺たちはファンだからな」

「み、みなさん……!」

 

 フクキタルが感動した様子で、目をキラキラと光らせる。

 ぱっとこちらを見るフクキタルに、うんと頷く。

 

「宝塚記念、私、がんばります! だからみなさん、不束者ですが、なるべく投票してくださいね!」

 

 最後の一言でわはは、と笑い声が上がる。

 ファンからの期待を受けてやる気になってくれたようだ。フクキタルは、誰かに想いを託されると強くなれるのかもしれないな。

 よかったよかったと頷いていると、スズカがおずおずと手を上げた。

 

「あの……私も、宝塚記念に出たいです」

「ほほう! スズカさんも宝塚記念に……あぇ?」

 

 一瞬場の空気が凍った。

 そして次の瞬間、おおぉぉ!? と一気に声が上がる。

 

「聞いたか今の!」

「ああ! またサイレンススズカとマチカネフクキタルのレースが見れるなんて……生きててよかった!」

「私、絶対にレース場に行くわ! すごい楽しみ!」

 

 どよめきと歓喜に包まれている会場をよそに、フクキタルは驚いた様子でスズカを見ていた。

 

「あの、スズカさん……?」

「ごめんなさい、フクキタル。でも、元から出ようと思っていたの」

「……いえ、聞いてなかったので驚きましたけど、スズカさんも出たいですよね。距離だっていい感じですから」

 

 あはは、と苦笑いするフクキタル。

 しかし、先ほどまでとは違い、しっかりした表情でスズカを見た。

 

「ですが! 今度ばかりは負けません! 次はスズカさんに勝ちますよ!」

「ふふっ。ええ、私も負けないわ、フクキタル」

 

 2人が楽しそうに闘志を燃やす様子を見て、会場は大盛り上がりだ。

 ゴールドシップと目を合わせ、ふっと笑い合って肩をすくめる。

 

 フクキタルとスズカのレースがまた見れるのかと思うとわくわくするな。

 みんなのレースを楽しみにしてくださいと言って、会場を後にするのだった。




 フクキタル、ファン投票レースにでたいの巻。そしてファンはフクキタルの頑張りを応援しているの巻。

 みんなが見てくれているよ、フクキタル。君は強いウマ娘なんだから。
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