マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ 作:あぬびすびすこ
「うわああああぁぁぁぁん!!!!」
日本ダービー。
トゥインクル・シリーズで最も特別なレースともいわれるこのクラシックレースで、スペシャルウィークは勝利した。
大歓声を浴びながら泣きじゃくり、先輩トレーナーがその隣で勝利を喜びながら同じように泣いている姿はあまりにも感動的で美しい。
先輩、ダービーだけは勝たせられないって悩んでたからなぁ。10年ぐらいかかってたみたいだし。
「スペちゃん……よかったわね」
「いいレースだったぜ。スペー! よくやったなー!」
「楽しいレースデシタ!」
「うん、いいレースだった!」
一緒に観戦に来ていたスズカとゴールドシップ、タイキ、そしてシャインフォートもスペシャルウィークの勝利を喜んでいた。
「次はワタシたちの番デスネ!」
「ええ、そうね。頑張りましょう」
タイキは安田記念、スズカは宝塚記念に向けてさらに気持ちを高める。
特にタイキは安田記念後、フランスのGⅠレースへと出走予定だ。しっかり勝ってもらって、フランスに旅立たせたい。
勝つぞ、タイキ!
「ハイ! トレーナーさん、ワタシ、勝ちマス!」
やる気十分なタイキ。
安田記念に向けて、しっかり頑張ろう。歓声の中、そう思うのだった。
◆ ◆ ◆
そして安田記念当日。
圧倒的な1番人気を引っ提げて迎えたわけだが、なんとこの日、とんでもないどしゃぶりの雨!
稀に見る超不良バ場だ。もうどこを走ってもぐしゃぐしゃでまともに走れたものじゃない。
タイキには関係ないけど。
「イエス! 走れマス!」
元々パワフルな走りでガンガン加速するタイプだったが、ゴールドシップにパワーの使い方を教えてもらったおかげでさらに走りにキレが増した。
芝もダートも関係なく、短距離とマイルならどこでも走れる真のマイラーとなったタイキ。正直、この超不良バ場はタイキの有利に働く……そう思っている。タイキはまだ不良バ場でレースしたことないけど。
ゴールドシップが太鼓判を押すパワーがあるんだから、バ場が悪くても問題ないと思ってるけどな。
「タイキさん! 頑張ってください! でも転ばないようにしてくださいね!」
「滑りやすいから、気をつけてね」
「ハイ! 気をつけマス!」
フクキタルとスズカが心配しているが、ぐっと親指を立てて応える。
ニコニコといつも通りのタイキだ。初の不良バ場がこんなどしゃぶりなのに、心配していない。
やっぱりこの娘、心臓強いよなぁ。
こんな天気だけど、楽しく走っておいで! そういうと、イエス! と元気よく拳を上げる。
安田記念、どんなレースになるのか楽しみだ。
「すごい雨デース……」
「ええ。少し心配になってしまいますね」
「ケガしないといいんですけど……」
雨合羽を着て心配そうに見守っているのは日本ダービーに出走していたウマ娘たち。
エルコンドルパサー、グラスワンダー、そしてスペシャルウィーク。タイキシャトルと交流があり、応援に来たと話す。
「タイキ先輩は、アタシたちが寂しくないようにっていつもパーティーを開いてくれるんデス!」
「ええ。トレーニングでもプライベートでもお世話になっていますから」
タイキのトレーニングに2人が参加しているのは知っていたが、寮でもしっかり面倒を見てあげているというのは初耳だった。
どうやらいい先輩をしているようだ。1人になると寂しくて泣いちゃうぐらい自分も寂しがりだから、気にかけてるんだろうな。
「私も、タイキさんからピッチ走法を教わりましたから!」
スペシャルウィークは上り坂の走り方をタイキに教えてもらっていた。
元はゴールドシップの技術なんだが、巡り巡ってスペシャルウィークのところまでいったようだ。
そのおかげか、ダービーでは最後の直線、上り坂で一気に抜かしに行けたのだと嬉しそうに語ってくれた。
上り坂とコーナリングはフナボシの特徴みたいになってるからな。それがいい方向に働いてくれているようで何より。
「へへっ、タイキはアタシが育てたからな!」
「うん、そうだねぇ」
「私たちも育てられましたからねぇ」
「ええ、そうね。おかげで速く走れているもの」
タイキが褒められるのを見て、ゴールドシップも嬉しそうにしている。
彼女からパワーを存分に受け継いでるからな、タイキ。俺とゴールドシップが育てたと言っても過言ではない。メンバーみんなそうだけど。
ファンファーレが鳴り、ウマ娘たちが続々とゲートインしていく。
『どしゃぶりの雨となりました安田記念。どのウマ娘が栄光を勝ち取るのでしょうか』
『圧倒的1番人気のタイキシャトル。今日はどのようなレースを見せてくれるのでしょうか』
『4番人気のシーキングザパールにも期待がかかるところです』
今回の安田記念、1度も負けずにここまで来たタイキに人気が集中している。
数値で見ると、タイキとシュバルツファルケの間には2ケタぐらい人気に差がある。どれだけタイキが期待されているかよくわかるな。
ただ、シーキングザパールも侮れない。タイキと合わせて一緒に行く予定をURAに付けてもらったぐらい、俺は期待している。
本人が行きたがっていたし、何よりここ一番でやってくれそうな気もしたからな。相当クセが強いらしいけど。
『各ウマ娘、ゲートイン完了しました』
――ガタンッ
『スタートしました! 各ウマ娘、綺麗にスタートしました!』
「大丈夫ね。トレーニングの成果が出てる」
スズカがタイキになんとか教え込んだスタート技術。
ゲートが開くところだけに集中するその技術を完璧にマスターし、スタートがかなり上手になっている。
おかげでレース開始からタイキが走りたいコースに付けることができるようになり、さらに安定感が増した。
『この超不良バ場です。横に広がるレースとなっています』
あまりのバ場状態の悪さから、泥がとにかく跳ねあがる。
いつものレースのように真後ろに陣取るというのは難しいがマイルという短めな距離、とにかくいい場所を走ろうと横に膨らむというレースとなった。
「すごいレースになってマス……」
「走りにくそうですね……」
みんなスタート直後から相当苦しそうにしている。
とんでもなくグチャグチャになっているせいで、中々思うように踏みこめないのだろう。
タイキはなんか、余裕そうだけど。
「タイキさん、楽しそうです」
「ええ。楽しく走っているみたい」
たった1人だけ、キリッとした顔だが口元を緩め、ニコニコしながら走っている。
こんなレースは中々ないから、楽しんでいるのだろう。
うん、もう勝ったな、これ。
「だな。こりゃあもうスタートからウイニングランみてーなもんだろ。タイキだけエクスプロージョンしてるぜ」
「うん。タイキさんだけ楽しそうだもんねぇ」
コーナーを回り、今のところすんなりと好位につけている。
流石にこの状況ではマークしたりブロックしたりする余裕もないのだろう、タイキの周りにはあまりウマ娘がいない。
『最終コーナー抜けて直線に入りました! さあ、横並びとなったこの状況! 誰が抜け出すのか!』
直線に入り、誰もがぐっと内外へと逃げる。
ここで作戦通りなら、タイキはあそこに出るはずだが。
「タイキ先輩が中央にいマス!」
よし、作戦通りコースの中央、ど真ん中に出たな。
これでどう頑張ってブロックしても抜け出せる。最も、今ブロックできる余裕はなさそうだけど。
『1番人気のタイキシャトル! 上り坂からぐんぐん伸びてくる! バ場はおかまいなしだ!』
「すごい……!」
グラスワンダーが口に手を当てて驚いている。
この不良バ場の中、1人だけ桁違いの加速力でどんどん伸びていく。
他のウマ娘たちが止まっているかと思うぐらいの速さ。銃から放たれた弾丸みたいだ。
『残り200! 先頭は完全にタイキシャトルだ! タイキシャトル先頭!』
「タイキ! がんばって!」
「行けーッ! タイキー! お前は大砲だーッ!」
「タイキさーん! タイキさーん!」
「タイキさ~ん! 1着大吉でフランスに行ってくださ~い!」
――突っ込め! タイキーッ!
俺たちの声が聞こえたのか、タイキはニッと笑い、さらに加速してゴールへと突っ込んでいった。
『タイキシャトルです! タイキシャトルです! タイキシャトルが一気に突っこんでゴールイン! 勝ったのはタイキシャトル!』
『もう日本に敵はありませんタイキシャトル! 後は世界に旅立つだけ!』
うわああああああと歓声が上がり、タイキシャトルを祝福する。
これでタイキは5戦5勝。このまま最高の仕上がりでフランスに行ける。
「すごいです、タイキさん! よーし、私もけっぱるべ!」
「あれがタイキ先輩……すごいスピードデース……」
「ええ……もっと頑張らなければ……」
どうやらクラシック級で活躍する娘たちにもいい影響を与えられたようだ。
「タイキ、凄かったわ……私たちも。ね、フクキタル」
「はい! 私、がんばりますよ!」
スズカとフクキタルも、タイキのレースでやる気がさらに上がったようだ。
来週の宝塚記念、どんなレースになるのか楽しみだ!
土砂降りの中たった1人だけ桁違いの速さで走り切ったタイキでした。
実際のレースの上り3Fを見ると、タイキと上がり2位のタイム差が0.6もあるんですよね。タイキの次に早いお馬さんがタイキより0.6秒も遅いってどういうことなの……。
因みにトレーナーくんが期待していたシーキングザパールは10着です。重バ場苦手だからね……。
実況はマイルCSを混ぜてます。タイキの名実況入れられなかったのでね、ちょっと入れました。
エルとグラスはアプリ版準拠なのでダービーに出てます。黄金世代揃い踏みッ!
それでもスペちゃんが勝ちました。主人公すぎる。