マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 トレーナーくんの奇抜なトレーニングは果たして通用するのでしょうか


3、トレーニング

 選抜レースのトレーニングを見た後日。

 トレーナー室にてゴールドシップと次に出るレースについて作戦を話していた。

 というのも、実は海外のレースに出てほしいと理事長から依頼が来ているのだ。その名も凱旋門賞。

 ゴールドシップが以前競い合ったナカヤマフェスタが出たレース。世界規模で有名なレースということで、ゴールドシップもそこそこやる気だ。

 

 芝や気候の違いについて説明し、知識をすり合わせていたら、コンコンと扉がノックされる。

 この部屋の扉がノックされるとは珍しいと思っていると、扉が開かれた。

 

「突然失礼します!」

「あ? なんだ、フクキタルじゃねーか」

 

 マチカネフクキタルだ。

 自信満々に入ってきたわけだが、何か用だろうか。

 

「トレーナーさんにお願いがあってき、ましたけど……」

 

 ホワイトボードに貼られたレース場の図と俺が持つマグネットを見て、ビシッと固まり、尻すぼみになってしまった。

 

「あのー……すみません、また後から来ます」

 

 頬をかき、そそくさとトレーナー室から出ていった。

 そして静かに扉が閉められる。

 うん……なんというか、ウマ娘が扉を静かに開け閉めしているのを見るだけで感動してしまうな。

 

「なあトレぴっぴよお、おフランスに行くんだろ? じゃあドレスも必要ザマス!」

 

 おーっほっほと笑うゴールドシップ。

 この前見たウマ娘でこんな感じで笑っている娘がいたなーと思いながら、必要ないザンスと答えた。

 

 

 

 

 

「連れてきたぞー。オラァ、開けろ! ゴルシ警察だ!」

「ぴゃああ~~! ゴールドシップさん! 扉が壊れてしまいますよ~!」

 

 レースの話し合いが終わったので、ゴールドシップにマチカネフクキタルを連れてきてほしいと伝えた。

 お駄賃としてにんじんせんべいを渡すと、レースのスタートでは見せてくれないだろう好スタートで走って連れてきてくれた。

 ただし、扉を思いきり叩くおまけつきで。

 

 扉を開けると、マチカネフクキタルを肩で抱えているゴールドシップがいた。

 予想通りだな、うん。

 

「ほらよっと。なあトレーナー」

 

 トレーナー室に入ってマチカネフクキタルを降ろしたゴールドシップにさっき入れたばかりのお茶を渡す。

 

「お、さんきゅーべりーまっちんぐ!」

 

 イスに座ってにんじんせんべいをお茶につけてぬれせんべいを作ろうとする彼女をよそに、どんなお願い? と聞く。

 すると、マチカネフクキタルはハイ! と元気よく返事をした。

 

「選抜レースに向けて、本格的なトレーニングをしようと思っています」

「星座占いでも、この期間が大切だとでていましたので!」

 

 ピンと指を立ててそう説明する彼女。

 続けてパンと手を合わせ、そして頭を下げた。

 

「というわけでご指導のほどよろしくお願いします!」

 

 まだトレーナーになってないんですけど!? 思わずツッコんでしまう。

 確かに担当トレーナーではなくても、選抜レースに向けたトレーニングを見てあげることはある。

 実際この前俺がそれをやっていたし、ソーラーレイたちにも指導を少しだけしていた。

 

 ただ、今みたいに専属で教えるということは普通はやらない。

 だってそれならもう担当でいいんだから!

 

「今日テレビで見た占いに『識者に教えてもらうのが吉』とあったんです~! お願いします~! なにとぞぉ~!」

 

 この前と同様に拝み倒されてしまった。

 今日はゴールドシップのトレーニングがある。流石に自分の担当をないがしろにはできない。

 どう断ろうかと思っていたら、せんべいを食べ終えたゴールドシップが手を拭いて立ち上がった。

 

「今日はどーすんだ?」

 

 ぱかプチダッシュでいこうか。

 

「うっし、じゃあごるプチ大をもっていってやるか。行くぜ、アタシのオプション!」

「あ、あの~……私はどうなるのでしょう……というかぱかプチダッシュとは?」

「あん? おめーも来ればいいじゃねえか」

 

 えっ、と俺とマチカネフクキタルの声が重なる。

 

「だってよー、トレーニング見てほしいんだろ? ならぱかプチダッシュさせりゃあいいだろ。面白そうだしな!」

 

 ゴールドシップは部屋の隅にあるダンボールの中からウマ娘のぬいぐるみを取り出して、マチカネフクキタルに1つ投げる。

 彼女が受け止めたのは、トーセンジョーダンぱかプチ大。

 ……後でジョーダンに謝っておこう。

 

「え、いいんですか!?」

「おう! ゴルシちゃんがルールだって古事記にも日本書紀にも書いてあるからな! 細かいことはいーんだよ!」

 

 楽しそうに部屋から出る2人を見送る。

 しばらくうーんと悩んだが、まあいいか、別に禁止されてないし。そう思いなおして部屋から出た。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 練習場でゴールドシップたちと合流し、早速トレーニングをと思ったわけだが。

 

「おせーぞトレーナー! このゴールドシップ様を待たせるとはいい度胸じゃねーか!」

「準備出来てます! いつでもいけますよ~!」

「ハウディ~、トレーナーさん!」

 

 1人増えている……!

 ゴールドシップよりもデカいあのウマ娘、間違いない。

 既にデビューしてもおかしくないぐらいの強さを見せつけているタイキシャトルだ。

 かなりの能力はあるが、先輩たちが言うには落ち着きがなくスタートもしくじりやすいとかなんとか。

 それぐらいなら別にいいのでは? と俺が話したら何言ってんだコイツという顔で見られたのが記憶に新しい。

 

「まさかぱかプチでカウガールが釣れるとはな……わからなかったぜ、このゴルシの目をもってしても!」

「カワイイぱかプチを持ってたので、いっしょに来てみマシタ!」

 

 タイキシャトルはそう言って持っていたぱかプチをぎゅうっと抱きしめた。

 すさまじいパワーのようで、ジョーダンの顔がはちきれんばかりに歪んでいる。

 

 ちょっとしたハプニングだが、まあよしとしよう。

 丁度いいし、タイキシャトルも一緒にトレーニングしてもらうことにした。

 ゴールドシップに目配せして、マチカネフクキタルの腰にひもを括り付けて、ぱかプチも同じように縛る。

 

「あの、トレーナーさん。私はいったい何をされているのでしょうか……?」

「オゥ! ぱかプチが縛られてマース!」

 

 ゴールドシップ、見せてやろう。

 

「しょうがねえな。一瞬たりとも目を離すんじゃねーぞ!」

 

 自分でぱかプチを縛ってセットしたゴールドシップがそのまま走り出し、ターフを走っていく。

 後ろに縛ってあるぱかプチは落ちず、そして謎の笛の音が聞こえてくる。ごるプチについているフエラムネの音だろう。

 

「ワオッ! ぬいぐるみを落とさないで走ってマス!」

「忍者みたいですね! ……あれ、もしかしてこれがトレーニングなんですか?」

 

 そうだよ、と答えるとマチカネフクキタルはとても驚いていた。タイキシャトルもオウ! とびっくりしている。

 

「こ、個性的なトレーニングですね……むむむ、しかしこれもまたシラオキ様のお導き……よーし、やってやりますよぉ~!」

「イエース! ワタシもトレーニングしマース!」

 

 2人もぱかプチを身に着けてゴールドシップを追いかける。

 以前やった時は坂路だったが、今回は芝だ。2,000m地面につかないように走るのはそこまできつくないだろう。

 

 と、思っていたのだが……。

 

「ぴゃあああ~~!!! ジョーダンさんが草まみれにぃ~!」

 

 マチカネフクキタルはコーナーでスピードが足りず、ぱかプチがターフに叩きつけられている。

 

「ハァ……ハァ……ちょっとだけ長いデース!」

 

 タイキシャトルは2,000mが長かったのか、最初は調子が良かったが後半垂れてしまい、最後はズルズル引きずっていた。

 というか途中でよそ見が多くて何度か落としかけていた。すごい落ち着きがない娘だな……。

 

 ミホノブルボンも楽しそうにこなしていたと先輩に聞いていたが、トゥインクルシリーズでも抜きんでた力が無いとキツイトレーニングなのかもしれない。

 ゴールドシップはどんなトレーニングをやっても普通にこなしてきたから、楽しさと負荷以外意識していなかった。

 

「今日のフエラムネもいい音色だったな! 次はヘヴィメタルに挑戦するぜぇー!」

 

 1周終えて調子を整えたゴールドシップがまた走り出していった。フエラムネでヘヴィ部分はどうやって出すつもりなんだろうか。

 少しして戻ってきた2人を迎えると、ぜぇぜぇ言いながら息を整えていた。

 

「ぜぇ……ぜぇ……面白いですけど、できないと辛いですねこれ……」

「アンビリバボー……スゴいトレーニングデース!」

 

 評価は高いが中々大変なようだ。

 ……もしかして、今までゴールドシップを基準にしてトレーニングを作っていたけど、これってハイレベルなのかもしれない。

 

 チームを作るうえでトレーニングも見直さなければならないな。

 楽しそうに走って帰ってくるゴールドシップとヘロヘロになっている2人を見てそう思うのだった。




 通用するけどキツすぎました
 ぱかプチダッシュとは、一定以上の速度で走り続け、かつコーナーでも減速しすぎてはいけないというかなり難しいトレーニングなのです!
 坂路はまっすぐですが上り坂なので、また別の辛さがありますね
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