マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 次のレースはいかに。


31、おみくじ

「トレーナーさん、突然失礼します!」

 

 フクキタルがトレーナー室にやって来た。

 宝塚記念でスズカに負けてちょっと沈んでいたのだが、今は立ち直っているようでいつも通りだ。

 

「あ、お仕事中ですよね。終わってからでよいので~」

 

 そう言って部屋の隅にある箱からタロットカードを取り出してイスに座った。

 暇つぶしで占いをするみたいだ。

 暇つぶしに占いってなんだろう……変な感じだ。

 

 しかしタイミングは良かった。

 明日から始まる夏合宿前に、フクキタルの次の出走レースを決めようと思っていたから。

 

 スズカは最終目標を天皇賞秋に定めて、秋の初戦に毎日王冠を選択。

 元々レベルの高いウマ娘たちが出走するレースだが、ダービーなどで力を見せていたエルコンドルパサーとグラスワンダーの出走が決定。

 2人ともクラシック級ながら既にシニア級のウマ娘に匹敵する。それ故、走っていないのにもかかわらず、既に史上最高のGⅡレースになると言われているのだ。

 「怪鳥」エルコンドルパサー、「怪物2世」グラスワンダー、そして「異次元の逃亡者」サイレンススズカ。

 どんなレースになるのか、俺も楽しみにしている。

 ま、スズカが勝つけど。

 

 タイキは7月後半からフランスへ飛び、8月後半開催のGⅠレースであるジャック・ル・マロワ賞に出走する。

 直線しかない芝1,600mのレースだが、タイキなら普段通り走るだけで勝てるだろう。

 心配なのは俺やメンバーが誰も応援に行くことができないから寂しくないかということだ。

 一応シーキングザパールが一緒に行くから大丈夫だと思うが。みんなで電話をしてあげよう。

 

 ソーラーレイは9月後半のシリウスステークスだ。

 フェブラリーステークスからは帝王賞で勝つために特訓し続けていたわけだが、帝王賞はまさに魔境。芝も凄いが、今のダートのウマ娘たちもとんでもなく強いのだ。

 特に今年凄い活躍を見せているアフクママルコ。シニア級になってから本格化して、そこからずっとぶっちぎりの1着。

 フェブラリーステークスでは出走しなかったので当たらなかったが、今回の帝王賞は出走が決定。初対戦でかなり白熱した勝負になったが、ギリギリスピードが足りず2着。

 JBCクラシックとチャンピオンズシップ、東京大賞典と次の大舞台での勝利を目指し、悔しさをバネに次走をシリウスステークスとした。

 

 ゴールドシップは今年度開催される2度目のURAファイナルズに向けて調子を整えている。

 流石に大阪杯や天皇賞春もあるから、連続で開催できなかったので、3年に1度ということになったのだ。

 というわけで、今年も出走予定である。ドリームトロフィー・リーグに行く前に、自分で華やかなゴルシ道を作り出すと言っていた。

 どの距離で出るかはまだ決まっていない。フィーリング的なアレで決めるとか決めないとか。

 

 そしてフクキタルなわけだ。

 今年の最終目標をどこにするのか、その前にレースは出るのか。

 それを決めようと今調べていたわけで。

 あらかたピックアップし終わったので、フクキタルに声をかける。

 

「終わりましたか! あれ、トレーナーさんもお話があるんですか?」

 

 タロットカードをそそくさと片付けるフクキタルに、レースの目標はある? と聞いてみる。

 すると、待ってましたと手をパチッと合わせる。

 

「それを相談しに来たんです! えっと、とりあえず何かしらレースには出たいと思っていまして……」

 

 でも特にコレっていうのはないのですと話す。

 他のみんなと同じぐらいのタイミングがいいかと思って、さっきピックアップしたレースは7~8月のレースだ。

 函館記念、小倉記念、札幌記念。遠い場所なのは、パワースポットとか名所など、普段いけないところに行かせてあげたいから。

 

「おお~! トレーナーさんはこんなにも私のことを……ありがたや、ありがたや~」

 

 何故かフクキタルに拝まれてしまった。手をスリスリしている。

 とりあえずどれがいい? と聞くと、う~んと唸り始めた。

 

「北海道でジンギスカン、いいですねぇ~。福岡でめんたいこを食べるのもまた……」

 

 食べ物目当て……少しじっとりした目で見ると、わたわたと慌てだした。

 

「うぎっ! ち、違いますよ~! 確かに美味しいものは食べたいですけど、決してそれを優先しているわけでは!」

 

 でも、中々決められないですね~と首を傾げながら考えていたので、フクキタルらしい決め方をすることにした。

 

「私らしい決め方?」

 

 不思議そうにするフクキタルを連れて、出かける用意をするのであった。

 

 

 

 

 

 駐車場で待ち構えていたゴールドシップも連れてやってきたのはフクキタルと出会った神社だ。

 

「ここは、トレーナーさんと会った神社ですね。わ~、懐かしいです」

「そういや最初に会ったのはここか。やべーやつだったな、最初のフク」

 

 ゴールドシップにヤバいやつと言われるウマ娘は果たして世の中に何人いるのだろうか。よっぽどだぞ。

 

「ぎょえ!? あ、あの時は必死だったんですよ~! トレーナーさんがいないとレースに出れないんですから!」

「それもそうか。アタシも誰でもいいから連れてかねーとと思ってたからな」

 

 よく考えるとゴールドシップも最初のコミュニケーションが拉致だったから、どっちもどっちだ。

 いや、ゴールドシップのほうが明らかにおかしいな、うん。

 

「あぁん? アタシはおかしくねーだろ! UFOも牛を誘拐すんだから当たり前だ!」

「大分おかしいと思いますけど!?」

 

 相変わらずの理不尽にフクキタルもツッコむ。

 とりあえず、キャトルミューティレーションとかアブダクションとかは置いておく。

 

「で? 何しに来たんだ? とりあえず面白そうだからくっついてきたけどよ」

「そうですよ! ここで何をするんですか? 参拝です?」

 

 フクキタルの出走レースを決めようと思って。

 そう話して指さしたのは、ウマ娘おみくじの販売所。

 それを見たゴールドシップは顎に指をあててほう? と面白そうに声を漏らす。

 

「つまりあれの中身で決めるっつーことだな!」

「あ、それって、ダービーの……」

 

 フクキタルが次のレースを決めたいと言っておみくじを引きにきたことがあった。

 それと同じことをするわけだ。

 フクキタルらしいからいいだろ?

 

「確かに占いで決めるのはいいですけど……でもいいんでしょうか」

「……あぶねー、フクが占いを渋るから思わず気絶するとこだったぜ」

「私のことを何だと思ってるんですか!?」

 

 占い狂いでしょ。

 

「げぼっ! トレーナーさんも容赦ないですねっ!」

「でもよー、どういうことだ? いつもならやるやるって乗り気じゃねーか」

「えっと、そのー……今までは運頼りで決めてたんですけど。ファンの皆さんに見てもらうのに、適当なのはよくないなって思って……」

 

 どうやら運だけでコレ! という今までの決め方は、レースを見てくれるファンに失礼ではないかと思うようになったみたいだ。

 ファンとの交流やライバルとの戦いを通して、レースの見方がかなり変わったな。

 成長を実感して、思わずうんうんと強く頷いてしまう。

 

「フクってよ、今までの占いも適当にやってたのか?」

「真剣でしたよ! だって、それで私の運命が決まるのですから!」

「ならいいだろ」

 

 ほえ? とフクキタルが驚いてゴールドシップを見る。

 

「最初に会った時みてーによ、本気で運に任せるってのはふざけてるわけじゃないんだろ? だったら別に気にすることねーよ。本気なんだからな!」

「ゴールドシップさん……」

「ま、どんな運命が来てもぶちかましてやるぜ! って思いながら引きゃあいいだろ!」

 

 そう言ってフクキタルの背中をバシッと叩く。

 一瞬ビクっとするフクキタルだが、俺とゴールドシップが頷いているのを見ると、意を決しておみくじを引きに行った。

 

「気にしなくていいのにな。真面目なヤツだぜ」

 

 占い以外に信じるに足るものができたんだろう。そういうと、違いねーと嬉しそうに胸を張っていた。

 

「引いてきました!」

「お、何番だった?」

「64番です! さあ、開けますよ!」

 

 えいえいむん! と謎の掛け声でおみくじを空けた。

 タンホイザも言っていたが、マチカネ軍団特有のものなのだろうか……?

 

「あ、中吉ですね」

「そこそこだな。で、レースは?」

「待ってくださいね~……」

 

 デフォルメされたマルゼンスキーが可愛らしく指さしているところに、ラッキーレースが書いてある。

 そこにあったのは、札幌記念の文字。

 

「札幌記念! 8月後半のレースですね!」

「夏場に北海道か! いいじゃねーか! 海鮮食いに行こうぜ!」

「いいですね~。トレーナーさん! やっぱりジンギスカンも食べたいです!」

 

 結局食べ物優先になるか!

 ウマ娘の食への欲求は凄い。そう思うのであった。




 次走は札幌記念に決定しました。
 あのランダムレースって走ってない奴も含まれるので、どういう選出なのかなって毎回思ってます。
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