マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 タイキ遠征後の夏!


33、夏合宿 後

 タイキがフランスでいつも通りトレーニングしている間、俺たちもいつも通りのトレーニングをしていく。

 

「おっしぇーい!」

「また負けたデース!!!」

「もう一回! もう一回やりましょう!」

 

 今日は50m走ビーチフラッグで反射神経と走力を鍛えてもらうことにした。

 今回はなんと黄金世代が全員揃って合同トレーニングだ。

 

「いや~、相変わらずだねぇゴルシさん」

「ようスカイ。そっちもいつも通りぽわぽわしてんな!」

「セイちゃんはいつでもゆったりで~す」

「スカイさんは変わりませんね~」

 

 セイウンスカイがデビューする前、先輩トレーナーが駆け引きに強いウマ娘なんだと言うので併走トレーニングしてもらったことがある。

 そんなわけで、今もちょこちょこ話すのだ。フクキタルもその流れで知り合った。

 皐月賞を勝って、かなり好調のようだ。菊花賞ではどうなるか楽しみだな。

 

「次もがんばろーね」

「はい、レイさん! よーし、けっぱるべ!」

「次は勝つわよ!」

「キングちゃん! うん! 一緒に頑張ろうね!」

 

 スペと一緒にいるのはキングヘイロー。

 今のところ同期対決では負け越しているが、どの距離でもしっかり走れるいいウマ娘だ。ハッピーミークを思い出す。

 瞬発力やトップスピードがずば抜けているから、きっと凄い差しができるようになるんだろうな。

 

「もう一回勝負デース!」

「ええ。次は勝ちます」

「ふふ……いいわ、やりましょう」

 

 エルとグラスはスズカに突撃している。

 2チーム対抗でビーチフラッグをやっていて、今のところはフナボシが全勝だ。

 伊達にシニア級でもすごいと言われているウマ娘たちばかりじゃないからな、負けられない。

 

 もしタイキがいたら、1人でぶっちぎりそうなもんだけど。

 砂浜を見て、そう思わざるを得ない。

 

「やっぱ強いな、フナボシのメンバー」

「そうだね。とにかく体の仕上がりが違う。基礎を本当にしっかりやってるんだね」

 

 先輩たちもトレーニングを見てウマ娘の仕上がりを確認している。

 俺のチームはいつでも楽しく走れるように、絶対にケガをしない体を作るのを目標にしているからな。

 ゴールドシップがそうだったように、ケガ無く走ることが大事だから。

 だから、ゴールドシップの筋肉や体の柔軟性を参考にして、みんなの体を仕上げているわけだ。

 

「なるほど……確かにあれだけ激走してるのに、ゴールドシップは少しもケガしてなかったな」

「凄いことだよ。僕は何度かケガで走れないウマ娘を見てきたからさ。ここまで活躍してケガなしっていうのはね」

 

 きっと負荷をかけないように気を使っていたからなんだろう。あと、ゴールドシップによる強制休養か。

 誰かが体を使いすぎると、ゴールドシップがズタ袋をかぶせて誘拐。その後いろいろなところに連れまわされるのだ。

 帰ってくるときには体の調子が絶好調で帰ってくるが、代わりに精神的ダメージを負ってくる。

 やってるのはマッサージとかサウナとか銭湯とか、休んでるだけなんだが。

 

「いい先輩じゃねえか。なんつーか、変わったな、ゴールドシップ」

 

 うんうんと頷く先輩に、別に何も変わってないと思いますけどと話す。

 元々ゴールドシップは面倒見がいいし、ケガしないように自分でコントロールする。

 ちゃんとしてる娘ですと言うと、うーんと困ったような表情をされた。

 

「まあ、そうなんだろうけど……」

「君が来る前のゴールドシップを知っているから、ちょっとね」

 

 2人とも苦笑いだ。

 なんというか、本当に問題児だったんだなぁ。

 

「うっし、次はアタシの番だ! 行くぜフク!」

「はい! スカイさんには負けませんよ~!」

「にゃはは、どうでしょう~?」

「私も負けません!」

 

 みんなのリーダーとして引っ張っているゴールドシップを見て、彼女なりに成長したのかな?

 そんな風に思うのであった。

 

「おれぇい!」

「ぶええ!! 砂撒き散らしすぎですよぉ~!」

「ぺっぺっ!」

 

 ……成長したのか?

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「ドキドキしますね……!」

「ええ……頑張って、タイキ」

 

 宿泊所にあるテレビで、フランスでのタイキのレースを見守る。

 ジャック・ル・マロワ賞。直線しかない1,600mという特殊なレース。仕掛けどころの非常に難しいレースだ。

 

 今回タイキはなんと1番人気での出走である。

 これにはちゃんとした理由があった。

 

「パールがタイキのがつえーって言うんだもんなぁ」

「でも、パールさんも勝ちましたよ!」

 

 そう、シーキングザパールが日本トレセン学園史上初の海外GⅠレース勝利を収めたのだ。

 先週の短距離レース、モーリス・ド・ギース賞でコースレコードを叩き出しながら逃げ切り勝ちをして見せたあの雄姿は忘れられない。

 ロケット弾とも言われている彼女が、自分よりもタイキシャトルのほうがもっと強いとインタビューで話したのだ。

 それならば! と圧倒的な1番人気となっていた。

 

 そんな彼女だったが、レース前に電話してみたら全く緊張していなかった。

 

『楽しく走ってきマス!』

 

 いつも通りの笑顔を見せてくれていた。

 ちょこちょこ電話で聞いていたが、遠征先でのんびり過ごせたようで、お昼寝がとても気持ちよかったと聞いている。

 トレーニングも普段と変わらないぐらいの強さでやっていたし、併走トレーニングも楽しくやっていたようだ。

 最初に相談していた通りに生活したおかげで、絶好調のまま臨んでいる。これはかなりいいレースになるぞ。

 

「バ場は重いみたいだよぉ」

「タイキなら問題ないと思うわ。安田記念であれだけ走れたんだもの」

 

 今日のフランスのレース場は重バ場。

 しかし、タイキにとってはバ場状態は関係ない。

 ただそれがマイルのレースなのか、短距離のレースなのか。その距離の違いでしかない。

 

『各ウマ娘、ゲートイン完了しました』

 

 テレビから実況の声が聞こえる。

 始まるぞ……。

 

 ――ガタンッ

 

『スタートしました! タイキシャトル好スタート! 一気に前に出ます!』

「よしっ」

 

 タイキのスタートダッシュを見て、スズカが珍しく声を出す。

 今までずっと一緒にスタートのトレーニングをし続けた甲斐がある素晴らしい先駆けだ。

 ただし、とても不安なところが。

 

「なあ、トレーナー。タイキ、ずっとキョロキョロしてねーか?」

「そうですね……すごい物見してますよ」

 

 タイキは初めてのレース場で初めてのレースだったせいか、興味ありありでずーっと横を見ながら走っている。

 ぜんっぜん集中できていないッ! それでも先行してしっかり走れているけど。

 まあ、作戦通りではあるけど。

 

「げえぇっ!? 作戦なんですかぁ!?」

「トレーナーさん、やっぱり変だよぉ」

 

 ゴールドシップ以外から物凄い目で見られている。

 俺は残り100mぐらいからいつも通りガツンと弾むようなスパートをかければいいよと言っただけだ。本当に最後の最後だけでいいって。

 それまではペースを合わせて好きに走っていいよとは言ったけど。

 

「それだと思うんですけど……」

「好きに走れって言われてあんなに物見しっぱなしってのも、すげーと思うけどな!」

 

 未だに楽しそうにキョロキョロしていて、実況解説の人もすごく不安そうに話している。

 いや、なんだ。申し訳ない、うちのタイキが。

 でも勝つから安心してほしい。どれだけタイキが強いのか最後の100mですぐにわかるから。

 

「なあ、トレぴっぴよう。なんで最後の100mでスパートなんだ?」

 

 ゴールドシップがニヤニヤしながら俺の脇腹をつついてくる。

 作戦がかなり無茶を言っているから面白いのだろう。

 つついてくる腕を掴みながら、テレビを指さす。

 

 まず、フランスのレース場は芝でも日本のダート並に重いと聞いている。その上重バ場だから、走りにくいはず。

 相手はあのバ場に慣れているウマ娘ばっかりだから、とりあえず最後の方までペースを合わせておけば問題ないだろう。

 そして、相手のスパートにも合わせてペースアップをする。その上で最後の最後にぶっ飛んでちぎるのだ。

 

 正直タイキはパワーもスタミナもぶっちぎってるからいつも通りに走っても勝てると思うが、念には念を入れて最後だけ弾丸みたいに突っ込めばいいよと話をしてある。

 

「はえー……相変わらずすごいですねぇ」

「無茶な作戦で走れる体だもんねぇ、みんな」

 

 まあ、自分の好きに走れるように鍛え上げてるからな。

 その結果が、これだ。

 

『残り200mだがタイキシャトルはどうだ! タイキシャトルも上がってきた! しかしまだ伸びないぞ! 大丈夫か!?』

「タイキさん頑張ってくださ~い!」

「タイキさーん!」

「タイキ!」

「おう行け行けー! 仇をとれー!」

 

 タイキは残り200mでも涼しい顔でペースを合わせる。

 ペースは速くなっているが、普段スズカと並走しているのだ。このぐらいのハイペース、問題ないだろう。

 

『残り100m! あっ!? タイキシャトルがグンと伸びた! タイキシャトル伸びた! 逃げていたナミビアを一気に競り落としたっ!』

『そのまま先頭に出る! タイキシャトルグングン伸びていく! インターヴァルが追い込んでくるが届かない!』

『タイキシャトル抜け出したままゴールインッ!!! やりましたタイキシャトル! 2週連続! 日本トレセン学園のウマ娘が、欧州GⅠレースを勝利しましたぁ!!!』

 

 わあぁーーー!!! と様々なところから声が上がる。

 もちろん俺たちも立ち上がって大喜びだ!

 

「すごい! すごいよタイキさん!」

「すごかったですね、スズカさん!」

「ええ、本当に……私も頑張らなきゃ」

「タイキ、本マグロの仇をとってくれたか……」

 

 しみじみと感動するゴールドシップをよそに、他の3人は手を取り合ってはしゃいでいる。

 

「よーし! 次は私の番ですね! 勝ちますよ、札幌記念! まあ、GⅡレースですけどね」

 

 あはは、と笑って恥ずかしそうにもじもじするフクキタルを見て、彼女もレースに勝たせてあげようと思うのだった。




 というわけで、タイキシャトル勝利!
 これで日本初の海外GⅠレース勝利を収めましたね。
 シーキングザパール書かないと他のウマ娘を海外レースで勝たせてあげられないのでちょっぴり一段落。
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