マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

39 / 52
 フナボシのクリスマス!


39、クリスマス

 有マ記念まであと少し。

 チームではフクキタルとソーラーレイ以外、今年に出るレースを終えていた。

 

 ダートで3連戦という挑戦をしているソーラーレイ。

 9月に出走したシリウスステークスでは快勝したものの、JBCクラシックではやはり現在ダート最強と言われるアフクママルコに2バ身差つけられ敗北。

 GⅠダートで2バ身差か、と驚愕していたが、なんと次走のチャンピオンズカップでスズカのような魂を燃やす走りと末脚の爆発。最終直線前に6バ身差もつけられていたのに、そこから差して1着。

 あまりの逆転劇と凄まじい追い上げにレース場は沸きに沸いた。俺たちも見ていてうおお~! と盛り上がっていたし。

 ライバル関係となってバチバチになっているソーラーレイとアフクママルコ。次走の東京大賞典で、今年の総決算が行われる。今から楽しみだ。

 

 タイキシャトルはマイルチャンピオンシップ。

 今まで無敗かつ海外GⅠ勝利という輝かしい結果から絶対的な1番人気で出走。

 同じく海外GⅠを勝利したシーキングザパールも出走し、大きな賑わいを見せた。

 スプリンターズステークスから距離が伸びるので、いっぱい食べてねと言ってたらスペシャルウィークたちと大食いに行きまくって凄い体重を増やしてきた。

 大丈夫なのかと不安だったので、最終直線は全力で走ってほしいと言ったらなんとぶっちぎりもぶっちぎりの凄まじいスピード。

 マイルGⅠレースの最大着差タイの5バ身差をつけて勝利した。とんでもないウマ娘をスカウトしちまったもんだぜ……と他人事のように頷いていたのも記憶に新しい。

 

 そんなこんなで12月に入って最後の調整となった。

 ソーラーレイは2ヶ月の間に3レースということもあって、ゴールドシップにより強制休養の旅に連行されている。今頃温泉に沈められていることだろう。

 タイキも温泉に入りたいということでゴールドシップたちについていった。マイルチャンピオンシップも終わってお休み期間だからな。

 フクキタルもフクキタルであまり強めのトレーニングは行っていない。

 疲労を抜きつつ、レースに向けた体の動かし方を身につけているところだ。

 

「このあたりからですか?」

 

 そういって第4コーナー前で立つフクキタル。

 どこから仕掛けるのかをある程度決めている。

 というのも、フクキタルはバ群に埋もれてもそこから何事もなく突っこんでいくので、タイミングさえ決めておけば末脚は発揮されるからだ。

 バ場状態や出走ウマ娘、レースでの状況によって多少アドリブは必要だが、フクキタルなら大丈夫だろう。

 最近アドリブが上手になってきたからな。かなり落ち着いて考えられるようになっている。

 

「ちょっと前から走ってみますね」

 

 そう言って向こう正面へと走っていく。

 コーナー前ぐらいまで行くと、そこから走ってきて指定の場所で強く踏みこみ、加速。

 ギュン! と風を切りながら直線に入っていく。うん、ゴールドシップ直伝のコーナリングで綺麗に回って加速も抜群だ。

 スピードをゆっくり落として止まり、こちらに戻ってくる。どう?

 

「う~ん、もう少し後ろからのほうがいいんでしょうか? 有マ記念って早めに動き出す方多いみたいですから」

 

 それもそうだな。

 ゴールドシップの時に学んだが、中山の直線は短い。だから、早めの仕掛けやペースアップが多くなる。

 だからそのまま抜け出せる先行が有利だと言われるわけだが……まあ、ゴールドシップみたいに最後方からぶっちぎってくるタイプもいるから参考程度だけど。

 正直直線までに加速して抜け出せるなら、フクキタルの末脚で勝てると思っている。

 だってゴールドシップより速いんだ、フクキタルの上り3F。ならいけるだろうと考えるよ、普通。

 

「そうですかね~。う~ん……とりあえず1回2,500m走ってみます!」

 

 そう言って親指を立てるので、ストップウォッチを取り出す。

 よーい、スタート! と声をかけると、フクキタルは駆け出していく。うん、スタートもいいな。

 

 ヒシアマゾンのボードがあるゴール地点に戻ると、スズカが水分補給をしていた。

 フクキタルのトレーニングに付き合うと言ってゴールドシップたちに付いていかずここにいるのだが、明らかに走りたくて残っている。

 ふぅーと息を吐くと、ちょっとバツが悪そうに耳をぺたんと倒して俺を見た。

 

「えっと……フクキタル、調子いいみたいですね」

 

 話題を振ってごまかそうとしてきた。

 珍しいこともあるものだなと思って、かなり仕上がっているよと乗ってあげる。

 

「今も楽しそうに走っていて……あの、トレーナーさん。ありがとうございます」

 

 どうした、急に。

 首を傾げてスズカを見ると、フクキタルの走りを嬉しそうに眺めている。

 

「フクキタルって、ちょっと変わっているから……開運グッズがないと友達になれなかった、なんて思ってたんですよ?」

 

 以前フクキタルとスズカ、ドーベルでこっくりさんをやっていた時にそう言われたのだとか。

 状況からしてツッコミどころばかりだが、とにかくそれぐらい自分に自信がなかったのだろう。最初に会った時のフクキタルは確かにそんな感じだった。

 自分には何もない、空っぽだってずっと言っていたし。

 

「でも、トレーナーさんと会ってからしばらくして……急に謝られて」

 

 フクキタルがさめざめと泣きながら謝ってきたらしい。

 どうやら自分が失礼なことを言っていたと理解できたようで、友達でいてください~! と一時騒然としたそうな。

 なんというか……フクキタルらしいなぁ。

 

「菊花賞に勝ってから、自分に自信が持てるようになったみたいです。開運グッズだって、少ししかないんですよ?」

 

 机の上や枕元に、1つ2つあるぐらいらしい。

 勝負服のにゃーさんがあるし、トレーナーさんもいるからもう必要ないです! と自信満々に言っていたとスズカは話す。

 

「信頼されてますね、トレーナーさん」

 

 ありがたいよ、ホントに。

 スズカの顔を見て、互いに笑う。

 落ち着いたところでフクキタルがスパートをしっかりかけて帰ってきた。タイムもかなりいい。

 

「ふぅ~! どうでしたか?」

「スピードだけ見ると、やっぱり私よりフクキタルのほうが速いわ。凄いと思う」

「そうですかね~。あ、タイムもそこそこいいですね! 脚も使い切る形で走れそうですし、スパート位置はこのくらいでいいかもしれません」

 

 自信満々にそう答えるフクキタルがなんだかおもしろくて、俺とスズカはまた笑ってしまう。

 不思議そうに首を傾げるフクキタルを見て、なんでもないよとごまかすのだった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 今日は12月25日。クリスマスだ。

 トレーナー室でクリスマスパーティをやるぞ! とゴールドシップが号令をかけて、チームフナボシによる有マ記念前のパーティが行われた。

 フクキタルがツリーの入ったでかい袋を持ちながらマチカネサンタキタルです! と豪快に入ってきて袋を破くなんて事件がありつつ、にぎやかに過ごした。

 

 しばらく経ってメンバーたちでプレゼント交換会が始まった。

 

「オウ! ユタンポというアイテムデスネ!」

「うん。あったかいんだよぉ」

 

 ソーラーレイの湯たんぽはタイキに。

 

「4つ葉のクローバーの押し花ね」

「幸運のお守りです! しおりに使ってくださいね!」

 

 フクキタルの押し花はスズカに。

 

「あん? なんだこれ」

「あったからなんとなく……」

 

 スズカの髪留めはゴールドシップに。

 

「すごいですねぇ~……いや、ほんとにすごいですね!?」

「たくさんたべマショウ!」

 

 タイキのバケツサイズのクッキー箱はフクキタルに。

 

「ありがとぉ、ゴルシちゃん」

「おう! ま、暇なときにやるといいぜ」

 

 ゴールドシップの釣り竿セットはソーラーレイに。

 

 それぞれ交換が終わると、みんな俺のほうを見た。

 なんだろう? と思っていると、ゴールドシップがニヤニヤし始めた。

 

「おう、トレぴっぴよー。なんかプレゼントねーのか?」

「ワタシ、トレーナーさんからプレゼント欲しいデス!」

 

 ニコニコしているタイキや静かに笑うスズカ。

 圧をかけられている……!

 まあ、一応あるんだけど。トレーナー机の引き出しから5つプレゼントを取り出してみんなに渡す。

 

「トレーナーさん、これ……」

「綺麗だねぇ」

 

 渡したのはスノードームだ。

 綺麗だなと思ったのと、その時近くにいたウマ娘がいいなーと言っていたのを聞いて買ってみたのだ。

 

「ワオ! 宝物が増えマシタ!」

「ええ。とても綺麗ね」

「相変わらずいいセンスしてるじゃねーか」

 

 好評のようで良かった。

 みんなからは何かもらえるの? そう聞くと、フクキタルがはい! と手を上げた。

 

「私はトレーナーさんにあげますよ! 今はないですけど……」

 

 あはは、と頬をかく。

 何をくれるんだろうと思っていると、フクキタルが真面目な顔で、だけども笑顔で答えてくれた。

 

「有マ記念の1着! トレーナーさんにあげますからね!」

 

 自信満々でやる気に満ち溢れたその言葉を聞いて、スズカ以外のみんなが驚く。

 頼むぞ! そう言うと、はい! と元気よく応えてくれる。

 

 その後、同じように1着をあげますと宣言したソーラーレイと共にみんなからいじられるフクキタルを見て、成長の証が見れるのだろうなと年末のレースに期待を寄せるのであった。




 というわけで、有マ記念に向けて気合を入れるフクキタルでした。
 自信を持ったフクちゃんは強いぞ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。