マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 まずは予選。
 阪神芝2,000mです。


42、URAファイナルズ予選

 URAファイナルズ予選初日。

 阪神レース場に俺たちはいた。

 と言っても、フクキタルとスズカだけではあるが。

 他の3人は別のレース場にいる。大変申し訳ないが、阪神で丁度2人出走だから、こちらに来ている。許せ。

 

「トレーナーさん! スズカさん! 行ってきます!」

「ええ。フクキタルも上がってきてね」

「任せてください! 今日も福をみなさんに届けますよ~!」

 

 一足先に1着勝利で準決勝に上がったスズカがフクキタルを応援している。

 ハイペース大逃げから最終直線で加速という絶望的な走りを見せつつ、最後の上り坂では無理せず加減して1着をとっていた。

 脚への負担を少なくしつつ勝利。非常にいい結果だ。

 

 応援の声掛けを終えて、いつものゴール前に陣取る。

 最近レース場に行くとゴール前だけ空いているんだが、もしや空けてくれているのだろうか……?

 スズカの応援の時にもいた顔見知りのレースファンがこちらに気づいて会釈してくれる。こちらも手を上げて挨拶した。

 

「楽しみですね、トレーナーさん」

 

 そうだな。

 フクキタルはシニア級で1年間かけて精神的に大きく成長した。

 それが走りにも繋がっている。チーム全員で走っていると思える走りをするんだ。

 有マ記念でそれが完成して差しきった時には本当に嬉しかった。そして、またあの走りが見れるというのは、トレーナーとしてもフクキタルのファンとしても光栄なわけで。

 

 楽しく走ってくれよ、フクキタル。

 小さくつぶやいて、レース開始を待つのだった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「ふぅ~。すぅ~、ふぅ~」

 

 いつものように息を吸って吐いて、気持ちを落ち着けます。

 今日は第2回URAファイナルズの予選。ここで勝たないと、トレーナーさんに優勝という福を届けられません。

 落ち着いて、でも勝つという気持ちだけは燃やして。ゆっくりゆっくり呼吸します。

 

「や、フクキタル」

「ぽえ……あ、シャインフォートさん!」

 

 声をかけてきたのはシャインフォートさんです!

 いやぁ、とっても久しぶりな気がしますよ~!

 学園では時々お話しているんですけどね。

 

「わたし、嬉しいよ。フクキタルと走れるの」

「はい! 私も嬉しいです! また一緒に走れるなんて!」

 

 ついつい体が嬉しさのあまり揺れてしまいます。

 ウキウキしている私を見て、シャインフォートさんはからからと笑ってくれました。

 

「相変わらず素直なこと。ね、フクキタル……負けないよ」

「私だって負けませんよ! 大切なみなさんに福を届けるんですから!」

「ふぅーん? それがフクキタルの走る理由なんだね」

「そうです! みなさんに福を届けて、私もみなさんもハッピーになるのです!」

 

 ぐっと親指を立てると、うんうんと楽しそうに頷いてくれました。

 

「そっか……強くなったな~。こりゃ前みたいに勝てないかも」

「ふっふっふ~。スズカさん相手に鍛えられてますよ~?」

「そいつはいやだねえ。ま、それでも勝っちゃうけどね?」

 

 お互いに目を合わせて、バチバチと火花を飛ばします。

 絶対に負けませんよ~!

 

 

 

 

 

 ゲートの中で、右腕についたお守りに触れます。

 トレーナーさん。一緒に走りましょうね!

 前を向いて、ぐっと体を低くします。

 

 さあ、行きますよ~!

 

『各ウマ娘、ゲートイン完了しました』

 

 ――ガタンッ

 

『スタートしました! 好スタートを切ったのはシャインフォート! その他ウマ娘全員揃ったスタートとなりました』

『ケガ明け1発目で大舞台に立つ2冠ウマ娘シャインフォート。どのような走りを見せるのでしょうか!』

 

 スタートで大外からグン! と加速してシャインフォートさんが走っていくのが見えます。

 スズカさんとは違う先頭の走りをするので少し注意が必要ですね。

 スズカさんは絶対1番前で走りたいから先駆けていきますが、シャインフォートさんは前をとって走りやすくしたいから前に出ます。

 先行でも走れると聞きましたから! ペースメイクには注意です!

 

『先頭でペースを作るのはシャインフォートになるでしょうか。1枠2番のテイクオフプレーンも飛ばしていますよ』

 

 逃げとそれに近い先行の走りが2人……でしょうか。

 この場合、逃げの後ろのウマ娘がペースを作ると言います。シャインフォートさんもですが、テイクオフプレーンさんにも気をつけないと。

 

『阪神2,200mは直線が長いです。コーナーまでのポジション争いは緩やかですよ』

『徐々に隊列ができています。先頭にシャインフォート、その後ろにテイクオフプレーン。2バ身離して一団がひとかたまりとなって進んでいきます』

 

 ゴールドシップさんに阪神レース場は最初から最後まで好きに走れるから、やりたいように走っていいぞと教えてもらいました。

 ゴールドシップさんはここが得意でしょうから、あまり参考になるかはわからないですけど……。

 

 でも、基本的には最終直線に入るまでに加速して一気に行くのがいいってトレーナーさんも言ってました。

 その教えでゴールドシップさんは宝塚記念3連覇ですからね。ポジションをきちんととって、仕掛けるのは最終コーナーです!

 

『歓声を受けながら直線を駆け抜けていきます! 第1コーナー入って先頭は変わらずシャインフォート! テイクオフプレーンは2バ身程離れているでしょうか』

『後方の一団には1番人気のマチカネフクキタル。少し囲まれていますが大丈夫でしょうか』

 

 コーナーに入るところですが、マークされているみたいですね、私。

 ちょっとびっくりです! そこまでの実力だと思われてるんですね!

 

 左側でついている2人に注意しながらコーナーを回っていきます。

 コーナーが得意になったおかげで少し問題があるのです。

 最初のコーナーで加速しそうになって前にぶつかりそうになることがあるんですよね~。

 鍛えてもらったおかげなのですが。

 

『向こう正面に入りました。1,000mは61.1! かなりのスローペースです! 観客のどよめき!』

『これは前がかなり残りそうですね! シャインフォートとテイクオフプレーンには5バ身程の差があります!』

 

 ……はい。2回目の直線で分かりました。

 これ遅いですね! スズカさんと比べるのはアレですけど、すっごい遅いですよ!

 う~ん、トレーナーさんに言われた通り、スローで仕掛けられてしまいました。

 

 ということは、プランGですね!

 

「失礼します!」

「えっ!?」

「うそ!」

 

 残り半分というところで、ターフを強めに踏みしめて内から前に進出します!

 ゴールドシップさんのように、自由に抜錨です!

 今回は()()()()()()()()()()()()! これならシャインフォートさんにすぐ追いつけますよ!

 

『マチカネフクキタルが上がってきた! バ群の中をするすると上がっていきます!』

「信じらんない!」

1()()()()()()()()()()()()!」

 

 スタミナはまだまだ余ってますからね!

 阪神で勝ち続けているチームリーダーのように行きましょう!

 

 みなさんの間を抜けると、前にいたのはテイクオフプレーンさん。

 それを見ながら第3コーナーに入ります。

 

『第3コーナーに入りました! 先頭は変わらずシャインフォートですが、後方から一気にマチカネフクキタルが上がってきている! それに釣られてペースが上がってきた!』

『前2人に有利でしたが、一気に厳しくなりましたよ!』

 

 テイクオフプレーンさんがコーナーで回りながらこちらを見てギョッとしていました。

 まさかこんなに早く進出すると思ってなかったみたいですね。

 ですが、スローペースならドンドン前に行くことが正解です!

 前にこれをやられてダービー負けてしまいましたから! 2回目はやらせませんよ!

 

 第4コーナーに入ったところで、私はもう1度グッとターフを踏みこみます。

 直線がちょっと短いですからね。さらに加速していかないと、脚を残しちゃいますから。

 

「いきますよ~!」

『第4コーナー入ってぇ! マチカネフクキタルがさらに詰めてくる! テイクオフプレーンが膨らんだところに内から入った! 後方集団も前に出ていきます!』

『シャインフォート逃げ切れるのか!? リードは4バ身しかないぞ!』

 

 コーナーを回って内から上がっていきます! 好位につけていますね! どんどん行きますよ!

 ゴールドシップさんの言う通り、URAファイナルズでの芝は走りやすいですね~!

 内側は荒れていることが多いのですが、そんなことはありません!

 好きなように走れます!

 

『最終直線に入った! さあこれから坂! 仁川の舞台はここから坂がある!』

 

 緩い下り坂を駆け下りながら出てくるのは最終直線の上り坂。

 そして目の前にいるシャインフォートさん!

 

「幸運をみなさんにぃ~!!!」

『マチカネフクキタルが一気に突っこんできた! シャインフォートとの距離をどんどん詰めていく!』

 

 直線に入って、全力で駆け抜けます!

 これが今の私ですよ! シャインフォートさん!

 絶対に勝ちますからね!

 

『シャインフォート逃げ切れるか! 最後の上り坂ァ! シャインフォート駆け上がる! スピードは落ちていないぞ!』

 

 シャインフォートさんは必死に上り坂を駆け上がってます!

 ですが、知っていますか? シャインフォートさん。

 私たちは、上り坂が得意なんですよ!

 

『マチカネフクキタルが上り坂っ!? 伸びる伸びる! マチカネフクキタル、上り坂で伸びていく!』

「うそ!」

「ほんとです!」

 

 びっくりしているシャインフォートさんに追いつきました!

 さあここから勝負です!

 

『シャインフォート逃げる! しかしマチカネフクキタルがさらに差を詰める! 1バ身! 半バ身! 並んだ! 並んだ! シャインフォート粘る! シャインフォート粘る!』

「フクキタルー! がんばってー!」

 

 ――フクキタルーッ! 差せーーーッ!!!

 

 スズカさんの声が、トレーナーさんの声が、歓声と一緒に聞こえてきました!

 よぉ~し……行きます!

 

「はぁ~~~!!!」

「ぐぅ、あああああ!!!」

 

 坂を駆けあがって最後の最後!

 突っ込みます!

 

『シャインフォート粘るか!? 粘るか!? マチカネフクキタルが前に出た! マチカネフクキタルだ! マチカネフクキタルが抜け出した! とんでもない末脚だ! ロングスパートからとんでもない末脚で一気にゴールイン! 勝ったのはマチカネフクキタル!』

 

 ゴール板を駆け抜けて、乱れた息を整えます。

 くはぁ~! と息を吐いて掲示板を見ると、私の枠番が1番上に光っていました。

 

「よ~っし! 勝ちました!」

「くっそお! 負けたあ!」

 

 シャインフォートさんが私の隣でぐてっと倒れました。

 すごく悔しそうな表情です。

 

「フクキタル強かったなあ。スローなのわかって突っこんできたでしょ」

「そうですね~。トレーナーさんの作戦でした!」

「トレーナー……ああ! そうか、フクキタルのトレーナーってゴルシ先輩の……そっかー!」

 

 作戦じゃ勝てないかー! と頭をガシガシしていました。

 いやぁ~、勝てて良かったです! 絶対にリベンジしたい相手でしたから!

 

 お互いに健闘を称え合いながら、観客の皆さんに手を振ってお礼を伝えるのでした。




 シャインフォートとの一騎打ちみたいな形でしたね。
 見事勝利しました!
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