マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 準決勝抽選とトレーニング!


43、逃げ差し

 予選を勝ち抜き、準決勝へと進んだフクキタル達。

 フナボシはとてもありがたいことに、全員準決勝へと進むことができた。

 

 ゴールドシップは勝つだろうから安心して見ていたら最後までやる気が持たなかったのか、ぎりぎりで抜かれそうになってハナ差だったから、実際のレースを見たときはもう汗びっしょり。

 トレセン学園に戻ってきたときに叱ったら逆切れでラリアットを食らってしまった。

 

「トレーナーが来ねーからだろ! 分身して来いよな!」

 

 とんでもない理不尽を言われたが、こればかりは許してほしい。

 だって全員ほぼ別の場所なんだから!

 しょうがないじゃないか、俺では決めれないし。

 まあ、今後の反省ということで理事長には報告しておこうと思った。痛い思いしたくないしね。

 

 タイキとソーラーレイはもうマイルなのに3バ身差で完勝。

 世代での強さを見せつけた。

 特にソーラーレイは前から注目されていたが、今回のレースで思い切り目立ってしまった。

 雑誌でURAファイナルズダート部門優勝候補筆頭として特集を組まれたぐらいだ。誇らしい反面、マークがきつくなるから警戒が必要だ。

 

「がんばるよぉ!」

 

 雑誌を見たソーラーレイはやる気満々だったけど。

 雑誌でこういう特集を組まれていないのはソーラーレイだけだった。

 ダートの賑わいの問題もあるのだろうが、少し気にしていたのでいいタイミングだと思っている。

 

 そんなこんなで全勝で迎えた準決勝抽選。

 第1回の時は抽選会場で着飾って参加していたわけだが、今回は注目度が前回より上がっている

 トゥインクル・シリーズの新聞や雑誌以外のマスコミたちも大勢取材したいとのことだったため、予選同様ライブ配信となった。

 

「注目されてるよなー、URAファイナルズ。アタシんときはそこそこだったのによー」

「それだけ盛り上がってる証拠だねぇ」

「距離別の最速を決めるレースですからね。こちらも気合が入りますよ!」

 

 トレーナー室でワクワクしながらみんなでテレビをじぃっと見つめる。

 今日も理事長とたづなさんが映っている。相変わらず忙しそうにしているなぁ。

 たづなさんもあれだけ忙しいのに夜通しレースについて語ってくるのだから、その熱意は半端ではない。

 理事長の補佐をしているだけある。

 

『注目! URAファイナルズ準決勝の抽選を始める!』

『みなさま、こちらのモニターをご覧ください』

 

 予選同様、モニターにレースと距離、そして出走するウマ娘が表示されるようだ。

 準決勝ともなると、レースの数も限られる。予選のようにバラバラになってレースを見れないということもないだろう。

 

『では始めるぞ! たづな!』

『はい』

 

 たづなさんが操作し始めると、モニターにレース場や距離が映し出されていく。

 

「次はどこになるんでしょうか……」

「私は1,600mがいいデス!」

「私も2,000mぐらい短いほうが好き。レース場は東京かしら」

「ゴルシちゃんはなんでもいいけどなー」

「ゴールドシップさんはなんでもできますからね~」

 

 それぞれ距離の得意不得意があるため、なるべく得意な距離、コースが望ましい。

 正直スズカは2,000m以外だとちょっと長い。タイキも1,800mは長い。

 うまくハマるといいんだけど。

 

『東京1,600m! 3枠5番! タイキシャトルだ!』

 

 前回同様ぎえぇ~! と叫び声が聞こえる。

 URAファイナルズでもマイルで3バ身つけれるような娘だからな。パワーありすぎてブロックもできないし。

 東京も距離もかなりいいところ。今回もかなり走りやすいだろう。

 

 タイキは次も頑張りマス! と気合を入れていると、次のレースで名前が呼ばれた。

 

『中京2,000m! 4枠7番! サイレンススズカ!』

 

 またもやうわぁー! と声が聞こえた。

 中京2,000mと言えば、聞きしに勝る伝説の金鯱賞。

 毎日王冠、天皇賞同様、これはもう無理だと思わせるぐらいの走りをしたレースだ。

 距離もいいし、レース場もまた素晴らしい。スズカも気持ちよく走れることだろう。

 

「頑張ります。次も1番最初にゴールしますね」

 

 静かに微笑みながらも闘志を燃やすスズカ。

 きゅっと手を握り、メラメラと音が鳴っているようにも見えるぐらいのオーラをまとっている。

 やる気がありすぎてフクキタルとソーラーレイはビクッとしている。尻尾も落ち着かない様子でぶるぶると震えているし。

 

 やる気MAXのスズカを横目に見ながら抽選を見守る。

 続いて呼ばれたのはフクキタルだ。

 

『東京2,400m! 7枠13番! マチカネフクキタルだ!』

「お! 来ましたね~! 枠も7! ラッキーナンバーですね!」

「でも13番だよぉ?」

「ああ! 確かに不吉です~! でも大丈夫です! ラッキーナンバーとアンラッキーナンバーでぶつかり合うので実質吉です!」

「どういうことなの……?」

 

 自信満々に親指を立てて説明するフクキタルに困惑するスズカ。

 プラスとマイナスがぶつかって相殺されるという謎理論だ。フクキタルらしいと言えばフクキタルらしい。

 

「スズカさんが言ってたじゃないですか。占いは見え方で変わるって! だから、できるだけ前向きに考えようって思ったんです」

「そう……でも、いいことよね」

「フク、前はアプリで凶でたらやり直してたからなー」

「ぎゃぼぼ! 何で知ってるんですか~! ゴールドシップさん!」

「エントランスでやってただろ。しかもでけー声でかしこみっ! て叫んでたじゃねーか」

 

 フクキタルの奇行にトレセン学園の奇行士が突っ込んでる……。

 きゃいきゃい騒ぐみんなを見て、良くも悪くも緊張感がないなぁと思うのだった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「スズカ! ここで息を入れて!」

「――ッ!」

 

 練習場のターフのコーナーで息を入れたスズカは、勢いそのままに直線へと駆け出していく。

 並走してアドバイスしているのはシャインフォートだ。

 タイプの違う逃げをするウマ娘なので、さらにスズカの走りを強化してくれるかもということで応援を頼んだわけで。

 

「はっ、はっ……ふぅ」

「ふぅー。いやあ、その逃げながら差す走り。すごいね」

「シャインフォートもアドバイスありがとう。的確でわかりやすいわ」

 

 スズカの息の入れるタイミングをずらしたりするテクニックを教えてもらっている。

 シャインフォートのおかげで息を入れるタイミングをあえてズラすなどのテクニックを手に入れた。おかげでスズカの逃げが差しにくくなっている。

 

「うんうん。結構慣れてきたね」

「ええ。でも、トレーナーさんからの提案だったけど……レースで2回息を入れるなんて考えもしなかったわ」

「そりゃあ、普通は無理だし、私も無理だと思ったよ。でも、スズカの走りだからできるわけ。バレないと思うし、足への負担も少なくなる。いやあ、羨ましいよ」

 

 あれだけ離せるならいけるんじゃないか? ということで、思いついたレース中2回息を入れるという戦法をやってもらっている。

 脚への負担が軽減されてかつハイペースで走れるというのは、スズカにとってかなりありがたいことだ。

 ケガの心配を少なくして走れるということは、全力で走れるということ。スズカの全力は、GⅠレースでもぶっちぎって逃げ切れる。

 なら、負ける要素は限りなく少ない。だって逃げは相手の作戦とか関係ないんだから。

 

 現状2回のスタミナ回復はかなり効果がありそうで、スズカも満足気だ。

 実戦でうまく使えるといいけど。

 

「いやぁ~……スズカさん、これもうどうやって勝てばいいんでしょう」

「そりゃあ一緒にぶっちぎるか、最後にスズカよりも速い速度で追いかけるかだろ」

「それはそうなんですけど」

 

 フクキタルとゴールドシップが、スズカの走りを見ながら戻ってきた。

 俺の提案した走りを見てげんなりしている様子。

 

「トレーナーさん! なんてこと考えるんですか~! 差せないじゃないですか!」

 

 スズカを指さしながら俺に怒るフクキタル。

 いや、自分の担当ウマ娘を強くするのは普通じゃないか。

 

「うっ……それはそうなんですけど~」

「フクだってシャインフォートに逃げを差すコツ教えてもらってたからお互い様だろ」

「普通の逃げなら自信ありますよ! でもスズカさんは普通じゃないんですもん!」

 

 うはぁ~! と頭を抱えるフクキタル。

 シャインフォートに逃げを捕えて差すコツや、ペースを握られた時の対処法をがっつり教えてもらっている。

 それでもスズカをどう差すかわからないとなると、もう別の方向から勝ち方を考えるか、ゴールドシップが言った通りに走るしかない。

 

 フクキタルがスズカとぶつかるのはURAファイナルズ決勝。

 それまでに、あの大逃げの差し方を2人で見つけよう。

 彼女を慰めながらそう話すのであった。




 スズカを差すためにがんばっていたらスズカがさらにパワーアップしてへちゃむくれるフクキタルでした。
 誰と走るのかは次回に続く。
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