マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 ついに決勝です!


47、URAファイナルズ決勝

 URAファイナルズ決勝。

 その舞台となる京都レース場に俺たちはいる。

 

「ついに来ましたね……」

「そうだねぇ……ドキドキしてきた」

 

 GⅠレース同様の雰囲気にチームのみんなはいつも以上に緊張していた。

 あまり緊張しないタイキでさえ、少し落ち着かない様子で体を揺らしたりそわそわと視線をあちこちに向けている。

 

「トレーナー、焼きそば食おうぜ。500円くれ」

 

 全く変わらずいつも通りなのはゴールドシップと俺だけだ。

 みんなから半分尊敬半分呆れた視線を受けながら、500円を握りしめて焼きそばを買いに行った。

 これからレースなのに……まあ、長距離は最後だから時間あるけども。

 

「最初はわたしなんだよねぇ……よ、よーし! がんばるからね、みんな!」

「いつもの力を出せば勝てるわ、レイ」

「そうデス! たくさんトレーニングしてきマシタ!」

 

 ぷるぷる震えながら気合を入れるソーラーレイに、みんなが声をかけていく。

 いったいどんなレースが見れるのか……期待して待とう。

 

 

 

 

 

『最後の直線! 先頭は後ろから突っ込んできたアフクママルコが抜けだした! しかしバ群の中からソーラーレイ! やはりこの2人なのか!』

「いけー! レーイ!」

「いけますよぉ~! ここから一気です~!」

「レイ! がんばってー!」

「レーイ!」

 

 ――差せええぇーーー! ソーラーレェーーーイッ!!!

 

 俺たちが身を乗り出しながら全力で応援して、ソーラーレイのゴールを待つ。

 ダートは1,800m! マイルが得意なソーラーレイが有利かもしれないが、中距離で強いアフクママルコにも有利だ。頼むぞ……!

 

 バ群を切り裂いて一気に直線をぶち抜き、すさまじい砂埃を上げながらソーラーレイが突っ込んでいく!

 

『残り200m! アフクママルコ懸命に粘る! 逃げ切れるか!? しかしソーラーレイの勢いはさらに増しているぞ! その差は4バ身! 3バ身! 2バ身!』

 

 残りの距離は少ない! だけどあともう少しだ!

 差せ! 差せぇーーー!!!

 

『1バ身! 半バ身! 並んだ! 並んだ! 差したか!? アフクママルコも差し返す! ソーラーレイ前に出る! どっちだ! どっちだ! どっちだああぁーーー!』

 

 ソーラーレイとアフクママルコは並んでゴールインした。

 ゴール板前で見ていても、どちらが勝ったのか全くわからないぐらいの差だ。

 アフクママルコの粘り強い走りとソーラーレイのとんでもない末脚で、観客は大盛り上がりだ。

 2人のどちらが勝ったのか、ざわめきは収まらない。

 

『どちらが勝ったのか、まったくわかりません! 写真判定ですが……結果が出たようです。掲示板をご覧ください!』

 

 ソーラーレイは5番! アフクママルコは2番!

 どっちだ、どっちが勝った……!?

 

『掲示板……5番! 5番です! 1着は5番のソーラーレイ! 2着はハナ差でアフクママルコです!』

「よっしゃああーーっ! やったぜトレーナー!」

「やりました~~~!!! 凄いですよ、レイさん!」

「本当にすごかったわ……レイ、頑張ったわね」

「ヴィクトリー! パーフェクトラン!」

 

 っしゃあ! ゴールドシップとハイタッチしてグッとガッツポーズをする。

 今までライバルのアフクママルコと何度も何度も戦って切磋琢磨した結果が出せて、本当に良かった。

 

 喜びの感情で満ち溢れながらウィナーズサークルに向かうと、号泣したソーラーレイが突撃してきた。

 

「トレーナーさぁん! ありがとぉ~~!!! 勝ったよぉ~~!!!」

 

 大泣きしながら感謝してくるソーラーレイ。

 こちらこそ担当トレーナーにしてくれてありがとう! それしかいう言葉が見つからないぐらい、嬉しいひと時だった。

 

 

 

 

 

『最終直線に入った! マルゼンスキーが抜けだしている! その差は5バ身ほどでしょうか! 追いつけるのか!?』

「タイキさーん! タイキさーん!」

「タイキ! 追いついてー!」

「タイキー! 弾丸みてーに突っ込んでこーい!」

「タイキさ~ん! 行けますよ~!」

 

 ――タイキー! 一気に行けぇーーーッ!!!

 

 マルゼンが好きに逃げまくってそのまま直線で5バ身差だ。

 正直怪しい。マルゼンのスタミナは中長距離でも逃げっぱなしで行けるぐらいのフィジカルがある。

 頼む……! タイキ……!

 

『マルゼンスキー快調に逃げている! これはセーフティリード! このまま逃げ切ってしまうのか!』

 

 違う、ここからだ!

 タイキが思い切りターフを踏み込むと、弾丸のように一気に突っ込んでいく!

 ドン! ドン! という爆発的な踏み込みとともにグングン距離を詰める。

 良いぞ、タイキ! パワーを活かせ! 自分の持ち味を存分に出せ!

 

『タイキシャトルが猛然と追い上げる! 凄まじいスピード! 一気にマルゼンスキーと差を詰めていきます!』

「よっしゃー! まわりが止まって見えるぜ!」

「タイキさーん! あとちょっとですよぉ〜!」

 

 マルゼンも大概だが、タイキシャトルもその恵まれた体つきから出る力を存分に発揮している。

 余裕そうに逃げていたマルゼンに3バ身2バ身とすぐに差を縮め、あっという間に並んでしまった。

 

『タイキシャトル! マルゼンスキーにあっというまに並んだ! しかしマルゼンスキーもさらに加速! 先頭を譲らないぞ!』

 

 並んだはいいが、互いにフィジカルの強さは人一倍。

 先ほどのソーラーレイとアフクママルコとは違い、差して差し返してではなく、そのまま横一線でグングン加速していく。

 どっちも必死の形相だ。がんばれ、タイキ……!

 

『マルゼンスキーか! タイキシャトルか! どちらも一歩も譲らない! どっちが先にゴールするんだ! 100mもないぞ!』

 

 ――タイキッ! 勝てーーッ!

 思わず叫んで身を乗り出す。

 すると、タイキがフッと笑みを見せ、グンっと体が前に出た。

 

『タイキシャトルが前に出た! 少しだけ抜け出したか!? マルゼンスキーと半バ身差だ! マルゼンスキーこれを詰めれない! タイキシャトル先頭! タイキシャトルが先頭でゴールイン!』

 

 ゴールの瞬間、うわああああ!!! と歓声が爆発した。

 同時に俺たちもよぉーし! と声をあげ、ゴールドシップが体ごとドン! とぶつかってくるのを同じように押し返してもみくちゃになる。

 タイキもやった! フナボシで2連勝だ!

 ウマ娘たちの中で、ソーラーレイとタイキが1番強いんだ!

 思わずうるっと来てしまう。全て終わるまで泣かないって決めていたんだけどな……。

 

 ウィナーズサークルでタイキを迎えると、ぎゅうぎゅうといつも以上にパワフルなハグを受けた。

 

「トレーナーさん! ワタシ、トレーナーさんにトロフィープレゼントできマシタ! センキュー!」

 

 タイキから涙ぐみながら感謝の言葉をもらって、思わずこっちも泣きそうになる。

 とても嬉しいよ……みんなのトレーナーでよかった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 ゲート前で、いつものように深呼吸します。

 トレーナーさんの、私たちの集大成。それを見せる舞台です。

 巻いてあるお守りごと手首をきゅっと握って、気合を入れます。

 

 1枠1番で同じように静かに気持ちを整えているスズカさんを見ます。

 俯いていますが、私と同じようにお守りを見ていますね。左脚を軽く振ってます。

 

 ふと、目が合いました。

 お互いにうん、と力強く頷いてゲートに入ります。

 今までみなさんから受け取ってきた全てを使って、勝ちます!

 

『始まりましたURAファイナルズ中距離部門! 京都の舞台で、最強のウマ娘が決まります!』

『1番人気から紹介しましょう。今日も大逃げを見せてくれるのでしょうか。異次元の逃亡者! 1枠1番、サイレンススズカ!』

『2番人気はドリームトロフィー・リーグでも大活躍中の帝王! 4枠7番トウカイテイオー!』

『3番人気、稀代の逃げウマ娘とサイボーグの対決! 坂路の申し子こと2枠3番ミホノブルボン!』

『4番人気が少し不満でしょうか。粘りの走りで勝ち切るウマ娘、8枠17番トーセンジョーダン!』

『5番人気はBNWの1人! ダービーウマ娘! 5枠10番ウイニングチケット!』

『6番人気は同じくBNW! 鬼脚は今日も見れるのでしょうか! 8枠18番ナリタタイシン!』

『7番人気! 今日も福は来るのでしょうか! 7枠14番マチカネフクキタル!』

『8番人気、ダービーウマ娘にして閃光のような末脚! 3枠6番エイシンフラッシュ!』

『9番人気は――』

 

 解説の方が紹介してくれている間に、みなさんのゲートインが完了しました。

 ……体に力が宿ります。前のレースと一緒ですね。

 人気が低いかもしれませんが、それはラッキーナンバーの7です!

 私にとっては、良い数字なんですよ?

 

 だから、絶対に負けません。勝ちますよ、みなさん!

 

『各ウマ娘、ゲートイン完了しました』

 

 ――ガタンッ

 

『スタートしました! 全員好スタート! 1番サイレンススズカは絶好のスタートを決めています!』

 

 ゲートから出ると、視界の端で誰かが跳び出たのが見えます。

 十中八九スズカさんですね! ミホノブルボンさんもスタートは上手ですが、スズカさんはすり抜けるみたいにシュン! って出ますから。

 

『京都の長い直線、リードしているのはサイレンススズカ! それを追いかけるように3番ミホノブルボンが2番手に上がっています』

 

 ミホノブルボンさんが先駆けて前に出ています。

 あの方はハイペースで同じラップを刻み続ける走りが特徴ですが、それは周りに誰もいないからできる走りだとトレーナーさんは言っていました。

 スズカさんより前に出るか、飛ばして先に行くスズカさんを無視して2番手で刻むかどちらかの戦法をとるだろうとも。

 今回はどちらでしょうか……?

 

『ミホノブルボンの1バ身後方には17番トーセンジョーダン。並んで6番エイシンフラッシュ。後ろには7番トウカイテイオーです』

 

 先行で走る3人はまとまって走るみたいですね。その後ろに他の先行勢の方々がついていっています。

 

『中団には10番ウイニングチケット。最後方には18番ナリタタイシンと、13番マチカネフクキタルです! 今回は後方でのレースになりました!』

 

 ウイニングチケットさんが中団にいて、私はナリタタイシンさんと一緒に最後方で走ります!

 ナリタタイシンさんが不思議そうにこちらをチラチラ見ていますが、これでいいんです。

 ポジション取りに失敗したわけじゃないですよ!

 

『ホームストレッチに入ってきました! 先頭はサイレンスッ!? サイレンススズカがグッと加速しました! 後続との差を離していきます!』

 

 スズカさんが行きましたね!

 ゴールドシップさんとのトレーニングでスタート後にうまく速度を上げるコツを覚えていましたからね。

 天皇賞でモノにしていたのを見ていましたけど、実際やられると衝撃です。

 ゴールドシップさんも同じようなことしますけどね!

 

『サイレンススズカが快調に飛ばしていきます! 2番手のミホノブルボンとの差を広げていきます!』

 

 グングン飛ばしていますね!

 私たちはまだ直線ですけど、スズカさんは既にコーナーに入るところです。

 ミホノブルボンさんはペースを変えずにいるみたいです。スズカさんは常にオーバーペースですからね、それもいいのでしょう。

 

 ただ、それだと困るのです。だって、スズカさんに逃げ切られてしまうでしょうから。

 だから、ゴールドシップさんから教えてもらった技を使っていきますよ!

 思いきりターフを踏んで、こう、ニィ! って笑顔を作ります!

 ドン! ドン! と爆発音が鳴り、中団後ろの方が振り向きます。

 すると、ヒィッと声を上げてペースを上げてくれました。それに押される形で中団がペースアップしましたね。

 ナリタタイシンさんが凄い顔で見てきますが気にしません。

 

『コーナーに入りまして、先頭はサイレンススズカ! 4バ身程差がついてミホノブルボン。おっと、ここで中団がペースアップです。サイレンススズカの逃げについていくためでしょうか』

 

 ゴールドシップさん直伝のプレッシャーです!

 こうすれば序盤でペースアップさせられるから、京都の上り坂でスタミナ削りに行けるぜ! って言ってました。

 思いのほかうまく決まったので嬉しいですね~!

 

『第2コーナー抜けまして、向こう正面へ。1,000mのタイムは58.4! かなりのハイペースですが大丈夫でしょうか!』

 

 ペースはやっぱり速いです。でも、スズカさんは今コーナーで1度息を入れたはずです。

 この後下り坂でも息を入れる可能性がありますからね。スタミナ切れはしないでしょう。

 

 私たちもコーナーを回りました。

 前方に見えてくるのは京都の上り坂。いいですね~、私の勝利の象徴ですからね、この坂は。

 この坂を駆けあがって、私は勝ったのです。あの菊花賞に!

 

『サイレンススズカが坂を駆けあがります! ペースは落ちないが、後方からミホノブルボンが飛ばしてくる! 坂路の申し子は伊達じゃないぞ!』

 

 スズカさんが先んじて坂を上り始めました。

 ミホノブルボンさんも上り坂は得意です。ペースを緩めずに飛ばしていきます。

 上り坂の手前で残り半分ぐらい。坂を駆け下りてから、勝負どころです。

 

 ……トレーナーさん、ゴールドシップさん。正直、このレースに出る前からずっと不安ではありました。

 だって、作戦が作戦なんですもん。ゴールドシップさんしかできないような、そんな作戦。

 ですが、レイさんとタイキさんの走りを見て! ここまで走ってきて! あの上り坂を見て覚悟が決まりましたよ!

 

 フナボシはですねぇ!

 みんな無理だってことをやるんですよ!

 

「行きますよぉ~!」

 

 少し外にでて前の状態を確認します!

 ここからならみんなお見通しです!

 誰もいませんね……なら、行きますよ~!

 

 私はみなさんが上り坂を駆け上がろうとしたその時に、思いきり駆け出したのでした。




 タブー?
 勝ちゃいいだろ!
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